カイドウがウィーネを娘にするのは間違っているだろうか?   作:リーグロード

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カイドウの小説が増えて欲しい!ダンまちがアニメ化!この2つの影響で書き始めた見切り発車な小説です。
まだまだ書き上げなければいけない小説があるというのに、テンションと勢いで書き上げてしまったので投稿しますた(笑)


転生したら竜女が娘になった

 ある日俺達は転生した。

 

 前世の記憶は全員が令和の日本で終わりを遂げたというのが共通点だった。

 全員といっても4人だけだが、4人とも気がつけばどこぞの王国の孤児院に子供の姿でいつの間にか転生を果たしていたというだけだった。

 神様に会った覚えもなければチートを授かったという感覚もなし、全員変わらずそこら辺にいる一般人と前世の記憶を持つという点以外では何一つ変わらない存在だった。

 

 不満はある。悲観もした。だが、絶望はしていない。

 前世にあった物すべてを失ってしまったが、命はまだある。今日を乗り越えられる肉体だって存在している。

 

 それに何より仲間がいた。同じ前世を持ち、何より好きを共有できる友になれると断言できる者達。

 そう、転生者は全員漏れなくワンピースに登場する敵の百獣海賊団のファンでもあった。

 

 

 ♦

 

 

 

「ウォロロロォォ! それにしても、まさか転生するだなんてな」

 

「「「…………」」」

 

 1人特徴的な高笑いしながら空を見上げ、地面に転がる同士に同意を求める言葉を投げかけるが、3人共屍のように返事を返そうとはしなかった。

 

「あん? まだ寝てんのかよ。さっさと起きやがれ!!」

 

 体中のあちこちを傷だらけにした()()()()()()()()()()()の3人は()()()()である俺の叱咤を受けてようやくノロノロとゾンビみたく緩慢な動きで起き上がる。

 

「ぐっ、こんな傷だらけにした張本人が言う台詞じゃねぇな」

 

「まったくだ! っと同意してぇとこだが、そもそもの原因はお前がカイドウさんに喧嘩を吹っ掛けたのが始まりだろうがバカキング!」

 

「だが、これで俺らのリーダーはやっぱりカイドウさんで決まりだな」

 

 何故この3人が傷だらけになって倒れていたのかと言うと、彼らは自身が目覚めた孤児院の神父から自身の名を聞いて驚愕した。

 そして、自分以外にもあのワンピースのキャラの名を持つ者がいると知って出会ってみれば、全員が自身と同じ日本人の転生者だという。

 

 そうなれば、カイドウの名を持つ男が「なら、今日から俺様がキャプテンだな」と言うと、キングの名を持つ男は「ふざけるな。言っておくが俺は自分よりも弱い奴に従う気はない。特に、法治国家でないこの世界ならな」と反発したのきっかけに、クイーンの名を持つ男も「ムハハハ! 確かにそりゃそうだ。俺様もその意見に賛成するぜ!」と参戦を始める。

 残ったジャックの名を持つ男は2人と違ってカイドウの意見を否定せず、争うことに消極的ではあったが、流石に戦いもせず負けを認めるという性格でも無かった為に大人しく3人の喧嘩に割って入った。

 

 結果、早々に倒れたのはジャックであり、キングとクイーンの2人から態度が気に入らねぇという理由で一時期に共闘されて一番にノックダウンさせられた。

 次に倒れたのはクイーンで、キングの攻撃をガードしきれずに吹っ飛ばされた所をカイドウの怒涛の連撃により地面に沈められた。

 最後に残ったキングも勢いに乗ったカイドウの攻撃を受けきることが出来ず、最後には渾身のラリアットによる一撃を顔面で受けてしまい宙を一回転して意識を失った。

 

 そして、最初のカイドウが問いかける場面に続く──―

 

「それにしても、転生したはいいがここは一体どういった世界なんだ? 魔法ってのがあるのは耳にしたが、それを使えるのはエルフのみって話じゃねぇか」

 

 目覚めたこの世界が前世と違ってファンタジーな世界というのは理解したが、転生にも2種類あるのは知っている。

 まったく未知の知らない異世界と二次創作と呼ばれる前世で有名な小説の世界へ行くというものだ。

 

「それなら俺が知ってますよカイドウさん」

 

 カイドウの質問に答えたのはジャックで、どうやらジャックはこの世界がどういったものなのか知っているようだ。

 

「ほう。そいつはいい早速教えろジャック!」

 

「ええ、ここはライトノベルでも有名な作品、ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか? の世界です」

