異世界で格闘しますた‐スキルなんて無いが、格闘技術はある‐   作:劉鳳

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戦っていないので本編なのに幕間扱いにしました。

後誤字脱字が気になったので再編集してます。


インターバル 精算と功用の過去

 

『さて、お仕置きの時間だよ?馬鹿共。』

 

言葉とは裏腹に無表情な顔の功用。目の前には全裸に剥かれたマーリナと使用人達の姿が。何でもすると言う事で、お仕置きをするとアルに伝え、アルもそれを了承した。因みに夜の時間帯なのでお仕置きは任せて寝なさいと伝えたので、アルは部屋で穏やかな寝息を立てている為、ここにはいない。また、他のメンバーも各種準備や片付けがあるため、功用にお仕置きを任せているため、ここには功用と敗者の側に付いた愚か者しかいない。

 

『全裸に土下座、もうこれだけで十分な辱しめだ……と、思っているのなら甘い。あのあどけない少年にしでかした事を、その程度で終わりと思っているのならな。

 

それに、口は悪かったが決闘者らは本気で戦って死んだんだ、お前らだけ何とも無しなんて、あいつらと同じ世界にいた俺が許しゃしねぇ。』

 

功用は、口では格闘技を騙るなと言ったものの、死闘を演じた者への敬意は払っていた。召喚されて人生が変わってしまった彼等に対し、同情の心はあったのだ。

 

『確かそこの雌豚、アルに対して糞にも劣るとか抜かしたらしいな?

 

そっちの売女はアルにろくな食事も与えなかったと、温かい飯は外でしか食べた事が無いと聞いた。

 

そっちの糞ガキ、アルに対して虐待をしていたと、アル自身の口から出た言葉だ。

 

そっちのキチガイババァ、アルの教育係であるにも関わらず、アルにろくな教育を施さなかった。

 

そしてその元凶が貴様ら二人だ。俺はな、いじめだ虐待だやる人間の事を、人間とは認めねぇ、豚や犬に例えたらそれらの動物に失礼だから言う。貴様らは糞以下だ、おっと糞に失礼だったな。』

 

功用の言葉に、皆が皆、震え上がった。目の前の男は、何かをやると言ったら必ずやる、そんな凄みを持っていると。

 

そんな彼が、これ程怒りに震えているのは、凄惨ないじめを受けた幼少のトラウマ、功用にあるのはそれだった。

 

 

川島功用、彼は生まれてから幼稚園に入ってすぐにいじめを受けた。決して裕福でない家の出自を嘲笑った保護者連中の態度から流れで幼稚園の子供達は彼をいじめた。

 

そのいじめは小学校に上がってからも続いた。教科書を隠されたり、破られたりは日常茶飯事、靴に画ビョウ、給食に唾、挙げ句の果てには両親が離婚して片親で生活保護家庭である事を理由に、教師から今自分が生きているのは皆さんのお陰ですと作文を参観日で読まされたりと、周りが皆敵だった。

 

そんな彼を、母親は優しく、時に厳しく育てた。学校が彼を守ってくれない事を知っていたので、塾に通わせたりして授業の埋め合わせをするよう尽力した。どうにか生きる気力を無くさぬよう灰色の小学校生活を終えた頃、彼に転機が訪れた。

 

中学校に入学した時、とある当代最強と言われた日本人ボクサーの試合を見て、感銘を受けたのだ。その人も自分と同じくいじめられた学校生活を送っている中、ボクシングと出会い、楽しみを見つけた事、ボクシングによって灰色の人生に彩りが付いたと言う事を聞いて、功用はボクサーになる事を決意した。

 

彼にとって幸運だったのは、中学校にボクシング部が存在した事だった。かつボクシング部の顧問や先輩達は厳しくも優しい人々であった事で、自分を変えたいと懸命に部活に励む彼をサポートしてくれた。

 

そんな彼は、中学校のクラスメイトとなっていた小学校からのいじめっ子に、相変わらず酷い仕打ちを受けたが、ボクサーは一般人を傷つけるなと言う顧問の言葉を守り、決してやり返さなかった。そして部活に本気で打ち込み続けた功用は、高校に上がってから県大会で優勝し、学校の有名人となった。強くなり見返す事により、いじめは無くなったが、いじめっ子達を決して許す事は無かった。有名になってから今までの行為を無かった事にしようとする、反省なんてしていない人間に慈悲は向けない。

 

それを決定づける事件が起こったのは高校二年の時、中学校で出来た友人が、不良グループに怪我を負わされると言う事件が発生、功用は友人から話を聞き、犯人グループの一人が小学校、中学校時代に自分をいじめ続けた人間だった事を突き止めた。

 

彼は単身犯人グループの所へ乗り込んだ。この時はまだ話し合いで解決するつもりで……しかし、乗り込んだ先に見たのは、幼気な少年少女に性的暴行を加えていた姿だった。功用はこの時、人生で初めてキレた。少年少女を助け出して逃がし、二人が見えなくなった所で数人の不良達をボコボコにした。顔面が陥没し、胸にも大きなくぼみが出来る程の状態になるまで拳をふるい続け、不良グループ達はその怪我が元で死んだ。

 

功用は我にかえった時にそれを見て、自らの行いに恐怖したが、少年少女らにあれだけの事をした不良グループを許す気にはどうしてもならず、自首もしなかった。功用はこの事を誰にも話さず、また、事件の被害者である少年少女達も口を閉ざしていたからか、表になる事は無かったが、その日以来、不良やいじめ加害者を見つけては仕置きすると言う行為を続けた。

 

『人を傷つける資格があるのは、自分がこうなる覚悟があるものだ。』

 

功用自身の心に出来た闇、それは辛いいじめの記憶だった。彼はいじめをいじめと言わない、人権侵害であり犯罪と断ずる。それでいて自分自身の行為も、決して褒められる事の無い、最悪の行為である事も自覚していた。

 

『だからボクサーとしてリングに立つ時位、自分は弱い人間の光になりたい。』

 

元いじめられっ子のボクサー、彼は略歴で中学校までのいじめ経験を語った。ボクシングと出会い、鬼のような練習を積み重ね、元いじめられっ子は世界ランカーへとかけ上がっていく。

 

 

ふと、過去の記憶がフラッシュバックした功用。今自分がやっている事はいじめでは?そう思ってはいたが、あくまでも辱しめを感じる状態で今までの罪を償って貰うに留めようと決意した。

 

決闘者を殺めた手前、奇麗事を抜かすなと別の自分が囁くが、だからこそ別の自分に言うのだ。

 

『あっちの世界ではリング上で紳士を気取っていたが、今度は逆にリング上で悪魔になるんだ。お仕置きと言うならば殺すのは違うだろ?』

 

歪んではいたが、己に焼き付けたポリシーは守る。意地では無い、川島功用としての矜持であった。

 

『貴様ら、一からやり直せ!アルクルスに二度と近寄るな!分かったらそのきたねえ裸のままとっとと失せろ!』

 

『ひぃぃぃ!』

 

『おっ、お助けぇぇ!』

 

土下座状態から皆が裸のまま屋敷の裏側へと逃げて行った。屋敷の裏側に位置する地域は、賎民達の住む地域、身ぐるみ剥がされた人間でも、助け合う心が幾分残っている所だった。功用は少しでも反省して、彼等が真人間に戻る事をほんの少し祈りながら、アルや仲間達のいる所へと戻って行った。

 

 

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