異世界で格闘しますた‐スキルなんて無いが、格闘技術はある‐ 作:劉鳳
2022/12/01 全体的に誤字脱字が無いか見回ってます。ルビを振ったりして少しでも読みやすいようにもしてます。
功用は目の前に立つ、マイケルの姿を見て、改めて感嘆の思いに至った。マイケルの肉体は、ウェルター級の理想像そのもの、無駄を一切削いだ体は、攻撃に特化したものである。防御は歴代のボクサー最高と称されるフットワークとダッキングでかわしているため、ガードは実質最強クラスである。マイケルがこれまで被弾した事が無い事実は、その綺麗な鼻筋が物語っている。三団体統一、その三団体合わせて20回もの防衛記録、そして今だ無敗の、誰もが憧れる存在……そのマイケルまでもが異世界にやって来てしまった。
『カワシマ……久しぶりと言うには時間が短い。君がこちらの世界に来たのがどのくらいかはわからないが、私は昨日来たばかりだ。君がリングから消えた事に嫌な予感がして、入場曲を待たぬままリングにかけて来たら別世界さ。』
『と、言う事は、俺が消えてからほんの数分しか経って無かったって事か?こっちじゃもう3ヶ月以上も経過してるよ、お陰で最終目標のクルーザー級並のウエイトに仕上げてきたし。』
マイケルは功用の肉体を見て、成る程と呟く。ウェルター級の試合の肉体からはかけ離れたサイズにビルドアップしている姿は、それ相応の時間が経過したと言う事実を理解するには十分であった。
『はぁっ、はぁ……大丈夫でしゅかぁ?コウヨウしゃん……どうしましゅたか?このお兄しゃんは?』
『カワシマ、この少年は?』
『紹介する、俺の現スポンサーのアルクルス騎士爵さ。』
騒ぎが収まり、アル達がその場にやって来たので、マイケルに紹介する。後から来た決闘者全員が、マイケルに挨拶をし、握手を交わす。
『まさか世界王者までこの世界に来るなんて、驚きッス!っつーか涼しい顔してますけど、一人でこの数倒したんですか?!』
『最後の一人はカワシマが倒したがな。』
マイケルが倒した人間は28人、時間にして6分程。いくら喧嘩の強い人間でも、武器を持ったこれだけの数の人間を倒すのは無謀どころか無理なはずである。マイケル・ギーグ・アームストロングと言う男が如何に強いかを、一同は現場の光景で即理解した。
マイケルはこれまでの経緯を話した。内容の一つ一つがどれも信じられない程規格外で、特に一代大公のワードを聞いたアルは、マイケルにペコペコと頭を下げる程だった。
『しっ、しちゅれいしましゅた、大公殿下!』
『畏まらなくてもいいよ、アルちゃん。あくまでもこの世界に引きずり込まれてからの身の自由を保証する為の肩書きに過ぎないからね。』
『しかしあの馬鹿王女がねぇ……喧嘩売った相手が悪すぎだよ、マイケルはあのマイク・タイソンやメイウェザーが最強と認めたボクサーだぞ?しかも話を聞く限り結構穏便に話を進めようとしてたみたいだし。』
功用は、加害者意識の無い王女のエゴに呆れた様子だった。ともあれ、マイケルの意向により、功用達を妨害する勢力は今のところ事実上いなくなったと見ていい。功用はマイケルに今後の動向を聞いた。
『私は何処にも属さないし、展覧試合にも参加はしない。君と……最高の状態に仕上がった体を以て戦う為、鍛練は積んでおくよ。』
『この国に認められた四人とトレーニングか、マイケルがより強くなったらどうなるか……楽しみだね。ところでマイケル、あんたは本来どのウエイトが適正階級なのかな?』
『身長は君とそう変わらないが、スーパーウェルター級だな。私もウェルター級を統一したらミドル級まで上がろうと思っていたのでね、ウエイトは上げておくよ。』
『楽しみに待ってるぜ、マイケル。』
二人は改めて握手をし、来るべき戦いの時に備えて別々の道を帰っていく。
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マイケルと対面した功用達は、最強王者に対する率直な感想を漏らした。
『初めて会ったが、マイケルの持つプレッシャー、桁違いだ。私は柔道家だが、彼のパンチを掻い潜って投げに転じれるかどうか……』
『僕も圧力を感じたよ……握られただけの拳が大砲に見えるなんて初めてだよ。』
『あの人ともしも敵対したら……うへぇ、勝てるイメージが沸かねぇ……』
『一つ言えるのは、あの人が睨みを利かせている限りは、たとえ国王ですら俺達を邪魔出来ないって事だな。それに……直接言葉を貰った、マイケルとの一戦を。それまでは誰にも負けねぇ、さっ、まずは帰って初戦突破の祝勝会だ。』
