コクランが率いる部隊はゾンビの群れを乗り越え、このロックフォート島を司令官として支配していたアルフレッド・アシュフォードという男を探していた。彼はネオアンブレラが設立された際ネオアンブレラから彼の妹が開発した未知のウィルスの所在に関する情報の開示を求められたが沈黙、それどころかネオアンブレラからの独立を一方的に宣言した男だ。
無論ネオアンブレラはこれを容認することなく今回部隊が送られることになったのだが。
「おい、まだ見つからないのか」
そう聞くコクランの声には苛立ちが滲み出ていた。元々この任務は簡単に済むはずだったのだ。職員や囚人に対して常日頃から暴行を続けていたため人望はなく、ちょっとした牢獄があるだけの島で独立したからと言って金稼ぎができる訳も能力もない。そんなわけで大量の内通者がロックフォート島に存在して目標の場所は筒抜け、それに比べこちらは万全の状態で向かった。本来ならウィルスを見つけて帰りのヘリでくつろいでいるはずだって言うのにこんな面倒な事になって非常にむかついていた。
『情報だと普段ここら辺にいることが多いと言うことでしたが‥危ない!!』
コクランと話していた隊員が声を上げ、急いで頭を下げる。そうすると頭上を一発の弾丸が通り過ぎ後ろにあった窓ガラスを撃ち抜いた。
「ウィリアム・コクラン‥よくも私の基地を破壊してくれたな!!」
そういった人間の手にはライフルと思わしき銃が握られており、先程の発砲がこいつのものだと言うのは明らかだった。
「アルフレッド・アシュフォードか。お前を逮捕しにきた、大人しく投降しろ」
「黙れ!!盗人が、お前如きに指図される筋合いはない!」
そう言い放つと同時に銃弾が今度は二発放たれる。
「盗人?新型ウィルスのことか、言っておくがそれはネオアンブレラが所有しているものだ。だからさっさと在り処を‥‥」
「違う会社のことだ!!元々アンブレラは私の祖父たちが作り上げたものだ、断じてお前如きが好き勝手していいものじゃない!!」
その言葉を聞くとコクランはうんざりしたような顔をする。
「いいか?知らないかもしれないがお前のおじいちゃんの作った会社はとっくに潰れているんだ。そしてネオアンブレラは名前の似ている別の会社なんだ、分かるか?」
「うるさい黙れ!!」
そしてさらに弾丸を撃ち込もうとしたところに一発の銃弾がアルフレッドの持つ銃に当たり銃が手から離れてしまう。
『ターゲットの武装解除を確認』
『了解、ターゲットを確保しろ』
そう隊長らしい人間が言うといつの間にアルフレッドに近づいていた隊員がアルフレッドに覆い被さる。
「よくやった、こちらに連れてこい」
『了解』
アルフレッドが二人の隊員に引き摺られるような形でコクランの前に連れてこられる。そしてそこでアルフレッドは初めて気がついた、コクランの左手の異常に。腕は長い手袋に全体をスッポリと包まれており、指の部分が異常に長くそれでいて釣り針の様に丸く反っていた。視線に気付いたのかコクランは見せつける様に左手を持ち上げた。
「これか?元々タイラントに取り付ける物として開発されていたのを勝手に貰ってきたんだ。不格好だがその分物も掴みやすくて重宝してるんだよ。こんな風に」
そう言うとその左手でアルフレッドの首を掴んだ。義手はガチャガチャと言う音を漏らしながら少しづつ首を絞めていく
「聞きたいことは一つ、ウィルスの場所それだけだ。言えば解放してやる」
そう言っても答えるどころか口を開く様子すら見えなかった。
「どうせここにある資料を調べれば見当はつくんだ、素直に吐いた方がマシだと思うが‥」
そこまで言ったところでアルフレッドが唾を吐きかけた。
「地獄に堕ちろぉっ」
話している途中でいきなり力が強まってしまったために思わず大量の空気が肺から出ていってしまった。
「もう一度聞く、新型ウィルスはどこにある?」
そう言ってコクランは左手の義手の出力を上げた。
冷たく、人間らしさを感じさせない作り物の手は容赦なくアルフレッドの首を絞める力を強めた。
「だ‥れが‥お前‥なんか、に」
なんとか声を絞り出すとコクランは舌打ちをした後に義手の力を緩めた。
「もういい、こいつを縛ってどこかに置いておけ」
そう吐き捨てるような物言いで部下に指示を出し倒れ込んでしまったアルフレッドから離れた。そして入れ変わるように隊員2名が呼吸が乱れているアルフレッドを無理矢理立たせ、連行していく。
(南極研究所のことがバレるまで時間の問題だ、このままでは私のアレクシアが‥!!)
