異世界で格闘しますた‐スキルなんて無いが、格闘技術はある‐   作:劉鳳

16 / 30
注:功用達は戦いませんw


第13ラウンド 非情なる中でも

 

『ところで川島さん、チーム名とかそろそろ決めたらどうッスか?何だかチーム名無しでアルさんのチームとか言われるのはアルさんも恥ずかしがってたし。』

 

朝のランニングが終わった後、唐突に竹田がそう提案する。功用としては、アルを本戦に連れて行き、貴族としての立場を安定さえすればいいだとか、戦うだけで幸せだとか思っていたので、特にチーム名をつけていなかったのだ。

 

『チーム名ねぇ、俺ネーミングセンス無いから任せるわ。』

 

功用はボクシング以外の事はからっきしだと告げ、チーム名の命名を他のメンバーに任せる。

 

『私達は格闘技をメインに戦っている、武器を使う真田さんも空手が下地になっているし。』

 

『格闘技チームだと印象づけるのにどんな名前がいいのかな?』

 

各々が色々と思考するが、中々決まらない様子であった。そんな時、功用がポツリと呟いた。

 

『俺達はこの世界に無理矢理引き摺りこまれて、無能扱い受けながらも、誇りだけは失わなかった……そう、俺達は誇りを持って馬鹿達を倒す。』

 

『誇り、か。じゃあさ、the PROUD(ザ・プラウド)、これでいいんじゃないッスか?意地はPRIDEだけど、これは誇り、矜持って意味です!格闘技をやるものに必要なものだと僕は思います。』

 

『決まりだな、the PROUD、これが俺達のチーム名だな!』

 

 

功用達がそんなやり取りをしていた頃、街の広場では野良試合が行われていた。片方は決闘者、もう片方は街の闘技場の戦士。決闘者の面々、それは西郷達侯爵家のチームであった。闘技場で死んだとされる炎の鳴門と破戒の庄谷を殺した闘技場の戦士を見つけ出し、公開で仇討ちする流れとなった。

 

『ありぇ?あの人は確か山賀しゃんの先輩の人?なんでここにいるんでしゅか?』

 

使用人三人と買い物に行っていたアルは、人垣の中にいる西郷の姿に気付き、近くでそれを観察する事になった。

 

『闘技場戦士、パーント・キシン、サマエラ・ヴィンセ、炎の鳴門と破戒の庄谷の仇を取らせて貰う。』

 

『侯爵家の決闘者か、どうりで魔法が強力だったわけだ。異世界召喚者は異能を付与される、本気でなければこちらが死んでいた。故に悪意等無かった事は弁明させてもらおう。』

 

『そっか……やっぱ鬼さんが鳴門君を殺したんやな……潔くやった事を認めた人を倒すのは気が引けるけど、鳴門君の遺志、そして侯爵様の面子を尊重せなあかんのや。すまんけど、本気でやるで……そっちのお嬢さんもな。』

 

『私が何をしたと言う証拠でもあるのかしら?これだから異世界の人間は信用出来ないわね?』

 

『魔法探知で庄谷君の魔力を辿れた、ご託はあの世で聞いてやる!』

 

殺意の満ちた目で対峙している両者、止める者はいない。仇討ちは公的に認められている制度であり、この場における死傷は一切罪に問われない。尤も、私欲で銭稼ぎをしていた疾風の陽平等は元々咎められてないので、有能認定決闘者は特に法の自由が高いのだが。ともあれ、闘技場から引っ張りだされた二人にとっては良い迷惑である。

 

『パーント・キシンは俺が……サマエラ・ヴィンセは……どちらが行く?』

 

『私がやる。有能認定を受けた決闘者を殺した者が悲惨な末路を歩むと言う事を、その身をもって知らしめる。』

 

『ならうちは見学やな……悪いけどうちは乗り気やないから。』

 

仇討ちは一対一で行われる。元々血生臭くなる事が確定している行為である上、経緯を大体把握していたので、吉田は引く気でいた。吉田は後ろに下がる事にしたのだが、そこで、アルの存在を見つける。

 

『あっ、川島さんとこの坊っちゃん……』

 

『仇討ちでしゅか?』

 

『あー、ちっちゃい子は見んといて!これからやるのは刺激が強過ぎる!お姉さんが目ぇふさいどるからな!そっちのみんなも、見たらあかん!』

 

吉田はそう言ってアルの目をふさいだ。いくらこの世界で行われる事、アルも何度か見ているとは言え、年端もいかぬ子供に殺しあいを見せるのは気が引けるのだ。そして、吉田の判断は正しい事を周りの観衆は察する事になる。

 

 

『おおおおっ!!』

 

雄叫びを上げたのはオーガの戦士、パーント・キシンだった。西郷と変わらぬ程の大きな体に見合わぬ素早い動きで、手に持つ短剣を逆手に斬りかかる。西郷はそれを手で捌きながら隙を伺う。敢えてボディをがら空きにし、キシンを誘い込むように動く。だが相手も闘技場で地獄を潜り抜けた猛者、そのような見え透いた罠には乗らない。西郷は相手が冷静な戦士である事を悟ると、今度は自らが前に出た。

