アブノーマリティに転生したが...ノーデスを目指しますが......知らないアブノマーリティしか来ないんですけど? 作:サイコロさん
私の前には、あの可愛らしいスライムの面影はなく、ただただ目の前の物を壊すことに夢中になっていた。スライムからは生臭い血の臭いがしていて、鼻をつまみたくなった。
(とにかく逃げなければッ!)
私は扉に向かって走り出す。幸いにもまだ足と手は動いてくれた。しかし私はふと疑問に思ったことがありました。
(何故、収容室にいるのに、脱走判定になっているのでしょうか?)
そんな疑問は、出てからわかった。
「あ、ああ……そ、そんなぁ………」
グチョグチョ………グチョグチョ……
通路には、一回り小さい赤いスライムが何体もいた。それぞれ何かを壊そうと必死になっている。そんな中、メインルームに繋ぐゲートの方から叫び声が聞こえました。
「おい! ライナッ!! 早くこっちに来い!」
私は走り出しました。しかし、スライムが私に気がついたのか、襲ってきましたが……
「ええい! 近づくんじゃありませんわぁ!」
何とか"初心の拳銃棒"を振り回しました。ダメージはほぼ無いですが、何とか遠ざけることは成功しました。私は間一髪でメインルームに避難出来ました。
「……オフィサー達、今だよ!」
『おう!』
すると何人かのオフィサーが、食堂の机だったり、椅子だったり何かしらの物を用いて即席の
「よし……現状確認だ。まずは、被害状況はどうだ?」
「……なんとか死者は出てないけど……重傷者が多すぎる」
「そうか……なら、エネルギーはどうだ? ワンチャンエネルギーを貯めての逃走は?」
「……そうしたいのは山々だけど、全ての通路にスライムが湧いている」
「ならば、ライナさん。武器でのスライムに対するダメージは期待できるか?」
「……いいえ。どうやら私の武器は相性が悪いようです」
思い出されるのは、とある
『えっとな…俺はRED耐性があってな。そしてその武器は、RED属性なんだよ。ただでさえ再生するのに相性が悪い武器だからかな。全然効かねぇよ』
つまり、私たちの武器では……
「そうか……かくなる上は!」
そうやってガーンは、もう一体のアブノマーリティが収容されている通路のゲートの前に立つ。
「オレがひたすら時間稼ぎをする。そしたら、その隙を狙ってミウとライナがエネルギーを集める。簡単な話だろ?」
確かにそれならばいけるかもしれないが……問題がある。
「それはつまり、ガーンさまが死ぬ可能性が非常に高いことなんですよ!」
「……そんなのは……許せない………!」
「分かる。だが、誰かがやらないといけないんだ。普通に戦っても誰かが死んでしまう。このままだと全滅もあり得るんだよ」
ええ、分かっております。ならば!
「ならば、私に行かせて下さい! 私は、あなた方とは違って武器がありますわ! 私の方がこの作戦に向いておりますの!」
私の武器は、ダメージは与えられないものですが、引き付けることは可能なハズ! これを利用すればまだ勝算がありますわ!
「………わかった。そこまで言うならライナさんに任せた。オレはここにいるオフィサーの保護。ミウは」
「……エネルギー集め……」
「そして私が時間稼ぎですわね」
お互いに目を合わせる。それは互いの信頼を信用すること、誰一人欠けてもならない。欠けたら全滅。簡単な話ですわね。
「みんな、健闘を祈る」
「……うん」
「わかりましたわ」
こうして二日目で、私たち全員の命をかけた戦いが始まった。
そこはとある通路。黄色い光に照らされた通路で全体的に黄色の感じがしました。今は……
「ッ! このぉ!!」
大きく振り回して赤いスライム達にダメージを与えようとしたが、スライムは分裂しただけだった。気がつけば周りには赤いスライムがうじゃうじゃおり、全体的に赤色に見えました。
「まだまだですわ!」
私はさらに弾丸を撃ち、遠くのスライムに当てる。スライムを惹き付けること。そのためには全てのスライムがここにいないといけない。私に狙いを定めないといけないが……
「まさか、アナタさえも出てくるとは……」
「………アァ………アアァ……」
まさかの本体すらも出てくるなんて...けど、うじうじ出来ませんわ!
