(動物園のパンダの気分だ……)
周りが女子
IS―――正式名称は「インフィニット・ストラトス」
今から約10年ほど前に、篠ノ之束と言う人物によって開発された、宇宙空間での活動を想定されたマルチフォーム・スーツである。
開発当初は全く注目されなかったが、その一ヵ月後に引き起こされた事件―――通称「白騎士事件」によって、ISは従来の兵器を凌駕するほどの性能を所持していることが世界へと知れ渡ることとなり、宇宙進出よりも飛行可能なパワード・スーツとしての軍事転用が始まってしまった。
しかし現在ではアラスカ条約を結んだことにより、ISは軍事利用は禁止されスポーツの一種として楽しまれている状態だ。
ISの最大の特徴は先ほど述べた従来の兵器を凌駕する性能ではない、ISの最大の特徴は『女性にしか扱うことが出来ない』という事である。ISが何故女性にしか反応しないのかは今も謎に包まれている。
しかし最近、ISを稼動させることができた男性が現れたとニュースになった。どういった原理で反応してしまったのか、それを知る為に何十万人の科学者が情報を得ようとIS学園の代表に質問攻めをしていた。また世界中では他にも男性操縦者が居るかもしれないとIS適性検査が行われている。
その一番最初にISを稼働させることができたという男性が彼、一夏である。
(ISは元々女子しか使えないから、実質女子校状態だって想像はしてたけど……視線がキツい……)
一夏は今、自身を360°囲む視線に苦しんでいた。女子校に男子がいたらそうなるのは必然なのだろうが、一夏が想像していた以上だったのである。
「……むら君! 織斑君!」
周りからの視線に耐えることに意識を集中させていた一夏は、自身を呼ぶ声に遅れて反応し、急いで立ち上がった。
「は、はい!」
「ごめんね、大声出して。『あ』から始まって今『お』なんだよね。自己紹介してくれないかな?」
山田先生の必死そうに頼む姿を見て『NO』とは言えなくなった一夏。もっとも、入学したてで自己紹介をしないなどあり得ないのだが。
「織斑一夏です! よろしくお願いします! 以上です!」
無駄にはきはきした声で言い放った一夏。その瞬間、彼以外の生徒が全員ズッコケる。
(あれ……俺なんか間違ったかな……)
生徒がズッコケた意味がまるで分からなかった一夏は、頭を掻きながらこうなった原因を考えていた。
その時、一夏の背後から人影が現れ、
ーーースパァァァァン!
と甲高い音を立てながら手に持っていた出席簿で一夏の頭を叩いた。
「いつつ……。げえっ! 関羽!?」
叩かれた場所をさすりながら一夏が叫んだ。
ーーースパァァァァン!!
二撃目が無慈悲に振り下ろされた。
「誰が三国志の英雄か、馬鹿者」
その人物は一夏の実の姉である織斑千冬であった。
その後千冬が自己紹介した直後に黄色い悲鳴があがって一夏の鼓膜が破壊寸前になったり、一夏と千冬が実の姉弟であることがバレたりしたが、無事自己紹介は終わった。
とここで一人の生徒が手を挙げて質問をする。
「先生ー、一つ空いてる席があるんですけどこれは何ですかー?」
生徒が言っているのは、一夏の前の席のことである。そこ以外は埋まっており、生徒達は入学初日から遅刻する不真面目な奴なんだろうと勝手に思っていた。
「おっと、すっかり忘れていたな。入ってきていいぞ」
千冬がそう言うと、前の扉から一人の男子が入ってきた。
しかしそう判断できるのは、彼が一夏と同じ男子用の制服を着ているからであって、顔は包帯と口周りを覆う布で全くと言っていいほど見えない。
「斑鳩、自己紹介しろ」
「おっ、もう喋ってもいいのか? じゃあ遠慮なく! 俺はオクタ……じゃなくって、
しかし見た目に反した陽気な声でその男子、司は自己紹介を始めた。
「「「「「「ええええええええええ!!!?」」」」」」
先程の黄色い悲鳴に負けないくらいの大音量で、驚愕の声が響き渡る。完全に不意を突かれた一夏は既にノックアウト状態だった。
「この包帯と布は諸事情で外せねえんだが、あまり模索しないでもらえると助かる。これ以外で何か質問ある奴はいるかい?」
「は、はい! 斑鳩君って、男?」
早速質問が飛んでくる。
「あー……体は男だな。でも女にもなれるっていうか……」
司は説明しかねていた。身体的には男ではあるが、それだけでは片付けられないくらい複雑で、口で説明するのが難しいのである。
「こりゃ実際に見てもらった方が早いか。織斑センセ、いいかい?」
「……許可する」
(おっしゃ! 出番だぜヴァルキリー!)
『アファーム』
千冬が許可を出すと、司の体が光りだす。光が収まると、見た目は先程と何も変わっていない司が喋り出す。
「んん、あー、あー。一組の皆さん、聞こえるかい?」
しかし聞こえたのは、先程の陽気な男性の声ではなく、凛々しさを感じさせる女性の声だった。
「「「「「「!!!?」」」」」」
生徒達は驚きすぎてもはや声すら出せなかった。
「ご覧の通り、私は男の声も出せるし女の声も出せる。性格もコロコロ変わるから一応多重人格ってことになる。だから声によって名前が違う。この声の時は今原カイリって名前だ。別に斑鳩って呼んでくれてもいい。間違いじゃないからな」
司がそう言うと司の体が再び光りだす。
「で、さっき言いそびれたが、この声のときはオクタビオ・シルバって名前なんだ。長ったらしいのは嫌いだからな、オクタンって呼んでくれよ! あ、もちろん斑鳩って呼んでくれてもいいぜ。んで、他に質問はあるかい?」
「はいはい! その人格って何人いるの?」
「おお、ちょうど話したかったんだ! 今の時点では、俺も含めて21人ってとこだ。放課後にできれば紹介するぜ。ああでも、ちょっと危ない奴もいるから全員は紹介できないが、そこら辺理解してくれ」
司が言い終わると同時に、チャイムが鳴った。SHRの終わりを告げるチャイムだ。
「は? もう時間?」
司としてはまだまだ話し足りないといった感じだ。
「まだまだ聞きたいことはあるだろうが、SHRは終了だ。各自、1限の準備をしておくように」
少し締りは悪いが、千冬の一言でSHRは幕を閉じた。
とりあえずお試しでこれも含め三話投稿します。好評なら続くと思われます。
クラス代表決定戦で使う人格
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パスファインダー
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オクタン
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ヴァルキリー