鬼強ブロッコリー先輩   作:忍者にんにく

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第5話:ブロー・コッリーとイナズマの意志

 

「皆さん、おはようございます。

 新しい雷門中学校理事長の雷門夏未です。

 我が校の元理事長と元校長が起こした不祥事の数々の影響により、皆さんには大変な負担が掛かったことと思われます。

 この騒動から学ぶべきこと。それは今回の問題点が不祥事が明るみに出た事ではなく、不祥事を起こした事そのものであるという事です。

 私が理事長になった以上、教師も生徒も雷門の名に泥を塗るみっともない行動は許しません。

 理事長の言葉として肝に銘じておきなさい」

 

『はい!!』

 

 ん?……あ、ども。三国太一です。

 生で初めて見るが、夏未さん美人過ぎる。そして、カリスマ性が凄い。この場の人間全員が雷門夏未という人間に従っているよ……いや、24歳が出せるオーラじゃないってアレ。まるでフィールドの司令塔みたいだ。

 そういや前にニュース記事を読んだ記憶によると、自分も所属する実業団チームを作ってサッカーをやってるんだったっけ。元々の気質と積み上げた経験を活かしているって感じか。なるほどね。

 

 また、校長は火来さんが再び務める事になってた。ここは正式に決まった訳じゃなく、出戻りって形を取った様だな。いや、どうでも良いけど。

 ゲーム版の「脅威の侵略者」編で瞳子監督からこの人に編成係が変わった時には「誰だコイツ」と思ったのを覚えている。何なら瞳子監督に戻して欲しかった。

 閑話休題(それはそれとして)。これで雷門はフィフスセクターの支配から完全に脱却した事になる訳だが……この先どうなる事やら。俺の原作知識も役に立たないだろうし、気合いを入れなきゃね。

 

 

 ⚡︎⚡︎⚡︎

 

 

「皆、ホーリーロード第一回戦の対戦相手が決まった。相手は天河原中だ」

「勝敗指示は1対2で雷門の負けだがな」

 

 時は放課後、ミーティングルームにて円堂監督からの発表と剣城からの注釈が有った。原作なら雷門イレブン全員が意気消沈している場面だが……

 

「従う必要はありません。

 先日の八百長騒動でサッカー管理組織フィフスセクターはその機能を一部停止、形式的に指示を出しているに過ぎません。これを聞いて、貴方達はどんなサッカーをしたいと思うのかしら?

 今までの様な管理されたサッカー?

 それとも本気で戦える自由なサッカー?

 今ここで答えて頂戴」

 

「……本気のサッカーがやりたいです。

 雷門の先輩方と一緒にホーリーロードを勝ち抜いて優勝したいです!」

 

 沈黙を破り、夏未さんの質問に一番先に答えたのは天馬だった。

 ん、俺じゃないのかって?

 そりゃそうさ、最上級生の俺が言うと皆の意思に多少なりとも補正が掛かってしまうからね。俺が黙ったままでも、天馬は勝手に答えてくれる。そーゆー奴だ。

 そして、勇気を出した若葉に力添えをするのが俺達の役目だ。

 

「俺も天馬と同意見だ。俺は『最高のサッカー選手』になりたいと思うからサッカーをやっている。

 奴らに『サッカーの為の信念』も『信念の為のサッカー』も奪わせない。既に奪われているなら取り返す!ホーリーロードで優勝し、成し遂げる!」

「……俺もだ」「……だド!」

 

「これ以上、俺は惨めなサッカーをしたくない!

 本気でプレーをして、本気で勝って、皆で頂上の景色を見たいんだ!」

「神童……」「……そうだよね!」

 

 どうやら俺が車田と天城を、神童が霧野と浜野を説得することに成功した様だ。天馬と信介を含め、これで8人が揃った。

 まだ腹を決めきれていない奴が2人と、我慢の限界に達してそうなのが1人いるか……とはいえ、俺にこれ以上できる事は無い。円堂さん達大人組もそれは分かっているだろうし、任せても良いかな?

 

「……決まりね。では、雷門中サッカー部の名に恥じぬよう全力で戦い、ホーリーロードを勝ち抜いて優勝なさい!

 これは理事長としての言葉です!」

 

『はい!』『応!』

「やるぞゴラァ!!」

「目にもの見せてやらあ!」

「絶対に勝つド!」

 

「……どうなっても知らねえからな」

 

 こちらには雷門夏未と円堂守がいる。あの2人のカリスマを前にした我々に恐怖や躊躇いは風の前の塵に同じ。大体そんな感じの解釈をしたのだろうか、捨て台詞を残して剣城は去って行った。まあ、良い奴だったよ。

 

「ありがとな夏未!

 だが、お前達に言っておく。サッカーは11人でやるスポーツだ。相手がいくら強大でも、皆で力を合わせれば不可能だって可能になる。無理だって感じた時には一人でなんでも抱え込まないことだ。

 よし、それじゃあ練習だ!

