鬼強ブロッコリー先輩   作:忍者にんにく

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第12話:甦るイナズマ伝説

 

 押忍、オラ三国太一!

 帝国学園との戦いは、久しぶりに歯応えのある勝負となっている。帝国としては雷門の壁となると同時に成長を促す為のステージギミックに徹するつもりなのだろう。いいね、ボルテージが上がってくるじゃないか。

 

 とは言え、状況的には宜しく無い。このままタイムアップまで粘り勝ちしようとすればさせては貰えるだろうが、それで勝ったところでチームの成長には繋がらない。

 そんな消極策でホーリーロードを戦い抜けるのかと言われれば、答えは否だ。俺がアホみたいに強くなったせいで感覚が麻痺しているが、本来、ホーリーロードはかなりの強敵が出揃う大会。「点を決めさせなければ勝てる」などという心積もりで戦っていればあっという間に負けてしまう。それこそ、かつての千羽山中学のように。

 

 忌憚のない見解を述べれば、チームとしてのサッカーという一点では雷門より帝国の方が上だ。鬼道というシンボルの下での統一性というのもあるが、何よりフィジカルや戦術プレーといった基礎力が段違いである。

 彼らのプレーや必殺技は、莫大な基礎によって養われる地力と精密な動きからしか生まれない。"キラースライド"や"ジャッジスルー"など、その最たる例だ。相当な練習を積んできたのだろう。

 だからこそ、強力な必殺技を習得している筈の雷門イレブンは苦戦を強いられている。

 

 さて……この壁を崩す方法を我がチームの司令塔は分かっているかな?

 俺は、チームの中心でゲータレードを飲む神童へと声を掛けた。

 

「前半が終わって1-0か。さて神童、今の雷門に足りないものってなんだと思う?」

 

「そうですね……攻撃の要でしょうか?」

 

「その通り。ぶっちゃけ、倉間も南沢も『コイツにボールを渡せば点が取れる!』って雰囲気を持ったストライカーじゃない。柔軟性があると言えば聞こえはいいが、今の雷門は必勝パターンが無いだけだ。

 その上、帝国はチームプレーの完成度も高い。個人の力でもチームの力でも上を取られている以上、奇襲で一点取れただけでも上等。二度と同じ策は通用しないだろうな」

 

「ええ。俺の指揮も中盤が範囲ですし、簡単にラインを上げさせてくれる相手でもない。前方はどうしてもFW依存になってしまう。だからこそ、単独で得点力の高い選手が前方に必要……という事ですね?」

 

「分かってるじゃないか。……おっと。どうやら、その最後のピースがやって来たみたいだよ」

 

「え? ……お、お前は!」

 

 俺が神童君と話していると、通路の奥からゆったりとした足取りで現れる少年が一人。

 

「……」

 

 その正体は、剣城京介。雷門のユニフォームとスパイクを着用し、身体の至るところに特訓の跡が見られる。少しばかり圧倒されるが、試合に参加しに来た風体と見える。

 

「来てくれたんだな、剣城!」

「嬉しいよ、剣城!」

 

 天馬と信介と輝の一年生トリオは歓迎ムード、霧野と神童が歓迎気味、浜野と速水は様子見、あと俺を除いて全員が不快って感じかな。

 さて、どうする剣城?……と思っていた次の瞬間、驚くべきことが起こる。

 

「雷門イレブンの皆さん。

 シードとして貴方達から自由なサッカーを取り上げようとしたこと、本当に申し訳ございませんでした」

 

 様子を見守っていると、いきなり剣城京介が直角に腰を曲げて頭を下げた。しかも、普段の荒々しい口調ではなく、丁寧な言葉遣いで。

 

「ファッ!?」

 

 思わず大声を出して皆の目を集めてしまったが、それにしたって驚きだ。キャラ崩壊ってレベルじゃねーぞ。一体どうしたんだ!?

 

「…………」

 

「……おっと、済まない。続けてくれるか?」

 

「あ、あぁ……」

 

 もしかすると、シードの教育プログラムに礼節に関するトレーニングもあったのかもしれないが……それは無いか? 俺の知っているシードの連中は軒並み人間性ドブカスだし。

 

「そして、烏滸がましい事とは思いますが、雷門イレブンの皆様に"剣城京介"という一人のサッカープレーヤーとしての懇願があります!

