架空原作TS闇深勘違い学園モノ   作:キヨ@ハーメルン

8 / 38
第6話 魔女の日記Ⅱ

 四月 三日

 

 生きてる!

 

 胸にバリスタの矢をブチ込まれ、確実に死んだと思ったあの日から――医務室の日めくりカレンダーが正しいのなら――二日。私は丸一日の昏睡を経て、何とか復活出来ていた。

 今のところベッドからは起き上がれないが、全自動羽ペンをリモートで動かせる程度には回復している。……ちゃんと書けてるのだろうか? 後で確認しなければ。

 

 ともかく、あれは間違いなく死んだと思ったんだが、運が良いというかなんというか。不死者というのは案外タフらしく、死に損ねた形だ。

 いや、死に損ねた事に文句なんて欠片も無い。お陰さまでまだまだレナの為に働ける訳だからね。いや、あのまま役立たずとして終わっても、それはそれで死霊となってレナの為に働いただろうが……生きている方が何かと便利なのも事実。血とか、血とか、血とかな。

 

 レナ。あぁ、レナだ。

 私は、もうレナから離れられないだろう。元々彼女が好きだから助けたかったが、しかし、今では命の恩人という理由まで追加されてしまったのだ。

 死に際……ではなく、気絶寸前に見た羽ばたく黒い蝶。あれはレナが恋しすぎて幻覚と幻聴を見た訳ではなく、本当に彼女が私を助けに来てくれたから。こんな役立たずでマヌケで騒音問題にしかならないようなクズの為に、駆け付けてくれたのだ。彼女は。

 この恩に、私は返す物がない。

 彼女を救うのは大前提。それ以外に彼女に何か尽くさねば、私の気が済まないのだ。私の首や血では最早足りない。金銀財宝、歴史的な宝飾品の山を作ってもまだまだ足りない。それこそ国を一つ……亡国となった帝国を再建し、その皇帝の座をプレゼントするぐらいは、しなければ。

 

 ……ふむ、考えておこう。役立たずの私にしては、いい考えではないだろうか?

 口だけは達者なトーシロの私にしてはな。

 

 ただのカカシですな。

 

 ……今、妙なタイムラグが、いや、気のせいか?

 ともかく、敵はレナの手によって一掃され(流石は吸血皇女。序盤のチュートリアルキャラと呼ばれるだけはある)敵の侵攻作戦は再び失敗。死にかけていた私もファンタジーな魔法薬によって命を繋ぎ止めた訳だ。恐らく最上級のポーションを使ったのだろう。開通工事を受けた薄っぺらい岩盤も、ある程度塞がっているようだし……いや、誰が巻いたかも分からん包帯に血が滲んでる辺り、まだ塞がりきってはいないのか?

 だとしても、私のケジメ案件が増えまくっている以外は一件落着と言っていいのも確か。何せ、お決まりのあれをやる余裕があった程だ。

 

 知らない天井だ。

 

 ……今、羽ペンが何か余計な事を書いた気がする。後で確認せねば。

 

 ところで、私の寝ている医務室のベッド……その横で椅子に腰掛けたまま穏やかな寝息を立てているレナを、どうしたものだろう?

 まさか付きっきりで看病していたとは思えないが……寝かせてやるべきか。起こすべきか。難しいな。

 

 追記

 もしレナに付きっきりの看病させたのなら、私は潔く腹を斬るぞ。

 惚れた女の負担にしかならん男なぞ恥ずかしか! 生きておられんご!

 

 

 四月 四日

 

 少し体調が良くなったのを良いことに、夜中コソコソと死霊に日記帳と羽ペンを回収させたのだが……くそ、この羽ペンめ。その羽むしり取ってやろうか?

 余計な事ばかり書きおってからに。これで安い品ならへし折って買い替えてやるところなんだが……高いからな。コイツら。

 

 チクショウメェェェ!

 

 お前がなッ!