 

「あっ、それ俺も知ってる! 確かロリ巨乳のカッワイイ女神ちゃんが出てくるやつだろ。アニメだけなら俺も見たぜ!」

 

 どうやらクイーンも知っているようで、カイドウとキングは内心『なんだその妙に長ったらくてバカみてぇなタイトルは?』と首をかしげていた。

 

「そうか、知ってる奴が2人もいるなら情報の食い違いや記憶違いが起きてもある程度は対処できそうだな」

 

「だな。とはいえ、クイーンのアホはアニメしか見てねぇんだろ? それがどこまで役に立つかは疑問だがな」

 

「んだと!? 何にも知識のねぇ無能キングに文句を言われたくねぇんだよ!!」

 

 原作と同じ様にキングとクイーンの仲は最悪のようで、相手を先程の喧嘩でもキングはクイーンを吹っ飛ばしたからクイーンを下に見ており、クイーンは不意を突かれたからカイドウに負けたが、そうでなければキングと違って相打ちにまで持って行けたと考えているのでキングを下に見ている。

 互いに互いを下に見ているせいで喧嘩腰になっているのをカイドウも理解はしているが、わざわざ自分が仲裁する義理はねぇし原作もこんな感じだからいいかと黙認している。

 

「それでジャック、この世界がテメェの知っている世界なら、ここで一番面白れぇ場所は何処だ?」

 

「それなら簡単だ。世界の中心であり、この世界の舞台となっている場所。モンスターが湧き出る最悪のダンジョンが唯一存在する迷宮都市オラリオだ!!」

 

 

 

 ♦

 

 

 迷宮都市オラリオには様々なファミリアが存在する。その数は地上に降り立ち眷属を持つ神の数だけ存在する。

 そんなファミリアにもランクは存在する。それは所属する眷属の数や作り上げた実績で決まるが、大抵の場合は所属する眷属のレベルによるもので決定される。

 

 本来の原作でのオラリオでは最強派閥とされる2つのファミリア、ロキファミリアとフレイヤファミリアの眷属はロキの団長が6、フレイヤの団長が7といったレベルの持ち主であった。

 この世界ではレベルが1つ違えば勝つのは困難とされており、故にオラリオで唯一のレベル7であるオッタルは都市最強の冒険者と称えられていた。

 

 だが、この不純物たる転生者が混じった世界ではレベル7は最強にはなりえなかった。

 

 現在のオラリオで最強のファミリアは? と聞くと、誰も彼もが一切迷うことなくこう言うだろう。

 

「最強のファミリア? そんなの決まってる。あの怪物どもがいるケルヌンノスファミリアさ!」

 

 それはロキとフレイヤのファミリアよりも隔絶した強さを誇る1人と3人の神すらもが化け物と呼ぶ存在が所属するファミリア。

 

 その誕生までをまずは語るとしよう。

 

 

 カイドウら4人は孤児院から抜け出し、子供4人で迷宮都市オラリオへ向かって旅に出た。

 これはなにも無鉄砲さからくるものだけではなかった。ジャックが言うには、この世界では神からの恩恵であるファルナを刻み込まれる事が強くなるための第一歩だそうだ。

 それさえあれば、例え貧相な見た目をした者でも恩恵(ファルナ)を刻まれていないプロレスラーにさえも力で押し勝てるという。

 

 それを聞いたカイドウによる「なら、大人になるまで鍛えて待つより、さっさと神から恩恵(ファルナ)を貰って強くなったほうが効率はいいじゃねぇか!」の一言でオラリオに旅立つことが決定した。

 

 道中は危険で溢れていたが、前世でカイドウは総合格闘家、キングは元プロボクサー、クイーンはテロリスト、ジャックは不良警察官と荒事のスペシャリストのような存在が4人もいた為に、なんとか無事にオラリオまで辿り着くことが出来た。

 

 とはいえ、子供4人だけの──―それも一文無しの旅で汚れた格好をしたガキを受け入れるファミリアなんてどこにもなかった。

 中には馬鹿にして笑ってくる者もいたが、そういう奴らには喧嘩を仕掛けてボコボコにした。だが、すぐに立ち上がられて返り討ちにあうことが大半だった。

 

 これで恩恵(ファルナ)を持つ者と持たざる者の差というのを痛感したカイドウら4人は、生きる為にスリや万引きなど犯罪に手を染める。

 元々素行の悪い前世を歩んできた4人だ。これくらいは罪悪感も抱かずに簡単に実行してみせた。

 

