ラクーン事件と呼ばれることになるアンブレラ社が起こした最悪なバイオ事件の終結から一週間が経った今、喧騒に包まれながら私、ジル・バレンタインは一人酒の入ったグラスを傾けていた。
ラクーンシティから脱出した私たちは重要参考人としてアメリカ政府に軟禁されたがすぐに解放され、元ラクーン市警殉職者の葬式を行った。ニュースを見る限り、事件終結直後は非難の的として挙げられていたのはアンブレラでなく私たちラクーン市警だったらしい。だが、私たちがアメリカ政府の軟禁から解かれる少し前にアンブレラの非人道的な実験や生物兵器開発の証拠がメディアに報じられることとなり仲間たちの名誉は守られ、葬儀のすぐ後にはアンブレラが裁判で負けた。諸悪の根源の壊滅、その吉報を祝うために今日は同僚の親戚が経営しているというバーを貸切にして昼から飲み、笑い、泣き、お互いの生存を喜びあった。そんな状況で私が一人で飲むことになった原因は一人の男だ。
ウィリアム・コクラン、署長代理として私たちラクーン市警を導き、アンブレラにトドメを刺したその男と私のちょっと前までの関係は所謂天敵だった。私は彼の事を嫌っていたし、彼もまた私の事を徹底的に避け、嫌悪感を隠そうともしていなかった。そしてそんな関係は特に改善される事なく私は自宅に軟禁されラクーン事件が起こってしまった。
その時には既に署長代理になっていたコクランの手によりラクーン市警は事件の収拾にあたり、私は同僚であるブラッドから連絡を受けラクーン市警に戻った。
あのアークレイ山地で起こったバイオ事件がこの大都市でも起こる。その危険性を知っていた私は正直言うと連絡を受け取った時にはもう手遅れとすら考えていたのだが、実際に街を歩き愕然とした。あまりにも感染者の数が少ないのだ。ブラッドの話だとウィルスの流出から既に24時間以上は経過している。それが本当なら既にこの街は感染者の巣窟になっていてもおかしくはない。だが感染者どころか市民さえ目にする事のできない街を歩き警察署に戻った私の目に飛び込んできたのは職員が忙しなく動き周り、あるものは完全武装の上で現場へと赴き、あるものは市民への避難誘導を行っておりこの異常事態において誰一人として諦める事なく一人でも多くの市民の命を救おうと奮闘する姿だった。すぐにブラッドを捕まえて話を聞いた所、この事態が確認された直後に市民には厳戒態勢が敷かれ、水道の使用禁止、イベントの中止、そして市民の許可のない外出が禁止されたらしい。そしてこれらの指示を出したのはあのコクランだとのことだった。それを聞いた時は驚きの余り思わず聞き返してしまった。だってあのコクランだ、賄賂やサボリの常習犯、最近は働く姿を見ることすら稀になってきた彼が?そう聞いた時だった。
「失礼する」
そう言って噂の人物が入ってきた。
「何故君がここに居る」
彼は私を見ると一言そう聞いた。謹慎処分を受けた人間が勝手に帰ってきて会議室で上司の陰口を叩いていると言う、普通だったら懲戒解雇になる現場を見られ硬直しているとブラッドが助け船を出してくれた。
「この緊急事態において彼女の力は必要不可欠と考え、私が独自の判断で呼び戻しました」
そうブラッドが答えると一言
「そうか」
といい、こちらをじっと見てきた。そしてそれに釣られるように周りの視線も私に集まり、空気は重く誰も物音一つ立てることのできない静寂に包まれる。これは確認だ、私がコクランの指揮下に入るのかという。同僚の内何人かは期待するような視線でこちらを見ていたがこの状況を見た時から私の答えは決まっていた。
「私にできることであれば手伝わせてください」
そういった瞬間重くなっていた空気は軽くなり、周りの同僚も自分の仕事に戻っていった。
だけど彼の全てを信じた訳ではない。アンブレラの息のかかったこの警察署で署長代理にまで上り詰めたと言うことは決して小さくない関係が彼とアンブレラにはある事を意味する。だから私は彼のいない間に署長室に侵入を試みた。結果を先に言うとこれは失敗に終わった。だがこれが妙なのだ。署長室の鍵は簡単な作りのものだったし、間違いなく仕掛けが解けた感覚があったにも関わらず鍵穴が回らないのだ。そう、まるで誰かが反対側から力を加えているかのように。
「ねえ、誰かそこにいるの?」
そう聞くと誰かの息を飲む音が聞こえた。だが、声の高さから大人ではない‥まさか子供?