「私は、まだまだ戦えますわ! 覚悟しなさい!」
私は、"初心の拳銃棒"を振り回して、スライムに攻撃を続ける。たまに触手みたいなのが来るから避けつつも、とにかく攻撃をし続ける。
「ぐふッ!?……ゥ…まだまだですわ!」
攻撃が当たって思わずうつむいてしまいました。攻撃は骨を折ってしまうほどで既に左腕がボロボロです……けど!
「まだまだ……え?」
私が前を向いた時、前には何もいなかった。
「あ、ありえませんわ!? どうして……!」
違和感、私の記憶を思い返してみる。そしたら一つ、たった一つだけおかしな点がありましたわ。
「
そう、赤いスライムを見ていた私さえ、あの小さい赤いスライムがどうやって生成されたのですか? それはたった今、わかった。
ボコッ! ゴキッ! グチャッ!!
「……え”?」
私は倒れました。正確に言えば立っておれなくなりました。私は背中から倒れたので、通路の天井を見上げることが出来ました。そこには――
――赤い何かで埋め尽くされた換気扇がありましたわ。
「……成程ですわ……換気扇……ダクトを通って移動したんですね………それならば…私に見つからなくても移動は出来たんです……ね………ゴフッ」
どうやら脚を完全に折られたらしく、現に私の足から白い物が見えました。立つことも、逃げることも出来ませんでしたわ。
(私は……ただ……ただ……お母さま、お父さまに楽にさせてあげたかった………ですわ…………)
そして赤いスライムがゆっくりと落ちてきて、そして私を補食するように口を開いて、そして――
――私は、誰かに抱き抱えられていました。
………!? 思わず、その抱き抱えてくれた者に感謝を言おうとすると……そこには………
「よう。遅れてすまなかったな」
あの
「いやぁ、大変だったよ~。ミウが異常なまでに慌てていたから話を聞いたら、全滅するかもしれないって。やっぱりパソコンを切っちゃいけねぇな」
なんとかここ以外の通路にいたスライムは、なんとか全滅させて残るはここのみ、そして――
「……や、やっと助かるのでしょうか……」
――
「おいゴルァァア!! どこのどいつがノエルを傷つけたんじゃあ! さっさと出てきやがれゃぁア! 生きていることを後悔させてやりゃァアア!!」
「ちょっと物騒すぎません!?」
そう言うと、一斉に襲い掛かる赤いスライム達。俺は避ける。すると触手が俺の顔スレスレに狙ってきた。
「お前かぁ? お前がやったんがァ? だったら覚悟しやがれぇ!!」
俺は左手にある機械のスイッチを押す。
「
そして俺の後ろから、水色の幾何学的な魔方陣から大きな西洋風の槍が突き出された。
「よぉ―し、これで形勢逆転だな」
俺は、赤いスライムを突き飛ばした西洋風の槍を手に取る。対する赤いスライムは……
「ハヤトさま! 赤いスライム同士がくっつき始めましたわ!」
大きくなっていた。
「構わん! どうせ、物理的ダメージはほとんど効かねぇし、俺も効かん! これは時間稼ぎだ!!」
「え!? じゃあ何をすれば!?」
俺の説明にどうすればいいのか混乱するノエル。
「安心しろ! 物理的ダメージが効かねぇなら、精神的ダメージでごり押しだ!」
そう言って俺は、赤いスライムに飛びつく。
突然だが、言いたいことがある。俺は何故、
俺は、職員やオフィサー達を助けたいと動いている。まるで職員達の
俺は、職員やオフィサー達の"生きたい渇望"と"死ぬ恐怖"から産まれたアブノマーリティなんだ。
「ハッハッハッ! 俺がこの程度で倒れると思ったのか! このバカめぇー!」
俺は赤いスライムに向かって突撃をする。そして俺は……ニヤリ。
「
銀色に鈍く輝く杖に、先っぽにはランタンみたいな飾りが付いており、青い炎みたいにゆらゆらと燃えて光っている。
「喰らいやがれ!
