一人残された屋上から自宅へと戻ったアイナは、暗い家に明かりを灯してアリサに言ったように早目に休むことにした。
夕食はなにも食べる気がしなかった。
「…………リンネちゃん」
ベッドの上で一人今日の出来事を整理するものの、どうしてもリンネの行動に違和感を覚える。
なぜ彼女はマコを殺したのだろうか。
動機をいくつか考えるものの、どれも憶測の域を出なかった。
唯一確かなのは、彼女がアイナ達を騙していた事実。
当人がそう言っていたのだから、彼女が意図的にアイナ達を騙していたのは確かだろう。
では何について騙していたのか。
あの赤い魔法少女の話から、リンネがかなり前から魔法少女だったのは確かだろう。
彼女の話が真実なら、リンネはあの少女よりも前に魔法少女になっていることになる。
あの強さは一朝一夕で身に付くものではないから、それを導いたというリンネの魔法少女としての戦歴は下手したら自分達以上かもしれない。
そんな練達の魔法少女が、なぜ無知を装ってアイナ達のグループに入り込んだのか。
そもそも彼女を誘ったのはニボシだが彼女が転校生だということが、そこになんらかの意図を感じさせる。
計画的に仕組まれた匂いを感じるのだ。
最初ニボシがリンネを誘ったのは、彼女に魔法少女の資質を感じたからだ。
それはキュゥべえも認めて――。
「……キュゥべえは、このことを知っていた?」
でなければおかしい。
全ての魔法少女はキュゥべえと契約して魔法少女になったのだから。
だがリンネとキュゥべえがアイナの前で初めて顔を合わせた時、二人はまるで初対面のように応じていた。
そこに不自然なところはなかったように思える。
「魔法少女になるにはキュゥべえと契約しなければ……いえ、でもなにか例外があったような……?」
魔法少女達のネットワークは浅く狭いが、まるでないわけではない。
まさに風の噂程度の情報だが確かに情報交換する機会はある。
超弩級の魔女『ワルプルギスの夜』の逸話もその一つだろう。
結界に身を隠すこともなく、現れただけで甚大な被害をもたらす天災。
魔法少女にとって最悪の敵といっても良いだろう。
半ば都市伝説と化しているそれの他にも、近場の強い魔法少女の話は噂になりやすい。
徒党を組んでいる魔法少女のグループも噂になりやすく、この一月でエトワールの名も広まっていた。
そんな雑多な噂の中で『銀の魔女』という眉唾物の情報もあった。
「銀の魔女――キュゥべえを介さず少女と契約できる魔女……魔女なのに天敵の魔法少女を生み出すなんてありえないけど、裏切りの魔女……それならキュゥべえを介さずに契約できるわね」
噂では銀の魔女と契約した少女は、普通の魔法少女よりも強い力を手にすることができるらしい。
「……馬鹿らしい。本題から逸れ過ぎよ。彼女の目的は何なのか。マコを殺すこと? 私達の仲を引き裂くこと? でもそれになんの意味があるのかしら?」
意味などない、ただの愉快犯なのかもしれない。
だが彼女と言葉を交わし笑い合ったアイナからすれば、そんな低俗な愉悦に浸るような人物ではないと思ったし、そう信じたかった。
だが目を閉じれば、血に染まったリンネの姿を思い出す。
そして放り出されたマコの生首。
全てがむせ返るような血の臭いとともに鮮明に焼き付いていた。
「……明日はキュゥべえを探して、みんなと話をしないと」
今夜は悪夢を見そうだと思いながら、アイナは眠った。
幼い頃からアイナはしっかりした子だと言われ、その言葉に恥じないよう周りの子達の面倒を見ていた。
早熟な子供だったのだろう。
アイナは周りよりも一歩進んだ内面を持っていて、率先して誰かの世話を焼いていた。
そうすれば大人からも両親からも褒められたからだ。
小学校に上がってもアイナの世話焼きは変わらなかった。
誰かに褒められたいという欲求も確かにあったが、純粋に誰かが自分の力で笑顔になってくれるのが嬉しかった。
