架空原作TS闇深勘違い学園モノ   作:キヨ@ハーメルン

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第13話 魔女の日記 Ⅳ

 七月 五日。

 

 うーん、風光明媚。

 

 正直なところ、保養地と聞いてもパッと思い浮かぶ景色なんぞ無かったのだが……今後はここの景色が思い浮かぶ事になりそうだ。

 綺麗な湖。澄み渡る青空。穏やかな風が吹く草原。

 水質汚染も、大気汚染も、ゴミ問題すらもない大自然があそこまで美しいとは。人間が地球にこびりついた寄生虫だというのが、よく分かる光景だった。

 

 や人愚滅? 

 

 君が言うと洒落にならないからやめなさい……

 

 とはいえ、人が作り出した街並みも決して悪くは無かったし、レナと見て回る上で充分な話題を提供してくれたのも確かだ。

 生憎何かを買って回る程の時間的余裕は無かったのだが、軽く見て回った感じ、中々の品揃えがあると感じた。あの様子なら……レナに何か買ってプレゼントするのも、可能性として考慮に値するだろう。

 

 問題があるとすれば、レナの好みが分からない事か。他のキャラは大なり小なりプレゼントイベントがあったからだいたいの傾向が分かるんだが、レナはどのルートでも最後までその機会が無かった為に事前情報が殆ど無い……だが、まぁ、うん。普段あれだけ世話になっているのだ。やらない訳にもいくまいな? 

 

 やってみせろよ、ニーナ! 

 

 ……なんとでもなるはずだ。

 

 ガンダムだと!? 

 

 ……鳴らない言葉を描けとでも? 全く、お前は。

 

 

 七月 六日。

 

 アリシアの許可の下、ドーントレス家の保有する、あるいは影響が及ぶペンションを幾つか借り受けて宿とし、各々が身体を休めた翌日。

 改めて予定をアリシアと話し合って確認したのだが……どうにも我々は早く着きすぎたらしく、数日の暇が出来そうだとの事だった。

 

 私としては今日明日にでも斥候を出して威力偵察か陽動作戦を……少なくともハラスメント攻撃に移る物と思っていたので、正直拍子抜けだ。

 というか敵の補給線や指揮機能への打撃を与える作戦を既に立案しているのだが……これは、無駄になりそうだな。もう忘れてしまおう。

 

 いいの? 

 

 良いんじゃないか? 状況が変われば作戦も変わる物だ。変に固執する必要もない。

 

 という訳で、エマ先生とも話し合った結果、我々は大々的に休暇を取る事と相成った。

 練度維持の為の訓練は最低限行うが、授業は全て休止。暫しの間だけだが、各々が夏を楽しむ事になる。海の代わりに湖があるし、花火は自前でなんとかなり、女も……まぁ、過半数を下回るが居る事は居る。海! 花火! 女! という訳だな。

 とはいえ、アリシアとサーシャは今後の為の準備をしつつユウと過ごす様だし、レナとエマ先生も何だかんだ忙しい。モブ男子生徒の彼女要素は、同じくモブ女子生徒に期待するしかないのは……良いのか悪いのか。

 

 ニーナは? 

 

 ん? …………あぁ、確かに私も女か。しかし、気にする必要は無いだろう。好き好んで私を選ぶ様な男が居るとは思えん。

 まぁ、仮に居たとしたら医者を紹介してやろうかな。眼科医か精神科医かは、悩ましいところだが。

 

 ? 

 

 ……何か疑問が? 羽ペン。

 

 ニーナに声が掛からないとは、思えないよ? ニーナ、可愛いし。面倒見も良いし。何より優しい! 

 

 …………そりゃ、どうも。

 今度メンテナンスをしてあげるよ。過労でおかしくなったらしいからね。

 

 ひどい! 

 

 当たり前の反応だと思うが? 

 私が誰かに好かれるなんて、ある訳ないだろうに……

 

 

 七月 七日。

 

 ニーナは恥ずかしがり屋さん。メモメモ……

 

 初手から嘘八百書き殴るのはやめなさい。へし折るぞ。

 

 横暴! 

 

 お黙り。

 

 ……ヘタレ。

 

 あぁ? 

 

 意気地なし! 甲斐性なし! へっぴり腰! 

 

 こ、このクソガキが……! 