 気合い入れて行くぞ!」

 

『応!!』

 

 

 ⚡︎⚡︎⚡︎

 

「…………」

 

 やり場のない怒りを感じていた。

 三国(脳筋バカ)松風(チョココロネ)の思想が雷門イレブンに広まりつつある事も、奴らがフィフスセクターの管理サッカーを前にして俺の様に腐らない事も、俺の必殺シュートが三国の守りを破れない事も。

 

「クソッ……!!」

 

 こんな思いをするくらいなら、いっそこのサッカー部から抜けてフィフスセクター側に着き、この怒りをどこかのサッカーチームに押し付ける方が遥かにマシなのでは無いか?

 それが良い。あの間抜けた面でサッカーボールを蹴っている監督に言ってやろう。お前の指導には付き合ってられないってな。

 

「練習にも参加せず、何をしているのかしら?」

 

「アンタは……理事長か」

 

「ファーストコンタクトのレディを『アンタ』呼ばわりとは、あまりにも失礼ではなくって?」

 

「悪いが今の俺は虫の居所が悪いんだ。紳士な対応を求めるならあっちの連中にでも頼むといい。じゃあな」

 

 ここで円堂シンパのこの女と会話するのも時間の無駄だ。さっさと用件を済ませて去ろうとした俺だが、直後に踏み出そうと出したその足を止めることとなる。

 

「南沢篤志。雷門イレブンのエースストライカーを担い、勉学面での成績も優秀な模範生。フィフスセクターの管理サッカーを体現した様な整然としたプレースタイルが特徴。現在の目標はレベルの高い高校への推薦を受ける事……だったかしら?」

 

「詳しいな。何処でそれを知った?」

 

「あら、雷門の理事長を舐めないことね。私の手に掛かればこの程度の情報収集は造作も無いわ。

 それで貴方、サッカー部も雷門も辞めて転校しようとでも考えているのでは無くて?」

 

「ハッ、よくご存知で。それで、俺に雷門サッカー部に残るよう説得しに来たとでも?

 雷門の理事長ってのは随分と暇らしい」

 

「あら、随分と思い上がられたものね。

 私には貴方を引き留める気も無ければ、説得する気も無いわ。だって、今の貴方は弱いもの

 

「……はァ?」

 

 こいつは今、なんと言った?

 雷門のエースナンバーを背負うこの俺を、弱いと言ったか?

 どうやらサッカーに関しては素人らしいな。こんなのとマトモに話そうとした俺が馬鹿だった様だ。

 

「自分と違う意見を聞き入れず、無駄なプライドに固執するお子様。その上、本当に大事な物の為に戦う覚悟を決める事も出来ない半端者が雷門のエースストライカーですって?

 笑い話にもならないわ。」

 

「本当に大切なのは俺の人生だ。内申と進路さえ保証されりゃ、俺にとって他の事はどうでも良い。何と戦う覚悟を決める必要がある?」

 

「決まってるじゃない。戦うべき相手よ。

 まず、どこで得た知識かは知らないけど、内申書なんて存在しないわ。教師の主観が入った評価なんて、宛にならないシロモノは邪魔でしかないもの。

 そして、他の事はどうでも良いというなら何故、先日の試合で本気のプレーの一端を見せたのかしら?

 適当にベンチに引っ込むなり、理由をつけて欠場する事だって出来た筈なのに、それをしなかった理由は?」

 

「……あの時は虫の居所が悪かったからだ。偶々あいつらとの試合で憂さ晴らしが出来ると思ったからやったまでだ。そんな機会をみすみす逃す訳無いだろ」

 

「それで、スッキリしたのかしら?」

 

「いいや? アイツらを見てるとムカついてくるさ。今までの俺の苦労を踏み躙る様な事をしでかそうとしてるからな。」

 

「いいえ、無駄にしようとしているのは貴方の方よ。注意深く見てみることね……神童拓人君のプレーを」

 

 神童のプレーか。唯のパス練習に見えるが……やけにボールが前の方に出ているな。松風(チョココロネ)は全く追いつけていない。どう見ても松風(チョココロネ)の下手くそさが際立っている風景だ。

 ははーん……なるほどな?

 

「泥臭く練習している時代が貴方にもあったからー……とかなんとか情にでも訴えたいのか?

 だとしたら随分浅い説得だな」

 

「あら、やはりエースストライカーを名乗るには力不足のようね。全く見当違いも甚だしいわ。そうね、分かりやすいようにホワイトボードで解説しましょうか。バトラー?」

 

 パンパンと手を叩くと、橋の上に止まっていたリムジンから執事がホワイトボードを運んできた。

 ……え? は? 何あれ?