『アイナちゃんすごーい』『アイナちゃん、勉強教えて?』『錦戸さん、相談があるんだけど』『錦戸、助かったよ』『アイナってお人よしよね』『アイナちゃんありがとう』
その感謝の言葉を聞くだけでアイナは満足だった。
だが年齢が上がるにつれ、アイナの手を必要とする者は少なくなっていった。
『あんたさ、人の頼み断らないんだってね。あたしの頼みも聞いてくんない?』
たまにアイナを頼ろうとする者は、アイナを食い物にしようと企む者ばかりだった。
他人の頼みを拒否することに抵抗はあったが、それ以上に自身を守るためにアイナはそれを断った。
『……なんだよ、使えねー奴』
その言葉に怒るよりもただ悲しかった。
人は万能にはなれず、アイナもまた万能には程遠い。
みんなの役に立ちたいという平凡な願いを叶えるのは、奇跡や魔法にでも頼らない限り無理だと悟ったのだ。
だが奇跡も魔法もあったのだ。
キュゥべえと名乗った白い生き物が持ちかけた契約。
悪い魔女を退治する魔法少女。
それはまさしくみんなの役に立つ存在だった。
誰かがやらねばならないのなら、その使命は自分が……とアイナはキュゥべえと契約を交わした。
そして奇跡が起きた。
それからのアイナは『みんなの役に立てる魔法少女』として、人知れず魔女を退治して誰かのために働いた。
そうして正しい魔法少女として活動していくうちにニボシと仲間になり、そこにマコとユリエが、そしてアリサが加わった。
アイナは幸せだった。
彼女が現れるまでは。
古池凛音と名乗った銀髪の綺麗な少女は、アイナにとって不思議な存在だった。
物静かで名前のように凛とした雰囲気があって、ニボシの言う通り一見するととっつき難い美人に思えた。
実際に話してみると気さくで、よくアリサと共にアイナのことをからかった。
だけどふとした時の表情はとても儚く、今にも散ってしまいそうな雰囲気があって、そのアンバランスさに目が離せなくなるような存在だった。
ある時、魔女の探索中に落し物の財布を拾ったことがある。
魔法で持ち主を探す途中、その時コンビを組んで同行していたリンネが不思議そうにアイナに尋ねた。
「先輩はどうしてそんな風に、他人に一生懸命なんですか? 言ってしまえばこんなの一銭の得にもなりませんよ?」
「うーん……私のしたことで誰かが笑顔になれるのなら、私にとってそれ以上の得はないかな?」
「……惚れました。抱いてください」
「ええっ!?」
可笑しなことを言う子だと、からかっているのだと分かっていても動揺してしまう自分が恥ずかしかった。
その後財布を届けたものの泥棒と疑われたのか、ひったくる様に奪われると持ち主は足早に去って行ってしまった。
その後ろ姿を見送りながらリンネは溜息を付いた。
「二重の意味で報償を受け取り損ねましたね」
「でも正しいことはできたわ。自己満足だろうと、私としては問題なしかしら?」
「たとえその結果、裏切られようとも……ですか?」
リンネが呆れたようにアイナを見ていたが、当人は仕方ないと苦笑していた。
「結果は結果。過程は過程じゃない? 過程を楽しんだ者勝ちだと私は思うけど」
「……恐ろしくポジティブですね」
「それが私の取り柄だもの」
「アイナ先輩マジ天使」
真面目な顔で妙な事をいうリンネに、アイナは思わず吹き出してしまった。
「もー、変なこと言わないの! リンネちゃんは黙ってれば美人さんなんだから、そういう言葉づかいしちゃダメよ」
めっと叱ると、なぜかリンネは胸を押さえて蹲ってしまった。
「……前向きに善処する方向で遺憾の意を表明したいと秘書が申しておりました」
「えと、わけがわからないわよ? 大丈夫?」
「いえ、アイナ先輩がみんなに慕われる理由がわかったので、大丈夫じゃありません」
そのリンネの可笑しな様子に、アイナは苦笑を浮かべる。
