史上最悪を継承する者   作:YJSN

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For the Greater Good

私は長い銀髪を靡かせながら、姿現しをしてとある喧騒なマグルの街へと現れる。

 

今は深夜3時。

 

マグルでさえ寝込んでいるこの闇夜をトボトボと歩きながら、これまたとある壁の前で停止する。

 

この何の変哲もないレンガ壁の両隣には、

洋服店と人形屋さんがあり、何とも肩身の狭い想いが募る場所だった。

 

「確かここだったっけかな?」

 

私は壁に向けて、歩き出す。

 

すると、スルスル…と、壁の中に身体がめり込んでいく。

 

「…やっぱり気持ち悪いな、この感覚。」

 

ロンドンにあるキングスクロス駅にも同じ様な仕掛けがあったが、こちらのは幾分と厳重だ。

 

認識阻害の呪文と不可知化の呪文、それからマグル除けの呪文に魔力感知妨害呪文を数十回も交差させてかけてあるため、入り込む時の認識の歪みが正される感覚が気持ち悪いのだった。

 

とは言え、最近余計に厳しくなったフランス魔法省の監視の目を掻い潜るにはこれほどしなければならないのも事実だ。

 

少し顔を不快感に歪めて壁に呑み込まれた先の景色は、

先ほどいたマグルの寂れた街並みとは一風変わった場所だった。

 

「お帰りなさいませ、お嬢様。」

 

そこに丁度タイミング良く、少し老いた声で出迎えてくれたのは、今しがた姿現しをしてきた屋敷しもべ妖精のベルムだった。

 

この拡大魔法がかけられた、どこまでも続いてそうな空を表す天井から日の光が差し込む空間こそ、私の自宅だ。

 

周囲は草原であり、小さな湖に釣り場、小川だってある、

幻想的な風景を醸し出している。

 

そんな中、この場所の中央に聳え立つ城のような城塞があった。

 

ミニ・ヌルメンガード城と本人は名付けているが、部下達からはパリ本部或いは司令部としか呼ばれていない。

 

確かに、ヌルメンガード城程の防御魔法や妨害魔法は張り巡らせていないが、侵入者に対しては一定の対応力を持つんだぞと、内心反抗してしまったのは内緒である。

 

ちなみにそれは本当で、天井の空は許可されてない者が侵入した際に雷雨を浴びせて無力化するよう仕掛けてあるし、城内には侵入者を退散させる用のポートキーが大量に降ってくるトラップなども用意されている。

 

私は久々の帰宅に際して少し気分が良くなったのか、

ベルムに対していつものヤツを頼んだ。

 

「ただいま、ベルム。早速で悪いんだけど、紅茶と洋菓子をお願いできるかな?」

 

「かしこまりました、お嬢様。執務室でお待ちください。」

 

彼はいつも通り、恭しくお辞儀をして了承の旨を伝えた後に、再び姿眩ましをして厨房へと向かった。

 

彼の姿眩ましの行き先がわかった理由の一つに、この前父上の所に行った時にも見た魔法線の読み取りがある。

 

姿くらましを構成する魔法線の糸が、一瞬ではあったものの厨房へと真っ直ぐに伸びていたのが見えたのだ。

 

彼が姿を消した後、元気一杯に背伸びをしながら私自身も姿現しをして、城の最上階に位置する、自室兼執務室に移動する。

 

ちなみに姿現しはこの城の中でも姿現し妨害呪文により行うことができないが、例の如く私はその対象から除外されている。

 

これはかのホグワーツのものと似ており、私はヤツ(ダンブルドア)のそれを校長特権と呼んでいる。

 

真っ黒のコートと帽子を立てかけて、柔らかいクッション魔法がかけられた執務机の椅子に座り込む。

 

すると、ちょうどベルムが準備が整ったのか、トレーに紅茶とフランス菓子を洒落たお皿に乗せて運んできた。

 

「どうぞ、お嬢様。」

 

「今日は…マドレーヌか。いつもありがとう。」

 

コトン、と私の執務机の上に置いた彼は、腰を深く曲げて私の礼に対して反応する。

 

