時は少しばかり遡る。
ここは稲妻総合病院。稲妻町の中で最も規模が大きく、先進的な医療が受けられる場所である。剣城京介を攫った後、ザナーク・アバロニクは一人の男に会うべくこの場所を訪れていた。
「剣城優一、貴様は再びサッカーがやりたいか?」
「……それは、やりたいに決まってる」
その男とは、剣城優一。剣城京介の実の兄にして、12歳の時の事故が原因で下半身不随となってしまった悲劇のストライカーである。
「貴様の知らない事実を教えてやる。貴様の弟、剣城京介は貴様のそんな想いを叶えるべく、サッカー管理組織フィフスセクターに魂を売り、八百長試合の片棒を担がせていた」
「なんだって……!? そ、そんな証拠……」
剣城優一が動揺する中、突如として現れた黒いローブを身に纏った何者かが拘束された人間を放り出す。
それは黒ずくめの格好をした不審者にして、剣城優一は知る由も無い事実だが、先日雷門中にて黒の騎士団と名乗るサッカーチームを率いて雷門イレブンと戦い、敗将となった黒木であった。
「くそっ、離せ!お前達は何者だ!
我々フィフスセクターに逆らうとは何たるうごぁ!?」
「黙れ。敗北者。
貴様に問う。剣城京介はフィフスセクターのシードであり、お前達は奴の行動の見返りとして、剣城優一が手術を受けるための費用を少しずつ小出しにして提供していた。そうだな?」
「ふん、そんな質問に答え痛だだだ!?
こ、答える!答えるからやめろ!」
この期に及んでみっともなく抵抗する黒木にザナークは容赦なく蹴りを叩き込み、黒いローブを身に纏った男は一切の慈悲もなく関節技を仕掛ける。裏で頭脳派を気取って暗躍したがる人間に限って、痛みに弱いモノである。黒木はアッサリと首を縦に振った。
「あ、あぁ、違い無い!剣城京介は兄の手術代を稼ぐため、シードとして我々に協力していた!」
「間違いないか?」
「全部本当だ!分かったなら──」
「貴様は用済みだ。もう暫く寝かせておけ」
「は!なっ、お……」
黒いローブを身に纏った男は黒木を絞め落とし、空いている病床に寝かせて顔に帽子を被せた上、側に「起こさないで下さい。死ぬほど疲れています」と書いた紙まで置いて来た。これで黒木が何を言おうが、ただ疲れて錯乱しただけの人間として処理されることだろう。
「さて、少しばかり場所を変えるぞ」
──ワープモード
いつの間にやらサッカーボール型のデバイスを取り出していたザナークが少し操作をした次の瞬間、無機質なアナウンスと共に剣城優一達は見覚えのない場所にいた。
だが、そんなモノに驚いていられるほど現在の剣城優一の心に余裕があるはずもなく、剣城優一は何事もなかったかのように車椅子の上で頭を抱え込んでいた。
「京介が、そんな……馬鹿な……」
「なるほど、貴様の考えている事は読める。
だが、それは筋違いというもの。全ては貴様という弱者が歩む道の過程に過ぎず、自惚れるのも卑屈になるのも早計だ。鬱陶しい」
「よ、容赦ないな……それで、俺にどうしろと?」
「簡単な事だ、剣城優一。ここに貴様がサッカーの出来る肉体に戻る方法がある」
そう言ってザナークが差し出したのは、少し変わったペンダントだった。先端には紫色の宝石が妖しく輝き、人を惹きつけて離さないような何かを内から外へと放出している様だ。
「……ペンダントの様だが、それがどうしたって言うんだ?」
「ほう、取り憑かれぬ程度の強さはあるか。
これは「エイリア石」と呼ばれるシロモノだ。所持する人間の思念に反応し、所持者の肉体と精神に変化を引き起こす。
