鬼強ブロッコリー先輩   作:忍者にんにく

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第6話:雷が天を裂き、河原に稲妻が落ちる

 

 ホーリーロード第一試合は天河原中のグラウンドにて行われる。雷門イレブンにとってはアウェーとなる第一試合だが、彼らの士気が落ちる事は全く無い。

 

「皆、特訓の日々を思い出せ!

 勝利を目指して努力していたあの時間、お前達はサッカーが楽しいって顔をしていた。それは誰かに貰ったものじゃない、自分達のハートで感じたものだった筈だ!

 思いっきりサッカーを楽しんで来い!」

 

『応!!』

 

 円堂守のスピーチに一部を除く雷門イレブンの士気は最高潮に高まり、勝利を目指す者の目にはイナズマが宿る。彼らはそのまま力強さを感じさせる足取りでフィールド入りし、ポジションに着いた。

 

 

【雷門フォーメーション】

 

南沢   倉間

速水  松風  神童  浜野

車田  霧野  天城  西園

三国

 

【天河原フォーメーション】

 

安藤   喜多   星降

晴井  隼総  比嘉志  西野空

樫尾   河崎   糸川

三波

 

 

 ホイッスルが鳴ると共に雷門ボールから試合は始まった。センターサークルから南沢が倉間にパスを出し、倉間から浜野、神童を経由して天馬へとパスが渡る。

 

「ボールを!」「頂くぜ!」

「させない!【そよ風ステップ】!

 神童さん!」

「良いパスだ……決めるッ!」

 

 プレスを掛けて来た比嘉志と西野空を天馬は必殺技で抜き去り、天馬は神童へとパスを出した。ボールを受け取った神童は圧倒的な走力で天河原の最終ディフェンスラインを突破し、ペナルティエリア内にて三波と対峙する。

 

「【フォルテシモ】V2!!」

 

 より強く輝きを増した五線譜がボールを包み、一つ上の段階へと進化した神童の必殺シュートが襲い掛かる。あまりの威力と速さに三波は反応することも出来ず、ボールは天河原ゴールへと突き刺さった。

 前半2分、雷門中先制。

 

「ククッ、お疲れさん。

 ここからは俺達の試合だぜ!」

 

 そして、天河原ボールからの試合再開となる。ボールを持った隼総が下卑た笑みを浮かべながら攻め上がるが、雷門イレブンは動こうともしない。

 その理由を試合を諦めたからだと解釈した天河原イレブンは益々勢い付き、意味のないパス回しまで披露しながら前衛ラインを徐々に押し上げて行く。

 

「先ずは一点だ!」

「喜多ァ!」

「任せろ!【ヘッドバズーカ】!!」

 

 安藤から喜多へとセンタリングが上がり、喜多が必殺のヘディングシュートを放つ。ボールはその名の通り、バズーカ砲の如き迫力と勢いでゴールへと迫る。

 これに対し雷門の守護神こと三国太一は仁王立ちしたまま、全く動く気配を見せない。

 

『俺達の得点だ!』

 

「喝ッ!!」

 

 だからこそ、天河原イレブンには油断と隙が生じた。

 それらを察知するや否や、三国太一は目にも止まらぬ速さで動き、次の瞬間には片腕で喜多の必殺シュートを完全に止めて見せた。それも必殺技を使わない、ただのキャッチングで。

 

「……ッ!なんだと!?」

「皆、上がれ!速攻だ!」

 

「車田先輩!」

「任せろ!」

 

 天河原が防衛に注意を向けた時には遅く、雷門イレブンは既に走り出していた。三国からのゴールキックはセンターサークル手前にいた天馬へと渡り、天馬から車田へとパスが渡る。

 

「行かせねえよ筋肉達磨!」

「【ダッシュトレイン】!!」

「ぶるあああ!!」「ぐわあああ!!」

 

 本来はDF技のダッシュトレインだが、車田はその勢いをOF技に転用し、暴走機関車の如く天河原の選手達を蹂躙する。

 

「行け、速水!」

「うわ!わっ……南沢さん!」

「隙あり「そんなものは無い」なっ!?」

 

 車田からパスを受け取った速水はプレーに集中できておらず、焦って南沢へとパスを出すも糸川にカットされてしまう。

 だが、直後に糸川がパスを出そうと足を引いた瞬間、神童が急接近してボールを奪い取った。

 

「天馬!」

「ナイスですキャプテン!」

「ここは通さん!」

「浜野先輩!」

「はいはいーっと!」

 

 予め神童と入れ替わる様に中央右側へと移動していた天馬が神童からのパスを受け、さらに右から上がって来ていた浜野へとパスを出す事でプレスを掛けて来ていた河崎を躱しつつ、ボールを繋ぐ。

 

「行かせるか!」

「行かせて貰うよ、【波乗りピエロ】!!