「いえいえ、この程度の事、お嬢様にお仕えするベルムめにとっては当たり前のことでございます。」

 

その揺るぎない忠誠心が我が家の支えになってくれている事を、再度実感させてくれるような温もりのある言葉だった。

 

それを見た私は笑顔で微笑みかけ、彼を退室させる。

 

そして紅茶をズズズ、と啜りながら目の前にある膨大な書類を見て頭を痛める。

 

「あー、帰ったと思ったらこれだよ…。私はいつになったら魔法大臣ごっこから解放されるんだか。」

 

新しく入った組織の魔法使い・魔女達の経歴書を見ながら、魔法で動かした羽ペンでサインをつけるこの作業は少し苦であった。

 

こういう時だけは、最近マグルの間で流行りの機械仕掛けのタイプライターが欲しくなる。

 

あれは自動で何百枚もの書類仕事をヘンテコな箱の中に納めて行うことができる優れ物だと聞く。

 

勿論、愚鈍で愚かな選択ばかりをするマグルの道具を使うのは気が引けるが。

 

「…でも、一年後には部下に丸投げできるしいっか。」

 

一年後の楽し放題な生活を夢見る私は、焦茶色に焼けた美味しそうなフランス菓子を口へ放り込み、書類と睨めっこしながら思案するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1991年 4月。

 

着々とイギリス渡航のために準備を進めた私は、自室に部下を数名呼び出していた。

 

私からのフクロウ便を受け取った彼らはすぐに各自違法ポートキーやら姿現しやらで、この城の前に現れてくれた。

 

ちなみにこの場所はフランス共和国パリ街の一角にある、商店街の壁中に存在する。

 

忠誠の術をかけ、私と、私がこの場所を知らせた幹部達以外は入ることは愚か、見ることも近づく事もできない。

 

執務机に置いてある水晶玉を通してみれば、壁前の道路を歩くマグルの通行人はこの壁の事なども欠片も見ずにスタスタと歩き去っている。

 

わざわざこんな場所を選んだのは、廃れた街や廃工場に拠を構えるよりかは、こういった敢えて人通りの多い場所の方が魔法省の連中も勘づかないだろうとの考えからだ。

 

事実、この場所は露見したことが一度もない。

 

その事実を前に、私は口角を少しばかり不気味に歪めながら目の前の数人の部下達を見やる。

 

「お呼びでしょうか、グリンデルバルド嬢。」

 

その中の一人、中ぐらいの背丈の顔に傷を負った男の魔法使いが話しかけてくる。

 

「えぇ、そうね…まず、これまでの活動報告を聞きたいわ。

まずは貴方から、マドリード支部カルカ卿。」

 

私は彼の隣にいた黒髪のシルクハットを被った魔法使いに尋ねる。

 

「はっ、スペイン魔法省は我々の動きを少なからず感知している様ですが、依然こちら側の人員や詳細な情報は漏れておらず、目立った動きはありません。

 

連中による我々の活動の取り締まりに関しても、他国よりも寛容な所があり、このままいけばドイツ魔法省と同様に、抱き抱えられるかと思われます。」

 

ふむ…スペイン魔法省ももう少しで陥落させられそうか。

 

「よくやった。

そのままスペイン各地で我が紋章を広めよ。

我々の存在を暗に示し続けるのだ。」

 

その報告に満足した私は笑顔で彼を称賛し、その後の活動を指示した後、その他の支部幹部達の話も順に聞いていく。

 

 

 

 

 

 

 

一通り各国に潜伏している支部幹部達から報告を受けた私は、再度口を開く。

 

「各自、よくやってくれている…だが、まだ表舞台に立つ時ではない事くらいわかるな?」

 

私がだだっ広い執務室で忠告を行うと、彼らもそこは承知している様であり、次のように述べた。

 

「もちろんです、グリンデルバルド嬢…。

かつてかのダンブルドアによって壊滅させられた我々は、

未だ表立って戦う力を持ちません。

まだ事を起こすには早すぎると誰もが承知しております。」

 

顔に傷を負ったベルリン支部幹部が丁寧に答えてくれる。

 

