思い出のゲーム
『スカーレット・ダイアリー』
かつて、そう呼ばれたゲームがあった。
日本語で言えば緋色の日記帳。初めて聞いた人は何ともありきたりな名前のゲームだと鼻で笑うだろう。実際その内容は……言っては悪いが、割とありきたりな物だった。
勇者が世界を守る為に悪と戦うという、ただそれだけの話は……いや、勿論それが悪いとは言わない。だが当然ながら斬新さはまるで無く、むしろ伝統文化にも似た趣があった。それこそ異世界転生モノの神様やステータス。ラノベに出てくる不可思議な学園ぐらいには伝統的だろう。稀によくあるという奴だ。
しかもシミュレーションゲーム、それもタワーディフェンスと呼ばれる形式で出されたそれは、案の定幾つかの先行作品との類似性を持っており、オリジナリティーは低め。特に操作性やUIに関しては既視感しか無く……まぁ、仮にリスペクトだとしても、やはり独自性は低かった。
──だがそれでも、私は『スカーレット・ダイアリー』が好きだった。
ダークファンタジー寄りで、まるで本当にその世界があるかの様な緻密な世界観が。そして本当に生きているかの様なキャラクター達が。私はとても気に入っていた。
特に序盤のお助けキャラである吸血鬼の姫君……レナは一番のお気に入りだ。残念な事に彼女は物語中盤で惨殺され、途中退場してしまうのだが、それでも物語に彩りを添えてくれたのは彼女だ。というか、彼女が居なければそもそもあのゲームをクリアする事はなかっただろう。
──今でも思い出す。彼女を失った怒りと悲しさのままにプレイした事を。
私としては珍しく情熱的だったと自覚している。だが、仕方がないだろう? 性癖ド真ん中ドストライクだったのだから。必死こいて周回プレイを繰り返し、隠しルートを探したのは良い思い出だ。……そんな物が無かった時の絶望も、後から思い返すぶんには笑っていられる。好きなキャラが惨殺されるところを何度も見るというマゾじみた苦行のせいで、妙な性癖に目覚めてしまった事も含めて。
だが、しかし、残念な事に。そんな思い出は個人の物に過ぎず。
探せばある程度のオリジナリティーしか持たない『スカーレット・ダイアリー』は、当然の如く人気はあんまり無く。売れている、とか。大人気! とは……嘘でも言えないゲームだった。
そんな『スカーレット・ダイアリー』に救いがあるとすれば、企業ではなく個人が出していた同人ゲームだったと言う事か。
好きが高じて自分でゲームを作ってしまう──無いなら作ると言わんばかりの──人達というのは常に一定数居る物で。
そんな名も知れぬ誰かが、誰の手も借りずたった一人で作り上げたゲームとしては『スカーレット・ダイアリー』は異例の完成度を誇っていただろう。現に、同人ゲーム愛好家の中ではそれなりに知られた作品でもあった。
だが……やはり個人故の広報の弱さは如何ともし難く。失踪に向けて全力疾走していた製作者が本当に行方不明になってしまった事もあって、熱心なファンが口コミで広める以外に広報らしい広報は出来ておらず、プレイ人口は極めて低調だったと記憶している。
とはいえ、たまに愛好家──バッドエンドやゲームオーバー時の表現描写に妙に力が入っており、可哀想は可愛い派から根強い支持を得ていた──が掲示板にスレを立てれば、チラホラとどこからともなく数人が顔を見せる程度のプレイ人口があったのも確かだ。
斯くいう私も、コイツから離れられない人間の一人だった。
常にプレイしている、という訳ではないものの。思い出したかの様に引っ張り出しては繰り返しプレイしていたのだ。それこそ、気付いたらプレイ時間がカンストして表記がバグる──数字が謎の文字列に置き換わる──程度には遊び込んでいた。ストーリーやアイテムの類いは粗方記憶しているし、キャラストーリーや世界観もちゃんと覚えている。隠しステージや隠しアイテムの手に入れ方もバッチリだ。嗜み程度にはバグ技だって使える。