このままではアレクシアはそう時間をかけることなくあの男に見つかってしまうかもしれない。そうなった時、冷凍状態の妹がどうなってしまうのか、そんなこと分かりきったことだった。辺りに散らばったガラスが自身の‥いや、アレクシアの顔を映し出した。その顔はアルフレッドをじっと見つめてこう呟いた。
「お兄ちゃん‥助けて」
その言葉にアルフレッドを連行していた二人の兵士が顔を合わせる。当然だ、連行している男がいきなり女児がおままごとをする時に出すような声色で変なことを口走ったのだから。
だがそんなことには気付かず、アルフレッドはより自分の思考に意識を向けた。南極にいる妹を助けられるのは自分だけだ、なんとかして南極に向かわなければ、その一心で自身の手を縛っている縄を揺らす。
「おい、ここで待っていろ」
兵士の一人がそう言ってアルフレッドを小部屋の中に突き飛ばす。部屋に入れられたが鍵はなく縄もそこまでキツく結ばれていない、手を揺らすと驚くほど簡単に拘束を外すことができた。コッソリと部屋の扉を開けて隙間から顔を覗かせると先程自分をここまで連れてきた兵士は姿を消し、人目は全くと言って良いほどなかった。
(偉そうなこと言っておきながら警備はザルじゃないか)
趣味で集めていた軍の戦闘機や輸送機がある。それを使ってコクランより早く南極に辿り着いて迎撃の準備をすればアレクシアが冷凍保存から復活するまでの時間を稼げるだろう。滑走路への道のりは皮肉にもネオ・アンブレラの連中のおかげで感染者とは遭遇することはなかった。滑走路に辿り着くや否やスグに輸送機に乗り込み目的地を南極にセットする。
「待っていてくれアレクシア、お兄ちゃんが守ってあげるからな」
そう言い飛び立とうとした時突然警告音が響き渡った。
『燃料の残りがわずかです、急いで補給して下さい』
「はっ?」
ありえない、脱出に使うために準備は万全にしておいたはずだ。突然の事態に混乱していると大量のネオ・アンブレラの隊員が輸送機に入ってきて取り囲まれる。そして一人の男がゆっくりと隊員の中から姿を現した。
「ありがとうアルフレッド、君のおかげで目的のものがどこにあるかわかったよ」
「‥コクラン!!」
憎悪に声を震わせながら相手の男に殴りかかろうとするが近くの隊員に身柄を拘束されアルフレッドの拳はコクランの顔面に届くことなく空を切る。
「離せぇぇぇぇぇーーー!!」
そう言って暴れようとするが体は全く動かない。コクランが輸送機の操縦席に近づいてくるのを確認し、足を振り回しパイロット席の破壊を目論むが勿論足が2、3度当たっただけで壊れるはずも無く最終的に親相手に駄々をこねる子供のような体勢で地面に押さえつけられた。
それでもなお抵抗しようとするアルフレッドを無視してコクランはセットされた目的地の確認を行った。
「目的地は旧アンブレラの南極基地か、急いで輸送機をこちらに寄越せ。今から南極に向かう」
それではまた今度。