 

 ……はぁ。羽ペンにキレても仕方がない。今日あった事を振り返ろう。

 今日あった事といえば、やはりレナが私のハラキリを断固として阻止して来た事だろう。

 

 勿論、レナが付きっきりで看病してくれたのは嬉しい。当たり前だろう? もし好きな少女に付き添われながら看病されて嬉しくない野郎が居たら、ソイツはただの玉無し野郎だ。

 ……いや、今は私も玉無し野郎だが。

 

 ともかく! 嬉しい事は嬉しいが、そもそも私はレナの負担になりたくないのだ。好きな少女の負担になるヒモ野郎とか死ねば良いと思ってるし、命の恩人におんぶにだっこされているクソ野郎は屠殺されるべきだと思っている。

 つまり、私は死ぬべきだ。

 

 LED。照明完了。

 

 へし折られたいか? 羽ペン。

 

 ……しかし、だ。いかに死ぬべきだと分かっていても、潔くケジメしようとしても、その度にレナが断固として阻止してくるのでは切れる物も切れない。かといって食って欲しいと、あんなモドキ野郎や鳥公のエサになるくらいなら、レナに食べられたいと、そうお願いすればまだ調子が悪いのだと勘違いされてベッドに押し込まれてしまう。

 半泣きで寝てて欲しいと言われれば、私はそれに従うしかなくて……むぅ。このケジメ、いかにつけるべきだろう?

 

 やはり帝国再建計画を実行するしかないのか……?

 

 

 四月 五日

 

 体調が良好である事を受けて面会謝絶状態が解除された。……うん。私には面会制限があったらしい。この学園に医者なんていないから、レナの手による物だとは思うが……有り難いやら、情けないやら。

 これは本当に皇帝の玉座を用意しないとダメかも知れない。男のプライド的な問題で。

 

 とはいえ、それで誰かが来るとも思っていなかったし、今日も夜にレナが来るまで暇だと思っていたのだが……なんと、初日から主人公君ことユウが来てくれた。

 何でも私にお礼を言いに来たらしい。助けてくれてありがとうと、紹介状を用意してくれて、ここを教えてくれて、ありがとうと。本当に、マメな事に。

 

 ……ユウの村が壊滅したのは、私のミスだというのにな。

 まぁ、良い方向に主人公君が勘違いしているというなら、訂正する必要もない。私は、彼の感謝を受け止めるしかなかった。心苦しいとか、そんな感情を表に出さない様にしながら。

 

 そんな有り様な事もあってお互い話す事は……まぁ、あるにはあったが、然程親しい感じにはならず。お礼の話が終わればありきたりな、お互い無事で良かったねとか、あるいは武器の話――形見のレイピアの話から武器種全般の話に広がった――とかを話しただけに終わった。

 

 とはいえ、得るものが無かった訳ではない。むしろその逆。ユウから聞いた話とレナの話と合わせる事で、ようやくあの日の学園の状況を把握出来たのだ。

 

 どうやらあの日は私が敵精鋭部隊を足止めしているうちに、潜伏斥候部隊が主人公君達の手によって、敵主力並びに狩りそこねた精鋭部隊をレナが殲滅した形だったらしい。

 ゲームとは違って新入生は全員が生存。職員もその多くが生き延びた様だが……しかし、レナの負担を減らす事は叶わなかったと言っていいだろう。どこぞのマヌケが役立たずなせいで、案の定。

 

 やはりケジメとしてハラキリするしかない……そう思えど私が未だに腹を切っていないのは、ユウが発したお嬢様がという言葉が引っ掛っているからだ。

 一緒に入学しているはずの人気投票ワン・ツートップの超万能女剣士やシスターだけど実はお姫様系メインヒロインでもなく、お嬢様。

 どこのお嬢様なのか、ついに聞けなかったが……

 

 いや、そんな、まさかな。

 まさか、まさかあのドーントレス家のお嬢様が来ているはずがない……気のせいだろう。

 

 

 四月 七日

 

 アイエェェェ!? アリシア・ドーントレス!? アリシア・ドーントレスナンデ!?

 

 アイエ、アイエェェェ!? サーシャ!? サーシャナンデ!?

 

 アバ、アバババー!

