スライムになった私が女の子の体を使ってどうにかなった話 作:あやちん
謎空間に再び戻った時それは起こりました。
「え、なに、なんなの?」
光など存在しない、ただ闇がどこまでも広がっているだけの空虚な空間のはずなのに。
まるで私の存在を取り囲むように
こんなこと、今まで経験したことはありません。
その強い光は、ずっと輝いてはいるものの不定期に明滅していて、それはまるでお互いで対話をしているかのように見えます。私は何とも言えない嫌な感覚を覚え、全スライム体へ瞬時に魔力を
周囲の光はそうこうしている間にも更に増えていき、いつしか無限の闇であるはずの謎空間が、光の洪水で埋まってしまったかのようです。
「うくっ!」
突如、頭に激痛が走りました。
なっ、これは……。
激しい頭痛が続き、収まりません。
この痛み、忘れもしません。
「め、女神……、ふぇり、アナ~ッ!」
周囲の光がその頭痛に合わせるかの如く、激しい明滅を始めます。それはまるでストロボ発光のように刺激が強い光で、それの明滅は私の神経を著しく逆なでしてきます。
消えた瞬間は完全なる闇、暗黒の世界。
光れば辺り一面影すらない完全な光、真っ白な世界。
頭痛と光と闇の明滅という精神的に来る刺激に、私は気が狂ってしまいそうです。
そんな最中、私を囲んでいた無数の光の塊たちがどんどんその輪を縮めてきました。
謎空間に漂う? スライム体の総量は相当なものであり、魔力に至っては数百年にわたって尽きることは無いほどの保有量になっています。原子力の力は恐ろしいものなのです。
どうやらこの光たちは、そんな私を封じ込めようとしているようです。スライム体がその光を浴びると、まるで表面にラップを張ったかのように硬直化していきます。
「く、くそ、女神~~~!」
クソ女神!
あんにゃろ、私をたばかりやがりました。
周囲の光からは、女神同様とても強い意識体の圧を感じます。私と女神が、あの女神の世界でグダグダやってた裏で、周囲のお仲間を寄せ集めたに違いありません!
私、スライム体になり、魔法を使い、スライム体を駆使し、わざとじゃないにしろ、今まで散々やらかしてきた自覚くらいはさすがにあります。
です、がっ、マジのマジ。今初めて全身全霊、全力をもってこの光たちの圧力に対抗してやるって、心に誓いました!
「クソ女神~~! もう許さないんだからっ!」
私の魔力、スライム体の増殖、それらを一気にどば~っと膨れ上がらせました。
なのに。なのに。
驚いたことに私の周囲を覆っている光たちもそれに負けず劣らずの勢いで、圧力を返してきます。
「くうぅ」
負けてたまるかっ。
私はアンヌのもとへ帰るん、だ~!
「クソ、め、が、みぃ~」
うざすぎる光を浴び、スライム体の表面はドンドン硬直化していきます。
まるで紫外線を当てたら固まる樹脂のようです。
これは良くない。
よくないですっ。
私は固まったスライム体を剥離させ、内からはスライム体を湯水のごとく増殖増加させ、負けじと奴らから魔力か何だかわかりませんが、力の源をガッツリ吸収してやります。
ですが一瞬
そんなことの繰り返しで、事態は一向に動かず、拮抗しています。
なんというか、周囲の光たちが多すぎます。
クソ女神、一体どれだけの世界からお仲間さんを呼び寄せたんですか!
負けてやる気は毛頭ありませんが、これではいつまで経っても終わりません。
こ、こうなったら。
これは賭けです。
クソ女神、
あいつをどうにかすれば周りの奴らは引き下がるかもしれません。それに賭けます。
この場はこの場で奴らを引き付けるために維持。
ミーア単体であっちにいって、女神をやります。
ふふん、実は三精霊の意識体を魔力ともども取り込んでいたのです。まぁ、今は完全に私の一部と化しているのだけど、取り込んだことにより並列処理能力的なものを獲得しちゃったのです。疑似的な多重人格という方がわかりやすいかな?