愛していた……かは分からない。だが、好みのゲームだったのは確かだ。飽きっぽく面倒臭がりな私が好んだ数少ないゲームの一つ。それが『スカーレット・ダイアリー』というゲームだ。
さて、ここまで愛着を見せつつボコボコにするというDV野郎の手口でこき下ろした『スカーレット・ダイアリー』だが、コイツには他には無い点が一つだけ、たった一つだけある。
それは…………生前の私がプレイした、最後のゲームだと言う事だ。
「薄々そうじゃないかとは思っていたが、本当に『スカーレット・ダイアリー』の世界とはねぇ……」
驚きだ。私はそう肩をすくめて、そっとため息を吐く。こんな事なら別のゲームをやるんだったと。
全く、プレイ時間カンストしたゲームに送り込まれて嬉しいか? そう聞かれて元気よくイエェスッ! と返事出来る者は幸せだ。マトモだと言えるだろう。
だが、そうではない者も世の中には居る。
死に覚えゲー、主人公にすら厳しいエロゲ、殺意しかない道行き、ドンパチ賑やか末期戦、そもそも初手で世界が滅んでる、上位存在がデカい顔して人々を駒扱いしてる等……要するに、世界観が暗かったり死亡率やバッドエンド率が高いせいで、ゲームとしては楽しいけど実際には近寄りたくない世界。そんな世界を愛してしまった者達は、泣き叫んで許しを請うだろう。それだけは止めてくれと。
主に某同人サークルや某企業のアレとかアレとかアレのファン達とかがこれに該当……いや、彼らはむしろ喜びそうだな?
──まぁ、私には喜ぶ暇も泣く暇も無かったんだが。
何せ──その辺りの記憶が消し飛んでいるので確たる証拠は無いが──ポックリ逝ったと思った次の瞬間にはこの世界、『スカーレット・ダイアリー』の世界に居たのだ。神やら悪魔やらと面会する事すら無かった以上、喜びながら泣き叫ぶ暇が無いのは当たり前だろう。
ノータイム転生とかマジかい? そう再びため息を吐いた私は、ボンヤリと辺りを見回す。私以外には誰もいない、薄暗い書庫を。
「転生したのは……まぁ、良かろうさ。宇宙は広く、世の中もまた広い。そういう事もあるだろう。記憶を持ったまま転生した事、そして転生先が異世界だった事。それら自体に文句は無いとも。欠片もね」
実のところ、転生した後も記憶を持っている人間というのは少数ながら実在する──実はだいぶ前に科学的裏付けを得ている──のだし、無限に広がる大宇宙があるのだから異世界があってもおかしくはない。ならその二つが組み合わさってしまう確率は僅かながらとはいえ確かに存在している訳で、何も、何も問題は無い話だった。……そこまでは。
「だが、まさかよりによってあの『スカーレット・ダイアリー』とは。聞いてないよ。私はそんな話は聞いてない」
ファッキンゴッド。そう中指を突き立てたいのを必死に我慢し、その代わりとばかりにもう一度ため息を吐き散らかす。やってられんと。
そう、何よりも問題だったのは、転生した先が『スカーレット・ダイアリー』の世界……つまり、ダークファンタジー世界二歩手前の異世界だった事だ。
「緋色の世界は、初手でほぼほぼ詰んでいるんだぞ? 勇者と魔王の戦いと言えば簡単だが、その内実は救いのない絶滅戦争。人類勢力と魔王軍の和解は不可能で、どちらかが全滅するまで戦いは続く。ゲームのストーリー通りでも人類、魔族問わず人が死にまくるし、世界に怨嗟の声と呪いが満ちてしまっている。神々の救いは無く、頼みの勇者もほぼ孤立無援で戦わなければならない。仮に世界を救えたとしても、その果てにあるのが呪われた大地では……延命にもならん」
次回作があるなら間違いなくダークファンタジーになる。古式ゆかしいアレとかアレみたいに。そう断言されるゲーム世界に、私は転生してしまった。生き残れるかも怪しい、暗く陰鬱な世界に。
