異世界で格闘しますた‐スキルなんて無いが、格闘技術はある‐   作:劉鳳

24 / 30
書いてるうちに二転三転してます、力不足を痛感しております。


第20ラウンド 展覧試合本戦、開始

 

予選会を通過した8チーム、昨年本戦準決勝まで残った4チーム、王族側4チーム、そしてシード権4チームの20チームで行われる展覧試合本戦。予選会の盛り上がりが無かったかのように錯覚するほど、観客の熱気は桁違いである。

 

thePROUDの面々は、入場しながらその異様な雰囲気を肌に感じながらも、萎縮はしない。人前で戦う事自体に慣れているのも大きかった。

 

『おうおう、豪奢な服来てる貴族が過激な阪〇ファンみたいな品の無いヤジ飛ばしてんなぁ。』

 

『あんな連中が下品だとか下賎なとか抜かしてんだからね、鏡で我をよく目をかっぽじって見やがれッスね。』

 

功用と竹田はそれこそ呆れもなく、客の入りがいいので他チームを大勢の前で倒せる高揚感を持つ位にリラックスしていた。この数ヶ月、アルの邸宅で肉体をいじめ抜いた彼等の身体能力は、確実に強くなっていた。特に竹田は一番若いのもあり、スポンジのように実戦の有効な動きをマスターしていった。後は、戦うだけだ。

 

そうこうしているうちに、有力候補達が入場してきた。侯爵家のチーム、ヤマカシの四人……入場と共に場内が静まり返る。抜き身の刃のような威圧を放ちながらヤマカシの最後尾を行く西郷の姿を見れば、自ずと皆が静まり返るのも無理はあるまい。更に、その前を行く吉田も、普段の朗らかで気さくな人柄からは想像も出来ない氷のような威圧を放っている。

 

『やっぱあのチームは雰囲気が違うな、吉田ちゃんや西郷さんの雰囲気もそうだけど、他の二人も威圧は出して無いのに身構えちまうような凄みを持ってら。』

 

だが、そう言った功用は飢えた虎が牙を剥いたかのごとき笑顔を見せていた。そこに微塵も震えは無い。ヤマカシが入場後、今度は大公爵チーム、B.LEGENDが入場すると、静まり返っていた場内が再び歓声に包まれる。先頭を行くのは、この世界に来て功用にワンパンでのされた疾風の陽平、あれから自分の甘ったれた思考を猛省し、大公爵チームの面々を相手にスパーリングを重ねた。体つきは以前に比べると見違える程に逞しくなっていた。

 

『あっ、あれが川島さんが最初に倒したって言う奴ですか?聞いてたのと違ってつっ、強そうッスね……』

 

『あの時の事を反省したんだろうな、見た目だけでも、どれだけ努力してきたか分かる。だが、あのチームの最強は勿論、大場君だよ。』

 

最後尾に位置する大場は、黒地に稲妻の刺繍が施されたガウンを羽織り、静かにシャドーをしながら入場している。まだ戦う前だと言うのに、全身から電気が迸る姿は見る者を釘付けにしてしまう。大場本人は、先に入場している功用をずっと凝視していた。

 

『やる気満々だね大場君。体重もウェルター級位にアップしたらしいし、戦う時は本当にどっちか死ぬかもね?』

 

勿論、その言葉すら笑顔を浮かべたままで言う。功用もクルーザー級レベルの肉体に完全に順応し、重さと速さを両立させた最高のパンチを放てるまでになった。試合で当たれば、確実に命を刈り取るであろうと想定しながら、やはり高揚感が勝っていた。

 

B.LEGEND入場後、王族枠のチームが入場していく。最初の2チームは凄みはあれどそれほど威圧感も感じなかったが、第一王女、オリヴィア・レイア・ローズ=ヴァルカのチーム、ティエンロンが入場した時、会場の歓声が最高潮に達した。

 

四人共にただ者ではない雰囲気を醸し出しているが、特筆すべきは最後尾に位置する男の存在だった。身長は2mはあろうか、横幅は朝白狼位あり、かつ筋骨隆々、黒いズボンにカンフーシューズ、上半身は裸で、前腕にファイアカラーのタトゥーをした金髪の男。山賀がその正体を知っていた。

 

『王女さんとこの大将、まさかのフランク・゛エクスキューショナー゛・ホーガンだ。レスリング元アメリカ代表、世界最強の現役プロレスラーが相手か。』

 

四人の中で一番大人しく冷静な山賀は、西郷に比肩するであろう獲物を前に、自然と功用のように(わら)っていた。紳士的な彼も、戦う事に関してはストイックであり、強敵の登場にワクワクが止まらなかった。そして、最後のチーム、第二王子スナイザー・マークハイト・オーク=ヴァルカのチーム、HAYABUSAが入場する。前回の優勝チームであるHAYABUSAだが、大将以外の面子は三人変わっていると言う。四人の中でも特に異彩を放っているのが、三番目を行く灰色の目をした熊のような体つきをしている水色のベレー帽を被った軍人の男だった。真田がすかさず反応した。

 

『嘗てソ連のスペツナズに所属していたイワン・ミロヴィッチ・ライコフと言う男が編み出した軍隊格闘技があってね、その最強の弟子が総合格闘技をやっているとレンジャーの友人が言っていたが、間違いない、奴だ。ロシアと共同軍事演習をした時に顔を合わせた事があったが、凄まじく強いぞ!名前はたしか、アレキサンダー・トゥカーレフだったはず。』

 

身長は172程度だが、盛り上がった背筋と胸筋、顔と腕に走る傷、何より氷よりも冷たく感じる灰色の瞳は、幾人も人を殺したと察する事が出来る程の威圧感を放つ。真田は驚きながらも、胸がドキドキしていた。世界屈指の精強さを誇るのはロシア軍ではない、自分達なのだと矜持を持って動いてきた真田にとって、目の前の男は、戦って倒してみたいと思わせてしまう男だった。真田もまた、三人と同様にワクワクを抑えられないでいた。功用は、皆のテンションが上がっている事を確認すると、ひと言だけ呟く。

 

『まあ、俺達が一番になるんだけどな!』

 

自惚れ等では無い、絶え間ないかつ無駄のない努力に裏打ちされた自分達の強さを俯瞰で見た結果このような言葉に至ったのだ。展覧試合本戦の舞台が血で染まろうとも、功用達の辞書に止まると言う文字は存在しなかった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。