 それから、表から裏の世界へと移り変わった時、ようやく自分たちを受け入れてくれるファミリアに出会えた。

 それが狩猟の神にして冥府神とも呼ばれているケルヌンノス神が立ち上げたファミリアであった。

 

 ここで語らなければならないのはケルヌンノスファミリアが表ではなく裏の世界で活動するファミリアだということ。

 それすなわち、所属する眷属たちの性格は善性ではなく悪性寄りのもの。例え加入したのがガキであろうと使える者は容赦なく使っていく考えの者が大半だった。

 

「ケッケッケ、テメェらが新しくウチに入った生意気なガキ共か。聞いた通りクソ生意気な顔と魂をしてやがる」

 

 気味の悪い笑い声をあげるのは、2本の角の飾りを付けた白い獣の皮のコートを羽織ったケルヌンノス神だった。

 そんな神からの評価にイラついた感情を隠そうともせず、本音をぶつけるカイドウ。

 

「チッ、いいか俺たちはテメェを神として敬いもしねぇし崇めもしねぇ。俺たちが興味のあるのは恩恵(ファルナ)のみだ!」

 

「カァ~、最近の下界のガキ共は礼儀がねぇな。だがいいぜ。その生意気さは気に入った。精々折れずに強くなるんだな」

 

 ケルヌンノス神から恩恵(ファルナ)を授かった4人は早速冒険に向かおうとするが、先に待ち受けていたのは先達である冒険者からの洗礼であった。

 

「よぉガキ共、恩恵(ファルナ)を貰って早速ダンジョンに出発か?」

 

「偉いなぁ~。でもよ、あんまし調子に乗ってると痛い目に会うぜ」

 

「例えば、俺らみたいな極悪人からな!」

 

 そのままダンジョンへ行く前の訓練と称してレベル2の冒険者2人とレベル1の冒険者5人VSカイドウら4人による模擬戦闘が始まった。

 

 当然、恩恵(ファルナ)を授かってすぐのカイドウたちが勝てる筈もなく、レベル1の5人をダウンさせることは出来たもののレベル2の2人には完膚なきまでにボコされたカイドウらは床に転がされ、手当てを受けることなく壁際まで蹴飛ばされる始末に怒りを覚える4人。

 

「クソったれが、何が訓練だ。ようは力の差を見せつけて心を折ろうとしただけじゃねぇか……」

 

「それでどうするカイドウさん? このまま黙って奴らに泣き寝入りする気か?」

 

「冗談じゃねぇぜキング! 俺はあの野郎どもにいいようにやられて泣き寝入りなんざ死んでも嫌だぜ!!」

 

「ウォロロロォォ! クイーンの言う通りだ。だが、今の俺たちは弱い! そこは履き違えちゃなんねえ。それを認めることすら出来ねぇ弱者は理想を口にする資格すら持たねぇ……」

 

 傷だらけの体で無理して立ち上がるカイドウはそのままケルヌンノス神の元に戻っていく。

 

「ケッケッケ、随分と早い帰りだな。っで、どうしたんだ?」

 

「御託はいい。俺のステータスを更新しろ!」

 

「おいおい、こんな短時間で急に成長するほど神の恩恵は甘くはねぇぞ」

 

「うるせぇんだよ! いいからとっとと更新しろってんだ!」

 

「ったく、そんじゃお望み通り更新してやるが、結果に対して騒ぐんじゃ……っおお!! んだこりゃ?!」

 

 背中に記したステータスが驚くような数値を叩き上げていた。更に、他じゃ見たことも聞いたこともないスキルが3個も発現しており、ケルヌンノスも思わず声をあげて驚く。

 

「ケッケッケ、こりゃ随分と派手な冒険をしてきたんだな」

 

「馬鹿言うな。あれを冒険なんて呼べるか。……ただ、とりあえず気に入らねぇぶっ飛ばす相手を見つけただけだ!」

 

 殺気を放ちながら言い放つカイドウに、久しく見る下界の可能性を秘めていると思ったケルヌンノスは笑って「ならやってみせろ!」と背中を叩いた。

 

「ああ、だがそれをやるのは俺だけじゃねぇぜ。おい! お前らもさっさとステータスを更新させとけ、俺は早速ダンジョンに向かう」

 

 それだけ伝えるとカイドウはダンジョンへ向かって行った。

 

「……っで、お前らもあの馬鹿の後を追うのか?」

 

「「「当然だ!!!」」」

 

