幕末の世に降り立った新星の如きランカー、現る!!

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幕末の新星

 

京極:ふーん。じゃあ団子屋に行けば唯一剣か針千本のどっちかには会えるわけね

 

サンラク:ああ、唯一剣と針千本は意識し合ってるからな。で、針千本がちゃんと戦うには現地調達の団子分の串がどうしても必要だから団子屋に来る。それを唯一剣は狙ってるわけだ

 

京極:分かった。いい情報ありがとね。お礼と言ってはなんだけどサンラク、最近出てきた新しいランカーのこと知ってる?

 

サンラク:新しいランカー?被下克上がやられたのか?

 

京極:いや、そこまででは無いけど戦闘力的には互角じゃないかな。まだ幕末をよくわかってないらしいけどPvPは強いらしいよ

 

サンラク:ほーん。二つ名はついてんのか?

 

京極:プレイスタイルが特徴的だからね。割と前から着いてるよ。確か二つ名は──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ログイン天誅!」

 

「残念天誅返しだ」

 

「その般若の面・・・!まさか祭はやぐべらぁ」

 

京ティメットから話を聞いた俺は久々の息抜きも兼ねて幕末にログインしていた。当然、ログイン天誅返しには成功している。

また何人かを引き連れてレイドボス戦をしてもいいのだが生憎今の俺の頭は別の事で一杯だ。

 

「槍をメインで使用するため殆ど動かず、STRを重点的に上げているため無傷で勝利か一撃死が殆ど。故に着いた二つ名が・・・・・」

 

 

 

傷無し

 

 

 

「くそっちょっとカッコイイのが腹立つ」

 

いや祭囃子もいいんだよ?なんかまさにゲームを楽しんでる、みたいな名前で嬉しいんだが・・・・・なんか負けないタイプのNPCについてそうな名前なんだよなぁ。

槍と言えば俺の知り合いの化けの皮カリスマモデルが浮かぶがあいつではないだろう。確かにあいつは槍を使うがそれは決して槍が得意とかではなくリーチを保って一方的に刺せるからというなんとも性格の悪い理由からだ。実際のところのPSは低くもないが高くもないと言った所だ。幕末にむくタイプではない。

 

「確か広い場所・・・・・広場とかにいるって言ってたな」

 

ちょっくら行ってみるか・・・・・っと

 

「お覚悟天誅ぅぅぅ!!」

 

「甘い!!天誅!!」

「残念、それは残像だ天誅!!」

 

「残像じゃなくて肉盾じゃねぇか天誅!!」

 

「かかれぇぇ!!」

 

「「「「天誅!!!」」」」

 

どこに潜んでたんだこんなに・・・・・まぁウォーミングアップにはちょうどいいかもな!!

 

「さぁこい・・・・・天誅!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

割と時間かかった・・・・・。最近はずっとシャンフロだったからスペックの差に慣れてなかったのが原因だな。だがこれで調整は出来た。一旦ログアウトしてエナドリを入れた俺に死角はない!!

 

「一番広い広場と言えばここだが・・・・・あいつか?」

 

一人、槍をたずさえた男アバターのプレイヤーがいる。格好からして新選組側か?向こうも俺に気付いたな。

普通の新選組隊服を紐で縛り、動きやすくしている。頭には白い鉢巻。特段変わった格好ではないな・・・・・いやシャンフロでの俺やここの狂犬・逆半裸がおかしいだけか。

 

「般若の面に二本のイベ限武器・・・・・君が祭囃子だね?」

 

「そう呼ばれてはいるな。あんたは傷無しか?」

 

会話をしてくるか。いや、確か京ティメットがまだ幕末に慣れていないとか言ってたな。となると俺の見立てでは幕末汚染度40%ってとこかな。

 

「ああ、見ればわかると思うけどPNはスピーランスだ。よろしくサンラク君」

 

「ああ」

 

さて、これはこれで珍しい状況だ。こんな状況、幕末ではレイドボスさん以外にないと思っていたが強い初心者なら起こり得るイベントだったのか。

 

「じゃ、やろうか」

 

前言撤回。こいつも幕末志士だわ。いきなり肩に乗せていた槍を振り下ろした傷無しに対して俺は斜め左に下がり、距離をとる。

 

「いくよ・・・・・!」

 

「望む所!!」

 

槍を右に構え、左足を踏み込んだ傷無しの腕がブレ(・・)る。

 

「ふッ・・・・・!!!」

 

「うぉぉぉ!?」

 

次の瞬間、勘を信じて両の刀で弾いて良かった。俺の胸へと吸い込まれた槍の穂先をギリギリで弾く。一息つく間もなく、連撃が襲いかかる。

 

「ハァァァァァァァァ!!」

 

「りゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

次々と突き出される突きを弾く、弾く、弾く。STR偏重というのは本当の様だ。一発一発が重く、鋭い。このままじゃジリ貧か・・・・・なら!

