そこは日々を麗しく華やかに過ごすお嬢様の楽園。
しかし、そこの片隅では今日もなにやら必死なお説教とそれから逃げ回る声が?
ここはトリニティ総合学園一年生のあなたがトリニティ並びにキヴォトスでの禁則事項です。
よく確認しておいてください。
1.分からない事があったら聞いてください。
まだこのトリニティ総合学園に入学して間も無いあなたには難しい事や言い回し、風習があるでしょう。
その事に関して、我々は指導や教授を怠る事はありません。
なので、もし分からない。不思議だと思った事があったら遠慮無く聞いてください。
・遠慮無く聞いてくださいとは言いましたが、TPOを考えて質問してください。私は便利なAIではなく、あなたの先輩兼教育係です。
・TPOは時間、場所、場面場合の意味です。
今回の場合、私が用を足している時に個室の扉を引き千切って質問をしてきた事です。
はい、その通りです。あなたは私の極めてセンシティブ……。……すっごく気を使わなければいけない場所に、いきなり飛び込んで質問をしてきたので怒られています。
・あなたも用を足している時にいきなり個室に入ってこられたら嫌でしょう?
はい、そういう事です。覚えましたね?
では、お茶の時間です。今日はあなたの好きなバタークッキーを焼いてきました。
2.分からない事があったら聞いてくださいと言いましたが、何がどう分からない場合も質問してください。
・……禁則事項というのはやってはいけない事。という事です。
そうですね。それをしたら私に怒られる事です。
今回はクッキーを一度に二枚を、しかも一口で食べたからです。
トリニティの淑女たる者、常に己を律し正しく周囲の模範となるべく行動と発言をしなくてはなりません。
………つまり、周りがあなたの真似をしようと思える様な行動と発言をしましょう。という意味で、今のあなたは私の真似をして、お茶の時間の作法を覚えましょうという事です。
まずクッキーの食べ方は、一枚を一口で食べるのではなく、一口くらいの大きさに割って、音を立てずにこぼさない様に食べましょう。
あと、カップを湯飲みの様に持たずにハンドルを、人差し指中指親指の三本で摘まむ様に持つのが美しい持ち方で、お茶を飲む時も先程の様に音を立ててはいけません。
・一口で飲み干すのもダメです。
3.シスターフッドの管理地に入ってはいけません。
・もっと正確……。正しく言うなら、シスターフッドの皆様が管理……、……お手入れをしているお庭や建物はすっごく大事な木や物があって、あなたがもしもそれを傷付けてしまったりしたら、すっごく大変な事になるからです。
・詳しく言うとナギサ様やミカ様、セイア様達が謝りに行かなくてはならない事になるからです。
……お庭の花を見ていたら、サクラコ様に近くで見ていいと言われたなら大丈夫ですね。
ですが、ここからは入ってはいけませんよ。と言われたら、そこからは入ってはいけませんからね。
・あと、触ってはいけませんと言われたら触ってはいけませんからね。
サクラコ様はトリニティ=スゴイコワイヒトで有名なのですから
4.ゲヘナに近付いてはいけません
・ゲヘナ学園の生徒に近付いてはいけません。彼女らは悪魔で、悪い人達ばかりなのです。
いくらあなたでもゲヘナの生徒に近付いてはいけません。
……道を聞かれて案内していたら、いきなり現れた人が同じゲヘナ生徒を撃ってきたから庇ったですか……。
…………あなたの優しさはとても素晴らしいもので、淑女として誇りに思っていいものであり、私も誇らしいものです。
ですが、今回の事でも解ったでしょう。ゲヘナは簡単に暴力を振るいます。例えそれが同じゲヘナ生徒で、トリニティという場所であったとしても。
私達とは相容れない……。仲良く出来ない人達なのです。
……仲良くしたい? そう、ですね。あなたが庇った子が、あなたと同じ様に優しい子であれば出来るかもしれませんね。
・なので、待ちなさい。ほら、動かないの!
まったく、あなたの頑丈さはよく知っていますが、ツルギ委員長と空崎ヒナの戦闘に割って入って、二人の攻撃を同時に受けたと聞いた時、私がどれだけ心配したと思っているのですか?!
・……病室ではお静かに? そんな事は解っていますミネ団長!
第一に貴女も貴女です! 確かに救護騎士団として貴女は正しい行いをしましたが、もう少し穏便なやり方もあったし、貴女程の方ならそれが出来たでしょう!
それなのに貴女はこの子と、この子が庇ったゲヘナ生徒を盾で撥ね飛ばすとは何を考えているのですか?!