 カイドウと同じく傷だらけの体でありながら、キング、クイーン、ジャックの目は猛る猛獣の如くギラギラと輝きを放っており、我先にとケルヌンノスにステータスの更新を強請(ねだ)る。

 

 その数日後、ダンジョンから帰ってきたカイドウたちは持ち帰ってきた天然武器(ネイチャーウェポン)を片手にステータス更新を済ますと、早速お礼参りとして前回訓練に参加したレベル1の冒険者5人を吹き飛ばし、レベル2の冒険者2人をカイドウが片方を相手し、キング、クイーン、ジャックが残った片方を相手した。

 

「クソッ! なんだコイツらは!? この間とはまるで別人じゃねぇか!?」

 

「ウォロロロォォ! オメェらは強かったぜ。ただし、数日前の俺よりかはという話だがな」

 

「ぐっ……、チキショウが……」

 

「こっちは終わったぜカイドウさん。3人がかりとはいえ、流石はレベル2といったところだ。あんたもさっさと終わらしちまいな」

 

 キングたちが戦っていたもう1人の相手の方は、ボロボロの血だらけになっていてとても戦闘を続けられる状態じゃなかった。

 

「なっ、ガルマ! テメェらガキ共が調子に乗ってんじゃねぇぞ! こんなことしてウチのファミリアの上の連中がどういった行動を起こすか分かってんのか!?」

 

「ウォロロロォォ! それがどうした。テメェらが俺たちに歯向かってくるんならその度に返り討ちにしてやるよ! だからテメェもとっととくたばっちまえ!!」

 

「しまっ──―」

 

『雷鳴八卦』

 

「ガァハッ!!!??」

 

 カイドウの強力な攻撃は手にした天然武器(ネイチャーウェポン)も耐え切れず、相手ごとバキバキに粉砕して壊れていった。

 カイドウ含むキング、クイーン、ジャックの4人、冒険者として恩恵(ファルナ)を得て半月以内でレベル2を討伐する。

 

 これが後にケルヌンノスファミリア内部で起こる争いの火種になるが、それはまた別の機会に語るとしよう。

 

 その後、カイドウたち4人は幾度もの敗北と勝利を重ね上げる。時には無惨に、時には圧倒的に、時にはギリギリの差で敗北を積み重ねようとも、カイドウを始めとする4人は挫折することなく、偉業を重ね上げてもなお止まることなく邁進し続け、やがてオラリオにおいて最も悲惨とも呼ばれる大事件で大暴れを見せつけ、『闇派閥殺し(イヴィルススレイヤー)』としてオラリオ全土にその名を轟かせた。

 

 そしてカイドウたちは成長を続け、やがてケルヌンノスファミリアの団長の座にカイドウが座り、その後ろを大幹部を大看板と言い換えさせたキング、クイーン、ジャックの3人が固める。

 今やカイドウのレベルは9、キング、クイーンはレベル8で、ジャックはレベル7とオラリオ最強を名乗るに相応しい実力を手に入れたのだ。

 

 ケルヌンノスファミリアは裏から表の世界へと進出し、その眷属の数も何十倍にも増やしていった。

 ダンジョンでの到達階層もオラリオ随一で、これは部下たちとの遠征から地上へ帰る途中での出来事だった。

 

「ウォロロロォォ! 今回の遠征も中々の成果だったなキング。だが、レベルが上がるほどとは到底言えねがな」

 

「それは仕方ないでしょう。カイドウさんのレベルはオラリオ最強の9だ。そんじょそこいら深層モンスターじゃ苦戦どころか相手にすらなりはしない」

 

「ムハハハ! だな。今のオラリオでカイドウさんの相手が出来る奴なんざ俺たちくらいか、ダンジョンの最下層クラスのモンスター、それか()()()()()()()()()って野郎位じゃねぇか?」

 

「ええ、作中でも確かレベル9はゼウスやヘラファミリアの団長のみだった筈です。やはり、ここからレベルを上げるなら黒竜の討伐がキーになるかと……」

 

 現在ケルヌンノスファミリアがいる階層は20階層。中層と呼ばれる場所で本来ならば油断して会話に花を咲かせる場所ではないのだが、彼らはそれが許される実力の持ち主だということだ。

 既に部下たちは先行していて、今回の成果をリヴィラの街で換金に向かっている。

 

 そんな中、ダンジョンが冒険者を殺す為に壁からモンスターを生み出してくる。

 

