今回の話は、龍属性エネルギーをアビス世界なりに独自解釈した描写が出てきます。
口から噴き出す水の勢いと、ヒレの動きがとても強いようで、あっという間に水面が見えてきた。
嬉しくなって、思い切り水面から飛び出してみた。まるで星屑のように水しぶきがたった。半身と龍ににせた腕を伸ばして水面に浮かんだ私に飛び込んできた光景は、どうどうと流れ込む水の壁。急速に心が萎えた気がした。
仕方が無い。もっと登るしかない。
滝の中に入ってみる。ものすごい量の水が押し寄せてきて、海の中よりも重たいけど、チョロチョロしてなくて量は多いからなんとか登れそう。
口の中に水を込める。ついでに、腕に青い汁を溜めさせて、顔の向いている方向に合わせる。
そして、思い切り発射。その瞬間、まるで弾かれたボールのように私の身体が浮き上がって、滝を登り出した。
そういえば、イドフロントで読んでいた本に、“鯉という魚は、とある川の激流を登ると龍になる”と書いてあったが、それはアビスの上昇負荷のことを言っていたのだろうか。
しばらくして、両腕から青い汁が出なくなった。口から水を噴き出し続けているおかげでゆっくりと上に進んではいるが、腕の感覚器官で見てみるに、まだ半分ぐらいまでしか進んでいない。なんてことだ。
なんとなく、体の中で青い汁ができている感覚はあるから、十分たまるまでのろのろのぼっていくしかない。なんてことだ。
まだたまらない。
まだたまらない。
まだ。
……
いらいらしてきた。なんだか身体もあつくなってきてる。
まだたまらない。
まだか。
ぜんぜんたまらない。
はやくしろ。
口元が熱い。なんだか身体から赤い火花が散ってる気がする。
いや、気のせいじゃない。私のいらいらに反応してる。何かが私の中で沸騰しかけている。
動かせる。これはしょうあくできる。利用出来るかもしれない。
身体の中のあたたかな感覚を口元に集める。すると、なんだか赤黒い、稲妻がとどろく玉が出来始めた。どんどん集めていこう。
もう少し、
もう少し、
もう少し__
気がつけば、私に真っ白な雪が降り積もっていた。とっさに腕で周囲を見て回ると、雪原の上に横たわっているみたいだった。あれを撃って、私は上まで上がってこれたということか。
近くに水辺があって、その奥の方に、まるで溶かされたような跡と、水蒸気があがっている。
私のあの力のせいなのだろうか。だとすれば、ものすごい破壊力だ。
ボンドルドに喰らわしてやりたい。
……なんで。
ともかく、ヒレを使って半身を地面に埋めた。顔に土がかかっている感覚がした方が落ち着くし、視界は両腕が担ってくれる。
さぁ、
探検をしよう。
ボンドルドを殺せ。
いやだ。
ボンドルドを殺せ。
私は探検がしたい。いろんなところを見たい。
私は白笛になるのが夢だった
オレは遺物を見つけて大金持ちになりたかった
英雄になりたかった。
有名になりたかった。
ぜんぶあいつが奪った。もう元に戻れない。お前の腹の中で囚われているしかない。憎い。
殺せ。
ボンドルドを殺せ。
……
イドフロント。
懐かしい風景。
こわせ。
うばえ。
両腕に赤黒い力がたまる。これは憎しみの光。恨みの光。嘆きの光。あえて名をつけるならば、
“怨嗟の慟哭”
両腕から光が放たれる。その瞬間、視界が白飛びして、視界が戻ると、イドフロントに大穴が空いているのが見えた。
もっとこわせ。
やつぎばやに光を放つ。腕から発射するから威力は落ちるが、連続で打つことができる。光は、ちちち、と空気が焼けていくような音を放ちながら進み、轟音とともにイドフロントを確実に破壊していく。
もっと、もっと。
「
あうっ。
「閉じろ」
動けない。何。
黒いネバネバが、誰が、
……ぁ。
「お久しぶりですね、______。……いえ、もはやあなたにその名は似合いませんね。そうですね……“オストガロア”なんてどうでしょう?タコを意味するオクトパスに、旧時代に信仰されていた“神”の一柱であるタンガロアを掛け合わせたものです。とてもお似合いですよ」
あいつだ。
「ともかく、再び会えて嬉しいですね。そんな力を身につけているなんて、貴方は素晴らしい」
両手を広げている。地面を掘り起こして、本体をあえて露出させる。そして、自分の目で、はっきりと捉えた。
あいつだ。ボンドルドだ。間違い無い。
「ずいぶんと大きくなりました、これでは、イドフロントに持ち帰るには手に余りますね」
もちかえる?こいつはまだ
やっぱりこいつは
死ね。
死ね。
「……!!」
力任せに黒いネバネバを引きちぎる。こうふんしているからか、体のいたる穴という穴から青い汁が噴き出て、雪原を青白く光らせる。
あいつは後ずさってる。殺せ。
「またその光ですか」
何か身構えているけど関係ない、
「
咄嗟に貯め切ってない“怨嗟の慟哭”を放った。その瞬間、私に向けられたボンドルドの肘が光る。
訳もわからない内に、私は吹き飛ばされていた。初めてこの身体の、甲高い呻き声を聴きながら、
「驚きました。
雪の冷たさすら、もはや私の好奇心を覚ますことはできない。
起き上がり、“暁に至る天蓋”に着いた埃や雪を振り落とす。そして、立ち上がる。
興味深い。
是非調べたい、知りたい。
前方を見ると、イドフロントを囲むように広がる海に落下したオストガロアの触腕が蠢いているのが見える。実に素晴らしい。
「フフフ、素晴らしい。素晴らしいですよオストガロア。さぁ、貴方