ハーフタイムが始まってすぐの雷門ベンチは霧野を案じる者、剣城に怒りをぶつける者、後半戦に向け思考を巡らせる者の三つに分かれ、混沌を極めていた。
しかし、その状況を収めた者がいた。
「皆!この試合に勝ちたいか!」
『おう!』『当たり前だ!』『勿論です!』
三者三様の返答を聞いて、円堂が浮かべたのは笑みだった。
「だったら、一人でボールを追うんじゃない!全員でボールを追って、全員でゴールを目指すんだ!」
「しかし、ボールが取れないことには!」
「後半も俺はボールを奪うぜ。奴らを潰すのに、敵も味方も関係ねえ」
「コイツが封じられたら何も出来ないド!」
「いいや!出来るさ!」
車田が反論し、剣城が煽り、天城が怒りを露わにするも、円堂はその言葉を明るく否定する。
「1人で無理なら2人で!
2人で無理なら3人で!
それでも無理なら11人で!!
皆で力を合わせれば、サッカーで出来ない事なんて無いんだ!」
「後半は11人全員でボールを奪いに行く……って、本気で言ってるんですか!?」
「フォーメーションも崩れますし、そもそもチームとして機能するかも分かりませんね……」
「それは最早、サッカーじゃねえだろ」
「子供の頃のボールの奪い合いみたいな感じ?」
神童が驚き、速水がネガティブな発言をし、南沢が冷静な突っ込みを入れ、浜野が分かりやすいイメージを共有する。
それらを聞いた円堂は満足気に頷いた。
「そうだ、サッカーの形は一つじゃない。
チームの皆でボールを追いかけて、チームの皆で一つのゴールを目指せば、それはサッカーなんだ!」
「なんか深い言葉だね」
「うん。本当にそう思う」
「(うおお!今日の格言!!)」
「……!!」
西園と影山が頷き合い、三国は何処からともなくノートを取り出して円堂の言葉を一言一句違わず綴り、天馬は胸に手を当てて瞑目する。
そして、円堂は一際大きな声で言った。
「皆!サッカーやろうぜ!!」
『……!! 応っ!!』
「チッ……」
ある未来では悪魔の呪文と呼ばれた台詞。そして、かつてイナズマイレブンを甦らせ、エイリア学園の悲劇から多くの人間を救い、イナズマジャパンを世界一へと導いた掛け声。
雷門イレブンは全員胸の奥から広がる熱さを感じながら、剣城以外の全員で気合の入った雄叫びを上げた。
そして、ハーフタイムが明けた現在、前半とハーフタイム中の喧騒が嘘の様に霧散し、雷門イレブンはチームとしての纏まりを見せている。
その結束はさながら別チームであり、その強さは推して測る間でも無く比べ物にならない程、強い。警戒して然るべきと言えるだろう。
「今更束になったところで」
「前半と同じだ」
「お前らはこの後、何も出来ない」
「とっとと這いつくばるんだな」
しかし、悲しいかな。
万能坂イレブンは紛うことなき無知であった。
監督も選手もその全員が『前半と同じく剣城を封じ、雷門イレブンがプレーに集中を欠くまで粘る。そして奴らが油断したところで化身シュートだ。一度崩れたものは立て直せない。あとはもう一点取って俺達の勝ちだ』などと考えていたからである。
万能坂中は、この期に及んで雷門イレブンを舐めきっていた。それが命取りになると判断できるほど、彼等は勝負経験を積んでいなかったのである。
そして、試合再開のホイッスルが鳴る。
ボールは倉間から剣城へ。剣城は凄まじい速度で攻め上がるが、それを読んでいた磯崎と光良が中心となり、足止めにかかる。
「ふはは!馬鹿め!お前達、剣城を囲め!」
「ケヒヒ!」「ヒャッハア!」
「鬱陶しい奴らだ……!」
瞬く間に剣城の包囲網が完成し、万能坂は前半の如く剣城とボールを封殺する事に成功した。
……それが、雷門イレブンの仕掛けた罠であるとも気付かずに。
「今だ!行くぞ!!」
『うおおおおおおおおおお!!』
「な、なんだ!?」
「構うな!ここで奪えば得点だ!」
「おうともよ!」
神童の号令と同時に、フィールドの各所に散らばっていた雷門イレブンが全員各々のポジションを投げ捨て、雄叫びを上げながら剣城を取り囲む包囲網へと突撃していく。
「行くぞ!天城!!」