 誕生したのは中層の稀少種であり最強と呼ばれる竜種であるが、過去に竜女(ヴィーヴル)を幾度も倒してきたカイドウたちは目の前に現れたモンスターの違和感を感じ取った。

 いかに人型のモンスターといえどその顔は醜悪といった言葉が似合うほどに歪んでいる。だというのに、目の前に現れた今まで倒してきた竜女と違って可愛らしいと表現できるほどに人に近い容姿をしていた。

 

「バカな! いや、時期的には合うのか……」

 

 一番初めに反応したのはジャックだった。カイドウたち4人の中で一番この世界で起こる出来事に詳しい存在である彼が反応したということは、原作関連で重要なキャラだということを瞬時に判断したカイドウらは構えていた武器をしまい様子をみることにした。

 

「ジャックよ、テメェ1人で納得してねぇで今の状況を説明しろ」

 

「まったくだ。クイーンのバカと違って原作の知識が深いお前だからこそ出来ることだ」

 

「おう! キングのアホと違って原作小説を読んでるお前にしか分かんねんだからよ」

 

『さっさと説明しねぇかズッコケジャック!!』

 

 1人グズグズして考え込むジャックにキングとクイーンが口を揃えて怒鳴り散らす。

 

「うっ、すまねぇ。この竜女は原作で登場するキャラで、昔俺が話した異端児のうちの一体だ。主人公と出会ってストーリーを盛り上げるキーキャラです」

 

「ああ、なるほどな。確か高い知性や心を持つモンスターだったか。それで、コイツは放置でいいのかジャック?」

 

「恐らくは……、このまま放置していればきっと主人公と出会って物語は進むでしょう」

 

「え~、勿体ねぇな。こんなにカワイイのに放置かよ。なんなら俺が貰っちゃおうかな~」

 

「はぁ~、趣味が悪い筋ダルのことは放っておくとして、これが異端児か……」

 

「おい! キング、テメェ今俺のことを筋肉ダルマ略して筋ダルっつたか! あぁん!?」

 

「お前の特徴を捉えたいい言葉だと思うがな」

 

 ムムム! と喧嘩一歩手前までバチバチと火花を散らすキングとクイーンに竜女は「ひっ!」と怯えた声で後ずさる。

 

「おいテメェら! 喧嘩なら他所でやってこい。ここはダンジョンだ、場所なら何処でも空いてるだろうが!!」

 

「「…………うす!」」

 

 カイドウの叱咤に互いに顔を見合わせて大人しくこの場から去っていき、少し離れた場所から先程以上の口汚い罵詈雑言を飛ばしながら大きな戦闘音を轟かせていた。

 

「うみゅう……」

 

 Lv.2相当のポテンシャルを持つ竜女は離れた場所からの戦闘音を耳に拾い上げているようで、両手で耳を塞いで固まってしまう。

 

「はぁ、キングとクイーンの喧嘩が終わり次第、さっさと地上に帰って宴会するぞ。ソーマの用意もしておけよジャック」

 

「了解です。既にソーマファミリアに連絡は完了済みなので地上へ帰還次第すぐにでも宴会は開けるでしょう」

 

「ウォロロロォォ! そいつはいいぜ。流石はジャックだな」

 

 ジャックからの返事に、カイドウは満足そうにジャックを褒め称える。

 そのままキングとクイーンをさっさと回収せんと目の前に座り込む竜女を無視して行こうとすると、不意にカイドウの服が引っ張られる。

 

「あぁん?」

 

「…………1人にしないで」

 

 震えながら必死さを声に出し、去って行こうとするカイドウを引き留める竜女にジャックは慌てたように引き離そうとするが、それをカイドウが片手で抑える。

 

「……1人は嫌か?」

 

「……よくわかんないけど、誰もいないのは寂しい」

 

 まだ生まれたばかりの竜女にとって他者との繋がりというものはよく分かっていない。

 それでも、壁の中に埋まった時から自我を確立していた竜女は孤独の恐怖を知っている。

 

「……そうか、ならお前俺の娘になるか?」

 

「っ!!? カイドウさん!!」

 

「娘……?」

 

 カイドウからの提案にジャックは驚愕、竜女は困惑の反応を返す。

 

「正気ですかカイドウさん。異端児は今のオラリオじゃ一部の連中しか知られていない。原作でさえも俺の知っている知識じゃこの異端児の一件は問題の後回しという形で終わっている。それを娘としてなんてっ──―!!?」

 

 考えを改めさせるように説得するジャックに自身の武器である『八斎戒』の銘を付けられた金棒を突き付け、有無を言わせぬ迫力で睨み上げる。

 

