異世界で格闘しますた‐スキルなんて無いが、格闘技術はある‐   作:劉鳳

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第6ラウンド 異世界戦士達の日常

 

マークス家に、新しい使用人がやって来た。と言っても、マナの兄弟達であるが。両親はマナを売った張本人の為、端から呼んでいない。マナの兄弟達の他には、先代当主時代に働いていた女性の息子と、下級貴族の末っ子の娘を使用人として雇用した。先代当主の使用人の息子は犬系の獣人(犬耳と尻尾を付けただけの人間に見える)で11歳の賎民、下級貴族の末娘はハーフオーガの13歳、そしてマナ達はエルフ族で一番上が15歳で一番下が5歳の六人。決闘者四人を含めて十人以上が当主であるアルの元で働く事になった。

 

『きっ、緊張しましゅね……』

 

『なーに、すぐ慣れるって。五歳でここまでしっかりしてる人間はそうそういないんだ、自信を持って。』

 

『コウヨウしゃん……』

 

アルは当主として初めてそれらしい立場に立つ事になり、緊張の面持ちであった。無理もない、今までが賎民よりは幾分かマシ程度の扱いを受けていたのだから。

 

そんなアルに優しい表情で頭を撫でるのが功用だった。本来当主たる人間にこのような事をするのはご法度であったが、アルは最初に出会った決闘者である功用の事を兄のように思い、甘えていたので誰も咎めない。

 

因みに決闘者の代表たる大将の身分は、伯爵より上の身分の貴族の所にいる場合は伯爵、それ以下の場合は当主のすぐ下位の身分になる。アルは下級騎士爵の為、功用は市民階級となる。他の決闘者はその一つ下、平民階級。このように身分がはっきりする事でそれなりに自由がきくようになるのだ。尚、功用が姫を殴った事については外聞がよろしく無いと王国側が判断したのか、無かった事にされたようで、御尋ね者にすらなっていない。

 

『さてと、中庭にトレーニング器具を置きたいって話だけど、功用さん、アル様、話は付きましたか?』

 

『はい!皆しゃんのご要望に出来る限り答えられるよう、頑張りました!』

 

アルの返答は明るかった。元々トレーニング器具と言っても、この世界に存在する魔法具や剣類、防具に比べて安上がりなものばかりである。やや値段がしたのはダンベルやバーベルと言った金属製品だったが、それらも剣に比べると格段に安いものだった。

 

『一週間位で全てが整いましゅ、皆しゃんが十分に戦えるよう、後は食事をしっかり作ってもらいましゅね。』

 

『ありがたい、糧食は最重要故に非常に助かります、当主殿、感謝します。』

 

『た、タケシ兄しゃんはそんなに畏まらなくてもいいでしゅよ……』

 

『そうですよ、アルさんの言う通り、フランクに行きしょ?まあでも僕らはさん付けさせて貰いますけど。』

 

『うん、そうだね。確かにさん付け位は残しとくか、これから高い身分の人間と顔を合わせる事も増えるだろうからな。アルさん、それでよろしいかな?』

 

『はい!それでいきましょう!』

 

アルの緊張が解けた所で、功用はランニングをしようと持ち掛け、全員がそれを了承した。立ち技、寝技に限らず、基本にして至高とされるトレーニングはランニングである。心肺機能の向上、足の筋持久力を向上させると同時に、体幹を鍛え、全身をバランス良く動かす万能な運動である。

 

『各々自分のペースで、行くぞ!』

 

功用が先頭を走る。ボクシングは大会によっては最大15ラウンドを戦う事もあるスポーツである、その持久力は折り紙付きである。その功用に普通に付いていけるのは自衛隊員である真田、しかもアサルトライフルを手に持ちながら走っている。

 

『流石だ、真田さん。』

 

『ふふっ、自衛隊の基本だからね、これ位ウォーミングアップさ。』

 

話す余裕すらある二人の後ろを竹田と山賀が、やや汗を流しながらついていく。彼等も持久力を養う為にランニングを取り入れてはいるが、ボクサーと自衛隊員のペースに合わせるとなるときついようだった。

 

『ハッ、ハッ……あの二人持久力お化けだよ……』

 

『本当に……ふっ、……そうだね……はぁっ、はぁっ……』

 