しかも、問題はそれだけではない。
なんと転生者たる私は彼から彼女に……つまり性別が男から女へと変わってしまっているのだ。ついでにいえば“邪教徒の実験体”だった事も腹立たしい。
人造人間、あるいはホムンクルス。
私が転生し、彼女となった肉体は人間ではなかった。
マッドでサイエンティストな邪教徒共の夢の果て、永劫の命を手に入れる為の実験体。強大な不死者の肉片を元としつつ、そこに無数の生物を組み合わせたキメラであり、プロトタイプの人工不死者として作られたホムンクルス。それが私だ。
見た目こそ黒髪黒目の美少女だが、その正体はバケモノとしか言いようがない存在。製造ナンバー217番。既に失敗した名も無き姉妹達の屍の上に、私は転生した。間もなく実験の為に消費されるモノとして。
「思えば、あの頃は最悪の毎日だったなぁ……」
目が覚めたと思ったら邪教徒の実験体だった私の絶望。筆舌に尽くし難い。その後のボロ雑巾ぶりに至っては我が事ながら泣けてくる始末だ。
とはいえ、私は運の良い方だった。日々妙な薬をブチ込まれ、データを取られ、苦痛を伴う実験材料にされて。今度は脳ミソに電極でも刺すか、虫の苗床にするか……そんな話が耳に入った次の日、不幸中の幸いという奴が起きたのだから。
何の事はない。連中の施設が“不慮の事故”で壊滅したのだ。
千載一遇の好機。
私は、それを逃さなかった。警備、及び防衛設備がザルな事を事前に把握していたのも手伝って、私は人工不死者のプロトタイプモデルとして持たされた能力の全てを用いて脱出を敢行した。
突如として発生した混乱に乗じてどこぞのビッグなボスな蛇の様にスニーキングしつつ情報を集め、整理し、施設から脱出。そのまま邪教徒のロッジを強襲しようとしていた救出部隊と入れ違いになりつつ、つい衝動的に森の中へと飛び込んで…………私は安寧を手にした。手にしてしまった。
「上手いこと不慮の事故のドサクサに紛れて脱出なんて、ハリウッド映画に出てる気分だったね。あの時ばかりは。……そして、地獄を抜け出してたどり着いたのは、人っ子一人いない天文台。ここが隠しステージの一つで、しかも図書館を併設していたのは幸いでしかなかった」
ハリウッド映画さながらのアクションの果て、私は予定なんて無いままここにたどり着く事が出来たのだ。本当に、幸運でしかない。
しかも何故か読める──間違いなく実験体として身体をいじられたせいだ。おのれショッカー! ──本を片っ端から読み解いた結果、地名や固有名詞、魔法やアイテム等の呼び名からこの世界が『スカーレット・ダイアリー』の世界かそれに近い世界だと判断出来たのも……まぁ、良い。良くないけど良い。結果オーライだ。死ななきゃ安い。まだ死んでない。つまり私は幸運だった。そういう事にしておく。
「性別が変わったのも……まぁ、このさい良かろうさ。他の事に比べれば、まだ希望というのが見いだせる」
即ち、男から女へ。我が身がグルリと性転換してしまった事も……実験体にされた事や『スカーレット・ダイアリー』の世界に来た事に比べれば、些事でしかなかった。
とはいえ、恐るべき奇跡のビフォーアフターなのは確かだ。不幸中の幸い? は見てくれに関しては三百倍はマシになったという事か。
「これで名状し難いバケモノだったり、おぞましい見た目なら嘆くしかなかったが……まぁ、この見た目ではな。他に嘆く事が多過ぎるせいか、イマイチ、嘆く気になれん」
チラリ、と。図書館の一角に埋め込まれている姿見に視線をやって見る。
