会話文とその前後の地の文の接続がとても下手なので、アドバイスなどをくださると大変うれしいです!
あ、もちろん感想もお待ちしています!
トレセン学園の昼、カフェテリアはいつも賑やかだ。
「……いつものことながら、全然席あいてないや。」
昼前最後の授業が終わるとおなかをペコペコにすかせたウマ娘たちが一目散にカフェテリアへ駆ける様子は、レースさながらである。
まあそれも仕方がない。
ほとんどのウマ娘が朝練に精を出し、一限目の授業が始まる前からお腹を空かせている。
そうでなくとも食欲に歯止めが利かぬこの年頃。
そんな2000人近くの子たちに、無料のビュッフェ形式で昼食を提供したらどうなるか。
そりゃ、満席になる。
とどのつまり、私が座ることができる席などないのだ。
「相席はちょっとなぁ……お?」
見ず知らずの人と相席は嫌だな……なんてことを考えていると、私の視界の端に見覚えのある栗色の影が波打った。
注視すると、やはりそれは最近よく一緒に練習をしてくれる先輩の耳だ。
随分と上機嫌にぴこぴこ揺れているものだから、離れていても目に留まる。
「……よし。」
先輩だし、少し緊張するけれど見ず知らずの人よりは断然いいや。
そう思い、私は揺れる栗色が目印の席へと向かった。
◇◇◇
「グラス先輩!こんにちは!!」
「あら~○○ちゃん。こんにちは♪」
やはり先輩は上機嫌らしい。
いつもより若干高い声色は、先輩の機嫌の良さを推し量るには十分だった。
お願いをするには絶好のチャンスじゃないか?
まあ、グラス先輩は優しいからそんなこと考えるだけ無駄かもしれないけど。
「実は空いてる席が全然見つからなくて……もしよかったら、先輩の正面の席を使ってもいいですか?」
「あら~そんな、遠慮なんてしないでください。楽しくおしゃべりでもしながら、一緒に食べましょう♪」
「ありがとうございますっ!」
先輩の了承を得て、二人掛けのテーブルの空いている方に腰を掛ける。
ひとまず、座れてよかった。
でも、なんで先輩は一人でご飯を食べてるんだろう?
「いただきます。…………そういえば、先輩が一人でご飯を食べているのは何か珍しいですね。他の先輩方は一緒じゃないんですか?」
「……ええ。今日は一人でご飯を食べる日と、そう決めていましたので~」
「あ、そうなんですか?」
「……ええ。」
ん?
何か歯切れが悪いぞ……?
それに、先輩のこの表情。
ニコニコとした笑顔を張り付けてはいるものの、何か裏がありそうな顔だ……
「……皆さんと何かあったんですか?」
「いえ~。心配してくださってありがとうございます。喧嘩などではないのでご安心ください。今日の放課後も一緒にトレーニングする予定ですから。」
「そうなんですね。あ、私もご一緒させてもらっていいですか?」
「もちろん。一緒に高みを目指しましょう♪」
「ありがとうございます!」
ふむ。
先輩同士、確執があったわけではない、と。
では、先輩のこの違和感はなんだ……?
そういえば。
「先輩、今日はお弁当なんですね。」
「……ええ。最近、少しはまっていまして~」
「自作ですか?すごくおいしそうです!」
「ふふ。うまみに自信あり、ですよ~」
そう言うと先輩は、にこりと笑って素早く卵焼きをつまんで見せた。
……まるで、何かを隠すように。
……なるほど、何となく掴めてきたぞ。
「……先輩。その卵焼き、随分かわいく並べられていたんですね。」
観察力を高めるトレーニングを行っていた私に隙はない。
何でも、「ホークアイ」という技能らしい。エル先輩に教えてもらったのだ。
「……卵焼き、ですか?」
先輩は、”何のことかわからない”といった具合にとぼける。
「ええ。卵焼きです。ハートの形に並べられていましたよね?」
「あら~よく見ていますね~」
「自分が食べるお弁当、わざわざそんなことをするんですか?」
「あら。お弁当とは、味や栄養だけでなく、彩や見た目も重要なんですよ。それに、”わざわざ”とはいっても卵焼きを切って並べるだけです。大した手間でもないですし、それくらい別に変なことではないでしょう?」
「……」
「あ、次はこれを頂きましょう♪」
先輩は少し勝ち誇ったような、そしてどこか安心したような顔で椎茸をつまむ。
飾り切りが施されたそれはつまむだけで出汁が溢れ、見るからにおいしそうだ。
「うふふ。……あ、この煮物、とってもおいしいです~♪」
……確かに。
確かに、そこまで変なことではないのかもしれない。
でも。
「……先輩、今の発言、少し変じゃないですか?」
「……変、ですか?」
「ええ。その煮物、本当においしそうですし、実際においしいのでしょう。でも、自分が作ったものにわざわざ”おいしい”って言いますか?」
「……まあ、わざわざ言うのは少し変かもしれないですけど。そんなにおかしいことでしょうか?」
「いえ。なんというかまるで、”誰かが作ってくれたものを食べている”ような反応をするな~と思いまして。」
「……」
お。
さっきまでご機嫌に揺れていた耳がぴんと立った。
この反応は。
「それに、その緑のギザギザ……これも、わざわざ自分で入れます?」
「……」
あ、耳がくるくる動いてる。
これはウマ娘が何か考え事をしているときの癖だ。
「この緑のやつ、なんだか芝みたいですねぇ~…………そういえば、先輩の名前の”グラス”って、どういう意味でしたっけ?」
「……」
「先輩~?」
「……これは。」
「………この緑のギザギザは、”バラン”と言います。お弁当の仕切りとかに使われます。ユリ科の植物の”葉蘭”が由来なので、芝とは関係がありません。……芝とは、関係がありません。……ないんです。」
先輩はそう、早口で一気に説明した。
ふーん?