私達は半世紀もの間、我が父上の組織を再建するため、

再び『より大いなる善』を掲げて秘密結社を立ち上げた。

 

国際魔法機密保持法の撤廃、並びに愚かなマグルの統制・支配を目論む私達は父上が投獄された後も、ヨーロッパを中心に活動を続けてきた。

 

だが、それでもアルバス率いる各国魔法省によって撲滅された組織の立て直しは困難を極めた。

 

かつての同志達は散り散りになり、

ある者は落ちぶれ、ある者は牢獄で一生を過ごした。

 

その結果、我々のことを覚えているのは僅かばかりとなり、ほとんどの若き魔法使い達は我々のことを忘れてしまったのだ。

 

故に、ドイツ支部ベルリンにスペイン支部マドリード、ここフランス本部パリなど主要な魔法省の懐に拠点を構えるのも苦労したものだ。

 

それもようやく形となってきて、私達は今着々と再び起きるであろう次の大戦の準備を進めてきた。

 

そこまで回想したところで、私はふと意識を巻き戻して目の前の事に思考を向ける。

 

「よろしい…では、皆に伝えておくべきことがある。

…唐突で悪いのだけれど、今年の九月から私は英国に渡る。」

 

だが、そんな私達の理想を叶える準備段階において英国への渡航を伝えると、案の定幹部達の顔に動揺が走る。

 

慌てた様子でイタリア支部の眼鏡をかけた若い男の魔法使いが苦言を呈してくる。

 

「な、なぜ…!?

今グリンデルバルド嬢に本部を離れられれば、勢力の拡大に衰えが出るやもしれません!それに、各国の魔法省が騒ぎ出すことも目に見えています…!」

 

私はそんな彼をじっと見つめながらも、冷静に答える。

 

「…私達にとって天敵となりうる存在が英国にいるのよ。

そいつを肥え太る前に片付けておくのは至極真っ当な事じゃない?」

 

私がそこまで言うと、イタリア支部の男は私が何をしようとしてるのか理解したのか「それは…しかし…。」と口を噤む。

 

「…闇の帝王(ヴォルデモート卿)、ですかな?」

 

ベルリン支部の男が再び口を開き、その予想を的中させてくる。

 

「その通りよ、奴は恐らく、私と対等にやり合える数少ない魔法使いの内の一人…その上、私達と同じく、この魔法界の支配を目論んでいる。

 

…正直に言っておくわ。

同じ闇の魔法使いだとしても、

あの若造(トム・リドル)の目的と私達の理想とは相反する。

我々が追い求めてきた気高き理想が、薄汚れた純血思想なはずがない。」

 

「・・・。」「・・・。」

 

その言葉を皮切りに、沈黙が訪れる。

 

それもそうだ。今世紀最強の闇の魔法使いであるヴォルデモート卿を恐れていない、と言えば嘘になるだろう。

 

奴は肉体を失って彷徨い続けているとは言え、きっかけさえ与えられればすぐにでも肉体を取り戻し、その膨大な力を使い英国魔法界を制圧するだろう。

 

さらには、英国にはダンブルドアがいる。

かつて我が父上ゲラートを討ち取った宿敵だ。

 

そんな争いの絶えない悪夢の様な場所に私を放り込むなど、幹部達から見れば正気の沙汰ではないだろう。

 

だからこそ、彼らは()()()()()()代替案を用意する。

恐怖からではなく、私の身を案じてのことだ。

 

「…ならば、以前と同様にあの今世紀最も偉大なる魔法使い(アルバス・ダンブルドア)に任せておけばよいのでは?

