架空原作TS闇深勘違い学園モノ   作:キヨ@ハーメルン

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第22話 魔女の日記 Ⅵ

 九月 七日。

 

 超古代文明。それは紀元前4000年よりも更に過去の時代に存在したと噂される、現代よりも高度なテクノロジーを有した文明の事だ。有名どころで言えばアトランティス、ムー、レムリア等が該当するだろう。

 とはいえ、これら超古代文明は通常の古代文明とは違い、その存在が長らく否定され続けているものでもある。何せ、それらが存在したという証拠がどこにも無いのだ。またそれらが存在したという伝記や、あるはずのスーパーテクノロジーがある日を境に完全に失われたというのは……些か都合が良過ぎる話であり(あるいは、それも何者かによる情報操作の結果なのかも知れないが)

 何にせよ、残念ながらというべきか? 超古代文明の存在は各学界で笑い話か、さもなくば酔っ払いの妄言として片付けられる定番ジョークと化しているのが現実だ。

 

 しかし、それは、あくまで前世の世界での話。今私が居るこの世界は……そうではない可能性が極めて高く──考察勢の推測と私のメモが正しければ──この大陸には滅びた超古代魔法文明の遺跡とテクノロジーが、今もなお、この大陸のどこかで眠っているらしいのだ。

 

 バカバカしい。そう一笑に付すのは簡単だろう。

 だが……私自身、思い当たる点が無いと言えば、嘘になるのだ。

 例えば、邪教徒共。奴らの持っているテクノロジーはその組織規模を考えると……明らかにオーバーテクノロジーだ。

 特にホムンクルス製造技術は王国はおろか帝国すらも上回っており、その技術的アドバンテージは数百年分に匹敵するだろう。計算間違いじゃないぞ? 自分の事だからな……何度も調べたさ。だが、間違いなく数百年分の技術的な差が存在していたんだ。

 ……あぁ、あり得ない。海を隔てた訳でもないのに、大国とテロリスト集団の技術レベルがそれ程開くのは異常だ。比較対象が第三帝国だろうが米帝だろうが同じ事。あり得ない事態なのだ。あれは。

 

 そして、驚くべき事に。いや、嬉しい事にというべきか? この技術的な歪さは他にも存在する。

 例えば、この学園に点々と残された古い魔法。古い魔術式。何より……学園地下深くに存在する、破損した転移魔法陣。あれは王国の技術レベルとは数百年分、あるいは千年分もの差があるだろう。にも関わらず、あれらはずっと昔からこの学園に存在しているのだ。少なくとも数百年前から、あのオーバーテクノロジーが! 

 そして、オーバーテクノロジーの産物はそれだけではない。例えば私の持っている槍杖や、この羽ペンすらもオーバーテクノロジーの塊といって良いのだから……もう目眩がしてくるな? えぇ? 

 

 ん? 呼んだ? 

 

 いや、呼んでないから筆記係に専念してくれたまえ……

 

 まぁ? それが魔法の為せる技。これこそ剣と魔法のファンタジー世界! と言われてしまえばそれまでだが……

 それならそれでゲーム知識……幾つかのSF色が強いダンジョンや、開発が間に合わずフレーバー化したと言われる飛行戦艦。見方によっては衛星砲にも思える勇者の剣等、思い当たる節は幾らでもあるのだ。

 

 結論を述べよう。

 私は、この大陸には滅びた超古代魔法文明が存在したと確信している。……いや、期待しているのかもしれない。

 何せ、飛行戦艦ないしそれと同等のテクノロジーで作られた武器やアイテムを回収できれば、ストーリークリアのハードルは大きく引き下がるからだ。もしそれが無くても、幾つかの隠しアイテムを確保出来るだけで状況は大きく改善される。あぁ……レナの為にも、是非とも存在していて欲しいものだよ。かの滅亡した超古代魔法文明にはね。

 

 

 

 九月 八日。

 

 という訳で、手始めに司書権限を振り回して、学園の大書庫を文字通り片っ端から調べ尽くして来た訳だが……まぁ、無いよねと。

 薄々分かってはいたが、そうそう簡単には尻尾を捕まえさせてくれないらしい。一応、成果として数点ばかり、隠しアイテムである貴重で危険な魔導書を見つけたが……死霊術で手一杯な私には無用の長物だからな。これはエマ先生とユウに投げておいた。彼らなら上手く有効活用してくれるだろう。

