史上最悪を継承する者   作:YJSN

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お久しぶりです。
一話だけ、短いですが更新させて頂きます。

また映画版を見直しながらも、少しずつ続けていきたいと思います。





消えた記憶

 

ハリーがぐっすり眠る医務室の前で、私は隣にいる気に食わない旧友(アルバス)と彼の目覚めを待っていた。

 

マダム・ポンフリーにはアルバス直々に席を外すよう求めたため、今医務室にいるのは私達とハリーだけである。

 

「・・・ねぇ、アルバス。本当に私が来る必要はあったのかしら?」

 

私が溜め息混じりに愚痴を漏らせば、彼はさも当然のように頷き、こう返してきた。

 

「お主はハリーを守るはずじゃったろう?

にも関わらず、じゃ。

少しばかり危険な目に合わせ、トムを逃した責任も併せて、ハリーにお見舞いに来ることくらい、訳もなかろうとて。」

 

ぐぬぬ…それは完璧なまでの正論だが、この狸爺は単に私を責め立てにきてるだけのようにも思える。

 

・・・無論、ハリーの記憶のことが本来の目的であることは、互いに承知済みなのだが。

 

「分かってるわよ・・・その件についてはよく反省してるって、この前も言ったばかりでしょう?」

 

「それにしては、お主の態度は些か冷たいままじゃのうて。」

 

確かに、私は自分の憎しみを抑え切れず、挙句の果てに闇の帝王(ウジ虫)を逃してしまったという負目を背負っている。

 

にしても、もう2日程同じことを会うたびに繰り返されては溜まったものではない。

 

おかげでダンブルドアを回避する技術がこの2日で飛躍的に伸びてしまった。

 

教員塔を出る直前にパルス(探知魔法)を放ち、膨大な魔力反応を示す狸爺と出会わない通路をひたすらに開拓していく日々である。

 

無駄なことこの上ない。

 

とはいえ、改めてハリーの記憶の整合性を確認しておきたかったことは事実だし、もし私の家名(グリンデルバルド)がまだ記憶に残っていたならば再度オブリビエイト(忘却呪文)しなければならない。

 

以上のような事態を想定すれば、ダンブルドアの小言にも理解はできよう。

 

つまるところ、「お前のせいでハリーの記憶整理という面倒ごとが増えたのじゃ。」と暗に非難してきているのだ。

 

ハッキリ言えば良いのに・・・妙に遠回しなのが気に障ってしまう。

 

「・・・おや、もうお目覚めのようじゃ。」

 

アルバスもハリーの頭の中を整理することに対しては多少良心が痛むのであろうか。

 

若干ぎこちない動きで、今し方起き上がったハリーに向かって医務室に入っていく。

 

私はその様子を見て再度深い溜息をつきながらも、一緒について行く。

 

「おはよう、ハリー。よく眠れたかしら?」

 

「あ・・・フォートシュリット先生…それにダンブルドア先生も!」

 

彼は私達がお見舞いに来てくれたことへの驚きと嬉しさが入り混じったような表情で、私達の方を見上げる。

 

「・・・おや、蛙チョコを早まって開けてしもうた者(ロナルド・ウィーズリー)がおるようじゃの。」

 

アルバスはハリーのベッドに備え付けられた机上にドッサリと山盛りにして置かれたお見舞い用のお菓子類を指差した。

 

そして、コッソリ食べられた跡のある蛙チョコの箱を手に取る。

 

それにはハリーも笑ってしまったようで、私でさえも少し苦笑いを隠せなかった。

 

(ウィーズリー家は確か多子家庭だったか…聖28一族に並んでいるのにも関わらず貧乏なところが玉に瑕だ。

あのロナルドにもみっちり貧乏性が染み付いているのか?…それとも、単に食いしん坊なだけか。)

 

「・・・あ、先生!」

 

そこでふと、ハリーが咄嗟に焦った口調で()()()のことを質問攻めに聞いてくる。

 

寝起きで寝ぼけていた頭が漸くフルスロットルで回転し始めたようだった。

 

「ロンは・・・ハーマイオニーはどうなったんですか!?」

 

「大丈夫、無事じゃよ。」

 