わざわざこちらが連中の手助けをしてやる必要があるのでしょうか。」

 

マドリード支部カルカ卿が畏まりながらも、より良い案として提案してくる。

 

私は彼の話を聞きながら机の上の紅茶をじっと見つめ、こう述べる。

 

「…確かにその通りだ。

 

この私が居る限り、ヨーロッパ魔法界は絶対的に安全を保障される…その上英国には()()ダンブルドアがいる。高みの見物を決め込んでも構わない。

 

…だが、その過程で私達は何を目にしてしまうと思う?」

 

「…と、言いますと?」

 

私の言いたい事を計りかねて、彼 カルカ卿は顔に疑問符を浮かべている。

 

私はそんな彼に、悲しげな瞳の中、一閃の希望に縋るごとく、至って丁寧に説明する。

 

「…帝王とあのダンブルドアとの戦いの中で、今度は一体どれほどの若き魔法使い達が、その何物にも変え難い命を散らすのだと、私は言っているのだ。」

 

その言葉に、彼らは一瞬瞳を揺らしてしまう。

 

「そ、それは…。」「……。」

 

ここでそのまま死んでしまえばいい、などと言う人間は一人もいない。

なぜならば、我らは全ての魔法族(より大いなる善)のためにその身を捧げることを誓った者達だからだ。

 

思えば英国の連中とて、魔法を使える時点で同じ魔法族である。

 

我々は闇の魔術に傾倒し、堕ちてしまったとは言え、

崇高なる理想を常に胸に抱いてきた。

 

無作為に、無意味に殺されていく同胞の犠牲を何とも思っていないわけではない。

 

魔法使いとは、真に()()()()魂である。

その希少な存在が散っていく姿を、

止められるものならば止めたいとここにいる誰もが思った事だろう…。

 

 

 

当時、闇の帝王との第一次魔法戦争で英国魔法界は大打撃を被った。

 

それを私は、我々はこの目で直接見てきたのだ…傍観者として。

 

幾多もの優良なる魔法使い達の犠牲が絶えず、

良き者は死に、悪しき者だけが残っていった。

 

何の目的もなく、ただ無意味な惨殺が繰り広げられる

大義(より大いなる善)なき戦いに、私の心は揺れた。

 

潜伏していた諜報員から寄せられる数々の卑劣な拷問と殺しの報告書が、私の中にあった大きな迷いを打ち消したのだ。

 

 

 

私は見てしまったのだ。

 

 

 

救えたはずの、貴重な魔法族の血が無惨にも散り果てていくのを。

 

 

 

これが、我々が望む理想なのか?

これが、私が何よりも犠牲を厭わず求めた世界(魔法界)なのか?

 

それは私が父上(グリンデルバルド)に生み出されて以来、己の全うすべき使命との間で最も思い悩んだ瞬間であった。

 

 

 

『…誰を守るための法だ?』

 

 

 

迷える時はいつも不意に、

父上の言葉が浮かび上がって来ては脳裏に染み渡る。

 

 

 

そしてその度に気付かされてしまうのだ

 

 

 

『我々か?   …彼らか?』

 

 

 

課せられた己の使命に、存在意義に、私の全て(より大いなる善)に…!

 

 

 

私はこの瞬間、迷いを一切振り切り、

彼らに向かって()()()()()を与えて行く。

 

「…諸君らの気持ちもよくわかる。

いずれ我々とは道を分つかもしれない者達を助けるなど、

戦略上狂気の沙汰だ。

 

…だが、これが我々の望んだ世界(魔法族のための魔法界)なのか?

 

我々は偉大なる目的の為ならば如何なる犠牲をも、

如何なる手段をも厭わない。

 

だが…我々が打ち倒すべき、そして救うべきでもある魔法族が、

無惨に、無意味に、無造作に、何の大義もなく殺されるのを、

我々はただ黙って見ていられるか…?

 

我々の神聖なる最期の闘いに水を刺そうとする愚かな愚物に、好きにさせておくと言うのか?

 

…かつて我が父上と共に始めた、偉大なる理想を追求するこの我々が!!」

 

 

ゴォォォッ!!