それでも余り遅れない辺り、この二人も持久力は高いようである。功用は様子を見ながら、ちょうどいい街角の間を見つけ、ランニングメニューに追加を入れた。

 

『あの角からあっちの角を10往復、全力ダッシュだ!辛い時は自分のペースで、行くぞぉ!』

 

『了解!!』

 

『『えー?!』』

 

功用の声に真田は答える。二人の底なしの持久力に、竹田と山賀は思わず開口したが、体は付いていっている。体に熱を帯びながら、全力ダッシュを繰り返す。ダッシュが終わると、マークス家へとまた最初のペースで戻って行く。

 

『ふぅ、中々にいい汗をかいたね。さて、次は?』

 

『腕立て伏せ行きますか?』

 

山賀の提案で腕立て伏せを開始する。腕立て伏せは自重で行う筋力トレーニングであるが、上げ下ろしの速さ、腕の基本位置で負荷が変わる。腕への負荷をかけたいならばゆっくり下ろして上げると効果が高い。速い腕立て伏せ百回よりも、ゆっくりとした腕立て伏せを20回行った方が効率も効果も高い。

 

『よし、これまた自分のペースで、限界までやるぞ!』

 

『『『応!!』』』

 

こうして腕立て伏せを開始した。因みに功用と竹田は30回3セット、真田と山賀は50回3セット、上げ下ろしをゆっくりとした腕立て伏せを行った。

 

『うっ、腕パンパンッスよ真田さん……』

 

『ふふっ、竹田君は一番若いからそのうち慣れてくるさ。功用君も山賀君も中々やるな。流石トップアスリートだ。』

 

『レンジャーの真田さんに付いていけるだけでも収穫だね……さて、この後は腹筋とスクワット、そして其々の格闘技を知るためにスパーリングだ。』

 

『世界ランカーとのスパーか……マジでお手柔らかにお願いします……』

 

まだトレーニング器具が揃っていない中での本格スパーリングは行わないつもりである為、竹田の思いは杞憂なものに終わるのだが、実戦感覚は養った方が吉と皆が思っている。トレーニングはまだまだ続くのであった。

 

 

 

『おっ、落ち着かねぇ……』

 

トレーニングを終えた竹田は、マークス邸宅の様子を見てそう漏らした。自分よりも年下な使用人達の、一生懸命にやってはいるのだが何処かお遊戯とかおままごとにしか見えない掃除や料理作りを見ての感想である。

 

『あー、レン君ここどうやって切るのぉ?』

 

『ミーちゃんこれはこう切るの、大丈夫だよぉ。』

 

『リョー兄こっちのお掃除ってどうやるのぉ?』

 

『えっとね、確かこうしてこう、だったよぉ。』

 

見ていて危なっかしい手つきであった。包丁で材料を切る時の手つきが猫の手になっていなかったり、ホウキの掃き方が掃くと言うより埃を立てるように見えるのだ。

 

『まったく……これじゃマナちゃんのお姉さんや兄さんが過労死しちゃうよ……』

 

『うむ、ならば僕が料理の手伝いをしよう、自衛隊で調理はやっていたからな。』

 

『私は掃除を。道場の朝練前に毎日していたから、彼等に手解きを教えよう。』

 

『マジッスか真田さん、山賀さん……』

 

『彼等を見てると、道場の小さい子ども達を思い出してね……』

 

『僕も似たような感じだね、さっ、行こうか?』

 

こうして、トレーニング終わりに真田と山賀は掃除と料理作りの手伝いをするようになった。因みに功用はと言うと、

 

『アル、こっちは何て意味?』

 

『これはわたしと言う意味でしゅ。』

 

『おー、オッケー、なるほどぉ。』

 

この世界の読み書きを五歳児に教えて貰っていると言う、異様な光景の当事者になっていた。

 

『川島さん、あんた……』

 

『ん?あれ?俺おかしい事してる?』

 

『ノーコメントで……』

 

賑やかに過ぎるマークス邸の様子に、やや引き気味の竹田であった。

 

 




とりあえずここまで書いてから公開する事にしました。異世界署長がちょっと編集してる間に行き詰まっているので息抜きも兼ねて書いてますが、少しでも面白いと思って頂けたら幸いです。

一話辺りの文字数はどの位がいいですか?

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