「でも、賢者の石が!クィレルの奴に取られたんじゃ・・・でも記憶が全然曖昧で・・・。

ッ、そうだ!フォートシュリット先生が!!」

 

「早まるでない、ハリーよ。落ち着くのじゃ。」

 

彼の慌てぶりは、事後直後であることもさながら、記憶が弄られてしまい、思い出すのが曖昧になってしまっていることも余計に拍車を掛けていると見える。

 

それに対して全てを包み込むようにして、目の前の狡猾な狸爺はハリーにひとつずつ答えていく。

 

…人の頭の中を弄っておいて、よくこんな顔を平然と見せれるなと、この男の底知れぬ狡猾さに辟易とする。

 

とはいえ、そういう私もその原因(錯乱・拷問の記憶)を作ってしまったのだから、口を挟んで少しでも傷付いた彼への贖罪となす。

 

「ハリー、落ち着いて聞いて。まず賢者の石の件からだけど、無事に取り戻したわ。

それと結論から言えばだけど・・・、私達3人(アルバス・グリンデルバルド・フラメル)で協議した結果、石は破壊することに決定されたわ。」

 

「えっ・・・でもそれじゃ、フラメルさんが死んじゃ」

 

「それには及ばんよ、ハリー。」

 

そこで、横で聞いていたアルバスが手でハリーの言わんとすることを制して、諭すように伝える。

 

「なに、ニコラスも身辺整理をするくらいの時間の分は、生命の水の蓄えをしておる。

 

それに・・・永遠に生き続けることは、意外にも苦しいものなのじゃ、ハリー。

 

彼の物語にも、そろそろピリオドを打ってあげるのが、わしに出来る彼への些細な恩返しとも取れるじゃろうて。」

 

何か感慨深さを含めながらハリーに語るアルバスは、長年の師であり友でもあったニコラスとの人生を振り返っているようであった。

 

思えば、私も彼が死ぬことに対して何も感じないわけではない。

 

先の大戦(世界魔法大戦)においては、奴はダンブルドア陣営として、あの忌々しい魔法動物学者(ニュート・スキャマンダー)と共に我が父上(グリンデルバルド)に深い痛手を負わせてきた、長年の宿敵でもあった。

 

並外れた錬金術師として、フランス魔法省包囲戦では父上の軍団を悉く返り討ちにしてきた記憶が蘇ってくる。

 

いざ一昨日の会談で出会った時、互いに初めての自己紹介をしたが、初対面だと言うのに、彼は私のことを知っていたかのように振る舞っていた。

 

フランス自由記者団が報じる、連日の私達の組織(神聖同盟)の活動が、昔の父上(ゲラート)に似ていたのだとか。

 

その上、「お父さん(ゲラート)元気にしておる(監獄の中)かい?」などと挑発してきた、未だに中々の気概あるご老人だった。

 

私は少しだけ感じた懐かしい腹立たしさをひとまず横にしまっておいて、ハリーにある一点だけを質問する。

 

「・・・そういえばハリー、貴方、怪我はない?あの時、私が()()()()()()()()のは…その、私の責任(ミス)だから。」

 

その言葉に、アルバスもピンと耳を澄ましてハリーの応答を待っている。

 

ここでハリーが「あ、フォートシュリット先生って史上最悪の魔法使い(グリンデルバルド)だったんですね。」なんて言い出し始めたら、厄介なことになる。

 

アルバスもそれを分かってか、懐のニワトコの杖に手を触れており、いつでも記憶を治す(すり変える)用意が出来ているようだった。

 

しかし、その身構えとは裏腹に、ハリーは至って淡々とダンブルドアからの()()()()を話し始めた。

 

「えっと…うん、僕は大丈夫です、先生。

 

 

クィレルが僕を殺そうとした時、先生がやっつけてくれて(殺してくれて)

 

 

それから例のあの人(闇の帝王)の…幽霊?みたいなのが、僕を突き抜けていって・・・。

 

 

ごめんなさい、そこからは記憶が曖昧で…フォートシュリット先生が僕を医務室まで運んでくれたんですよね?」

 

(うっわ…相当記憶の筋道をいじくり回してんじゃん…しかも綺麗に拷問の所だけ切り抜いてやがる。

この狸爺、どんだけクリーンな(グリンデルバルド)にしたいんだ…。)

