瑞鶴率いる新生連合艦隊VS一航戦で、高雄がすてがまる話。

時系列的には紅染イベ直前あたりをイメージ

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かっこよくて皆に慕われてて妙にしっとりした高雄が見てぇ〜〜〜で出来上がったシロモノ


さようなら、友よ

「退かれよ!瑞鶴殿、退かれよ!!」

 

耳朶を打つ大音声。聞き間違えようのない、絶望的な撤退戦の中でも凛々しく響く親友の声だ。

 

「何言ってんのッ!!あなたも退くのよ、高雄!一緒に翔鶴姉を助けて、長門様を起こしてっ…!」

 

迫り来る敵の前で仁王立ちしながら、傷1つない純白の背を見せながら高雄は尚も叫んでいる。

 

その間にも敵は……一航戦に反旗を翻し、新生重桜を名乗った瑞鶴達を追撃せんとするかつての同胞達が近付く。しかし高雄は一切怯むことなく刀を掲げ、瑞鶴達に向け言葉を紡いだ。

 

「KAN-SENには…武士には、命の捨て時というものがあるのだ。大切なものを守る時。理想を叶える時。大義を貫く時。そして、世に自身の正義を示す時……。拙者にとって、それら全てがこの一瞬に揃っている!」

 

 

「な、にを……なにを、馬鹿なこと言ってるの!翔鶴姉の救出は私の我儘で言い出したことなんだよ!?それならここで私が殿を務めるのが…」

 

言っていることが理解できない。それではまるで、ここで死ぬと言っているようではないか。自分の為に、ここで代わりに高雄が死ぬと……そう言っているようではないか。

 

「馬鹿はお主だ!お主は我ら新生重桜海軍の盟主であろう!目的を見失うな、第五航空戦隊・瑞鶴!たとえこの一戦で敗れたとて、お主の不屈の意志がある限り我らの火は消えん!拙者の夢は終わらんのだ!だから……」

 

そこで高雄が初めてこちらを振り返る。

柔らかい、どこまでも暖かい笑顔の浮かんだ、瑞鶴の大好きな顔だ。

翔鶴が一航戦に捕らわれて以降、誰よりも寄り添ってくれて、誰よりも頼りになって、そして誰よりも前を向いていた親友の、美しい笑顔。

 

「拙者の為に、生きてくれ」

 

「ッ──たか」

 

お、と名前を呼ぶ間に、霰のような爆撃が彼女を襲った。離れていても思わず目を背けてしまうような爆風の中、高雄の咆哮が海を揺らす。

 

「悪!!」

 

爆炎の中から飛び出し、駆け出した勢いのまま艦載機を次々に切り落としていく。まるで紙飛行機のように細切れになっていくそれらに目もくれず、高雄は更に歩を進めていった。

 

「即!!!」

 

黒匣で操っているセイレーンの量産艦に、身体ごとぶつかる勢いで突貫し、土手っ腹から突き抜ける。ただ、刀で突きを繰り出しただけ。単純な近接攻撃が、KAN-SENの力と彼女の弛まぬ努力によって一撃必殺の威力を誇っている。尚も高雄の勢いは止まらない。

 

「斬!!!!」

 

堪らず前に出てきた敵のKAN-SENと高雄が直接刃を交わしたところで、瑞鶴は自身の袖を引く存在に気が付いた。

 

「綾、波……」

 

「瑞鶴さん、行くです。高雄さんは瑞鶴さんに全ての希望を託しました。それは綾波達も同じです。瑞鶴さんがここで立ち止まるのは、高雄さんに対する裏切りです」

 

左腕に傷を負い、肩を大きく上下させながらも強い意志の籠った視線が瑞鶴を貫く。後悔も逡巡も認めない、ただただ折れるなという冷酷とも言える諌言。だが噛み締めた唇は血で濡れ、仲間を喪うという現実に必死に耐えている

 

「………………撤退、しよう…高雄の理想…高雄の正義を、ここで絶やさない為にも………!!私達は、絶対っ…!!」

 

「はいです。…………泣くのは、後にしましょう」

 

年下の綾波にそう言われても尚、瑞鶴は溢れる涙を止めることが出来ないでいた。

清廉すぎる、綺麗事だと誰もが笑い飛ばす瑞鶴の理想を、真剣な顔で聞いてくれた初めての友だったのだ。共に剣の腕を磨き、重桜の未来を切り開こうと誓い合った同志だったのだ。姉を見捨てられず、一航戦の罠だと分かっていても救出を主張した愚かな盟主に、何も言わずに剣を取って応えてくれた相棒だったのだ。

