鬼強ブロッコリー先輩   作:忍者にんにく

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第10話:革命の裏側/雷帝の戦い

 

「うっ……」

 

 植物特有の青い匂いが鼻腔をくすぐる。目を醒ました剣城京介の視界に飛び込んできたのはサッカーボールと、ゴールだった。

 彼がいる場所は稲妻町の河川敷ではなく何処かのサッカーフィールドの様だが、霧に包まれている為よく見えない。一体、何がどうなっているのか。ここは何処なのか。剣城の口から疑問が出る前に、その答えは示された。

 

「タイタニックスタジアム。かつてイナズマジャパンが世界一の座に着いた場所だ。フィフスセクターの始まりの地とも言えるだろうな」

 

 剣城の疑問に答えたのは、剣城の背後に立っていた男。褐色の肌に濃い緑色の髪、血のように紅い虹彩。何より目を引くのは、男の服の下から雄弁に存在を主張する盛り上がった筋肉と全身の傷だ。

 声色からして、この男が自分を攫った下手人で間違いないだろう。しかも、パッと目につく特徴からだけでも、今の自分より遥かに強いと判断出来る。剣城は自分が追い詰められている事を悟り、情報を引き出す方向へと思考を切り替えた。

 

「そうか。それで、お前は誰だ?」

 

「俺は名も無き小市民。ザナーク・アバロニクだ。

 剣城京介、貴様には今から俺達とサッカーをして貰う。おっと、その前にユニフォームとスパイクをサービスしてやろう」

 

 ザナークが指を弾くと、剣城の改造学ランが真紅を基調としたユニフォームへと変わり、普段履きが深緑色のスパイクへと変わって行く。驚いて感触を確かめるも、どうやら本物らしい。

 

「これで準備は整ったな。ついて来い」

 

 有無を言わせぬ態度とザナークと自分の力量差、剣城に選択肢は残されていなかった。ピッチのセンターラインへと歩いていくザナークの背中を追いながら、剣城は問いを投げかける。

 

「お前は一体、何を企んでやがる?」

 

「先刻も言っただろう。お前には俺達とサッカーをして貰う、とな。それ以上でも以下でもない、自惚れるなよ弱者」

 

 やがてセンターサークルの真ん中へと経ったザナークは、次の瞬間仁王立ちになり、「喝ッッ!!」と咆哮を上げる。

 次の瞬間、視界を覆っていた深い霧は一瞬にして払われ、いつの間に現れたのか、剣城とザナークの目の前には黒いローブに身を包んだ謎の集団が立っていた。

 そして、剣城とザナークの横にも同じユニフォームに身を包んだ奇妙奇天烈な人間達が立っていた。恐らく、彼らが今回の試合のチームメイトなのだろう。

 

「フン、そっちの首尾はどうだ?」

 

「…………」

 

「当たり前だ、これは貴様が始めた茶番だろう。出来なかったなどと抜かす様であれば、殺していた」

 

「…………」

 

「……相変わらず生意気な奴だ。だが、それも事実だ。さっさとこの茶番を終わらせるぞ」

 

 周囲を観察していた剣城京介の下へとザナークがやって来る。ザナークはローブの男の一人と何やら話をしていた様だが、剣城にその内容を知る由は無かった。

 

「チーム名はザナーク・ドメインだ。アイツらを呼ぶ時は番号で呼べ、それくらいの知能はある」

 

「俺のポジションは?」

 

「好きな箇所を選ばせてやる、さっさと配置につけ」

 

「……そうかよ」

 

 

【ザナーク・ドメインフォーメーション】

 

剣城   ザナーク

グロクス ゴース ドリス ピート デリエリ

グレイ  メラス  バロル

エスタロッサ

 

 

【ローブの集団フォーメーション】

 

ローブA  ローブB  ローブC

ローブD ローブE ローブF ローブG

ローブH  ローブI  ローブJ

ローブK

 

 

 何処からともなく鳴り響くホイッスルの音と共に、革命の裏側で一つの試合が始まった。

 ザナーク・ドメインのキックオフで始まった試合は、膠着状態が続いた。一人一人の力量で上回るザナーク・ドメインに対し、ローブの集団はコンパクトな陣形で常に複数人でプレーに当たり、上手いこと力を拮抗させていたからだ。

 互いに攻め、攻められ、シュートチャンスが生まれる事がないまま、時間だけが過ぎていく。

 

