異世界で格闘しますた‐スキルなんて無いが、格闘技術はある‐   作:劉鳳

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いやー、中々テンション上がらなくて話を思いつかなかったですが、どうにか続き出来ました。


第19ラウンド 王国の躁鬱

※ラウンドつけてますが戦いはありません。

 

 

展覧試合本戦までの日数が近付くにつれ、大会に参加する王族貴族関係者が、あの手この手を使って嫌がらせや妨害を続けると言うのが半ばお約束となっているが、王族関係者や侯爵以上の上級貴族を相手するともなると流石に表立って嫌がらせは出来ない。代わりに王族、上級貴族の方は嫌がらせに関しての大義名分を得たと、下級貴族の有力チームへの妨害工作を行うようになってきたのだ。酷いものになると、身内の誘拐や殺害に手を出す行為まで平然と行っている始末。

 

国王は故に憂鬱だった。元々国同士の緊張状態を緩和する為に代理戦争としての展覧試合が行われた筈なのに、足並みを揃える処か足を引っ張りあう状況、王族貴族自らが招いた質の低下を棚に上げ、かつてこの世界を救った異世界の英雄達が力を付与されてやって来たと言う伝承を一体何処で拾ったか、異世界召喚に手を出して他の世界の人間を拉致して決闘者に仕立て上げると言う恥知らずな行為に手を出したのが彼の先代の時代からであった。

 

高い能力を持つ異世界の決闘者(現国王はそうは思ってないが)を多数スカウト出来た人間が試合を制するとあって、召喚を行う神官への勧誘工作が繰り返された。

 

『我々は、愚かだった……エイジ・アサハクロウ、コウヨウ・カワシマ、マイケル・ギーグ・アームストロングと言った無能とされた人間の強さを見て、私は漸く目覚める事が出来た……既に遅すぎてはいるが……』

 

混迷を極めた現状を打破する為、国王は一大決心をする。

 

 

国王は、大号令を上げた。異世界召喚の禁止と封印、そして奴隷として扱われた無能認定の異世界召喚者の解放を。当然ながら有力貴族や王族は反発をした、何しろこの号令に関しては誰にも伝えず国民の前で行われたのだから。

 

国王は若い頃、優れた戦士として名を馳せていた。先代の時代の中期位までは召喚者とこの世界の決闘者の割合が半々位で、闘技場の戦士も展覧試合に出場して力を奮っていた。国王は若かりし頃、闘技場の戦士達とチームを組み、国家代表として展覧試合の世界大会で優勝も経験している。それは一概に他の世界から人間を拉致する事の愚かさをわからせる為だった。しかし、先代は異世界召喚者を重用し、最終的に自国の選手は皆召喚者のみにすると制定した。代理戦争としての展覧試合がものを言うこの世界では、兵力と言うものは余り数が存在しない、だから自国の兵力をイタズラに使わぬ為の最善策だと宣い、王族貴族も何の疑問も無くそれに賛同した。

 

彼自身は反対の立場だったが、若輩だった事、そして嫡男たる自分が皆と真逆の事を言えば廃嫡される可能性すらあった事から、泣く泣く賛同の意を示して来たのだ。国王は今でもこの時の判断を後悔している。異世界から来た人々は、自分達の世界の人間となんら変わらない、むしろ倫理観と言う面においては優れた者達を使い捨ての駒としてしか扱えない……国王は今こそ自らの意思を通す時なのだと決断した。

 

 

『それで?国王の宣言を、俺達を用済みとして処断する大義名分にしようっての?本当にこの世界の貴族王族ってさ、国王以外馬鹿しかいねえのかな?』

 

そう言いながら殺気を放つのは、四旗大将(しきたいしょう)のアンだった。国王の大号令をどう解釈すれば、召喚者を用済みとし、拘束及び暗殺すると言う流れになるのか?甚だ疑問だった。何より目の前の兵士達は、展覧試合でさんざん持てる力を披露してきた自分達の強さを分かっていないようだった。

 

『馬鹿に付ける薬は無いって事、それだけだよアン君。まあ第一王女殿下や大公さんに侯爵位の連中はそれに気付いたみたいだけど、後の馬鹿王子馬鹿王女、他の貴族連中は全っ然駄目だわ。』

 

アンの元にやって来たのは王だった。卑怯と策謀を嫌う国王とは対照的な王族貴族の汚い動きを察知して、動向を監視していたのだ。

 

『元よりあのマイケルの強さを見てまだ勝てると宣っている時点でオツムはお察しよ。

 

て言うかさぁ、あたしら四旗大将が国王直属ってのも全然理解してないしね。』

 

『それで?馬鹿王子に王女……失礼、糞ったれのカス野郎馬鹿王子と糞に失礼なアホ王女、俺達と〔まだ〕やるのかい?』

 