 だが、まぁ、確かに。今回ばかりは羽ペンの言う通りだ。このめでたい七夕の日に──こちらにはそういう文化は無いが──短冊代わりに吊るされるのは私の方だろう。

 まさか、まさか感謝の品を送るだけなのに、あそこまで時間が掛かるとは……レナと一緒に居たのがマズかったのか。いや、普段と違う環境で、まるでデートの様だと思ってしまったのが良くなかったのだろう。途中までは普段通りだったのに、そこに思い至ってからは童貞丸出しのヘタレムーブで……あぁ、今思い出しても腹を切りたくなる。女性をリード出来ない玉無し野郎に、オスとしての価値なんぞないのだ。

 

 いやまぁ、今の私は文字通り玉無しだけども。

 

 だとしても、こう、あるだろう? 仮にも男なら、堂々と女性をリードして見せなければ話にならないのだ。それをちょっと見つめられたり、微笑まれただけで崩していては、それはもうド三流としか言いようがない……

 

 立てよ、ド三流。

 

 喧嘩売ってんのか? 格の違いを教えてやるぞ?? ……と、言いたいところだが、今日の私は負け犬だからな。なんとでも言えばいいさ。

 

 所詮ニーナは先の時代の、敗北者じゃけぇ。

 

 はぁ、はぁ、敗北者……? 

 

 いや、乗るな私。見え見えの挑発に乗ることはない……

 こういうときはレナの事を考えて落ち着きを取り戻すんだ。そう、レナからお返しとして買って貰ったネックレスの話とかな。今も首につけているこの黒色系のネックレス……首輪にも似たチョーカータイプなのだが、中央に取り付けられた赤い宝石の力か? 魔術的な拡張性に優れている様で、持ち主に合わせてかなり自由なカスタマイズが出来そうなのだ。

 目利きにも優れているとは、流石はレナ……と褒めたいのだが、しかし、チョーカー。チョーカーか。貰ったのはそこまで首輪って感じはしないが、今の私は狼系の獣人。これは、いや、流石に違うだろう。レナに他意はない、はず……

 

 ……今は夜、か。少し聞いて来ようかな? 

 

 フフッ、セッ……

 

 やめないか! 

 

 

 七月 八日。

 

 ゆうべはお楽しみでしたね? 

 

 シャラップ!! 

 

 いや、楽しかったかどうかで言えば……いや、いやいや! ノーコメント。ノーコメントだ! 私は何も漏らさんぞ!! 

 

 追記。

 

 今日の夜はレナに会って来ようと決めていたんだが……空気が読めない事に、斥候に出していたゴーストから花火大会のお知らせだ。

 面倒だが、行ってくるとしよう。

 

 花火? 見たい……

 

 ん? あぁ、景色は見れないのか。ふむ、まぁ、何か考えておくよ。

 

 ありがとう! 

 

 ……どういたしまして。

 

 

 七月 十日。

 

 もしかして昨日の、きたねぇ花火だった? 

 

 そうだよ? 今更気づいたのかい? 

 

 ……なら見たくない。

 

 了解。

 まぁ、それはそれとして何か考えておくから、安心したまえ。

 

 良いの? 

 

 いいさ。いい加減、付き合いも長いしね……さて、お喋りはここまでにして今日あった事を記そう。

 といっても、大した事は何も無かった。強いて言えばアリシアの親父さんが明日到着するらしいというぐらいだ。それも出迎えとその後の会合はアリシアとレナがやるそうだから、私の出番はないと見て良い。なんなら暇になるまである。

 

 ……いや、そうだな。今からでもレナの様子を見に行くとしよう。

 貴族程度に緊張してるとも思えないが、一応な。

 

 

 七月 十一日。

 

 アリシアの親父さん、ゲームでは個別のグラが用意されてなかったからどんな顔なのか想像もつかなかったのだが……全く似てなかったな。アリシアと。

 アリシアが母親似なのだとしても、だ。

 中肉中背。凡庸を絵に書いた様な中年オヤジ。しかもお腹に肉が付いているせいか動きは緩慢で、暗殺に怯えていたのかやることなすこと全て優柔不断かつ挙動不審。とてもではないがあのパワー系武闘派お嬢様の片親とは思えない覇気の無さだった。というか、何がどうなればあれから威風堂々としたお嬢様が生まれるんだ? 遺伝子まで仕事してないのか? 謎だ。謎でしかない。

 

 追記。

 

 そういえばアリシアの親父さん、何か妙な違和感があったな様な……気のせいだろうか? 

 

 メモ見返す? 

 

 ん、そうだな。こんな事もあろうかと、記憶がボロボロになる前に書いておいたメモを少し見返してみよう。何か書いてあるかも知れん。

 

 

 七月 十三日。

 

 アリシアの親父さんについての記述は殆ど無く、昨日のあれが素なのかすら分からなかったが……一つ、忘れていた事を思い出した。

 

 洗脳だ。

 この中盤に洗脳系の魔法を使う敵が出てくるのだ。

 メモによれば洗脳というよりは催眠術に近い……強度も脅威度も低いなんちゃって洗脳でしかなく、私やレナの脅威にはならない物だとの事だが、しかし、それでイコール安全とはならない。私達には効かなくても、他の人間には充分通用するのだから。

 現にメモには王都ルート、洗脳、反乱と走り書きがあり……あぁ、思い出してきたぞ。そうだそうだ。王都ルートではあの洗脳野郎のせいで治安レベルが低下し、それが間接的にレナの処刑に繋がったんだった。となると、王都ではなくこちらに奴が来たのは……ふむ、ふむ、なるほど。見えてきたな? 