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翌朝、功用は日課のトレーニングを自主的に進める。最近はそれぞれの格闘技に適した練習を行う為、朝一のランニングと昼過ぎのスパーリング以外は独自行動をしている。現在功用はウエイトトレーニングを終えてサンドバッグ打ちに移行している。サンドバッグから響く音は、こちらに来た当初とは比べものにならない程に大きい。基本のワンツーから、ボディ、畳み掛けるようにデンプシーロール、距離を取って視界外になる場所からの飛び込みパンチ……功用は基本スタイルをベースにして、過去のボクサーが取り入れた技を打ち込んでいく。
『やっぱり凄いな、あんたは。』
『ん?大場君か?おはよう。』
『どうも……』
ふと、声の主に目をやる。大公爵のチームの大将、大場がやって来たのだ。大場は週一の割合で、出稽古と言う名目でアルの邸宅に顔を出している。なによりも、ボクサーのスパーリングパートナーをつとめれるのはボクサーが適任である事、お互いの能力や動きを掴み、展覧試合で本気のどつきあいをすると約束した為、出稽古はアル公認のものになった。
『おっ、大場君またビルドアップしたんじゃない?』
『川島さん程じゃないよ。』
大場の肉体はウェルター級並の重さになっていた。ライト級相当の肉体を維持していた大場だったが、ボクサーたる功用の存在が、新たに階級を上げようと言う意欲を生んだ。それでも、元々ミドル級だった功用との差は一朝一夕で埋まる訳ではない。
『まあ大場君は俺には無い電撃の力がある。胸にあれを受けたら下手なヘビー級ボクサーのパンチよりも危険だな。更には軽量級故にスピードがダンチだしな。』
功用は素直に大場を評価する。電撃の魔法適正、ボクサーたる大場はいらないものだと思っていた。しかし、いざ電撃を体に纏わせてパンチを放つと、パンチ力にプラスして相手の神経系統に異常をもたらすと言う副次効果がもたらされる事を功用とのスパーリングで気付いた。尤も、スパーリングで功用にまだ一回も土を付けていないのだが。これは技術云々の問題と言うより、階級差であり、階級差を抜きにした二人の力は互角に近い。
『マイケルがこの世界にやって来た、再戦の約束も取り付けて。その前に、チャンピオンとどちらが戦うかの挑戦権マッチ?展覧試合本戦、楽しみにしてるよ。』
『ああ、本当に。ただ、川島さん、次のチームは侮れないよ?トール上級騎士爵のチーム、テムジン……予選会組の最強候補筆頭だよ。』
チーム、テムジン。功用達とは別の組で展覧試合予選会を勝ち上がったチーム。大将の名はスミンノロブ・ダワードルジ、またの名を、大関、
『朝白狼?モンゴル帰国中に行方不明になった名大関が大将とは……スーパーヘビー級の相手だな、かつスキル持ちだよね?無能認定受けてるの俺達だけのはず。』
『いや、うちの諜報班の調べで分かったが、朝白狼は血液循環の強化のみで、有能無能で言うと無能認定らしい。』
『だが、血液循環の強化って事は、心肺機能を強化するのと同じ、瞬発力系競技の相撲力士がもし数倍の心肺機能を持ったとしたら……末恐ろしいぞ。』
『無能認定なんてあてにならねぇって事だね。でも川島さん、あんたはそれでも勝ち筋を見出だしてるんだろ?』
功用の表情に恐れは無かった。大場は同じボクサーとして、功用が何かを成し得る事を予測していた。
『勿論。大場君、俺達は本戦に上がってくる、必ずだ。本戦で当たる時は、最高のボクシングをしよう。』
功用と大場は固く握手を交わし、本日二度目のスパーリングを始めた。
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関取が出てきましたねw名前から元ネタが分かると思います。
一話辺りの文字数はどの位がいいですか?
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1000字程度でよかよ
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2000から3000字程度は欲しい
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3000字から5000字は無いとね
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5000字以上は書きやがれ