もちろんほんとに別人として存在してるわけではないので、私であることに変わりありません。
ただ、自分でもわけわかんなくなるので、便宜上そういう呼び名で意識を使い分けてるのです、はい。
でも、これにより私は、完全に分離した状態で別々の行動が出来るようになったのです。あ、三精霊ぶんなので、別動隊として三つまで行動させることが可能!
です。
わかりやすさがすぎる。
ミーア凄い!
はっ。
そんなことをのたまってる場合じゃなかった。
ということで
【ば、ばかなっ! なぜ、ここに】
「あんた私のこと舐めすぎ!」
そう言葉を返した瞬間、凄まじい頭痛が私を襲い、更には女神から初めて攻撃を受けることになる。
全方位から百を超えてるだろう光の槍が私を向き、それがまさしく光速で、一斉に私に突き刺さる。
うへぇ、針ねずみミーア……。
刺さったところから硬化が始まるけど、それがなにっ。
私はそんなものを上回る魔力を内から放出し、同時にミーアからスライム体へと即変化、そのままの勢いで女神に襲いかかり完全に覆いつくした。
【
女神自身が私に覆われたことで、自らを射ることになる光の槍での攻撃は出来ず、なにより私に覆い被さられてしまった女神は、その瞬間からその力を吸収され続づける運命となったわけで。
【ああ、ああ、うそです。そんなこと、あるはずが……】
ぶつぶつ言ってる女神のことなんかお構いなしに私は女神から力を奪い続けます。
【どうして、なぜ、ここに……これたの、です……】
立っていられなくなったのか、膝を落とし、四つん這いの姿勢になった女神が苦しそうな表情を見せながらも私に問うてきました。
意識体であるはずの女神ですが、私のこうあるべきという思念の前に、その姿がそんな格好の悪い姿で物質化してしまっているのです。
うける~。
「ヒント、三精霊の意識体――。ひどい女神さまから見捨てられた精霊さんの意識体、私が有効活用させてもらってるわけです。
【う、くぅ……】
「そんなわけだからあっちはあっちでお相手させてもらってますけどね。ほんと、あんたうざいわ。もういい、消えちゃて」
私はそう言いながら吸収のペースを上げていく。
【や、やめ……ろ! 我には我の考えがあっ……、そん……な……】
女神の意識体の圧が消えました。
私はスライム体から、ミーアの姿に再び戻り足元で四つん這いになったまま真っ白な、まさに大理石の石像のようになった女神を見下ろします。
苦痛にゆがんだ顔で固まったクソ女神の顔。
私は腰を落として女神と向かいあい、女神の額にデコピン入れてやります。
それをきっかけに女神像全体に細かく亀裂が入り、ついには形が維持できなくなって、その場に白い粉となって崩れ落ちてしまいました。
その瞬間、どこからか、なんとも言えない暖かな何かが私の体に流れ込んできました。
…………。
「ふ~ん……、めんどくさっ」
私は改めてただの白い粉になってしまった、女神の痕跡を見つめます。
「女神フェリアナ様――。どうせ死滅なんてしないんでしょ? また一から出直してきてね!」
さて、謎空間に戻りますか。
戻ってみれば相変わらず
ですが、私がその場に現れたとたん、相手の圧が止まりました。
うざいストロボ発光がやみ、スライム体の硬直化も止まりました。
私はその
光の集団がぽつぽつと次第にその数を減らしていきます。
どうやら終わった感じ?
みるみるうちにその数を減らしていく光集団。
【……する】
残ってる中の一つの光が明滅を繰り返して何か意思表示してる。
つうか、何か言ってる?
「聞こえな~い? もう一度お願い?」
ダメもとで聞き返す。
【新たな
ええぇ……。
切り替えはやっ!
