異世界で格闘しますた‐スキルなんて無いが、格闘技術はある‐   作:劉鳳

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※短めです、バトル描写は難しいです。


第15ラウンド thePROUD対テムジン・中編

 

場内の歓声に迎えられながら、功用と(そよぎ)は対峙する。梵は身長180cm、体重98kg、相撲で言うソップ型(痩せ型)の肉体をしていた。黒い長ズボンに回しと言う出で立ち、僧帽筋は盛り上がり、胸筋はまるで分厚い鉄板のようなイメージを持たせる。格闘技経験が無い人間でも、努力を重ねてここまでの肉体を作れると言う証明であった。

 

対する功用、身長175cm、体重88kg、ウェルター級だった体に筋肉の鎧を身に纏い、かつ、無駄な脂肪を削ぎ落とした完璧な仕上がり。中学生から始めたボクシングに打ち込み続けた功用が、予定よりも大分早い段階でここまで階級を上げた事は並々ならぬ努力、それを許容出来る才能があったからに他ならない。

 

『よろしく、梵さん。』

 

『ああ、よろしく。負ける気は無いけど、悔いの無い戦いを……』

 

『勿論!』

 

功用は下向きに視線を送る形で構える。梵は朝白狼直伝の相撲をするため、立ち会いはやはり低く屈んで構えていた。

 

〔はじめぇ!〕

 

レフリーが開始の号を上げる。梵は拳を付けると、まるで弾丸のようなスピードで功用にぶちかましを見舞う。それに対して功用は、梵の視線から目を離さぬまま、ぶちかましの勢いに合わせてスマッシュを放つ。梵はそれを額で受け止めた。

 

『すげえ!川島さんのパンチを防御の高い額で受け止めたぜ!』

 

しかしそれでも功用のパンチの破壊力は凄まじく、ぶちかましの勢いもあって額が大きく切れる。梵は血を流しながら、功用の腕を取り、かいなひねりをかけるが、功用は掴まれた瞬間に三発、左ジャブを梵の鼻っ柱に当てた。相撲力士の耐久力が高いとは言え、鼻は人間の急所、鼻骨が折れ、思わず腕を離すが、すぐさま功用のトランクスの上を掴み、やや投げっぱなし気味に上手投げを放つ。地面に叩きつけられ、肺の空気が圧迫されながらも、功用は受け身から転がりつつ立ち上がった。

 

『つつ……やっぱ相撲力士の投げ技は半端無いな、大関のはもっとヤバいんだね?』

 

『その通り……その前に私が君を倒すがね!』

 

梵は立ち上がった功用に張り手を見舞う。功用は左手でガードするが、その衝撃の強さに舌を巻く。

 

『ヘビー級のパンチと遜色無い威力だ、しかも平手だから衝撃が広がるように来る!やっぱあんたも強化魔法持ってるの?』

 

梵は答えず張り手を連打するが、それが肯定の意に思えた。相撲力士の動体視力はかなり高い。立ち会いからの即反応において勝敗の多くが決まる故に、動体視力の権化たるボクサーにひけを取らない速い張り手を繰り出せる。更にはその丸太のような足による踏み込みは、殺人級の威力とも形容される。しかし、ストライカー気味な攻撃で来たのならば、功用の土俵である。張り手を見事なダッキングでかわし、ウィービングで的を絞らせない。そして何より、瞬発力特化な相撲力士の疲労が蓄積してきた間を功用は逃がさなかった。

 

『しゃあ!!』

 

掛け声と共に懐に入り、∞の字を描くような動きからフックの雨あられを梵に浴びせる。お手本のようなデンプシーロールだった。右フックが梵の顎を捉え、更に体を捻って左フックを右側のテンプルに叩き込む。引き戻す腕と連動するように今度は先程折った鼻っ柱に捩じ込むように右フックをめり込ませた。この時点で梵の意識は刈り取られ、とどめは左アッパーを右脇腹へと打ち込み、あばら骨を三本へし折った。梵の体から力が抜けるのを感じた功用はデンプシーロールを止めて距離を置き残心を取る。梵は口から大量の血を吐きながら、しかし立ったまま失神していた。目には光が無いものの、つき出されたままの右手に、最後まで戦い続ける意思を功用は感じた。

 

『素晴らしいファイトだった、梵さん、サンキューな。』

 

 

〔勝者、コウヨウ・カワシマ!〕

 

レフリーの声に、観客が歓声を上げた。試合時間は3分も経過していないにも関わらず、両者に惜しみ無い拍手が送られた。素人目ですらも、彼等の高度な戦いを肌で感じる事が出来たと言う証明となった。

 

負けた梵は担架に乗せられ、医務室へと送られたが、その顔は何処かスッキリしていた。朝白狼は梵の手を握り、決意を口にする。

 

『梵君、いい戦いだったよ。お陰で彼の動きの速さを覚えた。起きたらみんなで祝勝会しよう。』

 

そう言うと浴衣を脱ぎ、黒く光る回しを締め、整えられた大銀杏の位置を再確認すると、リングへと上がっていく。朝白狼がリングに上がった瞬間、観客がざわめき始めた。

 

『大関、朝白狼栄二……』

 

身長195cm、体重170kgの肉体は、かつての大横綱千代の富士をそのまま大きくしたような印象を与える。皮下脂肪は腹回りに少しあるが、全体的な印象は金剛力士像のイメージ。何より、穏やかな顔は鳴りを潜め、四股名に付けられたような、白い体に狼のごとき獰猛な双眸……これが、大関朝白狼栄二の姿である。

 

彼は強い。幕内通算172勝8敗、僅か二年12場所での成績である。八百長を激しく嫌い、モンゴル人会とも距離を置いた状態でこれである。師匠の高名護親方の教えを守り、理想の相撲とは?理想の力士とは?と言う問に対する最良の回答を模索し続ける求道者の鑑……本来ならば敬意を払われても可笑しく無い彼を、日本の人々の殆どは冷たくあしらった。彼は強過ぎた……功用は自らが目標にしている存在、マイケルと何処か彼を重ねていた。

 

『偉大な存在、マイケルとはまた別のベクトルで……これ程の存在を、冷遇なんて酷いもんだよな。でも大関、この歓声を聞いてると、あんたの相撲、決して間違って無いって分かるだろ?だから、遠慮なくやろうぜ?』

 

『川島、そうだな。全力で行こう。僕の相撲と君のボクシング、この歓声をくれるみんなに見せてあげよう。』

 

〔両者、正面に……はじめ!!〕

 

道は違えど尊敬しあえる者同士のガチンコ勝負が幕を開けた。二人は自然と笑みを浮かべていた、獰猛でありながら高尚な笑みを。

 

 

 

 




元相撲力士のM君に軽くぶつかり稽古をした時、死にかけました。彼は元三段目なんですが、相撲力士の破壊力はなんつーかマジで半端ねぇです。

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