異世界で格闘しますた‐スキルなんて無いが、格闘技術はある‐ 作:劉鳳
スキルとかチート有ながら、そこまでの脅威に感じないのは小生の力量不足かな?
とは言え、スキル持ったからって何でもありなんてご都合主義はそれこそ無ぇよと叫んじゃいます。
あれよと言う間に四人もの決闘者が集まった。今現在功用達はアルの異母姉達を集めて顔合わせをしている。功用と竹田はガウン(この世界にもあった)を着て、山賀は柔道着、真田はレンジャー服、マナはメイド服に着替え、見た目もパリっとした印象になった。
『マリーナお姉しゃま、決闘者四人、集めました。』
異母姉マリーナはどうにも納得が行かない様子で並ぶ決闘者達を見る。どうやらアルが決闘者を集められる等想像は出来なかったようだ。使用人達の目も侮りから困惑した顔を浮かべている。
『ふん、愚弟にしては中々やるわね。でもおあいにくさま、私の決闘者に勝てるようでなければ認められないわね。』
功用はまあそう言うオチだろうなと別に驚きもしなかった。貴族とは面子ばかり気を使うものだと言う考えだったので、ならば力で捩じ伏せるだけだと思っていた。
『面白ぇ、あんたの決闘者、正確には先代の雇っていた決闘者の四人、連れて来なよ?スキル持ちがどんだけのものか、計りたいしな。』
功用の目は獰猛な獣のように輝いていた。アルに対する態度、これに対して腹が立っていたのもあるが、スキル持ちの人間と戦闘済みだったので、勝算は十分にあると見込んでいた。マリーナは功用の言葉と目に怯えを感じながらも、あくまで自分が屋敷のトップだと言わんばかりに声を出す。
『みっ、身の程を知りなさい、下賎なる無能者。力の差と言うものをその身に焼き付けてやるわ!』
『そのままそっくり返すよ売女……もったいぶらずに出せよ?』
功用のフラストレーションは溜まっていた。タイトルマッチを邪魔されて以来、功用は我慢に我慢を重ねていた。その姿に危険な香りを察したマリーナは、屋敷の中庭に彼らを連れて行く。
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『ヒソヒソ……(川島君機嫌が悪いね、竹田君は知っている?)』
『ヒソヒソ……(川島さん、世界タイトルマッチの試合の直前に飛ばされたんですよ……王者マイケルとの世紀の一戦に命懸けてたんですから、気が立つのは仕方ないッスわ……)』
『ヒソヒソ……(あっ……うん、納得……)』
王者マイケルと言う単語を聞いて、真田は功用のフラストレーションの理由を理解した。ボクシングに詳しくない人間でも知っている程の最強王者、マイケル。20回の防衛記録、現在WBA、WBC、IBFの三団体統一王者、選手層が最も厚いウェルター級でそれを成し遂げ、更に年齢はまだ24歳と言う若き天才。挑戦権を得るだけで三千万のファイトマネーが手に入り、もしも勝利できれば数億もの大金と、日本人悲願のウェルター級チャンピオンと言う称号を手に出来る。そんな大事な試合を邪魔されたとなれば、フラストレーションは溜まるはずだ。
真田は、自衛隊の駐屯地のテレビで、マイケルの試合を見た事があった。自分とそう年齢の違わない若者がリングインした様を見た彼は、戦慄を覚えたと言う。ゴングが鳴ってから僅か数十秒で相手がなすすべなくダウンした。ピクリともしない対戦相手、涼しい顔のままのマイケルと言う対比は、嫌がおうにも絶対王者の存在を示していた。
そのマイケルが、本当に対戦を楽しみにしていたのが、功用だった。アマ時代から不屈の闘志と信じられぬ程の練習を積み、勝ち続けて来た功用、プロ入り後はミドル級では無く最も層が厚いウェルター級に敢えて挑戦、日本人では不可能と言われた階級で着実に実績を伸ばして、遂にはマイケル自身が対戦を所望する程になっていった。幸運な事に、対戦が組まれていた世界ランカーが怪我の為に立て替えの選手を欲した事で、タイトルマッチが組まれた。功用は正にモチベーションを最高値に上げて……そんな中このような事態になれば……真田は功用の気持ちを理解した。
中庭に向かう間、功用はシャドーを続けていた。呼吸を整え、臨戦態勢に移行している、その目は凍てつくように冷たい。
『さあ、
安い挑発だなと一同は思ったが、功用は敢えて乗る。体もあったまり、ガウンを脱いでいつでも戦える状態になった。
『上等だよ……二度とその失礼な口聞けなくしてやる。』
『川島さん、本気ッスね。ならば僕らも……今までこっちの人間に好き勝手やられてたからね、そっくりそのまま返してやらないと!』
竹田も乗った。勝手に召喚しておいて奴隷扱いしてくれたこの世界、竹田とて腹が立っていた。それは山賀や真田も同様で、真田に至ってはナイフを研いで構えに入っていた。
『さっ、早いとこ片付けちまおう、こっちは何にも準備する暇が無かったんでイライラしてんだ、こいよ棚ぼた野郎共!』
功用は非常に悪い笑顔をしながら、親指で首を引っ掻いた。
ー
マーリナは功用達の様を見て憤慨していた、何て浅ましい連中だと。そしてその連中を集めた愚弟のなんと程度の低さよと。だがこのマーリナ自身、程度が低い浅ましい等ととやかく言えた立場ではない。妾の子供であり、先代当主たる父が亡くなった事で母と結託して遺言をでっち上げ、決闘者を掠め取った。
先代当主がスカウトした召喚者は皆有スキルかつ有能認定持ちと言う者のみ、これ等を引っ提げて大会登録すれば貴族として安泰、現当主であるアルを合法的に廃嫡出来るとあっては、アルに対する扱いが辛辣になるのも納得だった。更に使用人達に根回しをし、自分こそが真の当主であると認めさせるようにしていた。
(無能者風情が舐めた態度を取った事、後悔させてやるわ!)
