ライザのガキを試す。
前々から決めていたこと。今現在のガキの力量を測って、アビスの底の方で、最低限原生生物の餌にならないようにするための生存訓練、その強度を決めるために、精神的に、肉体的に、徹底的に痛めつける。
……
ライザとの約束を果たしたいというのも本心だし、きっと
だから手は抜かない。出し惜しみはしない。嫌いな嘘だって吐く。
ライザの墓のことを教えてやれば、潜る目的を失ってくれるだろうか。
出生の秘密をバラしてやれば、絶望してくれるだろうか。
折れてくれ。
壊れてくれ。
私は君を見たくもなかった。
私は君が
……
だというのに。
得てして、子供は大人の想像を上回る。
あの義足、バネか何かが仕込んであるのか知らないが、不自然な加速をつけて殴りかかってきた。泣き叫ぶだけで終わらないとは。
瞳の明かりを消すことがないとは。
肉体的な苦痛でも、精神的な苦痛でも、止められない。
……お前がそうだったなぁ、ライザ。
憧れは止めることができない。わかりきってたことだ。
あぁ、だから嫌なんだ、お前らは。
あぁ、本当に、
「ここ最近、あの子らの訓練と飯以外では、ずっとここにいるんじゃないかね、オーゼンさん」
「……」
「アンタがイライラしとる時には大抵ここにおる。
「……随分口の回る。……ザポ」
長としての風格なんてあったもんじゃないな、いや、元からそんなものでもなかったが。
そんな取り留めのないことが頭を右往左往していると、いつの間にやら、枯れ木のようなジジイが私の隣に腰掛けた。
“
いつもなら蹴り飛ばしてるとこだが、そんな気が湧かない。
「もう長いことアンタと一緒にやってきたが……今程アンタにとって辛い時間もないじゃろう」
「……」
「白笛というのは、大なり小なり常人を超えた域の存在。人格もともなって、化け物とよべるやつの方が多い。その中で、アンタはあまりにも“マジメ”じゃからなぁ……」
「……」
……
「かの“骸龍”がひそみ、“黎明卿”をはじめとした白笛がひしめく最下層……本当なら、アンタも
「……」
「あの子らは明日出発する。……行けばいい。少なくとも、ここにアンタを止めるものはいない。マルククでさえそうじゃろう」
この野郎、真顔でいうかい。そんな
宥め方がヘタクソなんだよ。
「……待ってるだろうなー、ライザは」
「……」
「それがわかるからいいのさ、私は。ここで電報船が飛んでくるのを待ってるぐらいがちょうどいい」
肌寒い風が吹き抜けてくる。そして、小うるさいジジイのせせら笑いが耳を突く。
「……それでこそ、“動かざるオーゼン”ということか。全く」
チャポン、と波打つ音がする。ザポの方から。
振り向くと、奴が持っている二杯の木製ジョッキと、みたことのない酒が目に入る。顔を見ると、
「そうそう、要件を思い出したんじゃ。
「……」
「アンタに見つからないようにとっておいた、外国産の珍しい奴じゃよ。量は少ないが……」
……
「花がないよ、枯れ木みたいなジジイと飲むなんて」
「はっは、辛辣じゃなぁ」
それに、これっぽっちしかないんじゃね。
まぁ、今日ぐらいはね。
……
ついにきた。光を持つものが。
……
何故臆する?君のねがいが叶う。わたしはかなしいけど、君は嬉しい。
なぁ……会えるよなぁ、また、……魂は、アビスに還るんだよなぁ。
会える。君もまた、身体という牢獄に閉じ込められた魂。解放されれば、アビスに溶けて、再びであう。
……
かなしい。君とのおしゃべりは楽しかった。彼女が還れば、君を
……
まいにち、まいにち、奪いあいの日々。壊して奪ってうばわれて壊されて殺して怪我して、心が壊れる。君とのおしゃべりはわたしの心を保っていた。
……
どうか、わたしの前に現れないで。つぎに会う時、
……
君はころしたくない。
……
さようなら、ナナチ。ありがとう。
……お前はみまごうことなきバケモンだけどよぉ、……オイラも楽しかったよ、なんだかんだな。
さようなら、オストガロア。
『……』
「今日は随分と静かに待っていましたね、では始めましょう。
まいにち、まいにち、同じことの繰り返し。
また殺してやる。
死にたくない。
これで10009人目。
死にたくない。
殺す。
死にたくないから、殺す。
地臥せりの中でも。ザポ爺はオーゼンと長くともに行動してそうだから、悩み続けるオーゼンさんのカウンセラーになってもらいました。ほんへでもオーゼンはこんな感じの精神状態になってそう。
そして、オストガロア君に変化が……