貴女は毎回毎回、怪我人が出る度に物や人の被害を拡大させて、〝ミネが壊して騎士団が治す〟などと揶揄されて救護に携わる者としての自覚を……
・あ、待ちなさい! セ、セリナさん、ハナエさん離してください! 今日こそはこの子とあの分らず屋にティーパーティーの末席として、淑女たる者とはなんぞやを……!!
5.病室並びに病院で騒いではいけません
・……今回は先日の自戒の意味も籠めての事ですので、お説教ではありません。
ですが、ソファの下に潜り込んではいけません。というか、あなたよくそんな隙間に入れましたね。
私でも入れませんよ。
いえ、それよりも今回はお説教は無しですから、ほら、出てきなさい。
チッチッチッチッ、ほらクッキーもありますから出てきなさいな。
・……ダメですか?
・はい……。先日の醜態を晒した上で、恥を忍んでお頼みします。ミネ団長、この子を引っ張り出して予防接種をお願い致します。
・畏まりました。……救護開始!!
・こら! 逃げてはいけません! コハルさんも受けたのですよ!? ……ああ、もう! あんな所に逃げて……!!
6.贈り物を貰ったらお礼と返礼品をしなくてはいけませんし、貰う品も考えなくてはなりません
・贈り物を貰ったらお礼をしなくてはいけませんし、お返しも贈らないといけません。
いくら相手がゲヘナと言えど、贈り物にはお礼と返礼品は淑女として、いえ、人として当然。しかし、それが出来ない者の何と多い事か……。やはりここは一度、ナギサ様達にお頼みして私主導による淑女のマナー講習を……!
・……ええ、大丈夫です。大丈夫、落ち着きましたから、カップを顔に押し付けてはいけません。
まったくもう……。しかし、一体何を戴いたのですか? ……雑草の鉢植え……?
・いえ……、贈り物に上下はありませんし、大事なのはそこにある想いですが、雑草、ですか……。
嫌がらせ、という事はあなたの話からその様な下劣な真似をする方ではないと解りますが……。
・もう少ししたら小さな花が咲く。ですか……。
成る程、ゲヘナ生徒に花を愛でる心が無いなどと、私とした事がとんでもない偏見を……。
・ええ、そうですね。花を愛でる心は万人にあり、愛でる花に貴賤は無し。私も偏見に目が曇っていました。
・比喩ですから、私の目をハンカチで拭こうとしてはいけません。というより、人の目をハンカチで拭いてはいけません。
・……しかし、この返礼品となると何をお返しするべきか……。定番はお茶菓子やお相手の趣味に纏わる品ですが……。
ふむ、園芸用品。確かに、雑草を愛でる方であるならば、下手に高級な鉢植えをお返ししても嫌味と取られてしまう事もありえます。であるなら、日々の手入れに必須な道具等のセットが妥当でしょう。
早速、明日準備に掛かりますよ。
・……ところで、少し気になったのですが、あなたその箱はなんですか?
ついこの前、お部屋の掃除を教えた時もすごく大事そうにしてましたよね?
・いえ、問題はありませんよ? 寧ろ、そうやって場所を決めて管理出来る事は大事な事ですから。
・ええ、そうですね。……ですが、その箱はいただけません。
なんですか、そのボロボロの段ボールは?! 淑女たる者、収納に使う容れ物にも気を使わなくてはなりません。
なにも高級な桐箱を使えなどとは言いませんから、こちらの方に移し替えなさいな。
・大丈夫? 後で移し替える?
……あなた、また何をその箱に納めてまして?
まさか、またガラクタを拾ってきたのですか?!
後で塵塚さんに直し方を教わる?
そういう事ではありません……!!
淑女たる者、物を拾って集めるなどと……。あ、こら! 待ちなさい……!!
『あなた』
トリニティ総合学園一年生 ティーパーティー所属
極普通の一般生徒だったが、ある事からティーパーティーに加入させられた。
加入させられたはいいのだが、このトリニティの何処から出てきた!?という程度には、野生児地味た行動を繰り返し、後述の『先輩』に淑女とは何かを叩き込まれる事になった。
身長はイチカ以上ハスミ未満で、目が大きい。
成績は何故か中の上
『先輩』
トリニティ総合学園二年生 ティーパーティー所属
極普通のティーパーティー生で、淑女とはこうあるべきを日々実践する模範的お嬢様。
しかし、あまり融通が効かない性格から、ティーパーティー内では若干の腫れ物扱いでもあった。
そんな中、『あなた』の淑女教育係に任命される事になり、以前からは考えられない日々を送る事になる。
身長はティーパーティー生の中でも一番低く、目付きは鋭い。
若干だがトリガーハッピーの気有り