マーリナは顔を歪め、高らかに宣言する。
『アルクルス、貴方のその烏合の衆が万一勝ったら、何でも言う事聞いてあげるわ。尤も、無様を晒す事になるでしょうけど。この戦いに負けたら、貴方は当主を剥奪、男娼館に売り付けてやるわ!あっはっはっはっ!!』
『いいでしゅよ、わたしはもう覚悟は出来てましゅ、コウヨウしゃん、皆しゃん、絶対に勝ちましょう!』
『『『『応!!』』』』
ー
マーリナ側の召喚者四人は功用達の姿を見てほくそ笑んでいた。異世界に相応しくない格好をしている四人を哀れむような目を向けている。
『アルクルス坊やの決闘者、だせぇ格好してんな、格闘家気取りって奴?勇作よぉ、軽くとっちめてやろうぜ?』
『何のスキルもない無能者がお嬢様に減らず口を叩くとは……笑止!』
『どんな奴でもいいけどさぁ、こいつら殺しちゃってもいいのよね?』
『好きにしろ、どちらにせよ、我々に勝てるような奴はいない。』
四人の召喚者は正に此方を馬鹿にしたような態度を取っていた。真田や竹田は今にも飛び掛からんとしていたが、一番闘志剥き出しの筈の功用は冷静だった。唯一有能者を倒していながらも、相手の出方、能力が未知数故に、侮らない。
『竹田君、先鋒、行ける?』
『良いッスけど、川島さん、一番やる気だったんじゃ?』
『俺はこっちの世界に来て有能者と対戦経験がある、まだ未経験の君達に実践を以てどのようなものか経験してくるといい。』
『了解です!手心は?』
『……手心って、なんだぁ?……これが答えだ、行ってこい!』
『!!……ふふっ、わっかりました!』
功用の声に笑顔で手を振り、竹田が前に出る。対するマーリナ側は、大剣を持った男が前に出てきた。体は大剣に比べてやや華奢だが、スキルか何かで強化しているのか、軽々と持っているようだった。竹田は紐製のバンテージを巻き直すと、構えを取った。
『へっ、ムエタイだっけか?だっせ!俺の剣の前では無力な事を教えてやるよ!