 じゃあねー!」

 

 焦った樫尾が背後からボールを奪おうと浜野に突進を仕掛けて来るが、浜野は必殺技の勢いに乗って樫尾を突き放した。あっという間にペナルティエリア右まで到達した浜野は、センタリングを上げる。

 

「頼むよ、倉間!」

「あぁ……【サイドワインダー】!」

「甘え!【ラピッドウィップ】!」

 

 倉間が自身の必殺技を放つが、三波の必殺技に跳ね返されてしまう。そして三波を含む天河原イレブンは、またしても油断してしまった。

 倉間の背後から猛スピードで駆けてくる神童拓人という存在に気付いた時には既に遅く……

 

【フォルテシモ】V2!!」

「何っ!? ぐわあああッ!!」

 

 神童の必殺シュートを真正面に受け、その身体ごとゴールに突き刺さる結果となった。

 前半10分、雷門が2点目を上げた。

 

 

 ⚡︎⚡︎⚡︎

 

 

【雷門】 【天河原】

2 ー 0

 

「クッソ、どうなってんだアイツら!」

 

 隼総の視線の先には電光掲示板、その試合点数に隼総は苛立ちを隠そうともしなかった。

 先日の騒動を受け、フィフスセクターのエージェントからは勝敗指示の存在を確定させる様な発言をしてはならないと厳しく注意された為、自分から雷門に抗議をする事は出来ない。

 最早、自分の任務は完遂できない状況にある。結果を出せないシードはフィフスセクターから除名されるか、「楽園」送りになると聞いている。どちらも隼総にとって絶望的な道であることに変わりは無い。

 

「……皆、聞いてくれ。これより、雷門は何者にも縛られる事なくサッカーをすると神童が言っていた。

 本気で勝負を掛けに来た雷門と勝敗指示に甘んじていた俺達、その差は歴然だ。このまま戦っても、俺達は負けるだろう」

 

 雷門がポジションに戻るまでの時間で何やら話していた喜多が戻り、彼の口からは信じられない言葉が飛び出した。それを聞いた瞬間、隼総の中で歪んだ憎しみが生まれた。

 

『俺からシードの地位を奪おうとする雷門が憎い』

 

 逆恨みと下卑た悪意が隼総の身体からオーラを引き摺り出し、異形の存在へとその姿を変えていく。

 「化身」……隼総の宿す「鳥人ファルコ」が顕現した。

 

「ふざけんな!そんなの認められるか!!

 テメェら!ボールを俺に回せ!!俺の化身で奴らのゴールをこじ開けてやる!!10点でも20点でも取って、なんとしてでも奴らを敗退させるんだ!!」

 

 そして、試合が再開する。

 

「オラッ!どけ!」

「テメェ……何をしやがる隼総ァ!」

 

 ファーストタッチで喜多は安藤にパスを出したが、背後から走って来た隼総がそのボールを強引に奪い取る。

 

「行かせるか!」「通さないよっと!」

「邪魔だ雑魚ども!!」

 

「止めるド!【ビバ!万里の長城】!!」

「蟻じゃ隼には勝てねえよ!!」

 

「行かせない!」「挟み撃ちだ!」

「そんなものが化身に効くか!!」

 

 プレスを仕掛ける神童と浜野を化身で吹き飛ばし、天城の必殺技を化身と共に空を翔ける事で回避、信介と霧野のディフェンスを強引に突破し、隼総はペナルティエリアにまで侵入する。

 向かい合うは雷門の守護神、三国だ。

 

「喰らいやがれ!【ファルコウイング】!!」

 

超【ゴッドハンド】!!」

 

 化身と共に上空から擊ち出されたシュートが凄まじい威力と勢いで雷門ゴールを強襲する。しかし、三国の右手から出現した紅の掌が真正面からシュートを捉え、やがて収束する様に消滅する。

 果たして、ボールは三国の右手に収まっていた。

 

「ば、馬鹿な!?……俺の【ファルコウイング】を止めやがった!?