 ……どうか、俺も一緒に戦わせてくれ! 本当のサッカーを取り戻すために!」

 

 背筋を伸ばし、力の籠った目で雷門イレブンを見据えながら剣城が頼み込んできた。纏う雰囲気も今までの様に触れるものを全て傷つけるような刺々しいハリネズミの様な雰囲気ではなく、真っ直ぐで重厚な力強さを持った肉食獣……オオカミか? その様な雰囲気が感じられる。

 

「……決めるのはチームメイトのお前達だ。さあ、どうする?」

 

 沈黙の降りる雷門イレブンへと、円堂監督から問いが投げかけられる。サッカーをするのは雷門イレブンであり、判断を下すのは当事者たる雷門イレブン自身だと、円堂監督は言いたいのだろう。

 自分達で直接チームに関係する事柄への判断を下す経験などあろう筈もなく、雷門イレブンは各々が戸惑っているようだ。

 

 とはいえ、それだけが戸惑いの原因ではない。剣城の情熱は十分に伝わったのだろうが、そもそも、昨日の敵が今日の友になったところで安心して背中を預けられるかは別の話だ。

 さあ、どうする……?

 

「……いいぜ、一緒に戦おう」

 

 沈黙は意外なところから破られる。なんと、一番最初に剣城の参戦を認めたのは倉間だった。

 

「悔しいが、俺じゃアイツらからゴールを奪うのは難しい。お前の得点力が必要だってのは、俺が一番わかってる。お前の力を貸してくれ」

 

「やれやれ……倉間はこう言うが、どっかのブロッコリーが言ってくれたみてーに、力不足って点じゃ俺も似た様なモンだしな。背番号10番(エースナンバー)が情けねえ事を言うが、ゴールを決めてくれ。剣城」

 

「……仕方ねえ。倉間と南沢がこう言ってんだ、俺も認めるぜ」

「車田に賛成だド」

 

「まぁ、そーなっちゃいますよねー」

「ハァ……心臓に悪いです……」

 

「決まりだな。改めて宜しく頼む、剣城!」

 

「ありがとうございます……!」

 

 ドミノ倒しの様に雷門イレブンから承認の声が上がったところで円堂監督が締め、剣城京介の雷門イレブン入りが正式に決定した。

 

「よし、後半からの作戦を伝えるぞ!──」

 

 ⚡︎⚡︎⚡︎

 

【選手交代】

【OUT】倉間→【IN】剣城

 

 剣城が倉間と交代で入り、後半が始まる。

 ホイッスルと共に帝国ボールで試合再開し、奴らは速攻を仕掛けて来た。

 

「はああ……! 【竜騎士テディス】!」

 

 龍崎の化身による力尽くの突破を基に、間違いなくシードであろう4人組(フォーマンセル)での連携で雷門イレブンのディフェンスを突破して来る。どうやら捨て身で得点を取りに来る作戦のようだ。

 だが、この状況で危機を感じていない奴が俺の他にもう一人いた。剣城である。

 

『おおっと、これはー!? 雷門の剣城がディフェンスを放棄し、帝国ゴールに向けて走っていきます! 一体、どういう事だー!?』

「血迷ったか……決めてやれ、御門!」

「はああ……【黒き翼レイブン】!!

 喰らえ!【レイジングクロウ】!!」

 

 実況が困惑しているが、俺には分かる。なるほど、粋なことをしてくれる……思わず口角が吊り上がる。

 良いじゃないか剣城……これは俺からのサービスだ!

 

 御門から放たれた化身必殺シュート。それに対し、俺は右手に特大の気を込め、巨大な手の形にして押し出す。

 

「【ゴッドハンド】!!」

 

「行け!! 剣城!!」

 

 御門のシュートを難なく止めた俺は、帝国ゴールに向かって走る剣城へとボールをぶん投げる。

 超次元の環境で鍛え上げた俺の肉体にとって、200mにも満たないサッカーコート内でのフリースローなんぞ朝飯前だ。ボールはグングンと飛距離を伸ばし、寸分違わず剣城の胸元へと届く。我ながらナイスコントロールだぜ。

 

 胸トラップでボールを足下に収めた剣城は、電光石火で帝国ゴールへと斬り込んで行く。帝国イレブンは何とかボールを奪還しようと果敢にディフェンスを仕掛けて行くが、剣城を捉えることが出来ない。