「黙れジャック。この決定に不服があるならファミリアから去ることを薦めてやる」

 

「っ! そこまであんたがそいつに肩入れする理由はなんだ? あんたは決して善人なんかじゃ無いはずだ」

 

「……似てんだよ。声も仕草も、前世に残してきた俺の娘にな」

 

「っ!? ……そうか。昔あんたが時々言ってた帰りたいってあの言葉は──―」

 

「感傷に浸る時期はもうとっくに過ぎたと思ってたんだがな。存外俺も親バカだったのかもしれねぇな」

 

 柄にもなく物思いにふけるカイドウは、置いてけぼりとなっている竜女の頭を優しく撫でると、未だ娘というのが分かっていない竜女に分かりやすく「娘ってのは家族を指す言葉だ。一緒に笑って泣いて飯を食って寝る。そんな当たり前な幸せを送る存在になるってことだ。どうだ理解できたか?」と説明すると、「うぅ~ん? よく分かんないけどなんとなく分かった!」と元気よく返事を返した。

 

「っは、ならこれからもっとよく知っていけばいい。そういや俺の娘になるなら名前が必要だな。……おいジャック、コイツの名前は何だか知っているか?」

 

「ウィーネ。それが彼女の名前です」

 

「そうか。よし! お前は今日からウィーネだ。それがお前が名乗る名だ!」

 

「ウィーネ、っっ私ウィーネ! えっと、ならあなたの名前は?」

 

「あん? 俺か、俺の名前はカイドウ。そしてこっちがジャックだ! それとお前は俺の娘になったんだ。だから俺を呼ぶときはお父さんもしくはパパとでも呼べ」

 

「う~ん、分かったパパ!」

 

「っぶふ!」

 

 ウィーネのパパ呼びにジャックが溜まらず笑いを噴き出してしまうが、その後にカイドウの一撃を貰ってダウンした。一応タフさが自慢のジャックはふらつきながらも立ち上がると、カイドウから向こうでまだ暴れているキングとクイーンを連れてこいと指示を受けて迎えに向かった。

 

「えぇ~! 俺らが喧嘩している間になにがあった!?」

 

「こいつは驚きだな……」

 

「…………」

 

 喧嘩を終えて戻ってきた2人の目に飛び込んできたのは、無邪気に喜ぶウィーネと、そのウィーネを肩車するカイドウの姿だった。

 この場を離れる前の会話ではあの竜女は主人公に任せて放置という結論が出ていたというのに、戻ってみれば親子かと問いたくなる程に懐いている竜女とカイドウの姿に、目が飛び出るほどに驚くクイーンと静かに驚愕するキングに無言でその反応も仕方ないと頷くジャック。

 

「おう! 戻ったかお前ら、早速だが今日から俺の娘になるウィーネだ。ほら、自己紹介しろ」

 

「はーい! えっと、初めまして。パパの娘のウィーネです!」

 

「「…………」」

 

 ポクポクポク、チーン! 

 

「ええええええぇぇぇぇ!!? カイドウさんの娘とか噓だろぉぉぉ!?」

 

「というよりも、相手は異端児だぞ。ウチのファミリアで匿って生活させる気か?」

 

 一瞬カイドウの言葉とウィーネの自己紹介を理解しきれなかった2人は脳内で情報を処理、そしてようやく理解し終えるとクイーンは絶叫、キングは至って冷静に今後のウィーネの対応を問う。

 

「うみゅう! うるさい……」

 

「おい! 口を閉じろグラサンダルマ!」

 

 ウィーネがクイーンの大声に若干涙目で耳を塞ぐと、カイドウが怒りを覚えて普段使わない罵倒をクイーンに叩きつける。

 

「うぇ、カイドウさんから久しぶりの罵倒は結構効く!」

 

「当然だろう。このバカクイーンが、お嬢がテメェのだみ声で耳を押さえてる」

 

「んだと! ってか、早速のお嬢呼びとか適応力高すぎか!!」

 

「あははっ!」

 

「「ぬぅ…………」」

 

 もはやコントじみてきたキングとクイーンのやり取りを見てクスリと笑うウィーネの姿を見て、流石にこれ以上の醜態を晒すのは大人としての面目もあるので取り敢えずは止めにする。

 その後、口喧嘩もようやく終わったところで18階層へ向けて歩みを再開する。

 

「まったく。ガキの目の前でワーキャーと喧嘩しやがって、だがまあいい。1つだけお前らに言っておくが、俺は娘を自由に育てるつもりだ。誰にも文句は言わせねぇ」

 