 

「ここに。夏未お嬢様」

「ありがとう。さて、南沢君。一度しか言わないからよく聞いておくことね。行くわよ?」

「あ、あ……あぁ」

 

 さっきの状況には面食らったが、取り敢えず今はこの女の言うことを聞いておかなければ反論しようにもすることが出来ない。

 大人しく聞いておくとしよう。

 

「あの練習はオフェンス終盤、相手のペナルティエリアサイドまでボールを持ち込むワンプレーを想定した練習よ。

 突破力とボールコントロール能力の高い神童君が攻め上がる事で、相手は左サイドに注意を取られる。松風君が並走することでワンツーを警戒せざるを得なくなるから、逆サイドのディフェンダーもある程度引き付ける事が出来る。ここまでは良いかしら?」

 

「あぁ、そりゃそうだ」

 

「最低限の理解力があって何よりだわ。

 さて、そんな状況が最終ディフェンスライン目前まで続いて……ここで天馬君が急にスピードに乗って走り出すとどうなるかしら?」

 

「そいつにパスが渡った時の状況と神童の突破を警戒するだろ。せっかく包囲したところで、包囲網から外れた奴にボールが渡ったら意味が無いからな」

 

「そう、だから……より外側のサイド、DFの真後ろ、キーパーと最終ディフェンスラインの間。それらの内、少なくともどれか一つの場所には意識的なスペースが出来る。

 その場所でボールを受け取るのは……優先警戒度の下がっているFWよ。神童君の想定は、天馬君にパスするフリをして猛スピードで上がって来たFWにボールを預ける、といったところかしらね。

 これに先日の練習試合のフォーメーションを当て嵌めて考えると、この位置にいるFWは……」

 

「俺だ」

 

 目から鱗が落ちる様な思いだった。

 言われてみれば簡単な事だというのに、俺は気付かなかった。気付かなかった原因は、フィフスセクターの管理サッカーにこんな戦い方が存在しないから。管理サッカーの戦術に従って結果を出す事だけに拘っていたからだ。

 

「そう、貴方よ。あの練習が成立していない原因は貴方が逃げ出しているから。貴方には何も見えていないようね。雷門イレブンの皆が織り成すプレーの意味も、貴方が本当に手に入れたいと思っている物も」

 

 俺が本当に手に入れたいもの、か。

 俺はサッカーで安定した進路を……

 

「言い訳ね。違うでしょ」

 

 急に胸の奥が熱を失う。鳩尾を氷の短剣で貫かれたかの様な感覚と共に、俺の中の塗り固められた何かを内側から壊そうとしている。

 止めろ……それは……!!

 

「小学生時代はイナズマKFCでサッカーをしていたのよね。半田くんから聞いているわ。どんなボールにも我武者羅に喰らいつくストライカーだったって。

 当時の貴方はどんな思いでボールを追いかけていたの?」

 

 ……止めろ

 

「貴方がサッカーを続けてきた理由はもっと根本的な所にある筈よ。つまらない体裁で取り繕うなんて10年早くてよ」

 

 ……止めろ

 

「答えは私が言ってあげましょうか」

 

 ……やめろ

 

「貴方はサッカーが好きだから」

「やめろおおお!!」

 

「今更、それを認める訳にはいかねーんだよ!

 だったら……大好きなサッカーを捨て、けどサッカーそのものまで捨てる事は出来なくて、それからは手段として無感情に扱ってきた俺は……俺の耐えてきた時間は、一体なんだったんだ!!」

 

「……さあ、知らないわ。

 まだ何も終わってもいないのに、答えなんて出る筈がないもの」

 

「ふざけるな!ホーリーロードはもう目の前だ……他校の代表として出る為には、急いで答えを出さなきゃいけねーんだよ!」

 

「ホーリーロード実施要項には『試合の前に転校手続きが完了していれば、大会期間内でも転校先の学校の代表として試合に出ることが可能』とあるわ。貴方の実績ならスタメンは確実でしょうね」

 

「…………」

 

「雷門のユニフォームを脱ぐかどうかは、急いで決める事では無いわ。時間をかけてじっくり考えておくことね」

 

 胸の奥から湧き上がってくるこの気持ちはなんなんだ……凍えそうなくらい冷たくて突き刺さるようなこの痛みは……一体、何だと言うのか!

 どうして俺は……三国(脳筋バカ)達のことが羨ましいなんて思っちまってるんだ……!!

 とっくに枯れたと思っていた温かいモノの感触が俺の頬から胸へと伝い落ちて、アスファルトに染みを作った。

 




 
 試合に入れなかった……でも、どうしても南沢さんを救ってやりたかったんや。だって、半田さんと染岡さんを足して3で割った様な中途半端で不憫なキャラなんだもん……

 夏未さんはエッロい。料理下手属性が苦手なので、私はそこまで嵌りませんでしたが、本当に良いヒロインだと思います。

 次こそは試合じゃ!

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