 単身ディフェンスを振り払い、ペナルティエリア内に侵入した剣城は帝国キーパー雅野と一対一になるとボールを真上に打ち上げ、螺旋の軌跡を描く炎と共に空中へと跳び上がって行く。

 

「あれは!?」

「まさか……!!」

「決めろ、剣城!!」

 

「うおおお!【ファイアトルネード】!!」

 

「【パワースパイク】!!……な、何だこのパワーはッ!? ぐわああああ!」

 

 そして、爆炎と共に放たれたシュートは雅野の必殺技を粉砕し、雷門に追加点が齎された。

 

 この得点を切っ掛けに、試合の流れは雷門へと大きく傾いた。

 シードではない帝国イレブン達は、総帥である鬼道と監督である佐久間の指示に従おうとするが、シードの4人がその指示に従う事はない。

 

 結果として帝国の強固なチームプレーには綻びが生じ、帝国イレブンは実質的にその機能を停止。雷門の攻撃に対処できるだけの力を発揮できず、雷門イレブンの勢いを止められない。

 

「【竜騎士ティ】……ぐっ!」

「今だ!」「はい!」「貰いっ!」

「こ、の……クソがあ!」

 

「ぐ……ああああ【黒き翼レイヴン】!

 レ、【レイジング……クロウ】オオオオ!」

「無駄だ」

「なっ、片手だと……!?」

 

 また、化身の酷使により消耗した御門と龍崎がスタミナ切れを起こしたことで帝国イレブンの攻撃が急激に失速する。

 攻防共にガタガタとなったチームを見てもう十分だと判断したのか、鬼道はシードである4人をベンチへと下げ、控えのメンバーを出して来た。

 

 これにより、帝国イレブンは息を吹き返したように再び強固なチームプレーを発揮するようになり、再び雷門の壁として立ち塞がる。

 だが、勢いに乗った雷門イレブンは指数関数的な速度で成長を見せる。帝国による試練の悉くを打ち破り続け、最終的に4対0というスコアで勝利を収めた。

 

 

 ⚡︎⚡︎⚡︎

 

 

「久しぶりだな、お前達」

 

「「「久遠監督!!」」」

 

 そして、試合の後。鬼道と佐久間、そして帝国GK雅野の案内で帝国学園地下にやって来た雷門イレブンは、思わぬ再会を果たす。前雷門中学サッカー部監督の久遠道也がそこにはいた。

 

「『お前達、まだまだ至らない部分だらけだ』……と言いたいところだが、良い試合だった。円堂監督と共にしっかり反省し、今後のプレーに活かすように!」

 

「「「はい!!」」」

 

 久遠の言葉に、元気よく応える雷門イレブン。今は違う、少し前まで当たり前だった光景がそこにはあった。

 そんな彼らを横目に見ながら、春奈が鬼道へと疑問を投げかける。

 

「それで、兄さん。ここに私達を呼んだ理由って?」

 

「そう焦るな、春奈……ほら、もう来たぞ」

 

「皆様、お集まりになっていらして?」

 

 鬼道の言葉と共に部屋の壁に偽装されていた扉が開き、謎の男を二人引率れた雷門夏美が姿を現す。

 

「雷門サッカー部の皆、お疲れ様。良い試合だったわね。」

「「「理事長!」」」

「……それと、後ろの方々は?」

 

 神童が疑問を投げかける。

 

「響木正剛だ。宜しく頼む」

「雷門総一郎だ! 宜しく頼む!」

「「「宜しくお願いします!!」」」

 

 響木と雷門の挨拶に、雷門サッカー部の面々は礼儀正しく挨拶を返す。少年サッカーにおける目標の一つは良い人間性の形成だ。その成果を見た大人達はふっ、と柔らかな笑みを浮かべた。

 

「さて。挨拶も済んだところで、早速本題に入りましょう。

 試合の後で疲れているでしょうけど、雷門サッカー部の皆にも立ち会って貰うわ。というより寧ろ、主役は貴方達ですもの」

 

「俺達、ですか?」

 

「単刀直入に言おう。私達は、フィフスセクターの次期聖帝にこの響木正剛を候補として出馬させようと思っている」

 