「っ! それは…………いや、あんたにならその権利はあるか。この街最強のあんたにならな……」

 

「まあ、面倒なことも増えるが、俺らに楯突く奴らも少なくなってきたしな。久しぶりに見せしめも悪くねぇか」

 

 キングとクイーンもカイドウの意見に賛成する。

 

「……?」

 

 まだ生まれたばかりのウィーネはモンスターである自身が地上でどういった扱いをされているのか知らないため、カイドウたちが言っている言葉の3割も理解出来てはいないが、それでもなんとなく父親が娘を愛して守ろうとしてくれている。

 そんなカイドウの親としての父性を言葉ではなく心で感じ取った。

 

「ありがとうパパ」

 

「? どうした急に?」

 

「ううん、なんか急に言いたくなっただけ」

 

「? そうか、まあいい。っさ、もうすぐ着くぞ。ダンジョン唯一の街『世界で最も美しいならず者の街(ローグタウン)』にな」

 

 薄暗い19階層を抜けて、迷宮の楽園(アンダーリゾート)と呼ばれる18階層の景色にウィーネは「ふわぁー」と感動の声を上げる。

 

 一足先にリヴィラの街に到着していた部下たちが入口で待ちぼうけていると、見張りをしていた部下の1人がカイドウたちの帰還を視認し、すぐさま地上への帰還の準備を整えろと声を上げるが、もう1人の見張りが「あれ? なんかカイドウさんの肩に誰か乗ってね?」と疑問の声を上げる。

 

 街へ到着したカイドウの肩に乗っていたウィーネの姿を見た部下たちは大声こそ出しはしなかったが、疑問に思った者の代表として最初にウィーネの存在に気づいた見張りの1人がカイドウに質問を投げかける。

 

「あ、あの……、カイドウさん。その肩に乗っている竜女は一体?」

 

「ああ、コイツか……。おい! 挨拶しろ、俺の部下たちだ」

 

「えっと、パパの娘のウィーネです」

 

 大勢に注目して見られているせいか、キングたちに自己紹介した時よりも恥ずかしがってカイドウの頭の後ろに身を隠しながら挨拶する。

 

「「「「「ええええええぇぇぇぇ!!! 本気ですかカイドウさん!! ってか、モンスターが喋ったぁぁぁ!!?」」」」」

 

「うみゅう! 耳が……」

 

 ドン!! 

 

「「「「「っ…………」」」」」

 

 ウィーネが部下たちの絶叫のような声に耳を塞ぐと、カイドウが殺気を込めた視線と手に持った金棒を地面に叩きつけることで部下たちを強制的に黙らせる。

 

「質問は受け付けねぇ。文句があるならファミリアから脱退することを薦める。選択するのはお前らだ!!」

 

 カイドウの有無を言わせぬ言葉の迫力に黙りこくってしまう部下たちだったが、誰一人としてこの場から立ち去ろうとする者はいなかった。

 それどころか──―

 

「お、俺はカイドウさんについていきますよ! モンスターを娘にしようが文句はねぇ!」

 

「俺もだ! あんたの強さに憧れて後ろをついてきたんだ。今更別のファミリアなんかに鞍替えする気はねぇ」

 

「私もですカイドウさん。モンスターを娘にしようが私の居場所はこのファミリアです!」

 

 1人の声をきっかけに、この場にいた部下の誰も彼もがウィーネの存在を認める声を上げる。

 この騒ぎに何事かとリヴィラの街の住人も様子を見にくると、あのカイドウの肩に竜女が乗っており、更には娘にしたと公言したではないか。

 この事実は瞬く間に街中に広がり、すぐさま街を取り仕切っているボールスが急いで駆けつける事態へとなった。

 

「それで、一体どういうことか説明してくれませんかジャックさん」

 

「ああ……、だがここじゃなんだ。向こうで話すとしよう」

 

 ケルヌンノスファミリアでこういった事態に対処するのは大抵がジャックの役割だ。だからこそ、ボールスは団長であるカイドウではなく真っ先にジャックの方へ向かってゆき、事態の説明を要求する。

 その間、ウィーネはカイドウの部下たちに囲まれながらリヴィラの街を散策していた。

 

 勿論、その後ろにはカイドウが目を光らせてついてきており、もしウィーネに不埒な行動をしでかそうとする愚か者が現れでもすれば、指一本動かすよりも先にカイドウの金棒が襲撃者を襲うだろう。