「おう!やってやるド!!」
最初に仕掛けたのは三国と天城であった。
体重100kgを優に超える天城の身体を三国がウェイトリフティングが如く頭上へと挙上し、天城の身体が更に何倍にも巨大化する。
「アイツらまさか……チッ!!」
「ボールが溢れた!今だ!」
「へへっ、馬鹿め!」
「一点頂きだぜ!」
「おっしゃあッ!!!」
「【メガウォール】!!」
『ぐわああああああっ!?』
剣城が回避運動に移った次の瞬間、なんと三国は巨大化した天城を包囲網のど真ん中に投げ込んだ。
その巨大な質量攻撃は包囲網に参加していた万能坂イレブン全員を吹き飛ばす規模の振動と衝撃を引き起こし、膠着状態を強引に破壊する。
「僕だって雷門の一員だ!車田先輩!」
「良いパスだぜ西園!神童!」
「繋げ、天馬!」
「分かりました!浜野先輩!」
「よっ、と。任せたよ、倉間!」
「あぁ、任せろ……!!」
衝撃波に乗って吹き飛ばされたボールは雷門ゴール側へと飛ぶも、西園信介が凄まじいジャンプで回収し、ヘディングで車田へとパスを送る。このパスは見事に通り、神童、天馬、浜野を経由して倉間へとボールが渡る。
キーパーと一対一になった倉間はボールを両脚で挟み、後方宙返りと共に空中へと打ち出す。必殺シュートの構えだ。
「【サイドワインダー】!!」
連続蹴りと共に撃ち出されたシュートは大蛇のオーラを纏って天河原ゴールを強襲する。
「【機械兵ガレウス】!!
【ガーディアンシールド】!!」
しかし、そのシュートが天河原のゴールネットを揺らす事は出来ず、天河原のゴールキーパー篠山が出現させた化身の必殺技によって弾き返されてしまった。
そう、弾き返されたのだ。本来【ガーディアンシールド】はキャッチ技である。つまり、倉間の必殺シュートは篠山がキャッチ出来る威力を完全に超えていた事になる。その事実は一瞬だが化身の使い手に動揺を生み、それをチャンスと見た男が溢れ球へと迫る。
「貰った……【ソニックショット】!!」
「まだだ!【ガーディアンシールド】!!」
「何ッ……!?」
南沢が音速の名を冠する必殺シュートを放ったが、天河原ゴールを守る化身がその出力を落とす事は無かった。流石はフィフスセクターにて選手強化プログラムを受けたシードであると言えよう。再び化身必殺技が繰り出され、化身の構えた盾にシュートが突き刺さる。
「惜しかったな!化身はまだ生きているぞ!」
「あぁ、まだ生きてるさ。俺達のシュートもな!」
「何っ!?」
セーブを確信していた篠山へと、更なる追撃を仕掛けようと迫る男の姿があった。オレンジ色のキーパーユニフォームを身に付けたその男は、体に纏った烈風の上に炎を展開し、身体を捻り回転させながら跳び上がる。
「真【ファイアトルネード】!!」
「ぐっ!この、力……ぐわあああああ!!」
跳び上がった三国がボール越しに化身の構えた盾へと蹴りを叩き込むと、ボールは炎を纏って力を増す。力の均衡は一瞬で崩れ去り、化身ごと盾を砕いてボールはゴールへと突き刺さった。
後半3分、雷門が2点目を挙げた。
それからは一方的な試合展開となった。
万能坂は剣城一人ごとボールを封じることで試合展開を止めていたに過ぎず、雷門と万能坂では元々の力量が段違いなのだ。
「【ロストエンジェル】!!」
「【ガーディアンシーぐわあああ!!」
「【ソニックショット】!!」
「【バットアタあああああ!!」
「【サイドワインダー】!!」
「【バットアタっぐああああ!!」
「【マッハウインド】!!」
「駄目だ!化身じゃないと……うわあああ!!」
「【デスソード】」
「む、無理だ……」
「【ソニックショット】!!」
「もう嫌だあああ!!」
「【サイドワインダー】!!」
「た、助けてくれえ!!」
「【ソニックショット】!!」
「……か、勘弁して……」
「【ダッシュトレイン】!!」
「ぐわあああ!!」
「【ビバ!万里の長城】!!」
「ぎゃああああ!!」
「うおりゃあああ!!」
「へっ、何処狙ってるんだチビ!」
「【アインザッツ】!!」
「な、に……っ!?」
「【奇術師ピューリム】!