 

家名(グリンデルバルド)の発言や闇の魔術はまだしも、尋問(拷問)の箇所は残して欲しかったと、残念に思う。

 

あの思想的決別は、ハリーの信頼を勝ち取るだけでなく、ハリーに真の理想郷(魔法族の為の魔法界)を語り聞かせるチャンスでもあったというのに。

 

ちなみに、錯乱中でも思考は吹っ飛ぶが記憶には残る。

 

錯乱の呪文は対象が論理的推論に矛盾を来すように仕向けるのであって、知覚や記憶を奪うものではないからだ。

 

つまり思い出そうと思えば、ハリーは私がどんなことを言ったか思い出せるのだ。

 

「え、えぇ、そうよ・・・。」

 

さて、予想以上に彼の記憶が書き換えられていたことに、驚きと後ろめたさの相重なった苦笑いで私は肯定を返すしかなかった。

 

あの狸爺に記憶操作を一任したのが不味かった。

 

とはいえ、あの場で断って自分がハリーの記憶改造をやり始めたら、失神の呪文(ステューピファイ)が高速で飛んできそうだったため、それも無理であった。

 

件の狸爺(ダンブルドア)は、さも素知らぬ顔で杖から手を離し、「おぉそうかそうか、フォートシュリット助教授は優しいお方じゃのう。」などと抜かしておる。

 

この分だと私がハリーに向けて指導してきた思想教育(より大いなる善)さえも抜き取られてしまっていることだろう。

 

おのれ鬼畜狸爺・・・許さんぞ、この仕打ち。

 

歯軋りを必死に抑えるあまり、変な顔になってしまっていそうな私にニッコニコの笑顔を返してくる狡猾狸爺(ダンブルドア)は、用が済んだとばかりに席を立ち、立ち去ろうとする。

 

ジト目で私が睨みを利かせていると、ハリーの机上のお菓子のある一品に目が止まったようだった。

 

「おぉ、そうじゃった、そうじゃった。

バーティーボッツの百味ビーンズを試すのを忘れておったわい。」

 

狸爺は、縦長の箱に入ったお菓子を手に取り、一粒取り出して食べてみる。

 

・・・いやそれハリーのだろ、という突っ込みは胸に仕舞い込んでおくものの、もうひとつの懸念事項は思わず口に出してしまった。

 

「・・・アンタ、昔ゲロ味に当たって以来毛嫌いしてたんじゃなかったかしら?やめときなさいよ。」

 

私が呆れ顔で(ゲラート)の会話の記憶から彼に忠告するが、聞く耳持たずだった。

 

そして、結果は予想通り。

 

「・・・なんと!耳糞味じゃ!」

 

苦々しい渋顔のボケた老人は、再度ハリーの方に向き直り、ウィンクをした後、私にもウィンクをしてから、まるで悪戯っ子のようにサッと医務室を出て行った。

 

どうやら、少しだけ2人にしてくれるようだった。

 

多分、私がハリー(闇の帝王)守り切れなかった(殺し切れなかった)ことへの反省と謝罪を彼にもう一度言っておけ、という意味合いだろう。

 

あとは、思い出せない曖昧な記憶の部分を私が都合良く穴埋めでもしておくことを任されているのだ。

 

とはいえ、この機会を逃すはずもなく、ハリーに再度向き直ってから、今度は打って変わって真剣な眼差しで話しかける。

 

「ハリー・・・取り敢えずはご帰還、おめでとう。

あの悪ガキ3人組が、見事クィレルを討ち取るなんて考えもしなかったよ。」

 

その様子に、ハリーも少し度肝を抜かれたような表情だった。

 

「あ、ありがとうございます、フォートシュリット先生。

・・・それに、先生こそ、()()()()()を打ち出してクィレルに立ち向かっていたじゃないですか。

クィレルの奴、一瞬で倒れ伏していて、先生すごくカッコよかったです!」

 

(…ヴェンタス・マキシマ(吹き飛べ)のことか?アイツ(ダンブルドア)がどんな記憶に入れ替えたのか、サッパリだが…。)

 

「そう・・・ねぇハリー、私が言ったこと、覚えてる?」

 

