合衆国大統領である私の娘が拐われ数日が経過した。
つい先程連絡が届いた。
娘の救出のために送り込んだエージェントと連絡が取れなくなったらしい。
それを聞いた時から部屋の電話から視線が外せないでいる。
もしエージェントが任務を失敗したのならそれは娘の死を意味する。次の手として軍や警察を動かそうにも娘の誘拐の手際の良さを考えると政府内に裏切り者がいる可能性が高く、下手な行動は命取りになってしまう。
だがテロリストや片田舎のカルト集団、ましてや政府関係者との繋がりが絶対にないと断言できるものが一人だけいた。
しかし娘が拐われたと思われる場所は現在、製薬企業連盟が支援しているBSAAの管轄エリアだ。そこで起きたバイオテロと思われる事件の解決を合衆国が別の組織に依頼したという事実は間違いなく波乱を起こす。
そんなことを頭の中でぐるぐると考えていたら机の上にある娘の写真が目に入り今までの戸惑いが嘘のように消え、電話に手を掛けた。
「ウィリアム・コクランを出してくれ」
その数時間後、カルト集団の拠点は更地と化した。その後ネオアンブレラと製薬企業連盟の縄張り争いが勃発、結局ネオアンブレラが事件の拡大を未然に防いだとして対バイオテロ組織としての地位を確固としたものにし、その結果ワクチンの規制緩和、アンブレラの保有する対バイオテロ部隊である UBCSの権限の強化が決定された。
結局娘はエージェントであるレオンの手によって無事に連れ帰られたため、私のしたことは空回りだったのだろう。だがもしかしたらこれで良かったのかもしれない。
電話ひとつで敵組織が跡形もなく吹き飛び、こちらの損失はゼロなのだ。電話越しだったが、会話からはコクランが噂通りの腹黒い男のようにも感じなかった。もう少しコクランに動いてもらった方が我々も楽になるかもしれない。
勿論権力の集中は混乱を招いてしまう。だが、バイオテロに関して彼らよりも信頼できる者はいないのではないか?娘を誘拐したカルト集団を木っ端微塵にしてもらったからなのか、自然とそう思い始めていた。
一方その頃、青く塗りつぶされたアンブレラのマークが掲げられた部屋に二人の男が居る。片方は現役の軍人のように直立不動で淡々と報告をし、もう一人は椅子に深く座り何かが入っている容器を手に持ち男の話に耳を傾けていた。
「新型バイオ兵器の回収、アシュリー・グラハム、レオン・S・ケネディー両名の保護と援護の任務を無事に果たしました」
「ご苦労クラウザー、ところで回収してくれたこのプラーガのことなんだが‥」
「はい、そちらは通常種のプラーガの寄生体を操る事ができる支配種プラーガです。研究によってはこれからの我々にとって有益なものになると思われます」
その言葉は平静を装っているが言葉の端から喜びの感情が滲み出ていた。
「ああ、プラーガの採掘所は更地にしてやったが土地の権利は製薬企業連盟に持って行かれたからな。おそらく数年後にはプラーガがブラックマーケットに並ぶ事になる。その対策はしておいた方がいいだろうな」
そう言って机の下から鍵のかかったケースを取り出す。その中には紫、緑、透明、さまざまな色をした液体が綺麗に並べてあった。
そしてそれらの中に先程コクランの手の中で転がしていた容器を新たに加えられた。
「これは後でラボに送る」
そう言うと再びケースに鍵を閉めた。
「ところでお前の潜入先には戻れそうか?」
「いいえ、おそらく向こうからは死亡したと思われているかと」
「他に支配種プラーガを持っている人間はいるか?」
そう聞くと少し動きが固まるが観念したように報告を続けた。
「はい、エイダという女が持っていると思われます」
「連絡は取れるか?」
「いえ、行方をくらませました」
そういうと今度は両者が苦々しい顔を浮かべた。
「まぁいい、任務御苦労だった。少し休め」
「はっ」
クラウザーがそう短く返事をし、退出すると再びケースを取り出し中身を開ける。
「始祖、T、T -Veronica、G、そして今度はプラーガか‥」
先程入れたばかりの容器を取り出し眺める。
「そろそろ限界か‥」
REが出てからここら辺の仔細を書いていこうと思います。