アブノーマリティに転生したが...ノーデスを目指しますが......知らないアブノマーリティしか来ないんですけど? 作:サイコロさん
………ガタン………ゴトン………!
何かが降りてくる音がする。そして大きな震動がする。まるでエレベーターのような震動や音だ。ゆっくりながらも稼働しているのか、そこまでは揺れは酷くない。
…………ん?
ちょっと待てちょっと待てちょっと待てお兄さぁん。俺はエレベーターで寝るという趣味もなければ、寝た覚えはないぞ。というか、このエレベーター赤くない? そりゃ薄暗いエレベーターの中、赤いライトの光に囲まれているからなぁ。そう思っていると上からスピーカーが聞こえる。どうやら薄暗くて気づかなかったようだ。
『……――ッ、――ッ、ァアああ、聞こえるか? 聞こえるならば返答を求む』
うーん、男性か女性なのか分からない中性的な声だな。とりあえず反応をしてみる。
「応よ! ばっちりさぁ!」
その言葉を聞いて安心したのか、安堵の溜め息をつく音がした。
『そうか……ならば君に聞きたいことは一つある。それだけ応えてくれ』
「なんだ?」
『君の特徴、または信念や思いを一言で教えてくれ』
ふむふむ。そう聞かれちゃこれしかねぇよ。
「俺は、皆を助けられる
『……そうか……質問に応えてくれてありがとう』
そして俺は眠りについた...ホントになんで?
そして目覚めたら、そこは謎の空間。厳重そうな扉に周りには、換気扇やよく使っていたパソコンに高そうなデスク。さらにはクローゼット、ベッド、冷蔵庫まである。例えるならばマンションの一室みたいだ。というか俺の部屋だ。
「どう言うことだ? とにかくパソコンをつけるか」
そしてパソコンを起動させると、そこには俺が遊んでいたゲーム画面だった。
「おお! これは、俺が……?」
なんだ? この痛烈なまでの違和感。まるでゲームじゃない……うん? これは……!
「間違いない! これは、俺が以前まで遊んでいたゲームだ! そしてここはゲームの世界だ!」
なぜわかったのか。それは俺に似た何かがいたからだ。"それ"はサイボーグみたいだ。黒スーツを着た人間みたいだが、問題は内装だ。俺の部屋に異常なまでに似ている。
「こうしたらどうなるんだ?」
俺はパソコンを持ったまま、クローゼットを開けた。すると画面上でも俺をモチーフした"それ"は同じ動きをする。
「つまり、俺がいたエレベーターは……まさか!?」
以前のゲーム……サイボーグみたいな格好……つまり俺は――
「アブノマーリティになっているのか!?」
――それなら納得出来る! エレベーターは、アブノマーリティを選ぶ時の選択場面。パソコンの画面は、管理する時の画面。簡単な話だ! これは…ここは……
「Lobotomy Corporationの世界だなぁ! オイオイ楽しくなってきたんじゃねぇかぁ!」
いやぁ~まさか、あの残酷な世界に来てしまうとは、私も運が悪いな。
「うーん、ならばゲーム通りにやっていくべきなのか? 幸いにもアブノマーリティだから死なないし、職員達を犠牲にしながらやっていくべきなのか? うん?」
するとパソコンの画面に、俺の収容室に職員が近づいてくる様子が写っていた。ならば!
「見分けなければ! ここの職員にふさわしいか、どうかを!」
そして開かれるのは、赤い目に綺麗な白髪に雪の髪飾りをした女性社員だった。そして目から感じられるのは、"勇気"これしか感じない。感じなかった。
…………俺は、バカだ………!
考えてみろ! この世界を! ここは誰もが簡単に死んでしまう場所だぞ! ここはゲームじゃなくて、現実だッ!! 誰もが生き残る為に、泥をすすり、手を血に染める世界なんだぞ! 俺はバカだ! 何が犠牲だ! 今、生きている者達に対する最大の侮辱だ! ならば俺がやるべきことはッ!!
「いらっしゃい。お茶はいるかい?」
「……! ……ありがとうございます」
「まあまあ落ち着いて、ゆっくりと話し合おうぜ。そこにソファーあるから座ってくれるか?」
俺はソファーを指差す。
「……」
そして座ってくれる職員。そして俺は最大の質問を問う。
「コーヒーか、紅茶か、またはココア。どれがいい?」
「………? なんでもいい……です……」
「かしこまり♪」
俺は馴れた手つきでコーヒーを作る。香ばしい香りとほろ苦い味が明日の活力となる!
「どうぞ」
「……ありがとうございます……」
そして恐る恐るながらも飲んでくれる職員。俺はそんな職員に落ち着くように話し掛ける。
「そういえば、なぜここに来たんだ?」
「……【T-00-01《救世主》】に"洞察"するように指示が出されて……」
そして職員が持っていたタブレットを見せる。ほぉ~う。結構しっかりしてあるね。
「よし! ならばドンドン質問してきなさい!」
「……わかりました」
そして質疑応答を繰り返すこと三時間。そして得れた情報もたくさんあった。この世界のこと、会社のこと、そしてこの会社で
(つまり、まだセフィラを助けれるのでは!?)
そういう希望が見えてきた。そして俺の異常性が以下のこちら!
·落ち着く
·好かれやすい
·めちゃくちゃ強い
·知らねぇ
·ヒ·ミ·ツ♡
·わかりまちぇん
·まだ研究中ですぜ、兄貴!
なんだ? このふざけた研究結果は? 子どもすらこんな報告書は書かないぞゴルァ!