私は真剣な眼差しで再度、彼に語りかける。

 

打って変わって、この前私が講義でも述べた闇の魔術の使い道について、彼が覚えているかの確認をしたかった。

 

すると、ハリーは「え?」という発言と共に、必死に私が述べた発言を色々と思い返そうとしていたが…。

 

「えっと…ごめんなさい、何のことか心当たりがなくって。」

 

キョトンとした純粋な顔で、私の質問に返してきたところで、私も「はぁ…。」と溜息を漏らした。

 

ハリーが「先生…?」と疑問符を浮かべているところで、私も二度目となる、あの言葉を彼に投げかける。

 

「・・・いい、ハリー?あなたは将来、英国史上最高に偉大な魔法使い(ヴォルデモート殺し)になるのよ。

 

その時、いずれ()()を迫られることになるわ。

 

愛する者(大いなる善)のために、己の憎しみを糧に、禁じられた呪文(大いなる悪)を使うべき時が…。

 

でも、それは決して間違い()ではないわ。」

 

ハリーはこの言葉を聞いて、表情をキョトンとさせている。

 

何せ、いきなり闇の魔術について語り出したのだ。無理もない。

 

その訳を釈明するために、彼に努めて真剣に、優しく語りかける。

 

「私がこの話をするのは…正直に言えば、私がクィレルに使った魔法の中に()()()()が含まれていた、っていうのが理由かしら。

 

それも、貴方(帝王)守る(殺す)ために、ね…。

 

だから、闇雲に私が闇の魔法使い()であるとは評して欲しくないわ。

 

…最も、貴方がこの事実を覚えてるかどうかは、微妙だけれどね。」

 

フッと含み笑いをしてやれば、ハリーは自分を守ってもらうためとは言え、教師が闇の魔術を使ったということには衝撃的だったようだ。

 

口を大きく開いて、ものすごく驚いた顔をしている上に、何か言いたげだった。

 

凡そ、「先生は闇の魔法使いってことですか!?」という質問だろう。

 

或いは、私の経歴来歴だとか、どこでそんな魔法を覚えたのか、どんな闇の魔術を使ったのか、こんなことを根掘り葉掘り聞きたいのだろうさ。

 

だが、私は彼が言葉を発する前に、次の言葉を発する。

 

そんな技術的な話は今大切ではないから。

 

むしろ、根っこの部分(使い方)が、この魔法を使う上では何よりも大事であるから。

 

「私がこの7年間、あなたに助教授として教えてあげられる()()()()や防衛術は、使い方次第ではあなたの愛する者(憎む者)守ってくれる(殺してくれる)の。

 

だから・・・決して、見た目に囚われず、本質を見抜くのよ、ハリー。

 

全て(善悪)貴方(使い方)次第…。」

 

ハリーは言われていることの内容が完全には把握できていないようで、目をぱちぱちとさせて「は、はい……?」と頷きながらも、訝しんでいる様子であった。

 

「使い方…」

 

ハリーはポツリと、その言葉を口にした。

 

「えぇ、そうよハリー…貴方はその力を()()()()()使う?

それこそ、私とヴォルデモート(ウジ虫)との最大の違いなのよ…。」

 

彼は私の言葉を反芻し、考え込んでいる様子だった。

 

闇の魔術に対する防衛術の授業でも、経験ゼロにしてはかなりの成績を取っていたし、闇の魔術への理解や洞察に関しては、彼は元々適性があったのだろう。

 

さすが、組み分け帽子がスリザリンと迷うだけのことはある。

 

それに、今は完璧に分からずとも、闇の魔術について深く学んでいく4年生〜5年生には、そして数々の試練に立ち向かっていく中では、いずれ分かってくることだろう。

 

そして決断するのだ。善のために悪を敷くかを…。

 

磔の呪文(クルシオ)や、死の呪文(アバダ・ケダブラ)が、使い方ひとつで如何に人を救う魔法となるかを。

 

ダンブルドアに消し去られた私の()を、今一度彼の頭に吹き込んでから、私も医務室を出ていくのであった。

 

 

 

その後ろ姿を見つめる少年の眼には、黒い()()()が映っていた。

 

 

 

 

 

 

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