かつて、強くなりたいと望んだ者は実力に見合わぬ力を手に入れたが、力と目的に取り憑かれるようになった。
そう、かつてのエイリア学園の様にな」
剣城優一の顔が険しくなる。彼は18歳、当時のエイリア学園の事件についてもリアルタイムで体験した人間である。例として出されたその名に良い印象などあろう筈もない。
だが……、とザナークは続ける。
「だが、このエイリア石の真価は別に在る。
重要なのは力を手に入れ、そして破壊された後だ。エイリア石が破壊された後、エイリア石によって齎された影響は、使用者の健常なる器に見合った形となって残るのだ。
つまり──」
「俺が使えば怪我が治る。そう言いたいのか?」
「理解が早いな。さて、使う決心は着いたか?」
「…………」
瞑目する剣城優一の脳裏に浮かぶのは、目の前の男に対する信頼の可否だった。先程から何度も超常現象を引き起こし、あまつさえ自分ですら知りもしなかった弟の情報を持ってくる様な謎の存在。そんなものを直ぐに信用して良いものかとの疑問が過る。
だが、弟の顔が思い浮かんだ時、それら全ては形を変える。剣城優一の記憶にある剣城京介は、自分と一緒にボールを追いかける、サッカーを愛する少年だった筈だ。
そんな弟が、サッカーへの冒涜を体現した様な機関に身売りしている。その原因は自分だ。自分が不甲斐なく、弱いからこうなっている。弱い自分が憎い。自分に対する怒りが燃え上がり、全ての理性を焼き尽くす。
疑問だとか、全部が嘘だとか。それら全てを無視してでも、目の前にある方法を使う他に選択肢はない。迷いを捨てた剣城優一は、ザナークの手からエイリア石のペンダントをひったくった。
次の瞬間、剣城優一は苦悶の声を上げる。身体の内外を紫電の軌跡を描きながらエネルギーが走り抜け、肉体を構成する骨や神経の並びが強制的に矯正され、足りない部分を補った上で更に強化するべく細胞分裂が凄まじい速度で行われる。
「……ッ!! これほどか……ッ!!」
やがてエネルギーの奔流が収束すると、爆発の起こった中心地には全身から禍々しいオーラを立ち昇らせる剣城優一が立っていた。
剣城優一の変化を見たザナークの顔に、戦闘狂的な笑みが浮かぶ。
「────」
「あぁ。貴様の言う通り、素晴らしい力だ。
おっと、貴様は手を出すな。貴様が誘導し、俺様が戦う。これはそういう協定だろう?」
黒いローブを纏った男にそう言い残し、ザナーク・アバロニクは剣城優一との戦闘を開始するべく飛び出して行った。
⚡︎⚡︎⚡︎
「剣城京介よ、この試合はどうだ?」
前半が終了したハーフタイム、ゲータレードを飲む剣城へとザナークが声を疑問を投げかける。
剣城は考える素振りを見せた後、被りを振った。
「普通だ……普通のサッカー、面白くも何ともねえ」
「あぁ、そうだろうとも。今の貴様ではそう答えるだろうな……貴様がサッカーをするのは、怪我をしてサッカーが出来なくなった兄への贖罪だと聞いている。俺様に言わせれば、実に下らん理由だ」
その言葉を聞いた剣城は鋭くザナークを睨みつけたが、ザナークは不敵な笑みを浮かべたまま強大なプレッシャーを放つことで応える。
忌々しげに舌打ちを一つ繰り出し、剣城は吐き捨てるように言った。
「何とでも言え。兄さんからサッカーを奪った俺に、サッカーを楽しむ資格なんざ無えに決まってんだろ」
「ほう、それは随分と奇妙な言い分だ。貴様の兄がサッカーを出来なくなった理由は怪我なのだろう?