でも。
「ぱす!」
***
深い深い、どこまでも澄んだ水の中。
はぁ、
転移して戻るのに最初に選んだのはアンヌのところではなく、生まれ故郷。
懐かしの湖にしました。
まじ懐かしすぎて癒されまくりです。
こここそが天国。
それはどうでもいいとして、なにしろお守りを目印に転移しちゃうと場所によってはアンヌも困っちゃうかも知れません。
だからワンクッション置いて、湖に出ることにしたのです。ここならどんな出かたしても誰も驚いたり、迷惑かけたりもしませんから。
うん、私は出来た
それにちょっと心配な点が。
ぶっちゃけ、あれから今までどれくらいの時間経過があったのかわからないのです。
渡した
ああ、おばあちゃんになってたらどうしよう?
だってね。ここで生まれて数百年経ってたのに、地球に戻ったら、向こうの私が死んでから三日しか経ってなかったとかね。
時間経過が謎すぎるのです。
だから。
まずはこっそり様子を伺いに行って、確認してから突入したいと思うのです。
***
気がはやる私はお守りの魔力を
すぐ近くにシイ=ナに渡したお守りの反応もしっかりありました。
が、それは後まわし。
アンヌが最優先事項です!
樹海上空を飛べば、ワイバーンとか他にも飛んでるやつをいくつか見かけましたが、私を見るとなぜかみんな慌てて逃げていきます。
むぅ。
私、悪いスライムじゃないよ?
ま、いいですけれど。
海峡を渡り、大陸側に入り、いくつか見覚えのある景色を見下ろしつつ、私は整えられた森に囲まれた大きめの敷地の中にある、いかにもお貴族様の館っぽいものが建つ場所へとたどり着きました。
私は
だって、そんなものを必要とするまでもなく。
魔力が。
アンヌ本人の
ああ、ああ。
こっそり様子を伺うはずだったのに。
会いたいという気持ちが止められません。
たとえアンヌがおばあちゃんになっていても
私は今すぐ会いたいんです。
大きな
います!
あそこの奥からアンヌの魔力を感じます。
背中の翅が大きく震え、有り余る魔力があふれ出し、透明感のある青白い輝きを辺り一帯にまき散らします。それはまるで私の気持ちを表しているかのようです。
そんな私がまき散らす魔力光、それとも魔力自体に気付いたのでしょうか? バルコニー奥の扉の窓越しに人影が見え、その扉が開かれます。
出てきたその人影。
それはもう、ぜったい間違うはずもない……。
アンヌです。
あの頃よりちょっぴり成長して、更に美人さんになってます!
髪が随分伸びてる気がします。
ああ、でも、それほど時間は経過してなかった。おばあちゃんじゃないのです。
よかった!
「 っ! ミ、ミーアちゃん?」
空に浮かぶ私をいち早く見つけ、その懐かしくも優しい声で、私の名前を呼んでくれました。
「ミーアちゃん!」
バルコニーの手すりまで駆け寄り、私の名前を呼びながらその両腕を高々と差し出してくれてます。
おかしい。
なぜだか前がかすんでよく見えません。
これじゃアンヌの顔が見えないじゃないですか。
とりあえず、そんなことにお構いなく、勘と魔力でもってアンヌの胸に飛び込む所存です!
「ミーアちゃん!」
「あんにゅ~!」
あっ、
うそだ~。
おかしい。
口調はしっかり出来るようになってたはずなのです!
「おかえり、ミーアちゃん!」
「あんにゅ、あんにゅ、あんにゅ~!」
何回言っても、噛む……。
ま、まぁ、いいです。
落ち着いたらきっと直ります。
私はアンヌに抱きかかえられ、私もアンヌに
ああ、この匂い、この柔らかさ。
すべてがみんな優しく、懐かしくって、心から安心できます。
ああ、やっとこの場所に帰ってこれた。
色々面倒なことは山積みのような気もしますけれど。
アンヌの居るここに帰ってこれたなら、それらはみんな
きっとなるようになるに違いないのです!
そう思いながらも、私はアンヌのふくよかな胸に
ああ、アンヌのナデナデ気持ち良い。
幸せ!
おしまい
ここまでお読みいただき感謝です!