コア娘アーマードダービー   作:舌百

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宿舎、親交

今私はトレセン敷地内の寮の一室に招かれている。何故こうなっているかというと、シンボリルドルフと握手を交わした後に何故かはわからないが住居がないことを見破られ、同室は今遠征に行っていてしばらく帰ってこない予定だから、もしよければと言われたからだ。

既に入浴は済ませた。学生は入浴が早いようでルドルフ以外は全員もう入っていたらしい。そのため、誰にも見られることなく終えられた。着替えはルドルフのものを借りた。全体的にオーバーサイズだがかろうじて服としての機能は果たしている。

今いるのはルドルフの自室。美浦寮とか言う寮の三階奥だ。室内にはベッドが2つ、片方の枕元には無数の本が詰められた本棚がある。おそらくはこちらがルドルフのものだろう。そして、もう一つの方は特段何もないが、サイドテーブルに数枚のレコードが置いてある。それはクラシックのようで作曲者は全てエクトル・ベルリオーズと書かれていた。

肝心の部屋主であるルドルフはというと今、私の入室許可を取るために申請に行っているようだ。出ていってからかなりの時間が経過しているのでそろそろ戻ってくる頃合いだと思うが…。そう思いながらレコードを手に持って眺めていると部屋の扉が開いた。

振り返ると、印鑑の押された書類を持ったルドルフが部屋に入ってきていた。

 

「すまないね、少し遅くなってしまった。」

「いや、構いはしない。それにしても貴様、私をここに招いたはいいが入学手続きなど今からできるものか?」

「ふふ、その辺りは私に任せてくれて構わない。」

 

ルドルフは得意げにそう言った直後、耳をピクりと動かしてこう続けた。

 

「多少"ズル"をすることにはなると思うが、ズルっと学園に入れるように手配しよう。」

 

ルドルフはキメ顔をしている。

沈黙。

その時間は10秒ほどだっただろうか。キメ顔の意図を掴みかねる。彼女ほどの聡明なウマ娘のことだから何か深い意味があるのだろうが、どうにもその意味を見いだせなかった。ルドルフを見つめて思案していると、

 

「…やはり繋がりが安直すぎたか。気にしないでくれ、なんでもない。」

 

彼女は少ししょげたような顔になってそう呟いた。

今のはあれか、ダジャレとかいうやつか。前に王大人あたりが考えてた気がするな。

笑うのが礼儀とかほざいていたが私は大して面白くもないものを笑う質ではない。別段笑う義理もないので気づいたが笑わないでおく。

 

「まあ、それらの手続きはまた後日としよう。今日はもう遅い。休むとしよう。」

「ああ、そうだな。」

 

そしてルドルフが電気を消そうと立ち上がったとき、扉が開いた。

そこには4つのキャリーケースを手にしているウマ娘が立っていた。髪は夜のように黒く、瞳は血のように赤い。吸血鬼のような印象を覚える少女だ。

 

「夜分にすまんな、ルドルフ。荷物がかさんだので減らしに来た。すぐに発つ。」

「ああ、構わないよ。」

 

そう言って黒いウマ娘はケースをベッド脇に3つ置いた。そして今気づいたように私を見つめてきた。吟味するような、礼など捨て去った率直な目だ。

 

「何だ貴様。」

「ほう、この娘が例の…。今は時間がないのでね、自己紹介はまた後ほどとしよう。それでは、な。」

 

そう一方的に言って彼女は部屋から出ていった。さながら嵐のようであった。それにしても彼女の雰囲気というのはどうにも見たことがある。荘厳な武人然とした雰囲気、堅苦しい喋り方。そして相手を見る時の獲物を狙うような瞳。強さを求めるリンクスがよくあの目をしていたが、まさかな。

 

「いきなりすまなかったね。彼女に代わって謝罪しておこう。」

「借りているのは私の方だ。部屋の主に文句を言うほど無礼ではない。」

「そうか。ならば今度こそ寝るとしよう。」

 

そして電気が消えた。おやすみ、という声が聞こえてくるが特に返事もせずにベッドに入る。ふわふわと柔らかいそれはなんとも温かく、次第に眠りの世界へと誘った。

 