 

『シッ!!』

 

キシンは懐に入り込もうとする西郷に向かってカウンター気味に左の短剣を振るう。上から下へと振り抜かれたそれを、懐に潜り込む者が避けるのは難しい。しかし、西郷はそれを寸ででかわし、その腕を掴み、流れるような動きで背後に回ると裏一本背負いをかける。ボキボキと腕の骨が折れる感触がキシンに襲い掛かると共に、頭が石畳へとメリ込んだ直後、床に落とした生卵よろしくグチャリと言う音を響かせ、血と脳漿の水溜まりを作った。

 

一方、こちらはサマエラ・ヴィンセを迎え撃つ形を取っている島津。持っているのは日本刀に近い片刃のサーベル、それを上段に構える。サマエラは長い鉤爪を両手に装着し、手を広げた状態で構えている。静寂が彼女らを包み込む……先に動いたのは島津だった。

 

『キエ゛エ゛エ゛ェッ!!』

 

猿叫と呼ばれる示現流独特の叫び声を上げながら島津は猛烈な速さで間合いを詰める。サマエラは猿叫に驚きつつも、鉤爪を前に突きだして間合いを取り直す。しかし島津の踏み込みは速く、間合いに入った瞬間、渾身の力でサーベルを振り下ろす。

 

『くっ!右の鉤爪が!』

 

一撃を受けた側の鉤爪が焼きを入れすぎた鉄の板のように砕け散った。なおも猿叫を上げながら島津は右に左にサーベルを振り下ろしぶつける。サマエラはその剣の速さに舌打ちしながらも、ひたすらに左右打ち込みをする動きが規則正しいが故に順応し始めた。

 

『強い……が、単調だ!』

 

サマエラは鉤爪を叩き込んできた島津のサーベルに絡めつけるようにすると、その状態のまま折れて短くなった右鉤爪を力一杯に叩き付けた。しかしそれが島津に当たる寸でで後方に流れ、間髪入れずにサーベルで掬い上げるように右手を切り飛ばした。

 

『っ痛っ!』

 

苦痛に顔を歪めながらも、体勢が整っていない島津へ左の鉤爪を見舞うが、斜めに行き過ぎたかと思われた体勢を無理矢理に立て直してもう一方の腕も切り飛ばした。サマエラにもう戦う力は無かった。島津はサマエラにサーベルを突き付ける。

 

『勝負あり……もう一度言う、庄谷君を殺したのは貴様か?』

 

勝負がついた所で島津は改めて問う。サマエラは何か達観した様子で返答する。

 

破戒の庄谷(そのもの)は私が殺した……奴隷身分の解放を条件に、第一王女から依頼されての事よ。もっとも、怪童の山賀との対決後に戦わなければ私の方が殺されていた可能性は高かった。強かったわよ彼……最期に名前を聞いていいかしら?』

 

島津夏海(しまづ なつみ)……』

 

『そう、良い腕だったわ、最高の冥土の土産になったわ。』

 

サマエラがそう言い終わり、頭を下げると、島津は一思いに首を切り落とした。仇討ちが終わり、死体が片付けられた後、吉田が漸くアルの目をふさぐのをやめた。

 

『あの二人を……殺したのでしゅね?』

 

『うん、ホンマにごめんな……』

 

『いいえ、気にしないでくだしゃい……貴族とは、メンチュに拘るものでしゅから……』

 

そう言うアルだったが、命のやり取りを平然と行うやり方を当たり前と言うには、アルは純粋に過ぎた。

 

 

『……そっか、大変だったね、アル。吉田ちゃんに感謝しなくちゃな。にしても、あの時見に行った鬼の人が死んだのか……いたたまれないな。』

 

アルが今日の出来事を功用に伝えた。功用はこの世界に生きる者の非情さと不条理、そして貴族に対する汚なさを改めて実感した。自分達はこの世界に無理矢理連れてこられた被害者である、その考えは今も変わっていない。だが、目の前にいるアルをはじめ、闘技場の戦士キシンやサマエラ達、マナ達兄妹の境遇や生き方を好き勝手していいわけでは無い事位の分別は弁えていた。故に、仇討ちとは言え悪意の無い人間を殺した西郷達には賛同出来なかった。

 

『もっとも、俺も決闘と言う形で殺人を犯した身だ、あいつらを批判する資格がねぇ事は理解してるさ。

 

アル、だからこそそんな悩まないでくれ。アルは何も悪くないんだ、悪いのは……召喚者のみならず、この世界にいる人々を食いものにしてる連中なんだから。』

 

『ありがとう、コウヨウしゃん……』

 

少し泣きそうになっていたアルを優しく抱きしめながら、功用は必ず勝ち続けて、この世界の悪意に立ち向かう事を改めて誓った。

 

 




マイケル出しちゃったせいで有能認定の連中すらなんか霞んで見える、やっちまったぜ(泣)

一話辺りの文字数はどの位がいいですか?

  • 1000字程度でよかよ
  • 2000から3000字程度は欲しい
  • 3000字から5000字は無いとね
  • 5000字以上は書きやがれ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。