そして俺は、青い炎を空中に浮かべてスライムを燃やす。
「ピぃギャアアアア」
明らかに苦しみ始めたスライム。そしてスライムは燃やし尽くされた。その燃えた後には、青いスライムが寝ていた。
「あの……ありがとうございますッ!!」
そうやって頭を下げてくるノエル。俺は頭をポンッと手を置いて言ってやった。
「またピンチになったら助けてやる。だからいちいちお礼は言わなくていい。なぜなら俺が好きでやっているからな」
俺は不敵な笑いで言ってやった。
職員達には回復を優先してもらい、管理人からの願いもあり、俺とノエルは【O-06-37《ボクは悪いスライムじゃないよ!》】に会いに行った。
「失礼しま~す」
そこに居たのは、隅っこで縮まっている青いスライムだけだった。つぶらな瞳を滲ませ、小さな口をつんでいた。まるで泣きそうなのを我慢しているようだ。
「ピギぃ!? ボ、ボクは、悪いスライムじゃないよ……」
弱々しい声で自分が悪くないことを言うスライム。それに近づくのはノエルだった。
「……」
ノエルは何も言わない。ただひたすら見ていた。
「……ボクは……本当は………知っているんだ………」
「……」
「……けど、自分じゃないんだ………自分じゃないんだ……」
ノエルは、スライムに向かって――
「ピギィぃ!?」
――抱っこした。
「ピギィ……?」
それに不思議そうに声を出すスライム。ノエルはその答えを教えた。
「ハヤトさまから聞きました。アナタは……本当は仲良くなりたいんだと……」
「で、でも! ボクがやった事実は変わらないんじゃないの?」
「ハヤトさまが教えてくれました。アナタは、無意識に暴走してしまうと、自分では制御が出来ないと」
それにスライムは下を向く。
「私はわかったのですわ。ハヤトさまが言ってくださった言葉の意味を」
「……」
「アナタは、何もやっておりませんわ。ただ暴走したくない優しいスライムですわ」
「……ゥ……ゥ……ウワァアアン!!」
そして泣き出し始めたスライム。俺はノエルがスライムをあやしていることを眺めていた。
「……結局、あのスライムはどうなったの?」
「あの時よりも落ち着いているらしく、近々リスクレベルの見直しが入るそうだ」
「……よかったね」
「本当だよ。俺がさんざん手伝ってやったからな、あれで効果なしだと言われたらショックで暴れるぜ」
俺は、まだ不安定なオフィサーの為に、癒す効果を利用して食堂で待機している。まあ、だんだん元に戻ってくるでしょうな。
「ここにいましたわ。ハヤトさま」
「ししょー、見つけたぞー!」
すると、ノエルとライムちゃん(【O-06-37《ボクは悪いスライムじゃないよ!》】の名前を勝手につけた)が俺のもとに走ってきた。
「はーい、コレ!」
「あ、ありがとうございましたわ!」
すると一斉に
「こ、これは感謝の意を示した物であって! べ、別にハヤトさまのことを思って!「プレゼントをしたら喜ぶかなーって、ノエルさんがいってたー!」ちょちょちょっとお待ちくださいませ!///」
一生懸命スライムの口を塞ごうとするノエルを横目に俺は、
『助けてくれてありがとう』
……俺は二人まとめて抱いた。
「わぁー!」
「ッ!?!?!?///」
「お前ら、嬉しすぎんだろぉがこんちくしょうが! これで喜ばないやつ、どこにおんねん! ありがとよぉ!!」
「わ、わかりましたから、離してくださ「もっとー!」ちょ、ライムさま!?」
こうして俺は、ノエルが顔真っ赤になるまで抱き続けた。
こうしてスライムは、救世主に助けられた。