兄弟と言えど、所詮は他人。貴様が狙って怪我を負わせた訳でも無ければ、貴様が責任を感じる必要など何処にある」
「……何が言いたい?」
剣城の眉間に皺が寄る。しかし、ザナークがその煽りを止めることはない。
「貴様の兄が怪我をした原因は、貴様の兄が弱かったからに他ならない。その程度の事にすら気付かず、自分に罰を与えているつもりの貴様も同様だ。弱者らしい、実に愚かな理屈よ」
「……黙れ」
「いいや、この際だ。この場ではっきり言ってやろう。お前とお前の兄は所詮、己の弱さに胡座をかいた──」
言葉を切ったザナークは表情を歪ませ、悪意に満ちた笑みを浮かべた。
「敗北者に他ならない」
「ぶっ潰す!!」
怒りが頂点に達した剣城は自身の身体から化身【剣聖ランスロット】を顕現させ、ザナーク目掛けて化身の剣を振り下ろした。
生身の人間の何倍もの巨体を持つ化身から繰り出される剣の一撃は、大きく、分厚く、重さを感じさせる。当たれば無事では済まないであろう威力を以って、ザナークへと迫る。
だが、剣城の一撃がザナークに届く直前。横からその一撃に割って入る存在があった。
ドラゴンの如き翼と角を生やし、黒を基調とする鎧を纏った戦士が、右手に持った剣で【剣聖ランスロット】の一撃を喰い止めていた。
次の瞬間、戦士は容易く右手に持った剣で【剣聖ランスロット】の剣をかち上げたかと思えば、ガラ空きになった【剣聖ランスロット】の胴へと空いている左手で拳を叩き込み、一撃で【剣聖ランスロット】を消滅させてしまう。
「落ち着けよ、京介」
「……ッ!?」
化身を消滅させられた剣城は凄まじい力を受け、吹き飛ばされてゴロゴロとフィールドの上を転がる。それでも怒りが収まらず、再びザナークに攻撃を仕掛けるべく剣城は体勢を立て直そうとしていた。
しかし、剣城の行動が次に移る事はなかった。剣城の肩を叩き、優しく声を掛け、真正面から手を差し伸べる存在があったからだ。
その声を聞いた瞬間、剣城から放たれていた荒々しい空気が一転して穏やかなモノとなる。
「に、兄……さん?」
「久しぶりだな。ほら、立てるか?」
「あ、あぁ……」
困惑しながらも、剣城京介は差し出された手……兄・剣城優一の手を取って立ち上がる。
掌を握られる感覚が鮮明に伝わる。
夢などではない。松葉杖を使う事なく自分の足で地に立ち、入院着を身につけ痩せ細った姿からは程遠い、ユニフォームに身を包みサッカー選手として肉体を作り上げた剣城優一が、目の前には立っていた。
「なんでここに……怪我はもういいのか!?
それに、どうしてサッカーを……」
「言った筈だ、俺はサッカーを諦めないって。それよりも京介……」
次の瞬間、優一は京介の顔面を平手打ちした。皮膚が皮膚を打つ乾いた音が響き、頬を走る痛みに京介は呆然とする。
「俺がいつ、お前に足を治して欲しいと頼んだ?
俺は一回でも、俺達の好きだったサッカーを裏切ってまで、フィフスセクターから金を貰ってくれとお前に頼んだか?」
「で、でも兄さん……」
「言い訳は聞かない。俺達のサッカーを裏切ってまで、フィフスセクターに協力した事を俺は許さない。だから……」
言葉を切った優一は、ザナークへと顔を向ける。
「この試合、俺と一緒にサッカーをして貰う。俺達のサッカーをお前に思い出させてやる。ザナーク、それでいいな?」
「フン、構わん。ベンチには俺様が下がるとしよう。だが、下らぬ戦いを見せる様であれば容赦なく貴様らを破壊する。良いな?」
「俺は構わないよ、京介?」
「……あぁ、分かった」
【ザナーク・ドメイン選手交代】
フォーメーションは変わらず3-5-2、対戦相手であるローブの集団も特に変わったところはなく、ローブの集団によるキックオフで後半が始まった。
ローブの一人がパスを受け、攻め上がろうとするが……
「貰ったよ」
すれ違いざまに卓越したボール捌きで優一がボールを奪い、圧倒的な走力を見せつけながら攻め上がっていく。
「「「【かーごめ、かご……】」」」
「【スプリントワープ】!」