それを見たリンネもからかいの笑みを浮かべた。
「……私も、アイナ先輩みたいに生きられたら良かったんですけどね」
だけど、何故だろう。
その時のリンネの笑顔が、アイナにはなぜか泣き出しそうな幼子のように思えたのだ。
そして場面は反転する。
夕暮れの斜陽差し込むビルの中、血で真っ赤に染まった一室にリンネは血まみれで佇んでいた。
『私は、あなた達の敵です』
断片的な映像が走馬灯の如く駆け回る。
『まだ幼いのに、ご両親が』『誰が引き取るの?』『うちはちょっと』『施設に――』
突然起きた家族との死別。
一人きりになった我が家。
必要とされたいから、誰かの役に立ちたかった。
要らない子だと言われたくなかった。
そんな時、キュゥべえと出会った。
『僕と契約して魔法少女になってよ!』
そして奇跡が起こる。
アイナは必要とされ、両親との想い出の詰まった家を守ることもできた。
一緒に住まないかと誘ってくれた親戚に罪悪感を覚えたが、アイナは我侭からそれを断った。
それは死んだ両親の帰りを待っているのか、ただ他人の介入を拒絶する潔癖さの表れだったのか、アイナにもよく分からなかった。
魔法少女になったアイナはたった一人で魔女と戦い、使い魔を退治して人々を守った。
そして彼女と出会った。
『……そう、だね。たとえ正しさに意味がないのだとしても、楽しんだ者勝ちだよね』
高見二星――ニボシとの出会い。
アイナと彼女はある意味、似た者同士だった。
理由は違えど、互いに自分ではなく他人のために魔法を使う少女だった。
アイナにとってニボシは初めて得られた理解者でもあった。
彼女とコンビを組んでからは、それまで魔女狩りに苦労していたのが嘘のように自由に戦えた。
その時、初めて自らの魔法の本当の使い方を知った。
誰かの役に立てる魔法。
傍に居る誰かを助けられる魔法だ。
そんな魔法を使えることが、アイナには誇らしかった。
ニボシがアイナと同じ中学に上がり、他の魔法少女――竹田マコ、新谷ユリエにも出会った。
『こんなあたしでも、誰かの役に立てるのかな?』
『……私は、マコちゃんが良いなら、それで』
初めから仲良くなれたわけじゃなかった。
時に意見を違えることもあった。
『あたしは、アイナさんみたいに正しくなれない! あたしの願いは、どこまでも自分勝手なものだから! だから……なれないよ……っ!』
アイナは、自分がそんなに正しい存在だとは思っていなかった。
正しい行いをすることが、必ずしも正しい存在だとは限らない。
言ってしまえばアイナの行為は、自己満足と言われてしまえばそれまでなのだから。
それでも祈りは尊いものだと思うから。
アイナはマコと一緒に涙を流して、その手を握った。
『……ならなくていい。だって、あなたはあなたじゃない』
『ぐすっ……アイナさん、鼻水……』
『ぇ…………やだウソッ!?』
『……まったく、敵わないなぁ』
マコは笑った。
涙を必死に拭いながら、しわくちゃの眩しい笑顔を浮かべていた。
時に、拒絶されることもあった。
『……こんなことに、意味なんてあるの?』
ユリエが力なく呟く。
助けた人に罵倒されたこともあった。
現実に絶望した者に「なんで死なせてくれなかったんだ」と言われたこともある。
楽しいことばかりじゃない。
むしろ苦しいことや悲しいことの方がずっと多いだろう。
だけど。
その中でぶつかりあったからこそ、互いを理解できることもある。
『……あたしは、あたしのできる範囲で魔法少女やってみるよ。ま、考えようによっちゃ正義のヒーローっぽくて面白いかもな!』
マコと力を合わせて魔女を倒し、互いに手を叩き合った。
またある時、使い魔に殺されそうになっていた人を助け、その安堵の顔を見てユリエははにかんだ笑みを浮かべていた。
『……誰かを助ける気持ち、ちょっと分かった……気がする』
やがて学年が一つ上がってアイナは最上級生となり、アリサとも出会った。