【マジシャンズボックス】!!」
「
「嘘だろ……化身シュートがただのキャッチで止められた……」
「そんなバカな……俺の化身が……」
『ここで試合終了のホイッスル!
最終スコアは10対0!雷門中が圧勝!
見事、ホーリーロード地区大会準決勝へと駒を進めました!!』
雷門イレブン全員を警戒せざるを得なくなった万能坂イレブンでは雷門イレブンの猛攻を防ぐ事や鉄壁の守備を突破する事など出来る筈もなく、ましてや怪物の守護が付いている雷門のゴールをこじ開ける事など更に不可能だった。
万能坂イレブンは雷門を潰すどころか、真っ当な超次元サッカーで純粋に負かされ、肥大化し過ぎた自尊心やらシードの誇りやら諸々を全て粉々に砕かれてフィールドを去って行った。
「皆!お疲れ様!良い試合だったな!
最後の一秒まで全員がボールを追いかけ、全員でゴールを目指した結果だ。これは俺達にとって大きな意味を持つ!
今日はゆっくり休んで、明日からまた特訓だ!」
『おおっ!!』
そして、多くの場所で多くの人とのサッカーを通じて本当のサッカーの辛さや険しさ、苦しさを経験してきた円堂守に、相手への遠慮や圧勝への呆れなどといった甘さは存在しない。
正にこの監督にしてこのチームあり、と言ったところだろうか。
「剣城。今日はありがとう」
「勘違いするな。俺一人の力で戦うより、テメーらを利用して戦った方が奴らを叩き潰せると判断しただけだ。次は俺がお前らを潰す」
フィールドの外で青春劇を繰り広げる剣城京介と松風天馬。サッカーで過去を拭おうとしている者とサッカーで未来を切り拓こうとしている者。彼らがコインの表裏のように息を合わせる様になるまでには、まだまだ時間が掛かるだろう……通常ならば。
彼らは忘れていた。その状況を一人で破壊する悪魔のようなブロッコリーが彼らの側にいることを。
「にしても俺達って強くね?」
「ああ、少なくとも地区大会は敵無しだ」
「ガハハ、勝ったな。牛丼食ってくるド」
「油断するな。ホーリーロードは始まったばかりだぞ」
「去年より強くなってるのは俺達だけじゃないからな」
「ええ、緊張を保ちましょう」
雷門イレブン……彼らは気付いていない。
原作にて四面楚歌の状況故に乗り越えざるを得なかった試練を自分達が体験しておらず、精神面で脆くなっているという事を。
その試練を尽く破壊した鬼神の如き男が、雷門イレブンに原作よりもずっと大きな試練を呼んでしまったという事を。
「スーパーの特売日は明日だっけか。
雷門中に寄って特訓してから帰るか」
そして、三国太一は知らない。
スーパーの特売日は明日ではなく今日であり、後に慌てて走って向かう羽目になるという事を。
何より、少し先の未来の自分がとんでもない事をやらかしてしまい、更なる原作破壊を生んでしまうという事を。
嵐の前の静けさの如く、空はどこまでも青く澄み渡っていた。
円堂世代の方が絶対に描きやすい筈なのに、何故イナゴ世代を書こうと思ってしまったのか。
マネージャーと音無先生の存在感が薄いデスネ。イナゴってマネージャーが絡むイベントが少な過ぎません?
ギャラクシーで葵→天馬の恋心が見えるくらいじゃないですかね。
春奈は鬼いちゃんが来るのを待ってもろて。
GO3どうする?
-
宇宙大会編やれ
-
世界大会ifでどうぞ