 このまま前半が終わるかと思われたが、前半28分にして試合が動く。

 ローブBからボールを奪ったメラスからグレイ、グロクス、ゴース、ドリスとパスが繋がり、ドリスが剣城にスルーパス。剣城はこのボールに追いつき、ペナルティエリアにまで走り込むとヒールリフトでボールを天高く撃ち上げ、身体を捻って跳び上がり、空中でボールを蹴り抜いた。

 

「【デス・ドロップ】!」

 

 死の堕落の名を冠する必殺シュートがローブの集団のゴールを襲うが、ローブKは慌てる様子もなく両腕を前に構える。

 

「【ハイ・ビーストファング】」

 

 無機質な声と共にローブKの背後から紅蓮の虎が顕現する。虎は勢い良く前へと飛び出すと、鋭い牙で剣城の必殺シュートに喰らいつき、威力を完全に噛み殺してしまった。

 惜しくも剣城のシュートは得点に繋がらず、前半が終了した。

 

 ⚡︎⚡︎⚡︎

 

 

 どうも、三国太一です。

 現在、俺達は帝国戦を直前に控えている。剣城がいないのは少々気になるところだが、円堂監督と音無先生は家庭の事情だと言っていた。どうしようもない事だね、しょうがない。

 そもそも、剣城は戦力として優秀だが、今のチームに絶対に必要な選手だとは言えない。そんな奴の不在が原因で負けてしまうのであれば、この先の戦いを制することなど出来ないからね。甘えずに行こう。

 

 

【雷門フォーメーション】

 

南沢   倉間

浜野  松風  神童  影山

車田  西園  天城  速水

三国

 

 今日の試合は激しく攻守の入れ替わる試合になる事が予想される為(音無先生談)、足の速さとブロック技に優れる車田と速水をサイドバックに配置し、右サイドのMFに輝君を採用する事にしたらしい。

 初試合という事で、かなり気合いが入っている。俺の独断と偏見を基に幾つか必殺技も覚えて貰ったからな、存分に活躍してもらおうじゃないか。

 また、ベンチは霧野君である。足の怪我自体は良くなったものの、まだ試合に出られる状態じゃないという事で休養の運びとなった。ピッチの外からでも得られるものはある、ピッチに戻って来た時に力を発揮してくれるだろう。

 

 

【帝国フォーメーション】

 

逸見 御門

洞沢 佐々鬼 蒲田

成田 龍崎 飛鳥寺 大瀧 五木

雅野

 

 

 試合開始は雷門ボールから。南沢と倉間が前線を引っ張り、MFの4人がFWを押し上げる様にパスを回しながら走る。

 DFは西園と天城を守備に残し、サイドの車田と速水が最終DFラインとMFの中間地点を見極めながら慎重に立ち位置を調整している。

 帝国の素早い攻守を警戒しつつ、いつでもMFのカバーに入れる位置だ。円堂監督の指示通りだな。

 

「【キラースライド】!」

 

「神童先輩!」

「天馬!」

 

「「【サルガッ──」」

「【そよかぜステップ】!」

 

 成田のスライディングが直撃する前に神童は天馬へとパスを出し、天馬の行手を阻む様に龍崎と大瀧が円を描いて包囲するも、天馬は二人の隙間を縫う様に軽快なステップを踏んで突破してみせた。

 凄えな天馬。めっちゃ進化してるじゃん。

 

「こっちこっち!」

「浜野先輩!」

 

 後方から蒲田、前方から飛鳥寺と五木が天馬へと迫るが、浜野の声に応えた天馬がパス。柔らかなタッチでボールを受け取った浜野は軽快なドリブルでサイドを駆け上がって行き、走り切ったところで帝国ペナルティエリア内へとセンタリングを上げた。

 

「南沢さん!」「行くぞ、倉間!」

「「【イナズマ1号】!!」」

 

「【パワースパイク】!!」

 

 センタリングされたボールに追いついた南沢と倉間は、左右対称の軌道を描いてツインシュートを放つ。ボールにイナズマの如きエネルギーが充填され、蒼雷を纏ったシュートが正面から帝国ゴールを襲う。

 雅野はこのシュートに対応し、必殺技を以て迎え撃つが、明らかにパワー負けしている。暫くの拮抗の後、雅野の【パワースパイク】を破ってボールが帝国ゴールへと突き刺さった。

 

『ゴール!前半3分、雷門が先制点を挙げました!