それを見たローブの集団は多人数で優一を囲いに来るが、優一は止まらない。短距離での加速を繰り返し、ボールを奪いに来る隙を与えずに攻め上がり続ける。幾人もの囲いを潜り抜け、あっという間に最終ディフェンスラインを突破し、ペナルティエリアへと足を踏み入れた。
そして優一は、ボールに右脚で、次いで左脚で蹴りを叩き込んだ。気を注ぎ込まれたボールは上空へと螺旋状に伸びて槍と化し、優一が挙げていた右手を振り下ろすや否や、千本の矢となってゴールを強襲する。
「【サウザンドアロー】!!」
「……! 凄い、これが兄さんの必殺シュート……これなら!」
「【ハイビーストファング】
しかし、剣城の期待は儚く砕け散った。ローブを纏ったゴールキーパーは千本の矢の中からボールが入っているただ一本の矢を見切り、紅蓮の虎が顔面中に矢を受けながらも致命的な一撃を喰らい潰す。
さながら、圧倒的な力を見せつけるかの如く。威風堂々とした佇まいは、黒のローブと相まって不気味な存在感を醸し出していた。
「そんな、兄さんのシュートを……」
「いいや、分かっていた事さ。切り替えるぞ、ゴールキックだ」
「信じられないモノを見た」という顔をする京介を伴い、優一はディフェンスに参加するべく走り出す。
ゴールキーパーは「向こうへ行け」とジェスチャーサインを出し、ボールを思い切り蹴り飛ばした。
ボールはみるみる飛距離を伸ばし、センターライン付近で待ち構えていたローブの一人の足下へと収まる。
「いいか、京介。俺達は二人とも、あのキーパーから一人でゴールを奪うことは出来ない」
「いいや、兄さんが化身を使えば……」
「そう、そこだ。今のお前は化身に頼り過ぎている。
化身は確かに強いけど、その強さに甘えちゃいけない。いざという時に自分のプレースタイルを底上げしてくれるだけの存在として扱うべきなんだ」
「それなら、今がその時なんじゃ……」
「いいや、違うさ」
注意をフィールドの中で行われている試合から逸らすことなく、優一は京介の言葉を否定する。
「言っただろう、京介。『お前には俺達のサッカーを思い出して貰う』って。今のお前は俺が、或いはお前が一人でシュートを決める事に拘っているんじゃないか?」
「……!!」
「俺もお前も豪炎寺さんに憧れたから、その考えは分かる。絶対的なエースストライカーは一人でも点を決められる、攻撃の基点として試合の流れを動かしてしまう。
だけど、『いつも一人で得点を挙げる訳じゃない』だろう?」
「つまり、兄さんが言いたいのは──」
優一の言葉を聞き、京介の中で何かが崩れ去る音がした。それは剣城京介を縛っていた鎖か、或いはフィフスセクターの訓練を通じて築き上げてきたハリボテか。
「『仲間とサッカーをしろ』って事だね?」
「そうだ。力を合わせてゴールを獲りに行くぞ、京介!」
「あぁ、兄さん!!」
京介の胸に、金色に輝くイナズマ魂が宿る。
優一と京介は走り出し、相変わらずボールの奪い合いをしているローブの集団とザナーク・ドメインによる混戦地帯の中心地へと突撃する。
先に到達したのは優一だった。元から混戦状態だった場所に、剣城優一という強力なプレイヤーの出現。いかに連携による人数有利を取りながら立ち回っているとは言え、これを無視できる筈もなく、より多くの注意力が優一へと向けられる。
故に、ボールを持っていたプレイヤーはパスを出してしまう。思考のオーバーフローを避けるために行われるソレは、人間が避けては通れない行動といえよう。
だからこそ、そこに甘さが生じる。
「ここだッ!」
「攻め上がるぞ、京介!」
京介がパスをカットし、トップスピードに乗ったまま身を反転。再びゴールを目指して走り出す。
その行動を見越していた優一は既に走り出しており、京介のプレースピードに遅れる事なく着いて行くことが出来ている。
ディフェンスラインに残っていたローブの選手達を兄弟による連携でアッサリと突破し、京介と優一はペナルティエリアへと侵入した。
「京介!今こそあの必殺技だ!」
「……!! わかった!!」
次の瞬間、京介はボールを天高く打ち上げ、身体を捻る構えを取る。一方で優一も京介と左右対称に構えを取り、二人は全く同時に炎の軌跡を纏いながら天高く跳び上がる。