 

 レナの直接的な死亡フラグではなく、個別グラも無ければ、戦闘能力も並程度。終盤になればワラワラと湧いて出るという、絵に描いた様な小ボス……闇落ち将軍とか邪教の幹部とかと違って完璧なまでの三下のザコだったからすっかり忘れてたが、うん。

 抹殺対象だな。奴は。レナに手を出そうとしてる時点で殺すが、それに加えて私の生徒にまで手を出そうとしてるのだ。楽には殺さん。鳥の羽をむしるように、一センチ四方の肉片にしてくれるわ。

 

 

 七月 十五日。

 

 騙して悪いが、される前に抹殺してやろうとゴーストを指揮して情報収集にあたったのだが……戦果は無し。

 仮眠を挟みながらの調査だったはいえ、これは、どうやら完全に引っ込んで隠れているらしいな? 用心深い事だ。これは、長期戦になるぞ。

 こうなると、レナのところに行くのは我慢しないと駄目かな……

 

 ニーナは寂しがり。メモメモ……

 

 お前から先に羽をむしってやろうか? 

 

 ひどい! 

 

 お黙り。

 寂しいなんて。そんな。……そんな感情は、踏み潰せば良いんだ。わざわざ書かないでよろしい。

 

 追記

 

 アリシア曰く、貴族が顔を出しに来るらしい。

 なんでもドーントレス家に縁のある貴族が、バカンスにここを訪れるので、次期当主候補であるアリシアに挨拶をしにくるのだとか。

 日付は明日。

 

 アリシアからは決して怒らないでくれと……なんなら顔を合わせるなとまで言われたのだが、しかし、ふむ。

 そこまで言われるとうっかり足を滑らせてしまいたくなるな? うん。明日、いい感じに足が滑ってしまうかも知れないねぇ? 

 

 

 七月 十六日。

 

 死ね。クソが。

 

 

 七月 十七日。

 

 イライラするッ……! 

 

 私はああいう手合いが嫌いなんだ。今日だけで何度皮肉を吐こうとしてレナに止められたか……! 

 敗北主義のクソッタレ共め。中指突き立ててやりたい。勿論、両手で。

 

 

 

 やめないか! 

 

 

 七月 十九日。

 

 外に出るとストレス性の病気になってしまいそうなので、ペンションの中に引きこもる事……二日。

 死霊術をフルで行使し続けた事でスキルレベルでも上がったのか? 私はちょっとした気づきを得ていた。

 

 一つは春の終わり頃に使えるようになったリヴィングアーマー……死霊騎士やその武器達の由来が、どうにも帝国にあるらしい事。

 もう一つはグリフォンがアンデッドではなく、まだ生きている召喚獣だという事だ。

 

 死霊騎士については、言うまでもない。彼らとの縁は明らかにレナを経由しているのだ。

 死してなおレナに、レナ・グレース・シャーロット・フューリアスに仕えてくれるその忠義心に感謝こそすれ、疎ましく思う気持ちなど欠片も無い。あるのは称賛のみだ。よくぞ馳せ参じてくれたと。

 

 しかし、その、なんだ。まさかグリフォンが死体じゃなかったとは……こっちは、想定外としか言いようがない。力強いし、妙に抵抗してくるし、なんなら召喚拒否するしで違和感はあったんだが……よもや闇属性の召喚獣だったとは。この私の目をもってしても読めなかった。

 

 節穴さん? 

 

 ……何も言えんな。今回ばかりは。

 

 

 七月 二十日。

 

 見つけた。洗脳野郎だ。

 やはりというか、アリシアパッパに余計な事を吹き込んでいた。何を吹き込んだのかまでは探れなかったが、しかし、何にせよ直ちに対応しなければなるまい。

 

 だが、タイミングが悪いな。

 明日、我々はドーントレス家の要請で敵に陽動作戦を仕掛けなければならないのだ。十中八九、騙して悪いがされるだろう。

 となると生徒達を即座にフォロー出来る位置につきたいところなのだが……兎にも角にもタイミングが悪い。私は私でやりたい事があるのだ。

 

 どうするの? 

 

 ふむ…………いや、フォローはレナとエマ先生に任せて、私は私の仕事をしよう。

 正直、生徒達やレナの守りを減らす様な事はしたくないんだが、後顧の憂いは確実に断っておかねばならないのだ。

 ましてそのチャンスが明日だけともなれば、それを逃す訳にはいかない。……明日は、忙しくなりそうだ。

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