 

 

 四月 八日

 

 アリシア・ドーントレス。そしてニンジャ……じゃない。サーシャ。

 

 片や典型的なお嬢様に見せ掛けたバリバリの武闘派貴族令嬢。

 片やニンジャ並の暗殺力を持つ元殺し屋兼泥棒の完璧系メイド。

 

 このご時世を考えれば驚異的なまでにマトモな神経をしているアリシアと、圧倒的なまでのメイド力を持っているサーシャは『スカーレット・ダイアリー』の中でも特に人気の高いヒロインキャラクターであり……そして、極めて入手しにくいプレイアブルキャラクターでもあった。

 二人はいずれも中盤で加入してくるイベントユニットであり、条件さえ整えばその後も継続使用できる――個別エンドもある――隠しユニットなのだが……その獲得条件が少しシビアであり。条件を知らずにプレイしているとアリシアを庇ってサーシャが死に、その死にアリシアが耐えきれず戦線離脱。その後アリシアも暗殺されて二人仲良く永久退場するのは、まぁ、しばしば見られた光景だ。

 二人の特別な(てぇてぇな)関係性。そして良いやつは早死にする……それを体現したかの様な人の良さと死に様は鮮烈に過ぎ。その光景や結末に心を抉られる者が続出し、出番が少ないながらヒロインランキングを駆け上がってみせたキャラクターでもある。

 

 ちなみにレナより人気が高い。

 

 殺すぞ、羽ペン。

 

 いや、ほら、レナは出番が少なかったからね? 二人以上にさ。うん。それに顔が良いのは共通だが……アリシアとサーシャは、胸がな。レナや私と違ってペタン族じゃないからね? 身長も年齢相応? に高いし。

 …………書いててレナに血を捧げたくなるから止めよう。この話は。有り体にいって死にたくなる。

 

 つまり、何が言いたいかといえば、彼女達は二人揃って死亡フラグが立っており、またそれさえ無ければ極めて強力な隠しユニットでもあるということだ。

 瞬間火力トップクラスのアリシア・ドーントレス。純粋に強いサーシャ。仲間に出来れば一軍間違いなしの彼女達が居るのは、心強いとしか言いようがない。死亡フラグは……私が折るからな。生きていれば。

 

 疑問なのは、なぜ二人がここに居るか? という、原作崩壊に関してだが……まぁ、その、はい。

 

 こうなったのは全て私の責任だ。だが私は謝らない。

 

 あの日、私が一筆書いてユウに預けた王立魔法学園の封筒。どうにもあれが、マズかったらしい。どうにもあれを持っていたせいでユウはどこかの御曹司か何かと勘違いされ、ドーントレス家の屋敷へと案内されて……まぁ、うん。色々あったらしいね。恐ろしい事に。

 ただ、そんな原作崩壊の中でも原作通り秒速でアリシアとサーシャに気に入られたのは、流石は主人公というべきか。男の娘属性が上手く働いたと見るべきか。

 

 ただ、ユウ君? 私をヨイショするのは止めて欲しかったね。

 何が悲しくて瞬間火力トップクラスの脳筋ゴリラに模擬戦を持ち掛けられなければならないんだい? 断ったが、断ったが……! そうすると今度はメイドが暗殺者の目をするんだぞ……私にどうしろと!!

 

 

 四月 十日

 

 原作崩壊に悩みつつ。それでも時は流れて、胸に開通工事を受けてから一週間以上。ようやく私も退院だ。明日からはくたばった教員の代わりに授業を受け持つ事にもなっている。

 ……私は司書なんだけどな。まぁ、予め覚悟しておいたし、準備もしているから別に良いが。

 

 ただ、レナやアリシア曰く。私の傷はまだ完治していないらしい。

 いや、私からすれば完全に完治しているのだが、レナや他の人達からすればこれは完治したとは言えないらしく、退院日が今日までズルズルと下がってなお、まだ完治したとは言われていないのだ。

 ちょっと胸に大きな傷跡が残っただけなのに。

 

 元々真っ平らな岩盤みたいな胸だ。この程度の傷跡があっても気にならないし、どこぞの稲妻型の傷跡に比べれば全く目立たない……というか見せる様な場所にないんだぞ? 気にする事はないと思うのだが……アリシアお嬢様曰く、とてもよろしくないとの事。

 そこから先は淑女が口に出来ないという事でサーシャに解説が引き継がれたが、まぁ、要するに男とヤるときにドン引きされて、嫁入りを逃すぞと、そういう話らしい。

 

 うん、何も問題はないな!

