異世界で格闘しますた‐スキルなんて無いが、格闘技術はある‐ 作:劉鳳
予選会で二勝を挙げ、thePROUDは本戦への切符を獲得した。予選会を通過したチームは8チーム、50以上のチームがいたにも関わらずそれだけのチームしか上がってこれなかった理由、不戦勝は勝ちに入らない、最低二勝続けて勝つ、実力が微妙だと判断されれば振り落とされる、つまり、この予選会はその判断をする者が監視をしている中で行われたのだ。大場がそう話す。
『まあ俺はテムジンであれあんたらであれ上げるつもりだったよ、だって大将二人より今の俺は弱いからね。』
大場はそう言って肩をすくめる。朝白狼の強さは、この国でも最上位に位置していると言う。前回大会で西郷が彼に勝てたのは、先鋒から副将のチームメイト達による善戦がなければ負けていたと言う事、それを、ノーダメージの彼を倒した功用である、大場の評価は全く誇張が無かった。
『それに、あんただけじゃない。他の三人共、他チームの有能認定を取り消して欲しい位に強い。大公爵家の決闘者であるこの大場が保証するよ。』
雷神の拳帝からのお墨付き、功用達はそれを聞いて笑みを浮かべる。何より、これから戦うであろう大場の潔い人柄、だからこそ手の内を見せる事になろうともスパーリングに付き合う。
『よし、大場君、またスパーリングをしよう。本戦までまだ日にちがあるし、確実に強くなるぞ!』
『それは俺もだよ、川島さん。同じボクサーに出会えて俺の拳は更に磨きがかかってる、絶対本戦であんたに土つけてやっから!』
とんでもなく高いテンションでスパーリングを始めた二人を見て、三人は若干引いていた。
『二人共生粋の戦馬鹿ですね……』
『お互い戦いで最悪死ぬかも知れないのに、あのテンション……ちょっと僕には真似出来ないかな?』
『大場君も川島さんも敵に塩送り過ぎだよなぁ、大丈夫かなぁ?』
『大丈夫だよ、問題無い。』
『おっ、大関!』
朝白狼がそこにやって来た。スポンサーのトール騎士爵がアルの元に訪れ、スパーリングの手伝いやサブスポンサーを買って出たのだ。展覧試合に出ない貴族はサブスポンサーとして一定のチームに手を貸す事は珍しく無いが、アルは最下級貴族の自分に付くとは思って無かったらしく、驚いていたと言う。
『トールさんが君達のチームのサブスポンサーになった、これから色々サポートさせてもらうよ、よろしくね。山賀君、西郷対策の体型が近い人間がいないって聞いてね?僕が練習台になるよ。真田君と竹田君には武器持ち、魔法持ちの対策が欲しいって聞いたから、僕のチームにいる二人が練習に付き合うよ、きっと役に立つ。それに……』
そう言うと、朝白狼は梵と二人で大きな鍋を持ってきた。
『君達と仲間になった記念に、ちゃんこ鍋を作ってきたんだ、高名護部屋の伝統の味だよ。』
『と言う事でしゅ!トール様、それでいいでしゅね?』
『ああ、アルちゃん、新しい仲間と共にね。』
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上級騎士爵、トール・クロス……本名、
『人を傷付ける魔法は全くダメだったけど、こうやってモノを作り出したりする魔法を使えたんでね。この魔法と、救出した召喚者達のお陰で、城付きの貴族達に良い感じにプレッシャーを与えてるのさ。』
現在、トールは35歳。元々大手企業のセールスマンをしていた為、世渡りは上手かったらしく、幾つかの商売をしながら屋敷の切り盛りをしていると言う。
『それにしても、俺達のサブスポンサーか……何かお考えが?』
『勿論。僕としては無能認定者が有能認定者を倒していく様を見てみたいってのが一番だけど、もう1つは単純に注目度が上がっていけばスポンサーサイド的には最高の宣伝になるってね。』
功用は成る程と思った。有能な選手の側には必ず大手スポンサーが付く。スポンサーサイドはファイトマネーの工面だったり裏方仕事をしつつ、企業としての宣伝も出来て一石二鳥と言うわけだ。
『流石に元セールスマンだな、世界が変わっても逞しい。』
『まあ実情は君や大関達のような魅力的アスリートの活躍のお陰で食べていけるようになってるんだけどね。
さて、スパーリングで疲れたろ?高名護部屋特製ちゃんこ鍋を頂こう。大手週刊誌の食レポが入る位の逸品だぞ。』
トールがそう言うと、功用も腹の虫が鳴っていたので、既に皆が舌鼓を打っている輪へと入っていった。
『旨そ……それじゃお言葉に甘えますか!』
他チームの大将たる大場が普通に混じって食べている事に誰も突っ込まないが、功用としても別に気にしていないのでお椀を取り、よそう。鳥ベースの出汁がきいた塩ちゃんこは、汗を流した体に深く染み渡る。日本人である功用が故郷を感じれるその風味に、気が付けば夢中になってがっついていたのだった。
ー
同時刻、侯爵家の西郷達は、本戦に上がって来た功用達へ懲りもせずに圧力をかけようとする一部王族貴族の動向を聞き、辟易していた。闘技場戦士への嫌がらせと言い、功用達をオープニングマッチに強制出場させた事といい、やる事の汚さとせこさには正直気分が悪くなるのだ。
だが、そう言った嫌がらせに対して、彼等は何も抵抗出来ないもどかしさがあった。伯爵以上の貴族の決闘者の多くは、隷属状態の召喚者(無能認定を受け、奴隷の首輪を付けられた者)を使用人として付けられ、監視されている。彼等は使い捨ての駒のような扱いであり、西郷達は彼等を見捨てぬよう、面倒も見ていた。スポンサーに逆らえば、彼等の命は無い。
『結局、俺達も奴隷と変わらぬか。違いと言えば、奴隷の首輪を付けられているか否かと言うだけ。川島達は正に救世主足り得るわけか。
だが、それでも手加減は出来ぬ。川島、そして山賀よ、本気でこの境遇を変えたいのなら、手加減抜きの俺達を倒せる程度でいきがっている場合ではないぞ。』
西郷は気付いていない、功用も山賀も、真田も、竹田も……誰一人いきがって等いない事に。何故なら、既にこの世界を理屈抜きに拳一つで制覇出来る男を見た後だったから。そしてまた、この国を揺るがす事件が起ころうとしていたが、本戦とは関係無いのでここでは語らない。
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ボクシング等の格闘技は興行ですので大手スポンサーが付くかどうかでファイトマネーが変わってきます。あの内藤大助さんはタイトルマッチ挑戦の折りにテレビ放映局とスポンサーがギリギリまで決まらず苦労したと言う話を聞きました。試合するにもやっぱ金の問題が絡むので、挑戦者サイドもチャンピオンサイドもかなり苦心しているんですね。その点亀田三兄弟とかかなり恵まれてたと思います。
一話辺りの文字数はどの位がいいですか?
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1000字程度でよかよ
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2000から3000字程度は欲しい
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3000字から5000字は無いとね
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5000字以上は書きやがれ