 あぁ、羽ペン、何も言ってくれるなよ? 超古代魔法文明に関しての成果がゼロなのは、私が一番よく分かっているからな。……出来れば、邪教徒共のロッジに行く前に尻尾を、いや、その毛ぐらいは掴んでおきたかったんだがね。仕方ない、のか? これは。

 

 んー、仕方ないんじゃない? 下手しなくても千年前。下手すると一万年以上前の記録だもんねぇ……燃やされてそう。

 

 嘆かわしいね。全く。なぜ人類は定期的に貴重な本でキャンプファイヤーをやりたがるのか。中世の魔女狩りから何も進歩してないのは、もう、怒りを通り越して呆れてしまうよ。ホント。

 

 ヒャッハー! 汚物は消毒だァァァ! 

 

 ……燃やしてるのはどっちの方なんだい? それ。あぁ、いや聞くまい。書かんでいい。想像がついた。

 

 閑話休題(こまけぇこたぁどうでもいい)

 

 全くその通りだ。羽ペン。

 さて? 何はともあれ。兎にも角にも天文台へ行かなければどうにもならなさそうだし、このまま魔王討伐戦を始めるしかなくなる前に、一人旅と洒落込むとしよう。レナに外泊の知らせをするのは、まぁ、明日でもいいかな……? 

 

 追記。

 しかし、あれだな。ここ数日気分が悪いというか。すっきりしないというか。体調不良とは思えないが……レナにも言われたしな。重めの風邪でも引いたのかも知れない。

 

 ねぇ、ニーナ。

 

 ん? なんだい? 

 

 ……生理ってさ、どうしてる? 

 

 生理。生理かい? あれなら学園に来る前辺りからずっと、魔法で止めてるが……

 

 あ(察し)

 

 おい、何があ(察し)なんだ? 羽ペン。おい、おい? 

 

 

 

 九月 九日。

 

 エマ先生から真顔でドクターストップ食らったんだが? レナが涙目になりながら魔法を止める様に説得してくるんだが?? 何ならアリシアとサーシャにはドン引きされてるんだが??? 羽ペン???? 

 

 残当。震えて待つといいよ……いや、ホント。緩和程度ならまだしも、半年近く魔法で生理を止め続けるなんて……死にたいの? ニーナ。

 

 ……え、待って。そのレベルの話なのか? これ? 

 

(クソデカため息)

 

 いや、だって生理の日って動けなくなるんだろう? 戦争してる時に生理で動けませんなんてマイナスポイントにしかならな……あ、待ってレナ重力魔法を持ち出すのはやり過ぎ────

 

 

 

 九月 十日。

 

 むり しぬ。

 

 

 

 九月 十二日

 

 たすけて。

 

 

 

 九月 十四日

 

 完全にダウンしたニーナに代わって日記を書いてる完璧で究極の羽ペンは誰でしょう? そう! 私です! 

 

 いやぁ、今回のガバは特大でしたね……こんなんじゃ私、霧になっちゃうよ。

 まあ、なんというか、うん。ニーナが変なところでガバるのはよく知ってるけど、まさか、まさか生理を魔法で無理矢理止めてるなんて……この私の目をもってしても見抜けなんだ。

 

 まぁ? ニーナは元々男だし、生理への理解がふわっとしてるのは仕方ないかもだけど……だからって、なんで魔法で無理矢理止めるかなぁ? 生理は生理現象なんだよ? お腹が空いたり眠たくなったりするのと同じ事なんだよ? それを魔法で誤魔化したりしたら、どうなるか……ニーナなら考えれば分かると思うんだけど(無機物の私だって直ぐ分かったし)

 あるいは、考えた上で切り捨てたのかな? 切り捨てる判断が早いというか、なんというか。ナチュラルに死に急いでるからなぁ、ニーナ。

 

 追記。

 どんなにズタボロになっても「たすけて」の声だけは絶対に上げなかったニーナが、あんなに助けを求めてるのは可哀想だと思うけど……こればっかりはねぇ。ちょっとどうしようもない。

 たぶん、後三日は動けないだろうし、当分は生理不順で苦しむ事になるし、倦怠感も一ヶ月は取れないだろうけど……まぁ、なんというか。今回ばっかりは自業自得だからねぇ。助けようもないのもあって、私は三割ぐらい諦めムードです。はい。

 まぁ、隣にはレナ=サンがずっと居るから……ヨシ! ナデナデよしよしされてるから、ヨシ! ナニをしてるか分かる時もあるけど、とにかくヨシ! 