「おい、あいつが戻ってきた」
そうブラッドに話しかけられ、扉の向こうにいるであろう子供とのコミュニケーションを中断してしまう。でも何故子供がここにいたのか、まさか隠し子?いやそれは無いだろう。ではなんだったのか、今回のことで余計に彼に対する不信感が高まった。だがその事を深く考える時間は中々訪れなかった。
その後感染者達との大規模な戦闘によりコクランの左腕が負傷、また病院からの救援要請により私は一時的に病院から離れる事になった。だがネメシスの襲撃、カルロスとの出合いなどを経て一度警察署に戻ってくる事になった。その時署長室の前を通る事になり、もう一度ピッキングを試してみると驚くほどすんなり扉が開いた。
デスクの上にはコンピューターといくつかのファイルが置かれていた。
コンピューターの中身はアンブレラとのメールで溢れていた。
「全く、何よこれ」
監視。告げ口、監視、監視、監視、ついでに私の隠し撮り写真までアンブレラに送りつけている。少し見直したかと思えばこれだ。だがこれといって先程の子供と関係がありそうなものはなかった。
だが、ひとつ気になるものがあった。
ーーーアイアンズ署長、いや今はこう言うのが正しいなアイアンズ前署長の件はよくやった。約束通り署長の座は君のものだ。上手くやりたまえ、期待しているよ。ーーー
日付を見るとこれはアイアンズ署長が行方不明になった翌日だ。確かに彼はクソ野郎かも知れないが殺人を犯すほどではないと思っていた。だが、いくらなんでもこれは。そう思いデスクの上のファイルを開く。そこには警察署のすぐ近くにある孤児院の子供達に関して書かれてあった。そのファイルに書かれてあった子供達の名前には斜線が引かれており、その子供たちがどうなったのかを暗に示しているように思えた。そんな時、一つのメールが入ってきた。
ーーー子供の件はありがとう。感謝の気持ちとして幾らばかりの報酬を貴方の口座に入れておくわーー
こんな状態で勘違いするなと言う方が無理な話だ。そこまで思い出し、意識を現在に戻す。少し先には新人警官が連れてきた金髪の少女がマービンを話し相手にしながらオレンジジュースを啜っている姿が見える。まさかあの子を匿っていたとは。
はぁ、とため息をついたところに新人警官が話しかけてきた。
「俺はレオン・S・ケネディと言います。ジル・バレンタインさんですよね、噂は聞いています」
そう言って右手を差し出してきた。レオンとの握手に応じてこちらも右手を差し出す。
「ええよろしく。でも災難だったわね、初出勤があんな事になっちゃって」
そう言うとそのことで散々イジられていたのか苦笑いをして曖昧な相槌をうった。
「あの、コクランさんが何処にいるか知りませんか?先輩方に聞いたらコクランさんのことはジルに聞けと言われてしまって」
視線を後ろに向けると幾人かがこちらをニヤニヤしながら見ているのが分かった。ここにいる連中はコクランに話しかけようと奮闘している私を見て面白がっているのだ。別に何もデートの誘いをしようとしている訳じゃない。ただの仕事の誘いだ。これから起こることが予想される様々なバイオテロに対抗するための組織、そこにはコクランのような人材が必要だ。と思って誘う機会を待っていたのだが機会が中々見つからないのだ。
「残念だけど私も彼を探しているの。ごめんなさい、力になれそうにないわ」
「そうですか」
そう言って顔を暗くさせた。レオンが連れてきたあの子供はコクランに預けられた子供らしい。仕事もなくし、若いから貯蓄もない。そんな状態で子供を預かっていると言うのは不安に感じるだろう。話を変えてみる。
「ねぇ、よかったら世界を救う仕事をしない?」
正義感もあるようだし、子供を連れてあの街から脱出できるほどだ。能力的にも問題はないと考えて声をかけてみる。
すると少し驚いたような顔をしてこう言った。
「誘いはありがたいのですが合衆国のエージェントにならないかと誘われていて、その‥」
「ええ、分かったわ。でもちょっとは考えておいてね」
そう言った瞬間だった。同僚のケビンが走ってバーに入ってきた。
「おい、テレビを見たか!!」
「何かあったのか?」
「いいからとりあえず見ろ!!」
そう言ってバーに備え付けてあったテレビの電源を入れた。
『合衆国政府は技術力の消失や大量の失業者の発生を恐れアンブレラに対して会社更生法を適用。それによりアンブレラは新たに社名を一新してーーー」
「どう言うことなの‥?」
ありえない、普通こんなこと起こるはずが無い。ついこの前街ひとつ破壊したのだ、こんな事をすれば世界中からアメリカ政府に対して非難が浴びせられるのは決まりきったことだ。これはアメリカ政府の意思ではない、だとすれば一体誰がこんなことを‥
そう思った時見知った顔がテレビに映し出された。
『ご紹介に預かりました、ネオ・アンブレラ会長を務めさせて頂くウィリアム・コクランです』
「「「「「「はっ?」」」」」」」
第一章終わり
まだまだ続くよー
RTAパート終了後はどちらがいいですかね?
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実況風
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小説風
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どっちでもいい