コア娘アーマードダービー   作:舌百

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単発ネタのつもりだったんだがね…なんか好評だったから続けるよ


疾走、判明

一先ず坂を下って町中に出たわけだが、私の心配していたような技術レベルではないようだ。

ビルなどが乱立している都会のような街だ。インフラ類も整備されている上に人で溢れている。旧ピースシティや旧コロニーシングが全盛期だったならばこんな町並みだったのだろうか。そういえば若年の頃に訪れたどこかのコロニーもこのくらい発展していたような気がする。

とりあえず勝手の知らぬ街、国、世界についたときにすべきことはまず情報収集だ。

幸いなことに今、私の目の前には古本屋がある。古本屋であれば立ち読みも可能な場合が多い。この世界の通貨を持っていない私にはうってつけの情報収集の場だ。まあ可能ならば図書館などが好ましいが、職員などに話しかけられた場合にボロが出かねない。というわけで早速中に入る。

店の中は全体的に綺麗に整えられていてホコリが積もっていたりも見たところなさそうだ。店主はというとカウンターにもいない。こんな無防備で盗まれないのかね。

あたりを見渡すと入り口のすぐ脇のマガジンラックに比較的新し目な雑誌が置かれていた。

そのうちの一つを手に取る。タイトルは有澤重工なんかで使われている文字、日本語…だったか。それに類する文字で書かれている。私はランク一位だから当然多言語を習得している。無論有澤周辺も例外ではない。そのため、読める。読めるのだが、その内容がどうにも理解できない。

 

"新進気鋭のウマ娘特集!同世代最強は誰だ!"

 

ウマ娘…ウマ娘ってなんだ。

馬は馬だろう。なんでカタカナなんだ。そう思ったときにふととある考えがよぎった。

もしかして、私が今成っている馬の特徴を持つ女のことを総じてウマ娘という種族として扱っているのではないか…?と。さらに古来より馬という存在がすべてウマ娘だったならば、差別的観点から馬という漢字を充てていないことも納得できる。となれば牡馬はどうなるのだと聞きたいが、もしかしたら牡馬は存在せず、ウマ娘しかいないという前提のほうが筋が通りそうだ。

そして、この雑誌の世代最強という謳い文句から推測するにおそらくだがこのウマ娘という連中…まあ今は私もそうなっているのだが、何かしらの競いごとをするのだろう。そしてこんなに大々的に民衆の見えるところにあるということは戦争関連ではない、ということだ。おそらくだが人々が空に住み始めたあたりから失われたギャンブルの一つ、競馬というやつだろう。

人の形を取っていることからどちらかといえば陸上競技に近いのだろうか。だが、そのどれもがクレイドル体制が実現されてからの人間には見ることの叶わないものだ。

パックスエコノミカが施行されていた時期にはあったのだろうが、私にそんなものへの興味はなかった。そんなことを思いながら雑誌のページをめくっていると、5人の少女の写真が目に入ってきた。それぞれに、スペシャルウィーク、エルコンドルパサー、グラスワンダー、キングヘイロー、セイウンスカイと銘打ってある。

これはなんだ…?コイツ等の名前なのか…?それとも二つ名なのか?どちらにしても奇怪極まる。人の名前というよりかはどちらかといえばネクストの名前と言われたほうがしっくりくるような名前ばかりだ。

もし名乗るのならば私もステイシスのほうが良いのだろうか。見た目も少女だしオッツダルヴァでは流石に変な気もする。この世界では私はステイシスだ。アンサングという手もあるが、意味合いがどちらかといえばステイシスのほうがレースに出るやつらしい。アンサングでは影の功労者になってしまうからな。

それにこの見た目の色味からしてもどちらかといえばステイシスのほうが適切だ。

それにしても通貨がわからないな。値札にはUというものがついている。私の知る限りではUの頭文字から始まる通貨はない。ユーロか?いや、あれは頭文字がEだしヨーロッパ圏の通貨だった気がする。コームで払えればいいのだがあれは基本的にAC系の部品を買うのに使うものだからな…。そういえば私のクレジットカードはどこへ行ったのだろうか。私の総資産が入っているから無くしたのはかなり痛手だぞ。

と一応ホットパンツのポケットを漁ると左ポケットから何かしらの紙が出てきた。

 

「なんだ…?これ。」

 

水に濡れてびしょびしょになったそれは見たところ住民票のコピーのようだった。

 

「なんでこんなものが…?」

 

そこには大量の私に関しての個人情報が記されていた。そして、名前の部分にステイシス、とそう刻まれていた。やはり私の名前はステイシスか。それを再び畳んでポケットにしまう。なぜこんなものがポケットに入っていたかはわからないが、いつか必要になるときが来るかもしれないので大事にしておこう。

その後20分ほどいろいろな雑誌や新聞などを漁ってこの世界の大体のことがわかった。まず、ウマ娘以外の獣人に属する存在はいない。なぜウマ娘だけなのかは疑問が残るところだがその辺は私にはわからないところなのだろう。次にこの世界ではトレセンというものがあり、ウマ娘はそこに通ってレースにむけて体を鍛えるらしい。私の今の年齢は先程の住民票と新聞などの発行日から照らし合わせて考えると16くらいのようだ。

つまり今からトレセンに通うことも可能、ということになる。ならば今のところの私の目標はトレセンへの入学、ということになるか。試験などがあっても私の頭には大体の教養が入っている。問題なく入れるだろう。足なんかも先程の一瞬の疾走でわかったがかなり早い部類だろう。まあ、ウマ娘の基準というものがわからない以上は驕らずに行くのが定石か。

問題なのは今の時期だろうか。気温からして春先なのはなんとなくわかるのだが試験期間などはもう過ぎていそうだ。賄賂などで編入するしかないか…?

 

そんなことを思いながら用済みとなった古本屋を後にして外に出る。外はすでに日が傾き始めている。そういえば今日の寝所とする場所を決めていなかった。金もないからどこかに泊まることもできない。

生まれ変わって早々体を売る羽目にはなりたくないが本当にどうしようもなくなったらそうするしかないか。それまでは誰か泊めてもらえる様な人を探すことに専念すべきだろうな。さすがに少し暖かくなってきたとはいえ装備もないまま野宿するのは危険が伴う。せめて寝袋程度はほしいところだ。

そう思案しながら歩いていると後ろの方から何かの駆動音と女性の叫び声が聞こえてきた。

 

「ひったくりよ!誰か捕まえて!」

 

その声が聞こえると同時に立ち止まった私のすぐ左隣を女物のバックを右手に持った男がスクーターに乗って走り抜けていった。

まあ、誰かが対処するだろう。そう思ったがある考えが浮かんできた。

これは私の実力を測れるいい機会なのではないか?相手は人類の叡智の結晶とも言うべき車両だ。それに対してウマ娘となった私の止める力、追いかける脚力、それら諸々を一度にわかるというのはかなり魅力的だな。さらに助ければ謝礼ももらえるかもしれないし運が良ければ家に寝させてもらえるかもしれない。

ランク一位の思考回路を使うことでこの思考の時間リアル時間にしてわずかコンマ以下。

条件を総合して、これはやるしかないな、そう思った私は身をかがめて正面を見据える。

目標は今にも逃げようとするスクーター。

足を踏み出そうとしたとき、体中をネクストとリンクしたときのような感覚が襲う。高揚感のような、熱のような、なんとも言えない感覚だ。

そして見据える視界にあの見慣れた画面を空目する。

そして一つ呟く。

 

「戦闘開始。ステイシス、出る。」

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