 

 

私が椅子から立ち上がり、勢いよく言い放った途端に、

この部屋全体に突風が吹き荒れ、青い炎が私達を円状に囲み込む。

 

それを見た幹部達は目を見開き、私達の掲げた共通の理想を脳裏に焼き付ける。

 

 

 

 

この理不尽な世界に憤り、そしてたどり着いた場所が、かのゲラートを完全に継承した唯一の希望

フォートシュリット・グリンデルバルドなのだ。

 

 

 

 

彼らが胸に秘める彼女への期待・希望・熱意…その想いは尋常ではなかった。

 

それゆえに

 

 

「…我等は常に貴方と共にある。

 

     グリンデルバルド     」

 

 

その言葉と共に、幹部達は彼女を信じる。

 

例えいかに矛盾して見えようと、

例えいかに困難であろうと、

彼らはより大いなる善のために、彼女に導かれてゆく…

それしか道は、残されていないのだから。

 

そして一斉に杖を顔の前に突き立て、忠誠を唱えた彼ら幹部達の答えに満足したのか、フォートシュリットは青い炎を身振りを1つ整えただけで消し去り、何事もなかったかの様に佇まいを戻した。

 

「…その言葉が聞きたかった。」

 

そうとだけいい、再び執務机の椅子に深く腰を下ろして再度思案した後述べる。

 

「…今年の九月より、私は英国に行く。

目的は英国本土に支部クラスの拠点を設ける事と…闇の帝王を迎え撃つ事にある。

 

その間、私が休暇まで帰って来れない間は諸君ら各支部の幹部にこの組織を一任させることになる。

 

各自何かあれば、即座にしもべ妖精のベルムを通じて私に連絡を取るように。

 

私がいない間はこのパリ司令部の指揮は…ベルリン支部担当のフォックスに任せる。()ならば、見つからずに済むだろう?」

 

クスッと含み笑いをした後、彼に視線を移す。

 

「了解致しました、では早速ベルリン支部の部下と連絡を取り、パリ司令部に人員を割きます。」

 

忠実に与えられた役割をこなすと了承した彼…コードネームをフォックスというが、その彼に会釈し、感謝する。

 

彼は各支部の中でも特にその指導力に優れており、

私の唯一無二の理解者である。

右腕といっても差し支えない。

 

「他の支部も各国の魔法使い達への協力関係の構築、魔法省への侵入・浸透に集中してほしい。

 

くれぐれも私の渡航に関する情報の漏洩は徹底的に規制するように…。

 

 

 

 

…我々の今後の方針はこれまでと何も変わりはしない。

闇の帝王を容易く屠った後は、

魔法界を二分する最期の大戦を再び巻き起こす。

全ては我らの… 」

 

 

 

   『より大いなる善のために。』

 

 

 

その標語と共に、各員は再び姿くらましをして、或いは違法ポートキーで各国に戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…はぁ。」

 

「お疲れ様でございます、お嬢様。」

 

今日もガチャガチャと、飲み干した紅茶と食べきった洋菓子皿の後片付けをしてくれるベルムに労われながら、私は机に突っ伏した。

 

「…何とか父上に似せようと思うのだが、

どうもうまく行けている気がしない。」

 

「あのお方は口数が少なく厳格な気質でございました故に、

お嬢様にとっては少し難しいお立場かもしれません。」

 

そうとだけ言って彼は「では。」と厨房にトレーごと姿くらましして行った。

 

ベルムが去った後の執務室で、ぼんやりとヤツの名を呟いてしまう。

 

「……アルバス、か。」

 

父上のかつて最も信頼厚き友であり、最も対立した宿敵のことを…。

 

そんな存在に、これから連絡を取ろうと言うのだ。

 

もちろん、闇の帝王と敵対関係であるダンブルドアと協力・同盟関係を結ぶためだ。

 

流石に英国魔法界に頼れるツテがあるわけではないし、そもそも英国にはあまり力を入れてこなかったために、ロンドン支部は形成さえされていない。

 

ダンブルドア自身の目もある事だ。

英国に居を構えるのは容易な事ではない。

奴の実力はヨーロッパのそこいらの魔法省の比ではない事くらい明らかだ。

 

だからこそ、初手では協力関係を構築したいところだ。

 

しかし、いくらあの闇の帝王を葬り去るための協力関係とはいえ、ヨーロッパでの悪評によって私達は当然警戒対象になっているはずだ。

 

ゆえに、どんな風に手紙を書けばいいのか少し迷っていたのだった。

 

執務机の前で「吠えメールにでもしようかな…。」などと呟く私は、どこか抜けた様子で思案し始めるのであった。

 










次回は髭もじゃ爺に会いに行くゾイ!
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