 一部を除き、雷門イレブンの頭の上には"?"マークが浮かんでいる光景が幻視される。まだ話を飲み込めていないようだ。

 

「お前達も知っているだろうが、先日の八百長騒動でフィフスセクターの影響力は落ち、今年のホーリーロードが始まってからと言うもの、勝敗指示に従わない学校とチームが急増した」

 

「え、それって良い事なんじゃ……?」

 

「それが、そうとも言い切れない。

 現在、フィフスセクターは各学校に送り込んだシードや、息のかかった大人を使い、指示に従わない学校を外から内から潰している。奴らはもはや手段を選ばず、反対勢力を潰すつもりだ」

 

「私もフィフスセクターの前身である、日本サッカー協会の前会長として止めようとしたが、無駄だった。既に全国区の進出校はその殆どが奴らの手に堕ちるか、或いはサッカー部そのものが廃部となった」

 

 久遠の言葉に反応した天馬の言葉を、響木が否定した。更に追い討ちをかける様に、雷門総一郎から絶望的な事実が提示される。

 当然、雷門イレブンには動揺が走る。

 

「な、なんだって!?」

「そんな……酷すぎる!!」

「でも、それならニュースになる筈じゃ?」

 

「握り潰されているんだ。腹立つ事にな」

 

「私達の調査でも、今回の件には政財界の大物が関わっているという情報を掴んでいるわ。ここまで露骨な情報操作がある以上、間違いないわね」

 

 鬼道と夏美から話された内容に、雷門イレブンが再び苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべる。

 

「それじゃあ、調査結果をネットに流せば良いじゃないですか」

「確か、あの嫌な理事長と校長が雷門から追い出された原因もネットでの暴露だったよな」

「それなら誤魔化しが効かないし、皆にも分かって貰えるんじゃ!?」

 

「それも無理だ」

 

 一部の三年生のメンバーと二年生のメンバーから提案が為されるが、それを否定したのは久遠だった。

 

「私の時には『雷門中』と『イナズマジャパンの元監督』という分かりやすい知名度と実績があったからこそ、あの様な形になっただけだ。

 ここまで大きく、薄く、信憑性を確かめるのも難しい情報ではどうにもならないだろう」

 

「下手すると、情報を流した側が追われる身となるかもしれん。この手の奴らは、それ程までに危険な相手なのだ」

 

 雷門総一郎の言葉には重みがあった。

 当時をよく知る響木や久遠、身近にいた者が被害を受けた事のある円堂や鬼道や佐久間、春奈や夏美でさえ、険しい表情を浮かべている。

 

 雷門イレブンは、何も言えなかった。

 

「……とにかく、奴らはこれまでの水面下でサッカーの得点を管理する体制を捨て、強硬策に出ている。

 こうなった以上、フィフスセクターの内部から正式に解散手続きを踏む以外に方法は無い。それを実行することが出来るのは聖帝だけだ」

 

「聖帝選挙には、ホーリーロードの試合が判断材料として使われる。あくまでも選挙だが、その実態はサッカーの試合による代理戦争だ。

 フィフスセクターの息のかかった学校が優勝する事になれば、自由なサッカーは永遠に失われるだろう」

 

「だけどもし、フィフスセクターの息のかかっていない学校が優勝する事態になれば……貴方達の手には、自由なサッカーが戻る事になるわ」

 

「そして、ホーリーロード出場校でフィフスセクターの支配が及んでいない学校は一つだけ。その唯一の存在が……お前たち雷門中と、雷門イレブンだ」

 

「ここまでの試合を乗り越えて来たお前達を、お前達のサッカーを我々は信じている。自由なサッカーを取り戻すため、ホーリーロードで優勝を勝ち取って貰いたい!!」

 

「「「……!! はい!!」」」

 

 自分達が全力を尽くし勝ち抜くことが、人々を極悪非道から救う事になる。そんな話を聞かされて、ハートに火がつかない人間は殆どいないだろう。雷門イレブンも例に漏れず()()であった。

 

「……」

 

 ただ、一人を除いて。





 あけましておめでとう!(激遅刻)
 納得いくモンが中々書けなくて苦しかった!
 それはそれとして、更新サボっててごめん!

GO3どうする?

  • 宇宙大会編やれ
  • 世界大会ifでどうぞ
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