出会った時の彼女はとても傷ついていて、泣きそうな顔をしていた。
『……こんな私の汚れた手で、誰かを救うことができるのですか?』
恐る恐る伸ばされたその手を、アイナは力強く握りしめた。
幾人もの人を助け、同じくらい裏切られてきた。
それでも正しい魔法少女であろうとした――錦戸愛菜の物語。
だが場面は再度、反転する。
鉄錆の臭いの充満する廃ビルの中、銀髪の少女が嘲りの笑みを浮かべる。
『そんなの、お遊びに決まってるでしょ? 揃いも揃って馬鹿ばっかで、笑いを堪えるのが大変だったよ』
銀の魔女が哄笑する。
それと共に放り投げられた、赤い、血、転がる生首。
マコの死に顔は絶望に満ちていて。
それを見て、マコのあの明るい笑顔を思い出すことは不可能だった。
『…………悪くない、わたしは、悪くない! 全部この女が悪いんじゃない! なにもかもこの女のせいで滅茶苦茶よ! 死んで当然じゃない!』
人だったモノが、形を失い血と肉と潰れたナニカに変えられていく。
『だけど、姉ちゃんが言ってた通り、魔法少女って正しくない奴の方が多いんだな』
真紅の復讐者に正しさが否定される。
『――テメェら、全員ぶっ殺してやる!」
憎悪と殺意を向けられ、絶望の足跡が音を立ててやってくる。
そして。
最後は誰もいなくなった屋上に、アイナは一人取り残された。
『誰も私のことなんて、気にしていない』
『誰の役にも立てない私なんて必要ない』
『所詮は都合のいい存在』
『だからほら――最後はいつだって、一人ぼっち』
星の見えない暗闇の中で影達が囁く。
アイナは必死に耳を塞ぎ、しゃがみ込んだ。
「……ちがう……違うわ……っ!」
否定の言葉を呟くが、その言葉はアイナ自身がいつも心のどこかで思っていたことだった。
誰かの役に立つことを存在意義としてきた少女は、それを失ってしまった自分がたまらなく怖かった。
リンネの姿をしたナニカが嘲るようにアイナに語りかける。
『結局先輩は他人の事なんてどうでもいいんですよ。自己愛主義者、それもかなりの。おまけに開き直っているから性質が悪い。
私が思うに、先輩は誰かの役に立つことはできるけど、真の意味で誰かを救うことはできないんじゃないですかね?
だってほら、エトワールのメンバーの誰一人、先輩の言葉に耳を傾けないじゃないですか。先輩に頼ろうとしてくれないじゃないですか。
信頼されていないんですよ。あなたは八方美人過ぎる。
みんなの味方というのは結局のところ、誰の味方でもないということですね。みんな気付いてるんですよ、先輩の醜い正体を』
その言葉を否定し抗うための呪文を、アイナは知らなかった。
――そして錦戸愛菜は絶望した。
深夜の枕元からこんばんは。
あなたの傍に這い寄る絶望、銀の魔女ことリンネでございます。
実は本日はアイナ先輩のお宅に無断でお邪魔しています。
言い訳の余地もなく不法侵入ですね。
ばれたら警察ものでしょう。
でも大丈夫、魔法少女は超法規的措置により保護されていますので。
文句があるならインキュベーターにぜひどうぞ。
日本どころか宇宙的な保護機構を前に、一般人どころか地球人類は涙するしかありません。
もっとも保護とはいっても家畜的なアレですが。
気にしてはいけません。
本日も外道魔法少女リンネ☆マギカ、絶賛外道中です。
……とまあ、お約束のキャッチコピーはそのくらいにして。
アイナ先輩は今現在、私の道具と化した『夢幻の魔女』に囚われていた。
先日、私の夢にのこのこと不法侵入してきたあの魔女の種子である。
凍結していたそれに穢れを吸わせ、励起状態となった物をさらに魔力で活性化させて、私はアイナ先輩の枕元で孵化させたのだ。
この魔女の特性は私にとって非常に有益なもので、まず眠っている相手ならほぼ十割の成功率を持つ幻術を使ってあの夢幻の世界へと引き摺り込む。