「なるほど。バランっていうんですね。一つ賢くなりました。」
「バランっていうんです。」
「ところで先輩。話を戻しますけど、そのお弁当自作ですか?」
「……」
「先輩。」
「…………」
「せんぱーい。」
「………………うまみに自信あり、なんです。」
先輩はしおしおと言った。
グラスワンダー先輩。
この人の感情は存外、態度に出る。
「はぐらかすつもりですか……?」
「……嘘なんてついてないんです~はぐらかしてもいないんです~」
「なるほど。では……」
「?」
「その自信作、味見させていただけますか?」
「!?」
「先輩の自信作、私も味見してみたいな~~?」
「…………だ、」
「だ?」
「だ、だめでなんです!これはトレー……」
「トレ?」
「トレー……とれ、と、とれにくい?素材?を使ってるので、とにかくだめなんです!」
「へぇ~取れにくい素材、ですか。でも、先輩以前に”とっても珍しい茶葉を頂きまして~。一緒にお茶でもどうですか?”って誘ってくれましたよね?」
「え、ええ。」
「そんな優しい先輩が”自分で作った”お弁当を味見させてくれないのは何か変ですよね~?」
「そ、それは……」
「もちろんタダとは言いませんよ。この人参ハンバーグと交換でどうです?」
「うぅ~……交換でも、だめなものはだめなんです!」
「ははは。よいではないですか~よいではないですか~」
こんなに感情を露にする……もとい、年相応に可愛らしい先輩は見たことがない。
そんな先輩とじゃれ合っていると、少し顔を赤らめた先輩は弁当箱をひょいと持ち上げ、自分の方に抱き寄せた。
「だめなんです~」
「ははは。冗談ですよ、先輩。慌ててる先輩なんてなかなか見れないから、少しからかっちゃいました。……ん?」
おや。
先輩が持ち上げた弁当箱の下から、何やら一枚の紙が。
どうやら弁当箱とつつみの間に忍ばせられていたみたいで、先輩は気づいていない。
「これは?」
「え……?あ、そ、それは!!!」
「?何か書いてますよ。」
「あ!?だ、だめです!!」
「どれどれ……”グラス、授業お疲れさま!午後のトレーニングのためにもしっかり食べてね! PS 今日の煮物はうまみに自信あり、です”…………ほほぅ。これはこれは~」
まあ、大方予想はついてましたけどね。
先輩は……
おお。顔は真っ赤、口をぱくぱくさせている。
やっぱり、先輩は結構分かりやすい。
「先輩、流石ですね~。愛妻弁当ならぬ、……なんて呼べばいいんですかね?愛トレーナー弁当?」
「……ち、ちがいますもん。」
「え?この期に及んでしらばっくれます?」
「ちがいますもん。エルがつくってくれたんですもん……」
「流石に無理があると思いますよ。」
「ほんとですもん。」
実は、グラス先輩は結構頑固だ。
そして、先輩のトレーナーさんと同様に、どこか抜けたところもある。
「……まあ、実はこんなことしなくても知ってたんですけどね。」
「え?」
「カフェテリアに来る前、先輩のトレーナーさんに会ったんです。トレーナーさん言ってましたよ。”今日は僕がグラスのお弁当を作ったんだ~”って。」
「う、うそです!だって、お弁当のことは秘密にしてくれるって……!」
「はい、嘘です。」
「え?」
「嘘でした。ごめんなさい。」
「……」
だから、こういう単純な罠にも結構引っかかったりする。
……レースだとこうはいかないんだけど……
「……私を嵌めたんですね……」
ぷるぷると震えながら、先輩はこちらをにらむ。
だけど、こんな幼気な小動物みたいにかわいい人に睨まれても、ちっとも怖くない。
「嵌めただなんてそんな……先輩が言ってくれたように、”楽しくおしゃべり”してただけですよ~。……それでそれで、トレーナーさんにお弁当作ってもらってるんですか?くぅ~!うらやましいです!!」
「……違います」
「いやいや、今しがた自白したじゃないですか……」
先輩は赤い顔を取り繕おうともせず、お弁当を置く。
そして、何事もなかったかのように食事を再開した。
真っ赤な顔のまま。
「さすがに無理ありますって先輩。もう諦めていろいろお話してくださいよ~誰にも言いませんから!」
「違います。証拠とか、ないですもん。……それに、証拠が自白だけだったら無罪です。」
「なるほどそう来ますか。」
流石黄金世代の大和撫子筆頭。
一筋縄ではいかないらしい……
ですが、既にこのレースは私が支配したも同然……!!
