異世界で格闘しますた‐スキルなんて無いが、格闘技術はある‐   作:劉鳳

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いいタイトル思い付かなかった……戦闘あっさりしてます。


第21ラウンド 初戦

 

展覧試合はトーナメント方式であり、対戦チームは予めくじ引きで決められる。くじ引きを担当するのは国王……チームの目の前一段高い場所に立つ彼が、石のボールに書かれたチーム名を読み上げる。読み上げた順に、各自の枠へ入るのだが、シード権チームはくじ引き無しで、各第二回戦に入る。そのため、去年準決勝に勝ち進んだ四チーム以外の16チームが次々に呼ばれる。thePROUDが第三エリアの枠に収まり、次のチーム名を待つ。チーム名はリベンジャー、スティーブ・ハミル伯爵スポンサーのチームであった。有能認定を受けた四人、能力的な優位で上がってきた典型的なチームである。無能認定の召喚者を見下し、努力では絶対に優位に等立てないと宣う相手に、thePROUDの面々は良しと気合いを入れる。そう言う輩に手加減する必要が無いからだ。

 

くじ引きが終了し、対戦するチームの大将がそれぞれ握手を交わす場面になるが、リベンジャーの大将は、端から小馬鹿にしたような目を向ける。功用は全く構う事なく、握手をする手を差し出す。しかし予想した通り、握手を交わさない。

 

『無能ボクサーが調子乗ってんなよ?』

 

『無能ボクサーじゃない、無能認定を受けた゛だけ゛のボクサーだよ、坊や。』

 

ニヤリと嗤う功用のそれに肝を潰される感覚に陥った相手の大将、中西は、舌打ちをしてその場を離れる。

 

(やれやれ、まぁだ有能無能だとほざく馬鹿がいるのか。)

 

しかし功用としては侮ってくれた方がむしろやり易い。何の良心も痛まずに相手出来るのだから。

 

 

くじ引き抽選後に、展覧試合初戦はつつがなく行われた。流石にどのチームも予選会を勝ち上がってきたチームだけあって実力は高い。特に今まで余り目にしなかった攻撃魔法を主体とするチームの派手さは、素直に功用達を驚かせた。尤も、接近戦主体の相手も軒並みそれに負けていなかったが。だが、功用はそれらを脅威とまでは思っていない。予選会で当たった朝白狼や、スパーリングでしのぎを削っていた大場と戦っていたのもある影響か、普通に殴り倒せる自信、否、確信があった。

 

『洗練されてる動きをしている奴はそんないないかな?それに俺達は各々のジャンルで頑張ってきたんだ、負けはしないよ。』

 

観戦をしながらそう口にする。初戦が開始され、試合が次々に進んで行く中、遂に功用達thePROUDの出番が回ってきた。アルは心配そうに功用の手を取ってくる。

 

『コウヨウしゃん、どうか頑張って下しゃい!』

 

アルの精一杯の応援を聞いた功用は、頭を優しく撫でると、微笑みながら宣言した。

 

『アル、絶対大丈夫!何故なら……』

 

『『『『俺達は強い!!』』』』

 

『……、はい!』

 

四人共に声を揃えそう宣言する様に、アルは笑顔を見せた。

 

 

〔続きまして、ハミル伯爵のチーム、リベンジャーと、マークス下騎士爵のチーム、thePROUD、前へ!〕

 

展覧試合初戦、功用達は改めてリングとなる闘技場の上へと上がった。硬い石造りのリングは、投げ落とされれば骨折は免れない凶器とも呼べる。予選会の土のリングで食らった朝白狼の上手投げをここで食らっていたら、命は無かったかも知れない。だが同時に、踏ん張りが良く聞く地面であり、自らのパンチの破壊力も増すと言うものである。素足で戦う竹田は、リングの感触を早速確かめるようにステップを踏んでいた。

 

『っはー!硬ぇ!これダウンした時のダメージも相当ッスね!』

 

『それは相手も同じさ、私の背負い投げがどの位必殺のものになるか楽しみでもあるがね。』

 

『ゲリラ的戦いでは無く真っ正面からの戦い、俺のような軍人としては願ったり叶ったりだよ。』

 

其々が感想を漏らす。気負いは全くなさそうである。対するリベンジャーはそんなこちらの様子に顔をしかめていた。

 

『なっ、なんだよあの無能共、全然ビビってねぇんだけど?なんか舐めてるように見えるんだけど?』

 

