転生したらサスロ・ザビだった件   作:Munch

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二章 落ちこぼれ

1

いやー本当に幼年期はなんとかなったんだよ。

前世知識のパワーもあってさ。せめて中学生までは秀才扱いかと思ってたよ。

 

全然ダメだった。

この世界の奴らは基本的に理系の天才だらけ。

いわゆる、技術職に特化した教育制度、エリート制度もあるんだろうけど、宇宙で生きていくための必要な素養を皆がもっている感じだ。

 

あとからサイド3の教育水準、知的水準は特に高いことがわかったんだが、とにかく俺は数学が完全にミドルスクールの最初でついていけなくなった。その先の工学や物理学も当然だ。宇宙工学?何それ食べれるの?状態。

 

「あいつの弟だから、期待してたのに」

これが俺の評価になった。

 

兄貴の関心も次第に俺からは薄れていったね。

ドズルが産まれた後は猶更。

 

ドズルは巨躯のやんちゃものだったけど、意外に勉強はできた。もちろん、理系がな。

ドズルの評価は

「あいつの弟なのに」

「あの見た目なのに」

だった。

そして「いやいや、そもそもギレンの弟だし」「いやいや、そもそも体はサスロもでかいし」と言った言葉が続くわけで、俺は完全に、一家の落ちこぼれになった。

 

IQ240の天才児の兄と

獣みたいなのに意外と知的な弟に挟まれた

無能な俺

 

親父はそんな子供らを責めもせず、褒めもせず、相変わらず家の中では「旦那様」で、そういう兄弟達を傍観していた様子だった。

正確には「観察」だったんだろうけどな。

 

 

2

そんなわけで俺は早いうちに進路を文系に決めた。

地球の歴史の「特定の時代」の知識がもともと豊富だったし、将来は地球史博物館の名誉館長にでも親父パワーでなれればいいと思いだしたね。

 

必然、一家の「家業」から離れれば、俺が暗殺される危険も減るわけだ。

無能なことと、生存戦略が一致した完全な方程式だ。

馬鹿が方程式とか言うと、余計に馬鹿っぽいけどな。

 

とにかく、俺は「自分のできることだけしよう」と、文系、とくに地球の歴史の専門化にはなっていくことになる。

 

3

ただ、やはり気になるのは、この世界、この時代の理系偏重だった。

サイド3以外もそうだが、スペースノイドはとくに、人文学的な教養があまりなく、地球時代の歴史にも無知・無関心で、政治的に蒙昧な印象があった。

 

つまりは、

生存のために、

宇宙という過酷な空間で生きるために、

スペースコロニーという高度な技術の結晶を維持し運用するために、全住民が、技術者を目指すような教育制度で、それなりの教育水準の層でも、所謂、民主政治制度、権力分立、人権概念などをほとんど理解していない。それらを地球の制度の模倣で、前時代の残滓とすら思ってる風潮がある。

 

軽視どころではない。無視だ。

「そんなものに構っていたら、魚は釣れない」「そんなものに構っていたら、コロニーは動かせない」と言った感じだ。

 

ジャーナリズムの空白、メディアリテラシーの低さ、議会制度の形骸化、それだけではない、文芸的な文化も余り盛んではない。

高度なテクノロジーの生活基盤と同時に並立している、社会の稚拙さ。

俺はこの世界に、成長するとともに感じ始めた。

「やはり、この世界は、ディストピア前夜なんだ」と。

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