そこに映っているのは推定年齢中学生程のケモミミ少女だ。年齢にしても低めの身長。気怠げな黒目に、肩口まで伸びた寝癖が目立つ黒髪。そしてそれらと同じ色の、ピコピコふりふりと動く……オオカミのミミとモフモフの尻尾。その上、目鼻立ちは非常に整っており。身綺麗に出来ていない事を考えれば、充分以上に美少女だろう。トップアイドルは無理でも、その二つか三つ下ぐらいは狙えそうな見た目だ。ピコピコと動くケモミミも相まってか、控え目にいって可愛らしい。
──だが、私だ。
私なのだ。どれだけ可愛らしいケモミミ美少女でも、私なのだ。
我が愚息が消滅し、グヘヘな目的で消費される身になったのは…………残念としか言い様がない。あとちょっとで初体験がキモい虫とのズッコンバッコンになっていた事もあって、本当に残念としか言い様がない。ないが、こればかりは愚痴ってもどうにもならんので脇に流す。何? 流しが詰まった? そうだろうとも。流せるものか。だが流せ。無理矢理にでも。
ここは、あの『スカーレット・ダイアリー』の世界なのだから。
「緋色の世界は運命の星が落ちたところから始まるが……あれは、つい先日地に落ちた。他ならぬ私がこの目で確認したからな。間違いない。という事は、ストーリーが始まったと見て良い訳だが……さて?」
運命の星。ゲーム開始時、プロローグの中で彗星として落ちてくるこの星は今や既に落ちた後なのだ。私もこの天文台からそれを観測しており、あれがただの流れ星の類いとは致命的に異なる事を確信している。古文書に記された絶望と終末を告げる天の啓示。魔物に押し込まれた人類にチェックメイトを掛ける最後の一手……確かに、それだけの“圧”が秘められていたのだ。あれには。
となれば緋色のゲームストーリーが始まったと見て問題は無い。勿論、ひょっとしたらクロスオーバーとか、ただの偶然の一致という可能性もあるにはある。
だが、今は『スカーレット・ダイアリー』のストーリーが始まったと考えるべきだろう。時系列も一致しており、今後はゲームストーリーが展開していくのだと。違ったら、違ったらだ。そのときは高度の柔軟性を維持しつつ臨機応変に対応すればいい。……負けフラグ? 知らんな。
「今頃は古文書を知る一部の人間が右往左往しているだろうが……まぁ、直ぐに何かする必要はない。あの星はまだ落ちただけ。正体が明かされるのも、それが有効活用されるのもまだまだ先。となれば、差し当たり私がどう動くのか? 考える暇はあると思いたいが……ストーリーはもう、始まっているからな」
そう、始まっているのだ。
作中時間にして、確か一ヶ月後。主人公君は魔法学園に入学する。物語中盤まで舞台となる場所に。ストーリーに関わりたいなら、何としてでもこの一ヶ月以内に準備を整えなければならない。ゲームプロローグで運命の星が落ちたその日から、ゲーム操作可能となる入学式の日までの、一ヶ月以内に。
──だが、事は簡単ではない……
何せ今回の人生の残り全てを。棚ぼたとはいえ手に入れたそれの全てを、ここで決めなければいけないのだ。
簡単であるはずがない。高校の進路選択だってもう少し時間的猶予があるというのに、私には一ヶ月しかないのだ。しかも悩めば悩む程、準備時間は削れていく……これが簡単であるはずがない! ない、のだが。
「やりたい事は、もう決まってるんだなぁ。これが」
いや、参ったね。そう頭の上にあるケモミミの根本をかきながら、私はそっと息を吐く。前世の私の想像力に乾杯だと。
そう、やりたい事はもう決まっているのだ。
人間、誰だってやりたいけどやれない事の一つぐらいあるだろう? 学校や会社にロケットランチャーをブチ込んで強制的に休みにしたいとか、巨大ロボットに乗ってみたいだとか、かめはめ波とか、アバンストラッシュとか、スペシウム光線とか……最近だと水の呼吸とかだろうか? そんなやりたいけどやれない、実現出来ない事。私にとってのそれは、既に胸の内にある。あるのだ。確かに。
「レナ。……レナを、助けたい」
