奈落を彷徨う骸   作:にわとり肉

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 実は、なれ果て(オストガロア)と化した主人公は、実力だけなら白笛になれるポテンシャルを持っていた。


おめかし

 肉の塊をぜんぶ食べて、何もない、暗い空間に残された。相変わらず、頭の中で肉の塊の記憶が右往左往してるし、それに、空腹が収まる気配もない。

 一通り辺りをみてまわったが、円形の行き場のない洞窟のようになっていて、生き物は何もない。ここにいたら飢えて死んでしまうかもしれない。

 地面は柔らかそうだったから、私の腕なら掘り進めることができそうだ。善は急げ、だ。

 壁に背を向けて、腕を壁に突き立てた。すると、脆いところがガラガラと崩れ落ちて、少しだけ抉れた。口の周りにできたもう2本の腕を使って体を押して、くぼみをさらに掘り進めていく。脱出は容易なようだ。

 しばらく掘り進めていくと、急にぼっかりと穴が空いて、2本の腕が重たい水に触れたと思ったら、勢いよく私の身体を押し流してきた。随分と重たい水だから、ここがボンドルドの言っていた“なきがらの海”の最深部なのだろうか。

 水の流れに抗って、口から取り込んだ水を吐き出しながら穴から飛び出すと、真っ暗な海中であった。すると、私の中の記憶が騒ぎ出した。まるで喜んでいるみたいだ。

 私は海中を進み出した。この身体はとても便利で、目がとても冴えている。ひかりが少なくても、随分遠くまで見渡すことができる。

 とにかく、今私がしたいのは腹ごしらえだ。

 見つけた。私の斜め左下。見たことのない巨大な魚。まるで私に眼中は無いようだ。

 好都合。ゆっくりと距離をつめてみる。

 顎が随分と長いそいつの眼前まできたが、相変わらず私は見えていないように、ゆったりと前進している。下の方をみると、小魚のような生き物がいっしょにいた。

 さっさと食べてしまおう。お腹がいたいほどに空いてる。

 2本の腕を伸ばして、巨大魚の目に刺した。すると、ようやく驚いたように身を捩って、水流が私の身体を押し流そうとしてくる。突き刺した両腕の吸盤で耐えながら、両腕の口から、青い汁を思い切り発射。

 巨大魚の頭が膨らんで、後ろから青い汁が光線のように噴き出した。死んだのか、糸が切れたように巨大魚はぐったりとして、どんどん沈んでいく。腕を引き戻そうとしたら、逆に私が死体に引き寄せられた。ともかく、これで腹を満たすことができる。

 辺りを真っ赤に染め上げながら沈んでいく死体にかぶりつく。味は肉の塊よりも断然良い。なんなら、今まで私が食べてきたものよりおいしい。身体もミシミシいって喜んでいるみたい。

 柔らかい肉をたんのうしていたら、下の景色が変わり始めた。どこまでも海が続いているのかと思ったら、大小さまざまな骨が降り積もった海底があった。

 死体の半分を食べて、はらわたを喰み始めていた時、骨の平原に死体が落着して、赤黒い煙を上げた。

 しばらくして、私は背骨の中の液体まで吸い取って、腹ごしらえを終わらせた。残ったのは大きな骨だけ。

 ふと、私の2本の腕に、ずいぶん刺々しい骨が引っ付いていることに気がついた。どうやら、身体からうっすらもれ出ている青い汁がそうさせているらしい。まるでおめかしをしてるみたいだ。

 なんだか落ち着く。どうせなら全身に取り付けてみよう。

 2本の腕で骨の平原を掘り起こす。巨大なワニのような頭骨が出てきた。これは頭に嵌め込むことにする。同じような小さな頭骨が出てきた。これは腕の先端に取り付けて__

 いつまでそうしていたか。鏡が無いからわからないが、多分全身に骨を取り付けた。私の2本の腕は、まるでお伽噺の龍のように厳めしいみために変わった。ふるふるとふったり、先端を開いたりすると、まるで生きているかのようにふるまう。胴の部分は、全身に空いている青い汁をだす穴を塞がないように取り付けたら、まるで、かつてみた、オースを訪れていた船のようなかたちになった。

 なんだかとても良い気分。私の中の記憶もよろこんでいる気がする。

 あぁ良い気分。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しばらく、他の骨をさがしてみたり、腹を満たしたりしてたら、急に地上が恋しくなってきた。やっぱり私は元々人間だったんだなと改めて思う。記憶たちもそうらしい。

 骨に埋まっていた私は、腕を前にして、顔を後ろにした。私の腕にはある程度の感覚器官がついていて、目のように扱うことができる。こうして巨大頭骨に顔を隠せば、一見、双頭の龍のような、船のようにしかみることができないのだ、と思う。こうすれば骨が並大抵の衝撃は分散して、私を守ってくれる……

 あれ、なんで、私は死なないのに。私という人間がそうさせるのか。骨を纏うことを楽しいとかんじたり、安心するのはこのためなのか。

 一先ず、かつての足であるヒレを動かす。すると、骨で重くなった身体が簡単に浮き上がる。続け様に、口から重たい水を噴き出すと、ゆっくりと身体が前に進み出した。

 地上。私はオースのゴミ溜めとなきがらの海の陸地、ボンドルドの研究所しか知らない。他の記憶も似たような風景しか無い。そうだ、どうせならば、いろいろな場所を探索しよう。それが良い。私を縛るものはない。

 探検。探検。あぁ、楽しみだ。




 
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