 

 

 

 九月 十六日。

 

 根性……! 

 ひ、怯まない。日本男児は怯まない……っ! 

 

 ニーナは女の子定期。

 

 き、気持ちは男だから……! 

 

 赤ちゃん孕める身体でなに言ってるんだか……諦めて、どうぞ? 

 

 うぐぐ……斯くなる上は、魔法で……! 

 

 ふーん? そういう事しちゃうんだ? 

 そうか、そうか、つまり君はそんな奴だったんだな。

 

 エーミール……!? 

 

 レナ殿下ー! レナ殿下ー! ニーナが悪い事しようとしてまーす! 

 

 羽ペン!? お前、お前! 

 あ、待ってレナ私が悪か──

 

 

 

 九月 十八日。

 

 おのれ羽ペン。レナがこっそり飼っているコウモリ(闇精霊系統の希少種)と結託してまで私をベッドに押し込むとは……おかげで予定より一週間以上も出発が遅れてしまったではないか。

 どうしてくれる? うん? 

 

 ふーん? 命の恩人にそういうこと言うんだぁ……へぇ? 

 

 ぐっ……あー! もう、悪かった。悪かったよ! だからレナを呼ぶのはやめたまえ! 最近目のハイライトが消えてきてて怖いんだよ……いや、レナは可愛いけどね! 怖くはないけどね! 

 こう、その、分かるだろう? 

 

 ……それ、誰のせいだと? 責任取って? どうぞ。あぁ、まさかニーナに限って、責任の所在を間違えたりしないよねぇ? ねぇ? 

 

 …………怒ってるのかい? 羽ペン? 

 

 自分の目を信じたら? 

 

 ……あー、その、悪かったよ。今後は気をつける。

 

 ふーんだ。

 

 追記。

 本題を書きそこねたので追記するが、私は一週間遅れながらも、何とかレナを説き伏せて天文台へ向けて出発する事が出来ていた。

 何故か、学園フルメンバーで。

 

 学園の守りは?? という私の当たり前の疑問は、ニーナを一人にするよりマシ(意訳)というこれまた何故か全会一致で合意が取れたレナの言葉の前に敗北。

 本当に、何故か、何故か知らないが新入りを含めたフルメンバーで天文台に向かっている。

 その上、というべきか? 気になる学園の守りも、突然やる気を出して単独顕現した死霊騎士達が死守するとあって、やっぱ止めたとも言い出せない始末。主の不在を守るは騎士の誉れなんだと言われれば、強制送還する訳にもいかず……

 そりゃ、君らの主はわたしではなくレナだろうけども。なんだってこんな時にやる気を出すのか……解せぬ。実に解せぬ。

 

 ……ニーナって、時々救いようがない程アホになるよね。ホント。

 

 おい、おい。

 ……なんだろう。最近羽ペンとの力関係が逆転している気がするのは。気のせいか? 気のせいだな。うん。

 

 ヨシ! 

 

 何見てヨシ! って言った? 羽ペン。

 

 

 

 九月 十九日。

 

 死霊馬や死霊狼のみならず、グリフォンまでをも酷使し超特急で展開したかいあってか。我々は今日の夕方には天文台を再制圧し、仮拠点に成功した。

 あぁ、再制圧というのは……まぁ、案の定というべきか。それともゲーム通りというべきか。ここの魔力や器物の影響受けて変異、凶暴化した森の魔物達が居座っていたので、それを一掃したのだ。私が最初に来た時にも泥仕合になりながら一掃したんだが……また入り込んだらしいな。恐らく、奴らとしても惹かれるモノがあるのだろう。たぶん。

 

 結界、張っとく? 