「セイちゃん先輩。」
「?」
「あ~なんか、急にセイちゃん先輩とおしゃべりがしたくなってました~」
「なっ!」
「今日のトレーニングの休憩中とかにおしゃべりしたいな~」
「……私を脅しますか……」
「いえいえいえ!まさか!!とんでもない!!!ただ、セイちゃん先輩と楽しくおしゃべりしたいな~って。」
「……」
「セイちゃん先輩、からかうの上手ですよね~。」
「……」
「それに、人の色ごとにはめっぽうつよつよですよね~」
「……」
「せんぱい~。楽しくおしゃべり、しませんか?」
「……」
「先輩?」
?
急に先輩が黙ってしまった。
これはセイちゃん先輩直伝のつよつよからかいが効きすぎてしまったか?
初 勝 利
でも、こんな初勝利はちょっと嫌かも……?
「せんぱ……ヒェッ」
私は見た。
栗色の長い髪に隠された先輩の顔を。
というより、うんともすんとも言わない先輩を訝しんで自分から覗き込んだわけだが。
「あ……私、用事があったかもです~。ご、ごちそうさ「○○ちゃん~」
席を立とうとした私の手を、先輩の小さくて少しひんやりした手が包む。
柔らかい手だ。
”優しさ”という概念を形にするとしたら、この手の感触がそれに該当するだろう。
それくらい優しく、先輩は私の手を握った。
「あ、あははは、グラス先輩。ど、どうしたんですか?」
「まだまだがお料理が残っていますよ~。ほら、おいしそうな人参ハンバーグがこんなに残っています~」
「あ、で、でももうお腹いっぱいかな~なんて。あはは……」
「うふふ。」
「あ、あははは……」
「うふふ。」
「あははは……では、私はこれで……」
「座ってください~」
「あ、でも用事があったかも……」
「座って、ください~」
「あ、はい。」
だ、だめだ。
先輩の目が据わっている……
「”楽しくおしゃべり”しながら、一緒に食べましょう?」
そういえば、セイちゃん先輩が言ってたっけなぁ……
「グラスちゃんを怒らせてはいけない。」
「え?セイちゃん先輩、急にどうしたんですか?」
「…もう一度言うよ?グラスちゃんを怒らせては、いけない。」
「どうしたんですか急に~?セイちゃん先輩らしくないですよ~それに、グラス先輩とっても優しいじゃないですか。怒ってるとことなんて見たことないです。」
「……」
「○○ちゃ~ん?」
「……はい。」
「私と一緒にお昼ご飯、食べてくれますか?」
「ハイヨロコンデ!!」
そう返すと、先輩は今日一番の笑顔を私に見せてくれた。
◇◇◇
「あ、先輩!お疲れ様です!」
「あ。お疲れ様~」
「先輩もお昼ですか?」
「うん。ちょうどね。」
「良ければご一緒しても?」
「もちろんいいよ!トレーニングの話でもしながら食べよう。」
「ありがとうございます!……そういえば先輩、いつもお弁当なんですね。」
「ん?まあね。」
「自分で作ってるんですか?」
「えーとね、作ってるけど、これは自分で作ったやつではないよ。」
「というと?」
「これはグラスが作ってくれたやつ。そして、グラスが食べてるのが僕の作ったやつ。」
「おおーお弁当交換ですか!なんかいいですねそういうの!担当と良好な関係を築けてるって感じで!!流石先輩です!!」
「はは。褒めてもグラスが作ってくれた弁当はあげないよ~」
「さすがにもらえませんよ。……?……先輩、この緑のやつは?」
「ああ、バランのこと?」
「それです。わざわざ入れます?売ってるお弁当にしか入っていないイメージですけど。」
「それはそうかもね~でも、”バランって、なんだか芝みたいですよね♪……トレーナーさんが寂しくないように入れておきました♪”って言われちゃったら、ねぇ。」
「芝……?……grass?……あっ……」
「どうかした?」
「いや、なんだかお腹いっぱいで……ごちそうさまです。」
「ウマ娘もトレーナーも、体が資本だよ~」