 

 男とヤる予定も、結婚する予定も端から無い。

 最低限、レナさえ助ければ私はそれで良いのだ。結婚とか男とか死ぬほどどうでもいい話だった。

 それに傷跡は男の勲章。ましてや背中の傷でないならなおさら気にする事はない。ないのだが……レナが、酷く気にしているのはいただけない話だった。

 

 何せ、レナはぐずくずになった私の死体(死んでない)を直に見ているからな。

 スプラッタなシーンを、嫌な事を思い出させてしまったのだろう。とはいえ、それは仮にも吸血鬼が持っていいトラウマではない。何とか解消しておきたいところだが…………うん。やってみせろよ、私。何とでもなるはずだ。

 

 ガンダムだと!?

 

 机にぶつけるぞ。羽ペン。

 

 

 四月 十一日

 

 誰だって突然スプラッタなシーンを見せられればトラウマになるだろう。ましてやレナの様に純粋な、そして自身の怪物性を嫌悪しているなら、なおさら。

 

 本音を言えば、そっとして上げたいのが正直なところだ。しかし、レナは仮にも吸血鬼。しかも血を吸う事を嫌悪している吸血鬼なのだ。……この先、殺されてしまう運命にあるというのに。

 いや、むしろ血を吸わないから殺されたのではないか? 先祖返りだからではなく、弱体化が究極的に進んでいたから……彼女は殺された。

 そう思えば、私はもう我慢出来なかった。夜。入院していたときの様に、私の自室に顔を出してきてくれたレナに、つい迫ってしまったのだ。

 

 血を飲んでくれと。

 

 本当は私を食べて欲しかった。治ったとはいえ、鳥についばまれていたところを見ると、その思いが何度もぶり返してくるのだ。あんな奴のエサになるより、レナに食べられたいと。そんな思いが。

 とはいえ、身体をナイフで切り分ける話は――面白くも何ともない質の悪いジョークだと思われているらしく――もう断られた後。だからこそ、今回はやむなくハードルを下げた形だ。

 

 食べなくてもいい。

 けれど、どうか。血を捧げさせてくれと。

 

 だが……レナの決意は硬い様で。

 レナは、血を飲んでくれなかった。

 

 何か、何か考えねば……

 

 

 四月 十二日

 

 授業をしているとき以外はずっとレナに血を吸わせる方法を考えているんだが……良い方法は全く思い付かない。

 子供にピーマンを食わせようとするカーチャンの気分だ。いや、私は男だし、レナの母親でもないが。ついでにピーマンでもニンジンでもない。ニンジャならメイドの格好をしているが。

 

 うーん。派手にブシャーっとぶちまけるのはショック療法が過ぎるだろうか? 過ぎるか……

 

 

 四月 十三日

 

 どうにも私の授業は生徒(ユウ君の世代しか居ません。他はみんな死んでました!)からの受けが良いらしい。

 私が面白い……というより、他が酷すぎるという理由で。

 

 何だろうな。某魔法学校の某科目の一年目と二年目と五年目辺りと比較されている気がするのは。

 ボンクラに勝ったところで何も嬉しくないぞ。

 

 まぁ、いい。喜んで貰えている様だし、もう少し気合いを入れて授業をしてみるか。

 お喋りしたい欲は、まぁ、レナが毎夜吸ってくれるからな。昼間は役に立つ話をしよう。差し当たり……精霊魔法の話とかどうだろう? ひょっとすると適性がある子が居るかも知れん。うん、そうしよう。明日は精霊魔法の話だ。

 いや待てよ? 明日は状態異常の話の方が良くないか? 毒とか麻痺とか、ちょっとしたのですら現実では命取りな気がするし……むむむ。迷っちゃうね。これは。

 

 追記。

 

 状態異常。状態異常か…………ふむ?