『なあ中西、あいつら大したことないんでしょ?』

 

『大将はどうだかな……どっちにしろ、無能が勝ち上がってきたのがまぐれだったと、思い知らせてやる!』

 

リラックスモードのthePROUDの雰囲気にイライラを隠せない。無理もない、彼等は、thePROUDに対するデータは無能認定者のみのチームとしか知らず、予選会もろくに見学していなかったからだ。故に、思い知る事になる。格闘技にひた向きに打ち込んだ人間の恐ろしさと言うものを。

 

〔先鋒、前へ!〕

 

レフェリーの声でリベンジャーの小竹(こたけ)がリングへと上がる。槍を持っている事から中距離戦を得意とする事が分かる。対するthePROUDはと言うと……

 

『なっ?!いきなり大将が上がってきやがった!』

 

功用がリングに上がった。

 

『今日は俺と山賀君がやるよ。次のシード相手に竹田君と真田さんの取って置き、見せる為にね。』

 

功用はチーム内の実力に差がない事を知っている。特にこの数ヶ月で竹田が急成長し、新技を次々にマスターしている事、真田が新たな戦闘技能を得た事を確認しているので、次戦に持ち越すつもりだ。フィジカル面の強化以外は戦法に変化の無い自分と山賀でリベンジャーを充分に相手出来ると見込んでの事だ。

 

『くそ、舐めやがって……殺してやる!』

 

〔始めぇ!!〕

 

功用に対する殺意をぶつける為、小竹はその槍の穂先を目にも止まらぬ速さで突き入れた。功用は穂先に目をやるのではなく、殺意の方向を相手の視線の先を見てかわしていた。相手が一発一発が必殺の一撃となる突きを難なくかわす姿に内心焦った小竹は、侮りを捨て、ほんの少しずつ前へ進んで行く。前に進めば進む程に、当たれば体に深々と槍が捩じ込まれ、即、死に至る、当たりさえすればだが。だが、功用にそれらをあっさりかわされ、更には槍の射程外とも言える懐に気が付けば入られていた。しまったと思った時には時既に遅し、左ジャブが鼻を折り、右ストレートが顎を砕き、左フックで眉間を穿った。

 

『ゴハッ!!』

 

〔勝者、コウヨウ・カワシマ!〕

 

『うっ、嘘だろ?小竹が十秒持たねぇなんて……』

 

リベンジャーの面々は恐怖したが、そんな事お構い無しと、レフェリーは次の人間の催促をする。

 

〔リベンジャー、次鋒、前へ!〕

 

『くっ、小竹は油断しただけだ!俺が片付けてやる!』

 

次鋒の堺は、運ばれて行く小竹を尻目に、手に持つ杖を構えながら、功用へと正体する。

 

〔始めぇ!!〕

 

(なっ、何だよこいつ?!プレッシャーがぱねぇぞ!)

 

レフェリー開始の声と同時に、ギロリとした目を向けられた堺は恐怖した。炎による攻撃魔法を得意とする彼だが、魔法は魔法をイメージしてから発音して初めて発動される故に集中が必要なのだが、功用の睨みは、その集中すら乱す程に恐ろしい何かを感じた。一旦距離を取りつつ、放射状の炎を放つイメージを構築し、発音する。

 

扇状火(ショットガン・ブレイズ)!』

 

名前の如く、杖より扇状に炎の弾が数十発飛んで行く魔法を放った。扇状に飛んで行くため、かわすのは至難の技。しかし、功用はそれを鮮やかなフットワークで回避し、堺の左真横に回っていた。

 

『なっ?!』

 

『シッ!』

 

『アブェッ!』

 

後頭部に右フックを叩き込んだ。パンチの当たり所が不味かったのか、堺の左目は飛び出し、ガックリと倒れた後、鼻から大量の血が吹き出していた。

 

〔しっ、勝者、コウヨウ・カワシマ!〕

 

レフェリーもその様に思わずどもってしまう程の瞬殺劇だった。功用はリベンジャーに向かって爽やかな笑顔でいい放つ。

 

『次、どっち?』

 

『くっ……中西、俺が二人の仇取ってくる!』

 

若干ビビりながらも、副将及川がリングに上がった。レフェリーの開始前に、既に足と手首の先に青い光が漂っている、どうやら肉体は強化済みらしい。

 

『やる気のあることで、いいこといいこと♪』

 

『ふざけんなよ糞無能!』

 

〔始めぇ!!〕

 