一度囚われたが最後、飴と鞭の夢を見せ続け対象の魂を捉えて離さない。
幸福と絶望のスパイラルだ。
だからこそ、エネルギー搾取装置として優秀な性能を持っていた。
だが当然、欠点もある。
所詮は魔女なのでそのまま搾れるだけ絞りとったら、最後は魔法少女が魔女になる前に肉体ごと食い尽くしてしまうのだ。
どうでもいい近隣の雑魚……もとい、魔法少女達の尊い献身により、すでに捕食までのプロセスを確認することができたわけだが。
――名もなき魔法少女達の犠牲に合掌。
そんなわけで、私はアイナ先輩を捕食する寸前で魔女を屠殺すると、搾り取った果汁も果肉も両方美味しく頂く。
本番を前に生殺しになる魔女に同情しなくもないが、魔女に人権などあるわけがない。
『夢幻の魔女』はもはや私の道具の一つに過ぎないのだから。
「……あ、リンネ……ちゃん……」
夢幻の魔女の支配が解かれた影響から、未だ夢見心地のアイナ先輩が薄目を開けて私を見ていた。
私は指先に魔力を込めそっと瞼に触れると、そのままつうっと顔の輪郭をなぞった。
「このまま幸せな夢を見なさい。邪魔する者は私がやっつけてあげるから」
アイナ先輩のソウルジェムを手に取る。
既に彼女のソウルジェムは手遅れなくらい穢れに満ちていて、奥の方から憎悪の闇が今にも殻を破りそうだった。
手にしたソウルジェムを床に置くと、私はアイナ先輩の体を抱き上げて避難させる。
「あなたの魂は魔女になる。だけどあなたは私と共に、生き続ける」
アイナ先輩は幸せそうな寝顔を浮かべていた。
可愛らしい眠り姫。
いつまでも幸せな夢の中へ。
「あなたも私のものになりなさい。寂しい思いはさせないわ」
お姫様の唇を、私は奪った。
私は王子様じゃなくて、悪い魔女だから。
眠りから目覚めることはないでしょうけど。
「その方が、あなたも幸せでしょう?」
私は自らの唇を舐めて、嘯いてみせる。
アイナ先輩の唇はとっても甘い蜜の味がした。
絶望の甘露だ。
花は手折られるその瞬間こそが最も儚く美しい。
そしてアイナ先輩のソウルジェムの殻が破れ、中から魔女が生まれ出た。
その瞬間、アイナ先輩の肉体は死体となったが、私が魔法で保存する。
魔女となったアイナ先輩の世界観は、どこまでも優しく狂っていた。
全てが平等で、全てが無価値な世界が広がる最中、私は最愛の人形の名を呼ぶ。
「アリス」
現れた黄金によって、生まれたばかりの魔女は殺されグリーフシードへと変わる。
後には銀の魔女と黄金の姫騎士、そしてあどけない眠り姫だけが残った。
「さあ、最高のお人形を仕立てましょう。
私の恋人に、アリスの友達に、私達の家族にするために」
無邪気で残酷なお人形遊び。
そんな幼児性の発露だと笑うならば笑え。
それでも私は、私の欲望を追い求める。
一心不乱のハーレムを……なんてね。
「銀色は翠色に毒林檎を齧らせ、永遠の眠りに就かせます。
ああ、だけど目覚めのキスを与える白馬の王子様は現れない。
なぜならその唇は、銀色の魔女によって奪われてしまったのだから」
くすくすと。
邪悪を謳いながら、私は腕の中の眠り姫を黒球へと運んで行く。
夜空で星がまた一つ、闇に呑まれた。
残りの星はあと三つ。
おまけ:本日のティータイム
皆さん、とっても甘いココアは好きですか?
私は大好きです。
砂糖の他にも、蜂蜜なんか入れたりすると美味しいですよね。
ミルクはもちろんありありで。
そこに一つの絶望が加われば、なお最高です。
「アリスー、お代わりはまだー?」
大丈夫、まだまだ在庫はあるのだから。
贅沢に使いましょう。
銀の魔女のティータイムは、まだ始まったばかりなのだから。
(作者より)
話のストックは、もうそれほどありません(汗)
後二話ほどで連続投稿は終了です。その後は不定期更新になります。
ナイス外道と好意的(?)な応援、ありがとうございます。<(_ _)>