予行演習のない本番一発勝負、技の練度も理解度も圧倒的に足りない。
それでも、兄弟の才能とサッカーを愛する心に拠る努力、優一によるフォローと互いに信頼し合う兄弟の絆が合わさる事で、それは一つの技として実を結ぶ。
「「【ファイアトルネード
「【ハイビーストファング】G2」
「「行け!!」」
「……見事なり」
兄弟の繰り出した炎の渦は紅蓮の虎の牙と拮抗を見せるも、やがて虎そのものを焼き尽くし、ゴールネットに突き刺さった。
「や…やった……のか?」
「あぁ。やったぞ、京介!」
「……ーーッ!!」
既に枯れたと思っていた、ゴールを決めた時の喜び。間欠泉のように溢れ出す感情が京介を満たしていく。収まり切らない喜びは温もりとなって、頬を伝い流れ落ちる。
「兄さん、ごめん……!俺……今まで、兄さんからサッカーを……フィフスセクターにも……俺達のサッカーを裏切って……ごめん……!!」
ひたすら謝罪の言葉を口にする京介。
優一はそんな京介に胸を貸し、兄として弟の涙を全て受け止めた。自分には、弟の道を誤らせてしまった責任がある。
病院のベッドの上では「自分がサッカーをやりたい」という事しか考えられなかったが、今ならそれが弟にとってどれほどの重圧になっていたのかが分かる。
それでも、京介は自分とのサッカーを思い出してくれた。自分の言葉を聞いてくれた。だから、兄として自分も謝らなければならない。
「京介、俺こそ……お前の苦しみにも気付けず、俺はずっと『またサッカーをやりたい』としか考えられちゃいなかった。
さっきは『俺達のサッカーを思い出して貰う』なんて言ったけど、どんな面を下げて説教してんだ、って話だ。
だから、俺からも言わせてくれ。ごめん……」
この日、兄弟は和解を果たした。
6年にも渡って兄弟を苦しめた枷は破壊され、兄弟はあれこれと語り合う。そんな場面が普通であれば待っている。
「試合は終わりだ」
だが、そんな場面にも我関せずと遠慮なく踏み込み、悉く自我を通すのがザナーク・アバロニクという男だ。ベンチから立ち上がったザナークは自身のデュプリを消滅させ、兄弟の和解の狭間に容赦なく割って入った。
「ザナーク、一体何を」
「剣城京介。雷門イレブンは帝国学園にてホーリーロード準決勝の試合を行っている最中だ。後半は既に始まっている、40秒で支度しろ」
それだけ言い残すと、ザナークは再び何処からかサッカーボール型のデバイスを取り出した。
一方、剣城京介は躊躇っていた。これまでフィフスセクターのシードとして雷門イレブンと正しくコミュニケーションを取って来なかった自分に彼らと肩を並べて戦う事が出来る訳がない、そう思っていたからだ。
「……俺は──」
「京介」
「な、なんだい、兄さん?」
「お前の考えている事は分かってる。
俺が彼らに全てを話して謝っておく。俺が全ての責任を引き受ければいい。それでお前は大丈夫だ。それでも駄目ならまた次の手を考えるさ。
それで問題ないだろう?」
兄として弟の悩みを見抜いた優一の言葉を聞き、剣城京介は瞑目する。暫しの沈黙の後、目を見開いた。
「……ザナーク。準備が出来た、頼む」
「良いだろう。では、さらばだ」
──ワープモード
無機質な音声の直後、剣城兄弟は見覚えのない通路にいた。一方からは光が差し、声援とホイッスルの音が聞こえる。どうやらここは帝国学園スタジアムの様だ。
「さぁ、行こう。京介」
「いや、兄さんはここまででいい。ここから先は俺一人で十分だ」
「そういう訳にはいかない。責任は──」
「違うんだ、誰に責任があるとかじゃない。俺は一人のサッカープレイヤーとして雷門サッカー部というチームと真摯に向き合う必要があるんだ。
頼む、兄さん。一人で行かせてくれ」
京介の言葉を聞き、優一は考えを巡らす。
弟がやろうとしている事は、人間として正しい。
だが、兄として、弟に全ての責任を負わせる訳にはいかない。
なにより、純粋にサッカーをする以外の目的でサッカーを強要させる事など、弟にさせてはならない。それでは、フィフスセクターのシードとやっている事が変わらないじゃないか……!!