口に出てくるのは、愛しの少女の名前。レナ・グレース・シャーロット・フューリアス。
レナと呼ばれるその少女は、私が『スカーレット・ダイアリー』をクリアし、プレイ時間がカンストするまで遊び込むに至ったそもそもの原因であり、いわば、私の憧憬だ。
しかし、彼女は死ぬ。物語中盤、道半ばで惨殺される。どのルートを通っても、死に方が変わるぐらいで結局は死んでしまう……死に魅入られた少女。
──彼女を、助けたい。
我ながら青臭く、そしてなんとありきたりな事だろうか? 死んでしまう原作キャラを助けたいが為に、ドンパチ賑やかな修羅場に突っ込んでいこうとは。
もっと穏やかに過ごす事も、豪遊を送る事だって出来るというのに。だが、それでも。私が望んでいるのは、私が欲しいのは、どれだけ悩んで考えてもそれしかなかった。まるで他の全てをどこかに置いてきてしまったかの様に。強い目的意識が伴うのは、レナの生存。それだけだったのだ。
「──なら、構わないだろう?」
これは私のエゴだ。誰かに望まれた訳でも、頼まれた訳でも無い。だがそれでも立ち止まる気になれない……たった一つの願い事。
あの子を、ハッピーエンドのその先へ!
願うのはそれ一つ。自身の身の安全や保身など二の次三の次。どうせ一度死んだ安い身だ。恐れる事など何も無い。何より、今を逃せば、二度とこんなチャンスは訪れないのだ。これを逃す訳にはいかない! いかないが……焦ってはいけないぞ、私。
焦り過ぎて初動を失敗すれば全てが水の泡。慎重に、しかし大胆に、私は私の打つべき一手を決めねばならないのだ。
「レナを救う。……あぁ、もう迷いも郷愁も必要ない。何度悩んでもこの結論にたどり着くなら、これしかないのだろう。だが、これは難題だぞ。この状況、前世の私が考えていたプランAに従って……主人公の側に潜みつつ地力をつけるのが一番だとは思う。しかし一先ずプランAで進めるとして、細かいところはどうする? 私の好みとしては頼りになる相談者ポジションが一番美味しいと思うが、今なら全てを知っている師匠ポジも行けなくはない。あるいは強キャラ感溢れる同級生? ふむ、それすら悩ましいね」
レナを救う。そう一口にいってもやり方は色々とあるし、どんなポジションを狙うかでメリット・デメリットは異なってくる。そこに個人的な趣味も付け加えていけば……候補はまさに無限大と言えた。
しかし、忘れてはならないのは私自身も相当強くならないといけないと言う事だ。そもそもこの世界が死にやすい世界だというのは当然として、『スカーレット・ダイアリー』は主人公やヒロインの死亡率もかなり高い世界なのだ。最高難易度でなくても些細なミスで死亡してゲームオーバーになってしまうし、即バッドエンドになる様な取り返しのつかない選択肢も極めて多い。
この世界がどういう末路を辿る予定なのかは知らないが、ハッピーエンドを目指したいならその辺りは……今どのルートに乗っているのかは、充分に気を配っておかねばなるまい。
推しキャラ生存の為に原作に無い新しいルートを開拓する。原作通り世界も守る。両方やらなくっちゃあならないってのが原作世界転生者のつらいところだな。覚悟はいいか? 私は出来てる。
「…………よし、プランAで行こう」
結局、私は当初予定していたプランをそのまま実行に移す事にした。いつでも修正案に切り替える覚悟を持ち合わせつつ。
……ん? プランB? ねぇよ、そんなもん。
「手紙手紙……おぉ、あったあった」
そうと決まればもう迷わない。
私は図書館の一角から古ぼけた立派な便箋を探し当て、これまた掘り起こした羽ペンで手紙を書いていく事にする。
レナを生存させる為に、先ずは主人公陣営に潜り込んでみようと。
「拝啓、王立魔法学園生徒会長レナ・グレース・シャーロット・フューリアス様。この度は──」
……………………
…………
……