 

「高雄…高雄、高雄、高雄っ……!!」

 

 

『拙者はそなたの夢を笑わぬ。決して馬鹿になどせぬ。是非、その茨の道を共にさせてくれぬか、瑞鶴殿。拙者はそなたと同じ夢を見たい。心の底からそう思うのだ』

 

 

背後からは砲声と剣戟が響く。今この瞬間、無二の友が自分の為に命を散らそうとしている。

噛み締めた唇から血が流れるのも厭わず、瑞鶴は力を込め続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(これほどか。これほどまでか、高雄!)

 

離島に幽閉した翔鶴を餌に釣り出した反乱分子を一蹴し、量産艦を引き連れて追撃に繰り出した加賀は湧き上がる熱を抑えられずにいた。

 

その眼前には縦横無尽の大立ち回りを演じ、硝煙と返り血に塗れながらも尚止まらない女の姿がある。

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ……………まだ、まだ終わらぬ…まだ死なぬ…!拙者の希望を、守り抜くまでは…!」

 

「こンの、大馬鹿野郎!もう良いだろ高雄!お前さんはよくやった!よくやったよ、立派だよ!だからもう休め、休めよぉ!!」

 

満身創痍の高雄に、薙刀の斬撃と共に悲痛な叫びを投げかけるのは伊勢。戦場に主義主張を持ち込まぬ明朗快活な女が、思わずその切っ先を鈍らせるほどに高雄の在り方は美しかった。

 

「ぐぅッ…!!」

 

「死ぬこたァない!艤装捨てて降伏しな!アタシが赤城に口利きするさ!なんなら一発ぶんなぐったって良い!アタシを信じて、ここは折れちゃくれないか!?」

 

「伊勢め、勝手なことを…」

 

彼女がなんと吠えたところで、赤城は瑞鶴一派を決して許しはしまい。国を強固に、ひとつに纏めんと血眼になる彼女が下す判断は良くて雷撃処分、妥当なところで引き回しの上獄門だ。

 

「それに、そんな懇願が意味を為さないことなぞ分かりきっているだろうに」

 

理想に燃えて、他人の夢を信じきって、そうして死地に飛び込んで。

誰かのために命を懸けるこの堅物が、受け入れる筈がないだろう。

 

高雄の勇姿を、志を。同じ武人として理解し、穢したくないと言うならば──────

 

「退け、伊勢!その愚か者は……大罪人は、私自らここで八つに裂く!!貴様如きが出る幕ではないわ!」

 

「ッ……うるッせぇな!!政治屋は黙ってろ!!てめぇに言われなくても、ケツ叩かれなくてもよぉ!!ダチの介錯は、アタシが手ずからしてやらァ!!!」

 

伊勢の暴言に若い衆がざわつくが、加賀はそれを咎めない。

漸く本気で得物を振るい、涙を振り払った正直者の姿を一瞥し、踵を返した。

 

「よ、よろしいのですか?伊勢さん1人にお任せしても…」

 

「くだらんことを聞くな、駿河。手負いの獣に拘らうほど私は暇ではない。アレ程度、伊勢で充分対処できる」

 

「は、はぁ?さっきと言ってることがまぎゃ……く……」

 

新入りの言葉が途切れたのは、加賀の握り締めた拳から滴る赤色に気が付いたからか。だがそんなことをいちいち気にしているほど、今の加賀に余裕はない。

 

『貴殿の理想に一から百まで賛同はできぬ。だがしかし、貴殿の在り方は好ましい。露悪的に振る舞いながら、誰よりもこの国を想う不器用者を嫌いになれる筈がなかろうよ』

 

(不器用はどちらだ……嫌いになれぬのは、どちらの方だ…)

 

「さらばだ、高雄。重桜最後の武人。我が最後の朋輩」

 

認めてくれた、認めていた裏切り者()に背を向け加賀は歩む。

その先にこそ、恩師が望んだ重桜の未来があると信じて。

 

 

 




ほんへではこんなどうしようも無い事態には陥ってないし、瑞鶴と一航戦の派閥争いもストーリーで落ち着いたけど、ここら辺どうしても掘り下げて欲しかったのでガンガンに捏造しました。

無自覚愛されバリタチ高雄概念流行れ…………………


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