奈落を彷徨う骸   作:にわとり肉

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 さぁ、次の失踪に踏み入る準備は整いました。共に、さらなる投稿期間の延長を見届けましょう(白目)


苦しみの果て、そして

 ライザのガキを試す。

 前々から決めていたこと。今現在のガキの力量を測って、アビスの底の方で、最低限原生生物の餌にならないようにするための生存訓練、その強度を決めるために、精神的に、肉体的に、徹底的に痛めつける。

 ……

 ライザとの約束を果たしたいというのも本心だし、きっとこの感情(・・・・)も本心なんだろう。

 だから手は抜かない。出し惜しみはしない。嫌いな嘘だって吐く。

 ライザの墓のことを教えてやれば、潜る目的を失ってくれるだろうか。

 出生の秘密をバラしてやれば、絶望してくれるだろうか。

 奈落の至宝(オーバード)の少年が彼女を守るのなら、徹底的に破壊してやれば心が折れてくれるだろうか。

 折れてくれ。

 壊れてくれ。

 私は君を見たくもなかった。

 私は君が大嫌い(・・・)なんだ。

 ……

 だというのに。

 得てして、子供は大人の想像を上回る。

 奈落の至宝(オーバード)の少年を地面に叩きつけて踏みつけて、あの骨野郎を思い出す火砲すら完封してやったというのに。ライザのこと()、何もかもバラしてやったというのに。

 あの義足、バネか何かが仕込んであるのか知らないが、不自然な加速をつけて殴りかかってきた。泣き叫ぶだけで終わらないとは。

 瞳の明かりを消すことがないとは。

 肉体的な苦痛でも、精神的な苦痛でも、止められない。

 ……お前がそうだったなぁ、ライザ。

 憧れは止めることができない。わかりきってたことだ。

 あぁ、だから嫌なんだ、お前らは。

 あぁ、本当に、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 大嫌い(大好き)だよ、お前ら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ここ最近、あの子らの訓練と飯以外では、ずっとここにいるんじゃないかね、オーゼンさん」

 「……」

 「アンタがイライラしとる時には大抵ここにおる。地臥せり(ハイドギヴァー)の奴らは察しているよ。アンタの苛立ちの原因をな」

 「……随分口の回る。……ザポ」

 

 長としての風格なんてあったもんじゃないな、いや、元からそんなものでもなかったが。

 そんな取り留めのないことが頭を右往左往していると、いつの間にやら、枯れ木のようなジジイが私の隣に腰掛けた。

 “監視基地(シーカーキャンプ)”の頂上。霧にしずむ深淵を一望できる場所。

 いつもなら蹴り飛ばしてるとこだが、そんな気が湧かない。

 

 「もう長いことアンタと一緒にやってきたが……今程アンタにとって辛い時間もないじゃろう」

 「……」

 「白笛というのは、大なり小なり常人を超えた域の存在。人格もともなって、化け物とよべるやつの方が多い。その中で、アンタはあまりにも“マジメ”じゃからなぁ……」

 「……」

 

 ……

 

 「かの“骸龍”がひそみ、“黎明卿”をはじめとした白笛がひしめく最下層……本当なら、アンタもついていきたい(・・・・・・・)んじゃないのか?」

 「……」

 「あの子らは明日出発する。……行けばいい。少なくとも、ここにアンタを止めるものはいない。マルククでさえそうじゃろう」

 

 この野郎、真顔でいうかい。そんな夢物語(・・・)

 宥め方がヘタクソなんだよ。

 

 「……待ってるだろうなー、ライザは」

 「……」

 「それがわかるからいいのさ、私は。ここで電報船が飛んでくるのを待ってるぐらいがちょうどいい」

 

 肌寒い風が吹き抜けてくる。そして、小うるさいジジイのせせら笑いが耳を突く。

 

 「……それでこそ、“動かざるオーゼン”ということか。全く」

 

 チャポン、と波打つ音がする。ザポの方から。

 振り向くと、奴が持っている二杯の木製ジョッキと、みたことのない酒が目に入る。顔を見ると、いやな視線(・・・・・)を向けるジジイの表情がある。

 

 「そうそう、要件を思い出したんじゃ。アンタと晩酌(・・・・・・)するっていう」

 「……」

 「アンタに見つからないようにとっておいた、外国産の珍しい奴じゃよ。量は少ないが……」

 

 ……

 

 「花がないよ、枯れ木みたいなジジイと飲むなんて」

 「はっは、辛辣じゃなぁ」

 

 それに、これっぽっちしかないんじゃね。

 まぁ、今日ぐらいはね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……

 ついにきた。光を持つものが。

 ……

 何故臆する?君のねがいが叶う。わたしはかなしいけど、君は嬉しい。

 なぁ……会えるよなぁ、また、……魂は、アビスに還るんだよなぁ。

 会える。君もまた、身体という牢獄に閉じ込められた魂。解放されれば、アビスに溶けて、再びであう。

 ……

 かなしい。君とのおしゃべりは楽しかった。彼女が還れば、君をみる(・・)こと、できなくなる。

 ……

 まいにち、まいにち、奪いあいの日々。壊して奪ってうばわれて壊されて殺して怪我して、心が壊れる。君とのおしゃべりはわたしの心を保っていた。

 ……

 どうか、わたしの前に現れないで。つぎに会う時、それ(・・)はもはやわたしではないかもしれない。

 ……

 君はころしたくない。

 ……

 さようなら、ナナチ。ありがとう。

 ……お前はみまごうことなきバケモンだけどよぉ、……オイラも楽しかったよ、なんだかんだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さようなら、オストガロア。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『……』

 「今日は随分と静かに待っていましたね、では始めましょう。祈手(アンブラハンズ)も随分と頭数を削られてしまいました。そろそろ決着をつけようではありませんか」

 

 まいにち、まいにち、同じことの繰り返し。

 また殺してやる。

 死にたくない。

 これで10009人目。

 死にたくない。

 殺す。

 死にたくないから、殺す。




 地臥せりの中でも。ザポ爺はオーゼンと長くともに行動してそうだから、悩み続けるオーゼンさんのカウンセラーになってもらいました。ほんへでもオーゼンはこんな感じの精神状態になってそう。

 そして、オストガロア君に変化が……
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