男はそう言うと突如筋肉が膨れ上がり、元の二倍はあろうかと言う横幅になった。そして大剣を中段に構え、横凪ぎに振った。避ける間もなく竹田の体は真っ二つ……にはならず、ウィービングでかわし、大剣を持つ手に前蹴りを入れた。
『ウガッ!』
『イエアアア!』
雄叫びと共にドスッと言う音が響き渡る。大剣を蹴り落として直ぐに、男の首を掴んで、渾身の膝蹴りを入れたのだ。鼻が潰れ、顔面が凹み、男はそのまま崩れ落ちた。
『まっ、松田!』
『ちっ、何かチート使ったんじゃね?松田がこんな簡単に落ちる訳ねぇ!』
『そおよ、ズルしたんでしょ!』
『ズルじゃねぇよ、ムエタイの修業をガチガチにやった人間の本気だ、馬鹿共。』
功用はチートだズルだと叫ぶ連中に睨みながらそう告げる。得物を持った人間に手心を加える程、相手を舐めはしない。
『ならば俺が行く!ズルで勝つ奴等に負けるかよ!』
『川島さん、今度は私が行こう。彼等の物言い、私も気にくわなくてね……』
そう言うと山賀は、胴着の帯を絞め直し、前へ出た。世界レベルの柔道家の本気の目を見た功用は首肯だけしてそれを見送る。
『へっ、胴着着て格闘家気取りかよ、中二病拗らせてんなオイ!柔道なんて体育の授業で習うお遊戯だろが!』
『あー……あいつ死んだわ。』
『……世界選手権に出る程の人間に一番言ってはならない言葉ですね。』
『とりあえずあの男に言おう、御愁傷様……つーか本気の目だあれ、怖い。』
山賀の目は人を殺す目に変わっていた。柔道一筋に打ち込んだ人間の前で、お遊戯だの中二病だの叫ばれて笑顔で返すのは正解ではない。短剣を逆手に二本持ちながら山賀に向かう男に対するアンサーは勿論……
『うるああっ!!』
『アバッ!』
手加減抜きの背負い投げだった。手に持った短剣の片方を出した瞬間に腕を掻い潜り、相手を掴んでそのまま投げ返した。受け身も取れぬまま頭から落ちた男の首はゴキリと言う嫌な音を立てて減し曲がった。
『柔道がお遊戯?これでも言うか貴様……』
『おっ、あ……』
動けなくなった男を一瞥して、山賀は後ろに下がった。
『山賀君、ご苦労様。俺も気持ち凄く分かるよ……』
『ありがとう川島さん、ちょっとすっきりしたよ。』
二人が簡単に敗れる様を見て、マーリナは開いた口が塞がらない。
『ところでマーリナ嬢、この決闘、勝ったら何でも言う事聞くんだよね?取り消しは無効だからね。』
『うっ、く……』
抑揚の無い、刺すような言葉で牽制する功用に、マーリナは背筋が凍った。
ー
あれよと言う間に二人が敗れる展開、勇作と呼ばれた男は不機嫌な顔を隠さなかった。
『ちぇっ、二人共あっさり負けやがって。油断するなってふだんから言ってんじゃんよ。』
勇作と言う男はつまらなそうにそう言葉を続けた。どうやらこの男が四人の中で最強の戦士である事を言葉から感じたが、功用は全く脅威を感じなかった。
『優花、そう言うわけだから、本気でやっちまいな。』
『そうね、初めからそうすれば調子になんて乗らせ無かったのに……はぁ、このダサ男達倒したらちゃんとしたのをスカウトしてもらいたいわね。』
嫌みったらしくマーリナに向けていい放つ優花と言う女に、マーリナはくっと声を漏らしながらも我慢した。目の前の二人は王族を守る近衛兵よりも強いのだ、ここまでの強さを持つ召喚者はそうそういない為、マーリナは彼等の不遜な態度を咎められないでいるのだ。
一方の功用達は、真田と功用のどちらが出るか話し合っていた。
『次は女か……姫をぶん殴った手前言うのもなんだが、俺は女に手を出すのはな……』
『僕もだよ……でも、ここは僕が行くよ。なんたって君は大将だからね、あの生意気な優男を倒して伸びた鼻をへし折ってもらいたいな。』
『真田さんがそう言うならお言葉に甘えて……真田さん、ナイフと銃剣付きの小銃を持っているって事は……』
『勿論、手心は無用って意味さ。』
レンジャーになる程の男の目は、完全に娑婆の空気を消し去っていた。前に出る前に、真田はマナの方に近付き、肩を叩いた。
『マナ、僕の戦いは君には刺激が強いかも知れないけど、大丈夫?』
『大丈夫です、タケシさん……どうか死なないで!』
そう言うマナを安心させるように真田は抱きしめると、前へと進んだ。
『へぇー、エルフのお姉ちゃんとそう言う仲なんだ。格好つけちゃってさぁ、戦場でそう言うのは甘ったれた兄ちゃんがやるものだって習わなかった?』
馬鹿にする優花の言葉に、真田は〔嗤って〕こう返した。
『自衛隊ではそんな事は習わないし、そんな言葉は存在しない。ただ冷静に任務を遂行する事を旨とするからな……』
獣が口を開けて獲物に威圧を与えるかの如く、真田の笑みは獰猛になった。先程まで軽口を叩いていた優花が押し黙り、手に持つ杖を前に出し、ブツブツと何かを唱え始めた。
『身体強化
あらゆる感覚を強化していく。どうやら嘘偽り無く本気で倒しにくるようだった。対する真田は、小銃を構え、体を半身にしていた。
『死になさい……
向けられた杖の先から、直径1mはあろうかと言う火の玉が発生した。避ければ後ろにいるアルやマナと言った非戦闘員が無事では済まないだろう。かといって避けねば大火球にぶち当たり、その身が焼かれるのは目に見えている。
『あはは、どう?ねぇ、今どんな気持ち?避ければ後ろに行く攻撃を前にしてさぁ?きゃはっ!』
しかし真田は嘲る相手に表情を変えぬまま突進していく。小銃を構えながら突き進むその様はまるで悪鬼のようである。
『狂ったの?!ならば死ね!』
優花は怯みながらもバーニングの魔法を放つ。放ちながら打った方向から遠ざかる辺り、強者だなと冷静に判断しながら、真田はバーニングの魔法を、銃剣で斬って真っ二つにした、バーニングの魔法は真田のいるすぐ横に落ち、炎を上げた。
『きっ、斬ったのあれを?!ならば今度は斬られないようにしてやるわ!
