奈落を彷徨う骸   作:にわとり肉

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 また会うためのおまじない。


さようなら

 「枢機に還す光(スパラグモス)

 

 光を両腕で受け止める。その瞬間、パッと、まるで昔見た花火みたいに弾けて、後ろの方で水の爆発がなんどもおきる。

 そのまま、両腕から“怨嗟の慟哭”を発射。雪を巻き上げてボンドルドに__

 ボンドルドは走って逃げる。鬱陶しい奴。

 

 「明星へ登る(ギャングウェイ)

 

 何。紫の光、アイツの仮面から、あちこちから____

 ボク(・・)に光が降り注ぐ。でも問題ない。骨が全てをはばんでくれる。そもそも、覆い切れていない皮や甲殻も貫けない光なら__

 待って。

 ボンドルドはどこに行った。

 

 「おやおや、視野が狭いですよ、オストガロア。関心しませんね」

 

 腹__

 

 「枢機に還す光(スパラグモス)

 『________________!!?!?!!!!』

 

 熱い。

 熱い熱い熱い熱い熱い痛い熱い痛い痛い痛い__

 お腹が、横腹が焼かれた。ふざけるな。

 怖い

 オレ(・・)の体をきずつけたな。

 いやだ

 

 「おっと」

 

 痛くて狙いが定まらない。取り敢えず引き剥がさなきゃ。

 両腕をぶん回す。当たればそれでいいし、まずは距離を取らなくては。

 本当にすばしっこい奴。全く当たらない。

 それに、引き剥がせない。

 

 「君は本当に可愛いですね(枢機に還す光)

 『_____』

 

 熱い、痛い、両方のお腹が焼かれた。

 

 「枢機に還す光(スパラグモス)

 

 なんだ、どこをやかれた。

 そうか、顔__

 

 『______!!』

 

 今日一声だしたきがする?痛い、あう、かんがえられない、痛い、憎い、殺す、殺せ、ボンドルドを……

 逃げよう

 動けない。

 黒いネバネバが、いくえにも重なってる。岸辺の祈手(アンブラハンズ)か。

 お腹も治りが悪い、口が裂けてしまっている。

 ボンドルドが、目の前にいるというのに。このままじゃ。

 しぬ

 

 「さぁ、やんちゃはやめにして、また私の所へ帰ってくる気はありませんか?貴方や、貴方の友達のおかげで、私の研究は大いに進みそうなのです」

 

 なにいってんだこいつ。

 殺してやる。

 いたい

 食ってやる。

 だめだ。逃げよう。

 怖い。怖い。怖い、怖い、怖い怖い。

 こいつはバケモノ。死にたくない。

 ふざけてんのか、ボンドルドは殺す。

 死ぬのはやだ。痛いのもやだ。

 なんで。

 ……

 

 「さぁ」

 

 ひっ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「なんということでしょう、取り逃してしまうとは。実に素晴らしい」

 

 岸まで泳いでいき、水気を払った私の視界には、ちぎられた“月に触れる(ファーカレス)”の残骸、オストガロアが地面を掘り起こして進んでいった跡が残されている。

 

 「祈手(アンブラハンズ)をオートモードにしていたのは失敗でした。まさかあれほどの余力を残していたとは」

 

 身体が震える。寒さからではない。新しい興味対象物が出来たことに対する歓喜。

 しかし。

 

 「しばらくはお別れのようですね、オストガロア」

 

 掘り進めていった方向は上層部。精神隷属機(ゾアホリック)特質(・・)上、層を跨いで移動してしまったのであれば、私が直接赴くのは少々手間取る。祈手(アンブラハンズ)を向かわせても、私でダメならば心もとない。

 ああ、なんて口惜しい。

 

 「さようなら、オストガロア」

 

 私の目の前には、彼が残した青白い体液が飛び散っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここがどこかもわからない。怖い。きずぐちから青い霧が漏れ出している。怖い。地面の中でうずくまっていたい。怖い。

 怖い、怖い、怖い、怖い。

 僕を食ったくせに

 オレを食ったくせに

 なんで逃げた。ボンドルドを殺せ。

 あんなの殺せるわけがない。当然のこと。なんでわからないの。

 そんなのアタシには関係ない。

 なんで逃げたんだ。

 なんで逃げた。

 ……

 お腹、すいた。おなか、すいた。そうだ、腹が減った!

 おい。

 思い切り地面から飛び出す。その瞬間、花びらがふぶきのように舞い散った。すごい綺麗。

 くそ、きいちゃいない。

 あぁ、ここが“なきがらの海”の上の層なのだろうか。わくわくする。心が高鳴る。どんな生き物がいる?

 おぼえておけよ

 まだおなかと口元が痛いけど大丈夫。さあ行こう。冒険だ。これが私のしたかったことなんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 (オレ アタシ オイラ ボク)は、お前も憎い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さようなら、オストガロア。また会う日まで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私の周りに広がっているのは、だだっ広い真っ白な花畑。上を見ると、何か、きょだいな丸い天井が何枚もおおっている。

 ボンドルドのやつが言っていた気がする。“第四層には《殲滅卿》の好きな、トコシエコウの花畑”があるって。ということは、ここは第四層“巨人の盃”なのか。

 それにしても、殲滅卿。ボンドルドと同じ白笛……

 早くこの場からはなれよう、そうしよう。

 五層の乾いていた硬い土ではなく、ふかふかな茶色の土だから、掘り起こして進みやすい。万が一白笛に見つからないように、より深く潜っていく。

 土がきずにしみる。細かい穴ぼこから青い霧がさかんに漏れ出しているけど、これは大丈夫なのだろうか、絶対に死にはしないだろうけど。

 そうこうしているうちに、土の質がかわって、石っぽくなってきた。そろそろ地中からでても良さそう。

 安全確認のために、片腕を地面から飛び出させて周囲を見る。

 うん、問題なさそう。

 ヒレに力を込める。そして、思い切り飛び出す。その瞬間、微風が私の半身に吹き付けてきた。気持ちがいい。

 私が出てきたのは高台だったみたい。さっきしたから眺めていた光景が、上から見てみると、ゆげを放つ水をいっぱいにためた“盃”が、所狭しと並んでいるのがわかる。

 やっぱり、ここは第四層“巨人の盃”だ。




 情緒不安定なオストガロア君、なんとかしたいですよね。

 ゾアホリックにかなり独自解釈入ってます
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