 

「近付く・・・・・まで!!」

 

「!!」

 

右の刀で槍を弾くと同時、身をかがめて走る。だがそう簡単にやられるようなら奴も新しいランカーなんて呼ばれていない。

 

「ぶっとべぇぇぇぇぇ!!」

 

即座に槍を横に振り払い、俺を押し飛ばす。直進していた俺は横からの衝撃にあえて乗って距離を・・・・・おい待て何故槍投げの構えをとる。

 

「っせいっ!!!」

 

「どわっはぁ!!」

 

なんて思い切りの良さだ。躊躇なくこっちに槍を投げやがった。回避して再び向き直る頃には既にその手には別の槍が。

 

「はっっ!!!」

 

「ほっっ!!!」

 

下から掬い上げるような突き。刀で弾きにくい軌道だが・・・・・!

 

「む!」

 

「おるぅぁぁぁ!!!」

 

下からの刺突を更に下から掬いあげる。二本の刀をクロスさせ槍を支えるように固定して接近。

 

「ぬん!!!」

 

「うぐぁ!?」

 

だが奴もランカーとして二つ名を持つもの。そう簡単にはやられない。上からの急な圧力に思わず足を止めて見ると槍を下に抑えつける傷無し。コイツ圧殺狙う気か!!

 

「お お お お お お お !!!」

 

「ぐぁぁぁぉぁぁぉぉぁぁ!!」

 

流石STR偏重のステータスしてるだけのことはある。圧力が半端ねぇ!!

 

「ふっ!!」

 

「ちぃ!!」

 

二本の刀を一直線にして右に槍を受け流す。下に落ちた槍を今度は上から抑え再び接近。

体ごと回転して刀を揃え、左から横に一閃!!

 

「お覚悟天誅ぅぅぅ!!!」

 

次の瞬間、傷無しが迎撃に選んだのは槍でも刀でもなく

 

 

 

 

両手を槍から離し、右足を前に深く踏み込み二本の刀の柄に向けて掌を押し付け、振り抜く。

 

「どすこい!!!」

 

「はぁ!?」

 

長身アバターの首を狙うため、若干跳んでいた俺の体は容易に吹っ飛び、

 

「天誅!!」

 

「うおお!自前転倒!!」

 

またも槍投げ。あえて足を絡めて転ぶ事で顔スレスレの所で槍を回避する。仰向けに倒れ込む勢いを利用し、バク転の容量で体勢をととの「天誅ぅ!」

 

「ぐっ!!」

 

右から振り抜かれた槍を刀を揃えて防ぐ。だが感じた手応えは弱く、見れば半ばからへし折れた槍。

 

「こっちが本命天誅!!」

 

破損し、ポリゴンになって消える槍の代わりにあらかじめ出していたらしい二本目が狙うのは俺の目。

 

だが俺もそう簡単にやられる訳にはいかんでなぁ!!

首を傾け刺突を躱し刀を槍に叩き付ける。半ばからへし折れた槍がまたもポリゴンになって消える。ここで決める!!

 

「天誅!!」

 

「させるかぁ!!」

 

槍が消え、空いた手で掴むは腰に帯びた刀の柄。まさか

 

「居合ぃ!?」

 

「刀を使わないとは言ってない!!」

 

下から俺の両刀を弾きケンカキック。上に弾かれた不安定な体勢では踏ん張りが効かず、距離を取られ・・・・・影。

 

「は?」

 

そこそこの距離を飛ばされた筈なのになんで槍の影が・・・・・まさか!

 

「イベント一位報酬・・・・・袋叩きで取れてよかったよ・・・・・天道切!!」

 

恐らくモデルは本多忠勝の蜻蛉切なんだろう。まるで金晶独蠍 皇金世代の最後の一撃を彷彿とさせるまさに天を割る一撃。最適手段は避けることだろう。だがそれじゃ面白くねぇ!!

 

「うわぁぁぁぁ!!!」

 

「いいねいいね素晴らしい!!」

 

一直線に、前へ。天道切の影を踏むように一直線に走る。前へ前へ前へ!!

 

間に合・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「楽しそう・・・・・混ぜてよ」

 

「「!?」」

 

少し離れた家屋の屋根から異様に長い刀を携えて飛んできた影に俺も傷無しも同時に刃の方向を変える。振り下ろされた天道切を斬星竿で弾いて着地したその人物・・・・・レイドボスことユラは俺たちに向けて刃を向けると獰猛に笑った。

 

「・・・・・組むか」

 

「・・・・・だね」

 

突発的レイド戦とか貪る大赤依かよって感じだがまぁいい。ここで一花咲かせてやろうぜぇ!!

 

「来る?」

 

「「天誅!!」」

 





最後どうなったかは考えるのが面倒なので書きませんが二人仲良く天誅されたかワラワラ集まってきてミツバチ天誅されたかどっちかでしょう。

槍は地味にちょっとだけ出てきていたので多分あるだろうという予想の元採用しました。


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