夢を、見る。

深く昏い水の底へと引き込まれる夢だ。夢の私は恐怖に顔を歪めていた。次の瞬間、視点が変わった。周囲には見渡す限りの草原が広がっている。私はそこにただ1人立ち尽くしていた。後ろを見ると、すでに壊れ果てたステイシスがあった。海の色に侵食され、美しい青色は消え去っている。夢の私もそれに気づいたようで、よろよろとした足取りで近づき、それに触れた。そして光に包まれた。

また視点が切り替わる。光が晴れたその先には私が立っていた。ウマ娘となった今の私だ。ウマ娘の私は話しかけてくる。

 

「貴様は戦うのか。」

 

当然だ。ランク一位として譲るわけにはいかん。

 

「戦乱から逃れたのにか。」

 

だからこそだ。果たせなかった夢の残り火を燻らせるわけにはいかない。

 

「貴様の夢は叶わない。」

 

いいや、叶う。なぜならば私はランク一位だからだ。

 

「幻想だ。貴様はオーメルの庇護で一位になったに過ぎん。」

 

私を破ったものがいなかったことがその証左だ。

 

「…今一度問う。貴様は戦うのか。」

 

当然に決まっている。なぜなら私はオッツダルヴァ(ステイシス)だからだ。

 

「フッ、ならばせいぜい足掻くといい。その道のりが無意味にならんようにな。」

 

貴様…。

 

そこで目を覚ます。寝汗が凄まじい。さながら昨日水たまりで目を覚ました時のようだ。目の前に心配そうに顔を覗き込むルドルフが見えた。

 

「…何をジロジロ見ている。」

「あ、ああすまない。少し苦しそうだったのでね。」

「問題ない。」

「そ、そうか?なら良いのだが…。」

 

体を起こし、服の裾で顔を拭う。汗はすでに引いたようだが全身が不快だ。

 

「すまないが、着替えをもう一着と、タオルをもらえるか。」

「ああ、構わないとも。」

 

そう言ってルドルフは服を一着見繕い、タオルとともに手渡してきた。

 

「悪いな。」

 

来ていた服を脱ぎ、体を軽く拭いて新しい服に着替える。これでだいぶマシになった。カーテンが開けられているので外を見るとすでに日が出ている。

 

「今の時刻は?」

「6時だ。みんな朝練に出ているころだろうね。」

 

そう言ってルドルフは立ち上がった。

 

「貴様も朝練か?」

「いや、私はお昼に食べるお弁当を作りに、ね。」

「ふむ、ところで私はどうしたらいい?まだ入学していないものが学校を彷徨くのは不都合だろう。」

「そうだね。夕方までには各種手続きを終わらせる予定だからそれまでは部屋で待っていてはくれないかな。」

「なるほど、構わん。」

「迷惑をかけるね。」

 

ルドルフは苦笑をして部屋を出て行った。

さて、どうしたものか。ルドルフの本でも借りて読んでみるか。人のものを許可なく漁る、というのはどうにも気がひけるが他にすることもないし、漁られてやましいものがあるわけではなかろう。

ひとまずはレースなんかがどういう形式で行われ、どういう種類があるのかを知ることから始めるか。

 

 

生徒会室の扉を開くとすでにエアグルーヴが中にいた。

 

「おや、用事でもあったかな。」

「いえ、ただ仕事がありましたので。今片付けた所でした。」

 

椅子に座り、書類に手をかける。エアグルーヴは私のそばに秘書のように控えている。

 

「ところでエアグルーヴ。」

「どうしましたか。」

「選抜レースはまだあったかな。」

「ええ、明後日に最後のレースがありますが…。」

「それは良かった。そこに1人追加で出走予定を出して欲しいんだが、仕事を頼んでもいいかな?」

「わかりました。構いません。」

 

というやりとりを経由してエアグルーヴは部屋から出て行った。たづなさんに掛け合いに行ってくれるのだろう。さて、私は私で彼女の入学手続きなんかを済ませておかなくてはな。幸いなことに彼女の住民票はすでに受け取っている。それをベースとして特別推薦で編入手続きを取れば入学できるだろう。

数枚の書類に推薦文を記入し、生徒会長の印を押す。秋川理事長であればこれを提出すれば受け入れてくれる筈だ。ふふ、彼女のターフでの走りを見ることができるのが楽しみだ。




ウマ娘ステイシス設定

身長:153
体重:微減
胸:AAA(アンサラーのアサルトアーマー)
靴のサイズ:23

耳:長い
尻尾:サラサラ

切れ長の青目、薄い青色をした長いサラサラストレート髪
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