異世界で格闘しますた‐スキルなんて無いが、格闘技術はある‐ 作:劉鳳
元々短編で書いてるので、とある所で完結する予定です。
未明の街中、一組の男女が息を切らしながらとある民家の陰に身を潜めていた。
『ふぅ、今日もどうにか逃げられたね、マナちゃん。』
『ええ、タケシさん……』
二人は何者かに追われているようだった。男の名はタケシ、女はマナと其々呼びあっている二人。マナの耳はやや長く、顔も比較的整っていて白い肌をしている事から、この世界のエルフ族の女性である事が容易に分かる。着ている服はタケシと呼ばれた男のもので、下は何も身に付けていない。どうやらマナと言う女は、奴隷娼館に売られた人間らしい。タケシと呼ばれた男は、マナを連れ出した為に娼館の用心棒達に追われているようだった。話は二日前に遡る。
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訓練中だった事もあり、迷彩服にナイフ、アサルトライフルにリュックサックと言う出で立ちの中、マラソンと空手、そしてレンジャー訓練で鍛えた体をもって追ってくる兵士らを振り切って逃げおおせた。全く見た記憶の無い場所でどうするか路頭に迷っている中、真田は目撃した。服を引き裂かれ、手枷をつけられて馬車に連れられようとしている女性の姿を。真田は自らも追われる身でありながら、気が付けばその場に走っていた。
アサルトライフルの先についた銃剣で男達を切り付け、裸になっていた女性に上着をかける。そして、女性の手を取り、素早くその場から逃げ出した。
『待てゴラァッ!うちの商品をなに勝手に盗むんじゃあ!』
『くっ、やむを得んか!』
真田はライフルをセミオートにして二発男の足に弾を撃ち込んだ。男がそのまま倒れたのを確認すると、女性の手を取り、再び逃げ出した。
『こっ、こんな事したら貴方の命が……あたしは奴隷身分だからどうなっても構いません!』
『そうはいかないよ。人間の尊厳を傷付ける輩を僕は許せないものでね。さっ、逃げるよ!』
そう言うと、真田は彼女を抱き上げ、かなりのスピードで走った。
『俺の名は真田武士、この世界に無理矢理連れて来られた上に、奴隷送りにされたしがない男さ。君は?』
『マナ……この街で賎民以下の身分しかない、エルフです……』
『そうか……にしてもまだ若いな、いくつ?』
『今年で12歳になります……』
この世界には普通の見た目の人間、ヒューマの他に、様々な人種が存在する。真田が助けたマナは、150年は生き、若い時代が長いエルフ族の女性である。エルフ族は、ヴァルカ王国と一番敵対したフォーレス聖国の聖帝一族がエルフだった事もあり、根強い差別意識があり、ヴァルカ王国ではエルフ族は賎民以下の身分となっていた。更に国より合法的に奴隷身分の人間を好き勝手扱っていいと言うとんでもな法律が存在し、見た目が美しいエルフ族の女性は娼館に送られる為に拉致されると言う悲劇が頻繁に起こる。
マナは上級奴隷である賎民の家に生まれた為、本来ならば娼館の拉致は犯罪にあたるのだが、賎民の扱いは奴隷に毛が生えた程度のものだったので、そう言った法律が形骸化している為か、マナは狙われたのだ。娼館に送られる女性は服を脱がされ、手枷を嵌められる。これは娼館用奴隷に付ける事を義務化したものである。娼館の作業員達は、ただの少女であるマナをあれよと脱がし、連れて行こうとしていたのだった。
『ひどい世界もあったもんだ、いや、俺達のいた世界が平和過ぎただけなのかも知れないな……』
真田は複雑な気分になった。日本国の陸上自衛隊と言う立場にいる彼にとって、目の前の現実はやはり実感がわかないのだ。真田はまだプルプルと震えるマナの手を引きながら、少しずつ追っ手から逃れる事にした。
『マナちゃん、おうちに帰るかい?』
そう優しく問い掛ける真田に対して、マナは涙ぐみながら首を横に振った。
『あたしのパパに、売られたんです、酒代の足しにされて……襲われたんじゃなくて、もう……ひっく……』
真田は言葉が出なかった。娼館の連中が来たのは偶然では無く必然だったのだ。聞けば、マナの家族は八人家族、生活もままならない賎民の家庭で、父は一日中飲んだくれているような最低の親父、母は母で上の兄弟姉妹をこき使って働きもしない最低の人間だったと言う。この子はもう、帰る家が無いのだ。真田は言った。
『先ずは逃げて逃げて逃げまくろう。落ち着いたら、マナちゃんが嫌じゃなければだけど、一緒に暮らすかい?』
真田は、目の前の少女に、日本の実家で暮らす年の離れた妹の面影を見た。マナはゆっくりとだが、首肯した。吊橋効果もあるのだろうが、マナは真田を信じる事にしたのだ。
『にしても、追っ手がしつこいな。』
馬車から逃走した者は普通そこまで追いかけられる事は無い。奴隷が逃げ出す事は珍しくない上、買い手がつく前の異世界奴隷が闘技場等で決闘者登録すると治外法権で捕まえられなくなる。その為、城からの追っ手は直ぐに諦めるのだが、今回は違っていた。どうやら目的は真田ではなく、連れているマナのようである。