下りた暫くの沈黙の中、思考を巡らせた後に優一は漸く口を開いた。
「……1つだけ聞かせてくれ、京介。
この先、お前が彼らとサッカーをしたいと思う理由はなんだ?」
質問の内容が予想外だったのか、京介は僅かに目を見開き、眉尻を下げて柔らかな笑みを浮かべた。
「……取り戻したいからだ。ずっと兄さんとやりたかった、本当のサッカーを。
だから、俺と同じ思いで戦っている雷門サッカー部を、俺は助けたい。力になりたいんだ」
「……! ははっ、そうか!」
二度と叶わないと思っていた、兄とのサッカー。兄との必殺技。自分を縛っていたもの全てから解放され、剣城京介は本当の意味でサッカープレイヤーとなった。
それを理解した剣城優一は──
「行ってこい、京介。観客席から見守ってるぞ」
「ああ。ありがとう、兄さん。
……行ってくる!」
弟の決断を尊重することにした。
やがて弟の姿は光の差す外へと消え、暗い通路には優一だけが残される事になった。
「いつまでも守られるだけの弟じゃない、か……大きくなったな、京介」
胸の奥でスパークするイナズマ魂を抱えながら、剣城優一も決意を新たに自らも光の差す観客席へと足を進めていく。
「俺はまたサッカーをやるぞ。ずっと先で、お前と同じピッチに立つその日を待つ。今度は俺が……!!」
⚡︎⚡︎⚡︎
「よう、お疲れさん!」
無人となったタイタニックスタジアムで、仕事を終えたザナークへと、黒いローブを纏った男が陽気な口調で話しかける。
「……貴様、良い加減にその暑苦しいローブを脱いだらどうだ?」
「いや、意外と涼しいよ?
流石は未来の素材だね。亜熱帯性気候のライオコット島のサッカースタジアムだっつーのに、エアコンの効いた部屋にいるみたいで快適だぜ」
「中身でなく、見掛けの話だ!
……まあいい。それで、話を聞かせろ」
「……なぜ剣城優一を選んだか、だっけ?
まあ単純な話さ。エイリア石は単品じゃ仕事をしない、依代となる人間がいて初めてその真価を発揮する。ここまではいいね?」
「あぁ。続けろ」
「と言っても、元々が弱い人間に使ったところでその強化幅は高が知れているし、俺やお前じゃ精神エネルギーが強すぎてエイリア石の方が砕けちまう。
だから、元々は強いけど一時的に精神力が弱体化している人間に使う必要があったのさ。
そこで目をつけたのが、セカンドステージチルドレンのご先祖……その血縁者という訳だ。ほら、彼らなら強い精神エネルギーを持ってそうじゃん?
それでまあ、そんな人間を片っ端から探して行ったところ、メイアの先祖である剣城京介……その兄貴、剣城優一が当てはまった。それだけの話だよ」
「なるほど、合点が行った」
「実際、どうだったよ?
俺はお前が仕留めた後のリハビリしか担当してないから分からないけどさ、強かったんじゃない?」
「……まあまあ、だったな。
だが、俺の望む最強とは程遠い」
「……そっか。となると、人間じゃ無理だね。
かと言って、俺たち以上に強い生物なんて地球上には存在しないだろうし、記録にある宇宙人は全員殴り倒したしなー……
そうだな、次は自然現象に絞って探してみるか?」
「悪くない、早速出発するぞ……ブロリー」
「え、もう!? しょうがねーなー……」
黒いローブを外した男……まだ幼さの残る少年の顔は、三国太一にそっくりだった。
その後の黒崎
「暴れないでください!」
「大人しくしてください!」
「離せー!離せ!HA☆NA☆SE!
俺は疲れてなんかいない!俺じゃないんだ!
おかしな奴らが俺を気絶させて!気づいたら……!」
「先程からこんな感じなんです、どうしますか?」
「フム……え……久遠くん、精神科に予約を入れてやってくれたまえ」
「分かりました、豪炎寺先生」
GO3どうする?
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宇宙大会編やれ
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世界大会ifでどうぞ