優花は空中を浮遊した。高さ5m程の所で、魔法を詠唱しようと杖をかざす。しかし真田はセミオート状態の小銃で、数発上空にいる彼女を狙撃した。
『ひぁっ!危ないわね!卑怯よ銃なんて使って。』
『今更だろ?お嬢さん。』
小銃の狙撃が肩に直撃して上空から転げ落ちながらそう叫ぶ優花に、真田は冷めた笑みを浮かべながら短く答える。
『こんちくしょー!』
馬鹿にされた優花は限界ギリギリまで強化した肉体をもって、真田に飛び込む。人間とは思えぬ速さで手に持つ杖を叩き込もうとした、しかし真田はそれにカウンターで小銃の銃底で優花の胸を突く。
『おっ、おぇ……ゴパァッ!』
自らの身体強化によるスピードがプラスされた状況でカウンターを貰った優花の胸は胸部陥没、心臓に骨が刺さる重傷を負い、大量の血を吐き、そのまま倒れた。
『強かった……けど、動きは素人だった、それが敗因だよ。』
そう一言発すると、真田は背を向けて功用達の元へ下がった。
ー
『初めて人を殺した……気分の良いものじゃないな。』
『国民の命を守る自衛隊員だったもんね真田さん。』
『でも、タケシさんがそうしなければ、タケシさんが殺されたかも知れない……だからそんなに落ち込まないで。』
『……ありがと。』
遂に残りの一人となってしまったマーリナ側、マーリナはガクガクと膝を震わせていた。スキル持ちが無能者こんな簡単に敗れる等……一方の勇作は優花の亡骸を見て激しくキレていた。
『可愛い優花の体を、こんな醜くしやがって。てめぇら生きて帰さねぇ、殺す、殺してやる!』
邪悪でデカイ気力と言うものを発した勇作に、一同は顔を青ざめた、ただ一人を除いて。
『マイケルに比べたら、なんて事無い気迫だな……まだデビューしたての頃の四回戦ボクサーの方が怖かったぜ?』
功用は首をコキコキと鳴らしながら、勇作の目の前に立った。軽くステップを踏みながら、必殺の間合いを冷静に詰めるかの如く。その様が気にくわなかったのか、勇作は力を顕現する。
『無能風情が、舐めんなよコラ!
見える攻撃を全てかわす絶対回避のスキルと、攻撃を必ず当てる必中のスキルをまといながら、勇作は突進した。肉体強化は予め施している辺り、この男の卑屈さが出ている。功用はピーカブースタイルで構え、その時を待つ。
(へっ、ボクシング崩れが!カウンター狙いなのは見え見えだっての!)
勇作は功用の動きを冷静に見ながら、敢えて攻撃に移らず、超スピードで功用の横に回った。
『これが異世界における本物の格闘技だ、死ね!』
勇作は拳につけたメリケンサックで功用の横面を殴り抜いた。功用はぐらつき……はせずに、殴った側に移動して、〔視界に入らない〕方向から左フックを勇作のテンプルに打ち込んだ。勇作の脳はぐるぐると揺れ、自分に何が起こったのか理解が及ばない。
『おう、エレレレッ!っばがな、こ……なばがな!』
『シッ!!』
風景が揺れ動く様に気持ち悪くなり、嘔吐する勇作、そこに間髪入れずに逆方向から功用はテンプルを殴り抜き、更に視界から離れた顎に渾身のアッパーを炸裂させた。顎が砕け、歯が二本程砕けて、首も後ろに曲がっていたが、功用は容赦なくがら空きになった鳩尾に右ストレートをめり込ませた。
『おっ……が……』
体がくの字に曲がり、その体制のまま、勇作は倒れた。ピクリとも動かぬ勇作の口からは、ヨダレと血が溢れ、股は糞尿を垂れ流すような状況、マーリナやマナはそれを見て激しくえずいた。アルは竹田が目を覆っていたので見る事は無かったが、功用が勝利した事を、功用の言葉で察した。
『貰いものの分際で本物の格闘技を騙るな……』
こうして、アルは晴れて正式な当主としての権利を得られた。
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一話辺りの文字数はどの位がいいですか?
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1000字程度でよかよ
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2000から3000字程度は欲しい
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3000字から5000字は無いとね
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5000字以上は書きやがれ