エルフ族は見た目の平均値が比較的高く、長寿な上に若い時代が長い為、性奴隷としての人気は犬猫系の獸人に次いで人気がある。娼館の作業員達が血眼になって探すのは自然と言えた。かつ、裏世界の人間と言うのは体裁や面子と言うものに異常な拘りがある。
(ヤクザに手を出したようなものだからな……)
真田は手持ちの武装を確認した。アサルトライフルは残弾が二十数発、先端に取り付けられた銃剣、腰に下げているナイフ、それが武装の全てだった。
『敵が裏世界の連中か……せめてマナちゃんだけでも助けられたら……』
真田は民家の陰に隠れながら、自分達を匿ってくれるような人物がいないか思案した。裏世界、しかも娼館に売られたとなれば、マナの心身はズタズタになろう、しかし、この世界における奴隷の扱いは此方に来てから自分が経験している。売られて好き放題される運命は必至。
真田は、一軒のやや大きな邸宅に目をやった。下級貴族の家だろうか?この世界での下級貴族は、奴隷身分の人間を使用人として雇い、娼館奴隷等と違い、比較的マシな扱いを受けると言う。真田は自分の考えをマナに伝えた。
『貴方の思うように致します。あたしは奴隷ですので……』
身分制度が生まれながらにして徹底されているのだろう、マナは大人しく従っている。その様に悲しい笑顔を見せながら、真田は、一軒の邸宅へとかけて行った。
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『……そるで、わたしの家に来たんでしゅね?』
真田達は運に恵まれた。逃げた場所はアルの邸宅、しかも異母姉や使用人がいない時間帯であった事も幸いした。小さな当主は、二人の格好を見て察していた。奴隷身分の人間が脱走する話は頻繁にでは無いものの、良く起こると言う。逃げた奴隷は少しでも身の安全を確保出来る貴族のもとへと自らを売り込みに行く事も珍しくない。
『アルクルス様、無礼を承知で申し上げます、私、真田武士、異世界よりやって来た者であります!
奴隷馬車より逃走中、身売りに出されそうになったマナちゃんを放っておけず、彼女を連れ出し、挙げ句の果てに貴方様の邸宅へと転がり込んでしまった事、私に対する処分は何なりと受けます!しかし、この子だけは、どうか寛大な処遇を……お願いします!』
『うーん、どうしましゅか?皆しゃん。』
アルはそう言うと、物陰に潜んでいた功用達に呼び掛けた。
『アル、彼らに敵意は無いよ。それに、真田さん?あんた自衛隊員だね?アル、向こうの世界の兵士は強いよ、戦力どころかメインになれる。』
功用は自衛隊員の強さを知っている。アマボクシング時代、自衛隊出身のボクサーと対戦経験があった。高い持久力と打たれ強さは彼を感嘆させ、KO勝利ではなく手数による判定と言う、アマボクシングに多い戦い方をせざるを得なかった。
『川島さんが言うなら文句無しッスよ。ただ、そこの彼女についてはどうします?』
『お姉しゃんには、わたし達のサポートに付いてもらいましゅ!サナダしゃんもその方が嬉しいでしょ?』
『よっ、よろしいのですか?』
『もちろんでしゅ!ただ、奴隷としては扱いましぇん、お手伝いのお姉さんとして、ちゃんと雇う形でしゅが……だめでしゅか?』
可愛いアルの潤んだような目でそう言われると、誰も否定的言葉が言えなくなってしまう。
(ふふっ、アルは無自覚な人たらしだな、そこが良いんだけど。)
『ぜっ、是非宜しくお願いいたします!改めまして、マナです!賎民の出の為失礼な所もありますが、宜しくお願いします!』
『真田武士、25歳!自衛隊と言う軍的な所で働いていました!私の戦闘技術がこの世界でどの程度通用するかは分かりませんが、アルクルス様に恥じぬ働きをしてみせます!』
真田武士 25歳
身長171cm 体重68kg
スキル無し、無能認定
某県陸上自衛隊レンジャー・剛柔流空手二段
全国高校空手道大会ベスト4
戦績 空手18戦15勝3敗
マナ 12歳
エルフ族
身長143cm 35kg
賎民階級(父に売られた為身分無し)
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一話辺りの文字数はどの位がいいですか?
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1000字程度でよかよ
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2000から3000字程度は欲しい
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3000字から5000字は無いとね
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5000字以上は書きやがれ