「なぁお嬢ちゃん。今更だが名前を教えてくれないか?」
「!!……どうしてですか……?」
「簡単な話さ。今後も長い付き合いになりそうだからな。それなのに名前が無ければ不便だろ?」
彼女は苦しそうながらも答えてくれた。
「私の名前は……
「え?」
意外な返答に呆気ない声を出してしまった。
「あの……その、私は、実は………」
「待った。やっぱ言わなくていいぜ」
つい口調が戻ってしまう俺。それに驚いたのか目を丸くする職員。
「……ど、どうしてですか?」
「だって苦しそうだったから」
「で、でも……!」
「誰が苦しそうながらも無理矢理言う必要性を言った? お前はまるで昔に悲しそうに、泣きそうに、苦しそうに感じているんだろ?」
「……」
「沈黙は肯定だと受け取るぜ。まあとにもかくにも! 名前がないなら、俺が勝手に
「……」
小さく頷く職員。そうだな……勇ましさ……勇気……ブレイブは似合わないよな………そうだ!
「ミウなんてどうだ? 悪いが俺はネーミングセンスは皆無だから、酷いかもしれないがな」
勇気→英語→ドイツ語→Mut→ちょっといじりまして→ミウ!
「……あ、ありがとう…ポロポロ」
そして泣き始めるミュウ。俺は慌てて慰めた。
「お、おい!? なんで泣くんだ! えっ、えっととりあえず飴ちゃん食うか?」
するとクスクスと笑い始めた……本当にどうしてこうなった?
『嫌だ! 死にたくない!』
私がいたところは、悲鳴がよく聞こえた。
『来るなッ!! バケモノめッ!!』
私は、誰からも愛されなかった。
『なんでだよ……お前が……お前のせいだ……呪ってやる』
私は、誰からにも呪われた。
『何をしている、No.75842。早く
『ヒイィッ!! 頼む、見逃してくれ! 俺はアンタ等には何もしていないだろ! 俺はただ、家族のために――』
『何をしている、No.75842。お前は"道具"だ。
『頼む……俺は、俺はただ……』
『時間がもったいない。早くやれ』
『……アンタは、そんな生き方でいいのかよ……クソが『ザシュッ!』』
組織の"道具"として生きていた。それが私の
(ここでも、マニュアル通りに……指令通りに……)
やらなくちゃ。全ては……誰に?
誰のために? そもそも私は誰? 生まれた意味は? 以前は"指令をやりこなすこと"
(私は……何のために……)
私はみんなが羨ましい。愛されないことなく、呪われることもなく、縛られることもなく、そして名前を持っていた。
(ここでも……私は……)
せめてみんなと同じ名前が欲しい……そう僅かな懇願を押し殺し、私は仕事に移る。
(ここはバケモノからエネルギーを取り出す……バケモノ……バケモノにだって名前があるのに…なんで私には)
ないの? そう思っていると、いつの間にか着いていた。
【T-00-01《救世主》】のプレートがついた重厚な金属の扉。このバケモノにも名前がある。なんでなの? なんでバケモノにあって、私には……
『来るなッ!! バケモノめッ!!』
……私は私欲を抑えて入った。
『いらっしゃい。お茶はいるかい?』
そこはとあるマンションの一室ようだった。冷蔵庫にソファー、パソコンまであってここなら一晩は過ごせそうだ。
そして一番に目に入ったのは、声の主だった。2mある身長、ちょっと怖い目つき、がっちりとした体格、特に変わらない人間なのだがよくよく見ると、左手と両足には謎の最新の機械が搭載されていた。
(これがアブノマーリティ? 今のところは人間にしか見えない……)
裏路地や私が殺してきた者たちが、まだバケモノの感じがする。それに――
(なんで、こんなに胸が、心が温かくなるの……?)
ジーンとするような……救われるような、慰められるような……なんとも言えない感情に心は揺さぶれた。とにかく指令をこなしていると、【T-00-01《救世主》】から話を持ち込んできた。
『なぁお嬢ちゃん。今更だが名前を教えてくれないか?』
それは私にとっては試練だった。しかし私の口は勝手に開いていた。
『私の名前は……無いんです』
『え?』
私の言葉に呆気を取られていた【T-00-01《救世主》】。私は何故、名前が無いのかを説明した。いや説明しようとした。
『あの……その、私は、実は………』
しかし、私は説明が出来なかった。わからない。どうして説明が出来ないのか。私の過去をただ話すだけなのに……すると声が掛けられる。
『待った。やっぱ言わなくていいぜ』
口調が変わったことも驚きはするが、何よりも驚いたのは聞かなかったことだ。
『……ど、どうしてですか?』
思わず尋ねてしまったが、【T-00-01《救世主》】は難なく答えた。
『だって苦しそうだったから』
どう言うことなんだ。なんで苦しそうだと感じたんだ。私は、今の環境には前に比べたら良い環境だと思っているハズなのに。
『誰が苦しそうながらも無理矢理言う必要性を言った? お前はまるで過去のことを悲しそうに、泣きそうに、苦しそうに感じているんだろ?』
………そうか。そういうことなんだ……思わず図星をつかれた私は、黙ることしか出来なかった。
『沈黙は肯定だと受け取るぜ。まあとにもかくにも! 名前がないなら、俺が勝手に
頷いてしまう私。そうか……そういうことなんだ……
『ミウなんてどうだ? 悪いが俺はネーミングセンスは皆無だから、酷いかもしれないがな』
そうか……そういうことなんだ...
『お、おい!? なんで泣くんだ! えっ、えっととりあえず飴ちゃん食うか?』
突然、泣いたことに驚きながらも慰めようとした行為が、何故か面白くて笑ってしまった。
私には名前がある。それは"ミウ"。この名前は私にとって、とてもとても大事なものだ。
多分、不定期更新になるのでご注意ください。