塩田、東郷の二人が、夥しい数の生首を入れた籠を置きながらそう言う。彼らは彼らなりにこの国の汚い部分を見て、それを改善してきたのだ、王族貴族のやる事等お見通しである。無謀にも四旗大将を襲撃しようと画策したのは第四王子と第三王女の二人……生首の主達は奴隷の首輪を付けられた召喚者達だった。

 

『元々俺達は自分達の世界に二度と帰らないって覚悟が出来てるんだ、殺しに今更動揺しない。それに、その悪質な奴隷の首輪の性質を神官共に吐かせて貰ったからな……外す方法は無い、主が死ねば首が飛ぶと。だからこそ彼等を速やかに楽にした。』

 

塩田はそう言い終わると冷たい視線を二人に向ける。奴隷の首輪、或いはうでわや指輪と呼ばれるそれは、一度つければ最期、死ぬまで外せない呪いの魔道具であり、主に重大犯罪者や多重及び多額債務不履行者、そして無能認定を受けた者が付けられるアイテムであり、主従契約をした相手の所有物となり、主が死ねば爆発すると言う非情な代物だった。

 

『果敢にも馬鹿貴族達を暗殺しようとした彼等のお陰で首輪の実態を知る事が出来た……見てて怒りが沸いたぜ?主に突っ掛かった連中の首が飛ぶのはよぉ!』

 

凍える視線を向けられた第四王子と第三王女はガタガタと震えていた。召喚者達を虫ケラのように扱って来たツケを、全く自覚していなかったと見るからに分かるその反応、もはや塩田ら四旗大将は彼等を人間とは思わなかった。

 

『それで……国王陛下、どうなさるおつもりで?我々の怒りはとうの昔に頂点に達しております、事と次第によっては、我々は敵に回りますよ?』

 

『その愚息達の処分は貴君らに任せよう。本来我々の世界で済ますべき事象を貴君らの世界の人間を使って、使い捨ててきたのは紛れもない事実、謝って済むべき問題ではない。』

 

部屋のベール越しに一部始終を見ていた国王が静かに呟く。既に国王の宣言を悪い解釈をした派閥は、四旗大将とその伝の召喚者によって制圧されていた。

 

『軍事力を殆ど廃した世界情勢で貴君らの存在は貴重だった……しかし結果はご覧の有り様、召喚者達の意思を無視したばかりか酷い諸行を課してしまった。我々は償いの時をとうに過ぎてしまっているが、今からでもと言う慈悲を貴君らが指し示してくれた事、感謝してもしきれない。』

 

国王はそう言うと地に頭をつけてその意思を示した。一国の、それもこの世界で最も力を持つ君主の姿勢に、塩田達は怒りを鎮める事が出来た。

 

『さてと、こっちは終わったな。マイケルは他の召喚者と共に動くと言ってたから大丈夫だろう。それに……今年の本戦出場組は一部を除いては国王の号令に賛同みたいだし。』

 

 

一方その頃、大公爵家の方では、大場が此方の世界側の人間達を相手に戦いを繰り広げていた。

 

『オオバめ、国王が貴様ら召喚者は用済みだってよ?』

 

『ふっ、あの大号令をどう解釈したらそう聞こえるのやら。心が難聴なのも大概にしろよ?』

 

大公爵の使用人達は召喚者に対していい顔をしない者もおり、刺客を送って暗殺をしようと画策する輩がいた。勿論大公爵は召喚者に対してはある程度の理解を示していたので独断専行もいいとこなのだが。

 

『それで?俺に殺されに来たの?何の対策も無しに?』

 

『うるせぇ、ぶっ殺してやらぁ!』

 

数十人がかりで大場に襲いかかるが、彼等は失念していた、大公爵チーム〔B.LEGEND〕のメンバー全員がいる事を。

 

『ギャア!』

 

『大場さんを倒す前に、氷の桜井を倒してからにしろよ?』

 

『豪剣の山形もね。』

 

『うらぁ!雑魚散らしはこの疾風の陽平がやっとくぜ!大場さん、いいかい?』

 

『おう、任せらぁ。』

 

刺客達は足を凍らされ、鉄の塊のごとき大剣に潰され、風の刃に叩っ斬られた。召喚者達がこの世界に溜め込んでいたヘイトに比べれば、この世界の人間の物言い等知った事ではなかった。

 

『あ、あわわ……』

 

『恐怖する位ならよぉ、はじめから掛かって来るなっつーんだよ!』

 

『ぼぎゃあ!』

 

大将格の顔面に、大場の拳が炸裂した。首が三回転程した後にちぎれ飛び、その頭を足で踏み潰した。

 

『ふぅ、まっ、こんなもんかな?川島さんの所にも不届き者は来てるかな?まああそこは大丈夫だな、大関達もいるし。』

 

 

大場の読み通り、功用達は何の問題も無かった。功用達とテムジンが本気モードになった時点で、刺客達の命運はとっくに尽きていたのだから。

 

『……』

 