 一体、何が起きたと言うんだ!!」

 

 ⚡︎⚡︎⚡︎

 

 やあ、どうも。解説の三国太一だ。

 突然ではあるが、何が起こったのかを解説しよう。

 

 化身必殺シュートは確かに強力な必殺技だ。

 だが、強力な故に致命的なまでの弱点がある。

 

『残念だが、その位置は遠いな』

 

 技の威力を最大限に発揮させる為の「助走距離」が必要である為、通常の必殺技よりも離れた場所から技を出し始めなければならない。

 これは訓練である程度は克服する事が出来る弱点だが、多くの化身使いはその威力に溺れ、弱点の克服を怠る傾向にある。

 この隼総とかいう奴もその一人だな。

 

 さて、そんな遠くからシュートを撃ったとなれば、ゴールキーパーが気を溜めて必殺技を発動させる準備を完了させても十分過ぎる程の時間的な余裕が生まれる。

 つまり、相手からすればキーパーに準備をさせてしまうだけでなく、コースまでも読まれてしまう諸刃の剣なのだ。そうなれば……

 

超【ゴッドハンド】!!」

 

 シュートは正面から捉えられる。後はキーパーが全力で止めるだけだ、ただの強力な必殺技と変わらない。

 

 以上!さらばだ!!

 

 ⚡︎⚡︎⚡︎

 

 その後の試合は特に語るポイントもない。

 前半は隼総が敵味方問わずボールを強奪しては強引に持ち込み、【ファルコウイング】を撃ち込むといった攻撃を仕掛けて来たが、俺はこれを全て防衛し、前半0失点で抑えることに成功した。

 また、その間にも雷門はカウンター攻撃を仕掛け、更に1点の追加点を挙げて前半が終了した。

 

 そして後半。化身の使い過ぎにより隼総が倒れ、担架で運ばれて試合を離脱。代わりに入ってきたのはシードでも無い普通の選手であり、天河原の戦力は絶望的とも言える状況だった。

 しかし、天河原が最後まで勝負を棄てることは無かった。キャプテンの喜多を中心に攻め上がっては気迫の籠ったシュートを撃ち込み、雷門ゴールを何度も脅かした。

 しかし、気迫だけで勝てるほど勝負の世界は甘くない。俺はそれらのシュート全てを正面から受け止めて前線へと送り、後半でさらに5点の追加点を挙げることに成功。

 最終的に、8対0という圧倒的なスコアで雷門イレブンはホーリーロード第一試合に勝利した。

 

 

「やりましたよ、三国先輩!

 俺、新しい必殺技を身につけたんです!」

 

「【マッハウインド】……だったよな?

 速さがあるし、何よりシンプルだから色々と応用が効きそうな良い技だと思うぞ。おめでとう!」

 

「ありがとうございます!!」

 

 因みに5点中1点はこの天馬の必殺技だ。元々あった必殺シュートの構想に、南沢のソニックショットと隼総の化身シュートのイメージを合わせる事で完成したのだとか。

 え、何を言ってるのこの子。そういう0から必殺技を生み出す工程って普通はもっと膨大な時間が掛かるものじゃないの?

 というか、【マッハウインド】の習得ってもう少し後のイベントだった筈なんだけど……どういうことだってばよ?

 

「南沢も倉間もお疲れ様!

 2人は2点ずつの得点だったよな?」

 

「ええ、ハットトリックを逃したのが悔しいです。

 三国さん。俺、今日のサッカー楽しかったです。もっとやりたい、なんて思ってしまいました」

 

「……!! それって、つまり?」

 

「俺も腹を決めました。俺も皆と一緒に本当のサッカーを取り戻す為に戦います。最後まで俺達のゴールを預けますよ?」

 

「あぁ。ゴールの事は心配するな!!」

 

 散々ネタにされて来たこの台詞も、今の俺なら胸を張って言える。でもそれは、「俺Tueee!」などといった自己中心的な慢心から来るものじゃない。

 俺の背後には守るべきゴールがあり、俺にはボールを預けられる仲間がいる。それだけで不思議と力が湧き上がってくるのだ。

 

 ……あぁ、そうか。これが「サッカーが楽しい」って事か。

 今まで、サッカーの楽しさとは「目標に向かって努力している間に味わう充実感」のことだと思っていたが、どうもそれだけでは無かったらしい。

 

「ふふっ随分と懐かしい気がしますね、円堂さん?」

 

「あぁ。時代が変わっても『サッカーをやりたい』『サッカーが楽しい』って気持ちは変わらない。

 そんな思いを抱えたヤツらが集まるのがこの場所(雷門中サッカー部)だからな」

 

 春奈と円堂の会話はイナズマキャラバンのエンジン音に阻まれ、車窓から見える夕陽の様にゆっくりと消えていった。

 




 
 お読み頂きありがとうございます。
 天馬世代は無印と違ってチームがバラバラだったり、熱血スポ根味の薄いキャラが多かったりで難しいですな……
 時空最強編までの構想は固まってるんで、なんとか頑張ります。

 あと、本気で悩んでいるのでアンケートに答えてくれると助かります。どうぞ宜しくお願いします 

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