レフェリーの声と同時に、及川は大地を蹴り、功用との間合い数mを一気に詰めた。上位の肉体強化魔法、限界肉体強化(ハイパー・ドーピング)により、常人では考えられない身体能力を獲得、これにより視角に入っている功用が棒立ちの常人に見える事で恐怖も無く真っ正面から殴り飛ばせる……しかし、功用はそれを敢えて脱力した状態で受け流した。顔に拳がめり込みながらも、及川の方には感触が感じられない。それどころか、パンチの流れで体が浮き足だった姿勢になった。次の瞬間、視界から離れたボディに右アッパーがめり込んでいた。自らのスピードと功用のパンチの威力が襲いかかり、及川は堪らず胃の内容物を吐いた。

 

『うぇ、げぇぇ!チクショウ、無能認定ごときがぁ!』

 

吐きつつも及川は立ち上り、怒りのまま功用へと拳をふるうが、拳を左ジャブで流され、視線が別方向に行った直後、右フックが深々と及川の鼻を潰し、そのまま勢いを殺す事無く顔面を陥没させた。

 

『みぎぁっ……』

 

形容しがたい声を漏らしながら、及川は地面に突っ伏し、失禁した。

 

〔……勝者、コウヨウ・カワシマ!〕

 

『え……マジで……』

 

中西はリベンジャーの面々が負ける姿を認識出来ないでいた。

 

『さぁて、レフェリー、俺これで降りるわ。後は山賀君、宜しく。』

 

『了解、背負い投げの威力を確認してくるよ。』

 

『なっ……』

 

功用達の会話を聞いた中西は更に理解出来ないでいた。まるで自分達が練習台とでも言わんばかりのそれに、怒りよりも恐怖が支配していた。しかし、中西はこのまま引く事が出来ないのも悟っている。中西は恐怖を押し殺し、リングへと上がった。

 

『拉致同然にこの世界に来て、どうにか有能認定を受けて、こっちでの生活が安泰したんだ、なのに無能認定の人間に負けるとあっちゃ全てがおじゃんだ!』

 

『心配する必要、無いよ。私達の活躍はあの第一王女すら認めた……無能だなんだと抜かす馬鹿貴族とは縁を切る方がいい。』

 

非常に穏やかに、しかし冷気すら感じさせる声で山賀が中西に語りかける。いい加減無能無能と言われて腹が立っている為、無能認定を矢鱈と見下す輩には容赦しないが、山賀も、有能無能に関わらず、この世界に拉致された被害者同士故に、そのような拘りは捨てて欲しいと思っていた。だからこのような怒りと哀れみの声になるのだ。中西もその気持ちを察した上で、

 

『確かに……スポンサーのハミル伯爵の顔に泥塗るのも悪くねぇ、ならば本気でやってくれ。俺だってあんたらに喧嘩売った以上は引くに引けねぇからな。』

 

『分かった……ならば本気でお相手する。』

 

〔始めぇ!!〕

 

中西は懐から小太刀を取り出した。そして魔法を付加する。

 

炎熱付加(ヒート・エンチャント)、行くぜ!』

 

中西はやや離れた間合いから小太刀をふるい、付加された炎を放つ。そしてそれを避けた山賀の直ぐ脇に灼熱を帯びた小太刀を以て山賀に飛び掛かる。山賀は小手先を握って、合気道で使われる小手返しの要領で中西を転倒させるが、直ぐ様に起き上がり、山賀の右手に太刀をふるう、それを寸ででかわす。山賀の胴着の袖が切れ、その部分に炎が広がるが、山賀は冷静に肩袖の所を破り、燃え移りを阻止する。そうこうしている間に中西は体勢を整え直し、今度は袈裟懸けに小太刀を切りつける。山賀は小太刀を半身でかわすと同時に、中西の腕を掴み、そのまま一本背負いに移行、中西は受け身を取る間もなく、背中から落ちた。

 

『ぐ……強いな……負けた……あんたら、このまま優勝するのかい?』

 

『無論だ。』

 

『なら……絶対に勝ってくれよな……』

 

中西は意識を手放した、その表情は何処か安らかに見えた。

 

〔勝負あり!勝利チーム、thePROUD!〕

 

割れんばかりの歓声が会場を包んだ。もはや、会場の観客達に、無能有能の類いで判断する者は皆無だった。

 

 

 




バトルがまだ単調ですね……次の試合辺りから捻ったバトル描写出来るよう頑張ります。
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