『おいおい、だんまりか?まあ騒動の黒幕は大体予想出来てるから別に喋らなくてもお前ら詰みなんだけどね?大関、どうする?』

 

『そうだねぇ、じゃあ、その黒幕の所まで運んであげよう。越権行為を繰り返した上に国王の顔に泥塗った事を公にされたら、流石に懲りるよ。それに……』

 

『懲りなくてもそのまま極刑、命を投げ捨てても護らないといけない人間なの?あの馬鹿達ってさぁ、どうなの?!』

 

『ヒィ、わっ、分かった!言うよ!』

 

刺客達は既にグロッキーだった。吐ける限りの事を吐いた刺客達は、程よくサンドバッグにされて、そのまま主であろう人間の元に突き出された。

 

 

『よぉ糞メス、お前だろ?犯人。』

 

『ちっ、違う!今回は(・・・)違う!弟や妹達が勝手にやった事だ!』

 

第一王女はそう訴える。マイケルに折檻された一件から、第一王女は召喚者に対する動きを縛るのをやめ、自分達のチームのスポンサーとしての仕事に没頭していたのだ。つまり、今回の件に関しては完全にノータッチだった。しかしそれを聞いても功用は納得しない。今までの諸行に頭が来ていた事もあり、刺客の一人を無造作に投げ捨てる。

 

『こいつの首輪に見覚えねぇか?純金の奴隷の首輪だ腕輪ってのは王族が使うもんだろ?』

 

『こっ、これは……我が弟マークハイトの!ちっ、父上にあれだけ慎めと言われたのに!』

 

『ほう、弟ねぇ……案内してくれや。それと……今回は見ての通り人数いるから、へなちょこ兵士が何人来ようと無駄だと伝えておく。』

 

功用が指を指すと、既に全身に返り血を浴びた真田達がギラギラとした目で第一王女を睨み付けている。王女はもはや逆らう気は無いし、なんなら普通に展覧試合で自らのチームと当てて功用達に正当な形でリベンジする気でいたので、素直に第二王子、マークハイトの所へと案内した。途中、第一王女のチームの面々と顔合わせしたが、事情を聞くと快く協力する事になり、合計四十余名もの召喚者と第一王女の近衛兵達がマークハイトの前へとやって来た。

 

『なっ、何事じゃ?!』

 

『何事じゃではないわよ馬鹿!と言うかなによその腫れ上がった顔は?!』

 

マークハイトは経緯を話した。四人の拳を武器に戦う者達により袋叩きにされた事、それによって自らの浅はかさに気付き、国王に誓約書を書いて一切の越権行為を禁止し、陳謝した事、現在暴れているのは自分の私兵ではなく、第三王女、第四王子達の一派である事……洗いざらい吐いて、物理的にも吐いた。

 

『姉上ぇ、私はもう手を出して無いんですよぉ!』

 

『だがこの首輪の刻印はお前のものよね?どう釈明する気?』

 

『違う!断じて違う!よおく見ておくれよ、ミハイロとアナスタシアの指輪をはめてるはずだよぉ、あいつら目立つ首輪の部分を私の刻印にして、何かあった時の為に目立たぬようにしてやがったんだよぉ!もう召喚はしない!己の身を以て漸く思い知ったんだよぉ!』

 

マークハイトは泣き叫んでいた。召喚者を奴隷以下の扱いにした報いなのだと、自らの行為に漸く反省したのだと。その目に嘘は無かったので、功用は拳を降ろした。

 

『って事はそのミハイロ?とアナスタシア?っての?を絞れば一応終わり?でもさぁ、展覧試合は?これって確か四つの国の代理戦争の代表決めなんだろ?こんだけの騒ぎがあったら取り止めになんないのかい?俺、戦いに関してはきっちりやりたいんだけど。』

 

『ああ、それについては心配しないで頂戴。しっかり執り行うし、私の方の召喚者も俄然やる気のようだし、他のチームも同様よ……私はもう汚い手を使わない、それに、この前のオープニングマッチの二軍と違い、一軍のチームだから、今度こそ負けないので覚悟して。』

 

『ああ、本戦楽しみにしてるよ。さてと、後は首輪や腕輪を付けられた召喚者の処遇、頼むぜ。流石にあれを放置されたら夢見が悪いからな。』

 

功用はそう言うと、改めて第一王女に視線を移す。以前と違い、無能者を見る目をしていない。

 

『そう言えばあんたの名前をちゃんと聞いて無かったな……この前は殴って済まなかった。』

 

『もう終わった事よ……オリヴィア・レイア・ローズ=ヴァルカよ……私達のチーム名はティエンロンよ、楽しみにしてるわ。私もちゃんとあなたの名前を聞いて無かったわね……』

 

『川島功用、功用が名前な。チームthePROUDの戦い、見せてやるからよ、それまで待ってな。』

 

そう言い終わると、どちらからともなく、手を握った。

 

 




展開早くね?と思いますが、早い方がエタらずに済むので(異世界警察の方エタってますが)
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