 私は夢でも見ているのでしょうか!?

 この目で直接【イナズマ1号】が見られるとは!

 我らがヒーロー『イナズマイレブン』が帰ってきました!私は今、猛烈に感動しています!』

 

 ⚡︎⚡︎⚡︎

 

「実に粋な事をしてくれるじゃないか」

 

「あぁ、流石は円堂と春奈が監督する雷門だ」

 

「鬼道……お前、口元が緩んでいるぞ?」

 

「当然だ。監督としてチームを率いて、これほど強いチームと戦う機会など滅多に無いからな」

 

 嘘をつけ、と佐久間は内心毒づいた

 お前は親友と妹と戦えるのが嬉しいだけだろう、という喉元まで出かかった言葉を飲み込み、佐久間も鬼道と同じ様にニヤリと口元に笑みを浮かべた。

 

「……そうだな。それで、次はどうする?」

 

「フッ、全力で掛かるとしよう。

 ……総員! オペレーションα-1!」

 

「やっと指令が出たか!」

「総員、オペレーションα-1だ!」

「ここからが本番だぜ!」

「地獄のショーの始まりだ……!」

 

「だが鬼道、目的は忘れるなよ?」

 

「分かってるさ。なに、今の雷門はこの程度で潰れる様なチームじゃない。それは俺もお前も分かっている筈だろう?」

 

「あぁ。彼等は『イナズマイレブン』だからな」

 

 鬼道に釘を刺す傍ら、佐久間も気合いを入れた。例え今日、この後どうなろうと雷門は帝国を討ち倒して前に進むだろう。

 雷門に勝つのは、自由にサッカーが出来る様になった後でいい。今は自分達も軌跡を共にした黄色いイナズママークに信頼を置くとしよう。

 佐久間と鬼道は、注意をピッチの中へと戻した。

 

 ⚡︎⚡︎⚡︎

 

 それからの試合展開は凄まじいものとなった。

 帝国の鬼道監督が凄まじい早さで指示を出し、帝国の選手達は選手なりの最大限を以て応える。

 雷門イレブンは神童の指示を中心に地力の強さと硬い結束でボール奪取に当たり、攻め込んでいく。

 

「【ソニックショット】!」

 

「【フルパワーシールド】!」

 

「チッ、これでも決まらねえのか!」

 

「このゴール、二度と破らせない!」

 

 南沢と雅野のやり取りを最後に、主審のホイッスルが前半終了を告げた。雷門イレブンと帝国イレブンは共にそれぞれのベンチへと戻って行くのだが、雷門の足取りは軽く、帝国の足取りは重い。

 そして帝国の重い雰囲氣に紛れ、潜り込んだ4人の間者の思惑が交錯し、暗所にて本性を曝け出す。

 

「……拙いな」

「あぁ、どうする御門?」

「龍崎、飛鳥寺。お前らは後半、MFの位置に上がって来い。鬼道の指示よりも……」

「あぁ、フィフスセクターの任務を遂行する」

 

 気味の悪い笑みを浮かべ、彼らは再び帝国イレブンの皮を被って帝国の中へと戻って行く。してやったり、と思った事だろう。

 

「……鬼道」

「いや、泳がせておこう。その方がスムーズだ」

 

 普段は眼帯で封じられている暗所を見通す眼と、ボールの回転数まで見切るゴーグルの下の双眸が自分達を捉えている事など、4人の間者は知る由もなかった。

 





 以下、ザナークのデュプリです。
 オリジナル設定という訳で紹介しておきましょう。元ネタは悪魔だったのですが、無印3の世界編で出ちゃってるから泣く泣く変更!
 その結果、十戒になりました。

・ガラン(♂) FW 火 Lサイズ←出番なし
・ドリス(♂) MF 林 Mサイズ
・ゴース(♀) MF 風 Mサイズ
・ピート(♂) MF 火 Lサイズ
・デリエリ(♀) MF 山 Mサイズ
・グロクス(♂) MF 林 Mサイズ
・メラス(♀) DF 林 Mサイズ
・グレイ(♂) DF 風 Lサイズ
・バロル(♂) DF 山 Lサイズ
・エスタロッサ(♂) GK 山 Lサイズ

 ローブの男達はローブKが本体、それ以外がデュプリです。ザナークと話していた様子から丸わかりですね。

GO3どうする?

  • 宇宙大会編やれ
  • 世界大会ifでどうぞ
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