 

 

 四月 十四日。

 

 そうだよ。素面のレナを説得しようとするから悪いんだ。酔わせて押し倒してしまえばいい。

 何せこれは治療行為であり、ひいてはレナの命を救う為でもあるのだから、犯罪だと言う点に目をつむれば何ら問題はない!

 

 とはいえ、いきなりベッドに引き込んではビンタを食らうこと必定。

 ここは一計を案じ、偶然を装って紙で指先を切る事にした。滲み出てきた血をレナにペロリと舐めさせる作戦だ。我ながら完璧な作戦……だったのだが。

 

 作戦は、失敗した。……レナが、小さいながらも悲鳴を上げてしまったのた。息が詰まる様な、あるいは発作にも似た、とてもではないが舐めるとか吸うとかいう空気では無くなってしまう物を。

 本人も上げようとして上げた風ではないから、あれは、トラウマになっているのだろう……早く治療せねば、命に関わりかねんぞ。あれは。

 

 責任取って。どうぞ。

 

 言われるまでもないわ!

 

 

 四月 十五日

 

 今日も今日とて来てくれたレナに気を良くし、私は紙で指先を切ってジワリと血を滲ませる。

 

 とはいえ、切るところを見られては昨日の繰り返しになってしまうので、背中で隠して結果だけを用意する。そうして滲み出てきた血がプクリとドーム状になったところでレナに見せれば……

 

 うん。少し抵抗していたが、血のにおいに負けたのだろう。彼女はペロリと舐めてくれた。

 

 そして一度味を知ってしまえば、吸血鬼としての本能には勝てない様で。そのまま指先へと吸い付いてくる始末。

 その光景に、その、ちょっと変態性を感じた私は……まぁ、はい。殺されるべきだと思う。誰か、バリスタを持ってきてくれないか? デカい奴だ。

 

 ともかく、レナは血を吸う……事は出来ない様だが、舐める事は出来る様になった。

 これは大きな前進だぞ。前進。

 

 

 四月 二十日

 

 ネコにエサをやるかのようにレナに餌付けする日々が続いて……暫く。

 気づけば、レナがいつでも引っ付ついて居る様になっていた。流石に授業中等は別行動――というかレナはおやすみタイム――だが、活動時間が被っているときは殆ど一緒に居る様な状態だ。例え戦場であっても。

 以前は遠間から見ている程度だったし、昼間の襲撃の際は――闇精霊が居れば何とか活動出来るとはいえ――寝ている事も多かったのだが、その、何というか。昼夜逆転生活に突入し始めているのか、一緒に出撃する回数が増えているのだ。

 曰く、私の側だと日傘が必要ないからとの事だったが……闇精霊は死霊術師の近くに居ると活性化したりするのか? ゲームでは死霊術師は敵キャラだけで、味方キャラは居なかったから、うーん、何とも言えん。謎だ。

 

 

 四月 二十五日

 

 昼間は役に立ちそうなゲーム知識や前世知識を可能な限り分かりやすく、噛み砕いて生徒達に伝え。理解が甘い者や熱心な者には放課後も個別授業をつけて(ユウ君御一行とかほぼ毎日である)

 夜になればベッドの上でレナにペロペロと血を――今日は首筋につけた傷を舐めてくれた――する日々。

 

 昼間はともかく、夜の変態じみた私の行動に思うところがないではないが……生憎、私には余裕がない。序盤の山場が迫っているのだ。あの大規模侵攻まで後僅か。ゲーム的な表現をすれば、残りのマップは後二つか三つしかない。どんな手であれ、やれる事をやらなければ。

 

 追記

 

 ただ、その、なんだ。ひょっとして、なんだが。レナはそういう趣味だったりするのだろうか? 私の血を舐めているときの様子が、艶やかというかなんというか。端的に言って■■■■何を書いてるんだ! 私は!

 いや、でも、あんな顔で見られたら、つい私もそれにつられて■■■■■。それどころかレナが積極的過ぎて■■■……もう止めよう。この話は。やぶ蛇だ。

 あれは治療行為なんだ。治療行為……!


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。