 

 ふむ? まぁ、そうだね。獣避けの印ぐらいは刻んでおくべきかも知れん。ここには貴重な物も多いからな。壊されては人類の損失だ。

 

 じゃあ、後でやっとくね。確認だけよろしくー

 

 うん? そういう事も出来る様になったのかい? あぁ、では、よろしく頼むよ。

 

 さて、話を戻すが……ここを再制圧した成果としては、取りそこねた隠しアイテムは全て確保。更にそれ以外にも貴重な資料や魔導書、あるいは用途不明ながら高度な器具などを発見する事に成功している。

 そして、ここが天文台と呼ばれる所以であろう星見台と観測器具の調査も進展中だ。……ただ、これに関しては調査結果が出る事は無いだろう。何せ私の目から見ても現代のそれと匹敵する上に、学園の先生になるべく真っ当な高等教育を受けてきた才女であるエマ先生でさえ、見た事もないが、途方もなく高度なのは分かる……逆を言えば、それ以外は何も分からないという有り様なのだから。

 

 いやまぁ、気になりはするのだけどね。これで何を観測していたのかは、フレーバーテキストでさえ語られなかったのだし。

 

 月とか星じゃないの? 

 

 うん? あぁ、いや、あの観測機器には、ただの星見にしては不要な装置や術式が多数見受けられてね。それが何かは分からないんだけど、少なくとも近場にある月とか星を見るにしては不自然な品なんだ。

 深宇宙でも探査していたのか。あるいは、星見台としての機能はオマケで、本来の目的は別にあったのか……まぁ、私が知る事は無いだろうね。本気で調べても十年以上は掛かりそうだし。

 

 

 

 九月 二十日。

 

 やはり、マンパワーは力だな。予定では一週間は掛かるはずだった星見台の探索が、あろう事か既に一通り終わってしまった。

 一人でチマチマやるはずだったのを、数十人でゴリ押してるんだから、当たり前といえば当たり前なのだが……にしても、エマ先生とレナが予想を超えて博識だった事は、嬉しい誤算という他ない。彼女達の才能は才女という言葉でもまだ足りないだろう。

 まぁ、方や難関という難関を乗り越えて若くして正規教員となった秀才。方や未了とはいえ最新鋭の教育を受けた元皇女殿下。しかも二人とも唯一生き残った先生と生徒なのだから、当たり前と言われればその通りなのだが。

 

 んー……エマ先生もそうだけど、やっぱりレナ殿下頭良いよね? テストの点が良いとかじゃなくて、自頭とか、IQとか、そっちの方で。

 

 うん、そうだね。普段はぼんやりしてるし、何なら思考が溶けてる時もあるんだが……ふとした瞬間の鋭さには、私も驚かされるよ。ゲームでは、あそこまで切れ味鋭いシーンは全く無かったからねぇ。……いや、本来のレナが、今なのか? 

 

 ……かもね。心配事は増えただろうけど、未来への希望は確かにあるだろうし。頑張ろう! とは、前より思ってるんじゃない? 産まれて初めてのレベルで。

 

 誰がレナのお荷物だって? 

 まぁ、戦局も好転しつつあるし……レナが未来に目を向けてくれるなら、嬉しい限りだね? ゲームと同じ少女は面影程度になりつつあるけど、別に、というか、私は今のレナも素敵だと思うし、そもそもゲームの事は切っ掛けでしかなくて、私はレナの事が…………あぁ、いや、いや、なんでもない。死力を尽くす。それだけだ。

 

 ……ヘタレ。

 

 お黙り。

 

 さて、兎に角、我々は明日一日休息を挟んで、邪教徒のロッジへと突入する予定だ。

 正直、気乗りはしない。連中とばったり遭遇したり、トラップがある事を思えば、自分以外の誰かを危険に晒す可能性を考慮せざるを得ず……何より、あの陰湿な場所に帰るという事を考えると、決意が揺らぐのは、仕方がない事だろう。

 私は、あそこで、あそこで────

 

 ニーナ? 

 

 ニーナ!! 

 

 ぁ、あぁ、大丈夫。大丈夫だよ。大丈夫、大丈夫だ。気にしないでくれ。

 ただ……そうだな。あそこに誰かを連れて行けば、誰もが疑問を持つだろうね? 

 いや、エマ先生やレナの予想以上の博識ぶりや鋭さを思えば、彼女達が私の出生や身体の秘密に気づいてしまう可能性は……恐らく、私が思う以上に高いんだろう。

 

 気乗りしない。全くもって気乗りしない話だ。

 ……笑ってくれ。羽ペン。私らしくもない。嫌われたら、なんて。ふふ、随分と弱くなったな? 私は。レナに、す、捨てられるなんて、そんな事。とっくの昔に、覚悟したのに…………

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