 

 そんな異様な光景に、リヴィラの街で商いをしている歴戦の商人たちも店の宣伝をすることも忘れて呆然と見入ってしまう。

 

「わあー、ねぇパパこれ何?」

 

「ああ、これか。これはポーションって言ってな。傷を治す薬だな」

 

「じゃあこれは?」

 

「こいつはテントだな。野外で休息する際に使う簡易的な家になるやつだ」

 

 その後も好奇心の赴くままにアレコレと店に並んである商品を指差して質問していき、カイドウもそれを律儀に答えていく。

 その姿はどこからどう見て幼子と親の日常的なやり取りだが、片方は都市最強の冒険者、もう片方は竜女という違和感がいっそ腹を抱えて笑いたくなる程にシュールであった。

 

「これ綺麗!」

 

「なら買うか? おい、これ1つ。他に欲しい物はあるか?」

 

 ウィーネが興味を持って手に取った物はカイドウが取り敢えず買うという流れを見た商人たちは、モンスターであろうとも品が売れると判断し、我先にとウィーネに声掛ける。

 

「竜女のお嬢ちゃん。ウチの干し肉は絶品だよ!」

 

「こっちには丈夫なバックが売ってるよ。買った物はこれに収納しちまいな!」

 

「さあさあ、モンスターからドロップした宝石! 綺麗だろ、買ってきな」

 

 もはやちょっとしたお祭り騒ぎになってきた大通りに、ウィーネも大勢から矢継ぎ早に店の品を見せられてどうしていいか分からなくなってきていた。

 

「えっと、えっと……」

 

 パァァン! 

 

「「「「っ…………」」」」

 

 流石に街の中だったので金棒を振り下ろしこそはしなかったが、隠す気もない殺気と怒気を込めた手拍子に商人たちを黙らせる。

 

「ウチの娘を困らせるんじゃねぇ!」

 

「「「「「すんませんでしたぁぁぁ!!!」」」」」

 

 殺されると思った商人たちは綺麗な90度のお辞儀で謝罪の言葉をウィーネに伝える。

 

「えっとねぇ、皆が見せてくれた物すっごく面白かったよ。だから、謝らなくていいよ」

 

 花が咲くような笑みで頭を下げる商人たちに優しい言葉を投げかけるウィーネの姿はまさに純粋無垢な天使かと錯覚してしまう。

 

「パパも、私の為に怒ってくれるのは嬉しいけど、今のはやりすぎ! めっ!」

 

「うぐぅ……」

 

 いや、錯覚じゃなかった。彼女こそが天使だった。

 

 あの傍若無人を絵に描いたような存在であるカイドウに真っ向から立ち向かい、めっ! する可愛らしい姿とカイドウを黙らすその威光に人類は平伏せざるを得ない。

 

「おいおい、何の騒ぎかと思って来てみりゃ、本当に何やってんだお前ら?」

 

 ジャックからの説明を聞き終えたボールスはウィーネを神のごとく崇める仲間の姿に本気で困惑するが、それよりも話すことはあると何故かうなだれているように感じるカイドウに近づく。

 

「とりあえず、リヴィラの街の総意として俺らはあんたに逆らう気はねぇ。あんたがそこの竜女を娘にしようと文句を言う奴は俺が黙らす。けどよ、それが地上でも通用するかどうかは分かんねぇぞ?」

 

「ふん、ダンジョンの中だろうが地上だろうが関係ねぇ。俺たち冒険者は本来は自由な存在だ。それがギルドやらルールやらに縛られているのが可笑しいのさ、俺の邪魔をする奴は殺す! ウィーネ()に手を出す奴も殺す! それが正義か悪かなんざ関係ねぇんだよ!! 昔から知ってるよな? 俺の家族に手を出すバカ野郎どもの末路をよ!!!」

 

 都市最強のレベル9からの怒りの声を真っ正面から受けて、ゴクリと唾を飲み込む。

 怒りの矛先が自分ではないのは理解してるのだが、自身よりも圧倒的な生物的強者を前に今すぐにでも逃げ出したい気持ちに駆られるボールスだが、下手な行動はより最悪な結果を招くということを無駄に長い人生経験で理解しているからこそ動かない。

 

「そうかい。なら俺から言うことは何もねぇや……」

 

 内心早く地上へと帰ってくれねぇかな~っと考えてるボールスの願いに答えるようにカイドウ率いるケルヌンノスファミリアはリヴィラの街の住人から見送られ地上へと帰還する。

 

 




もっと詳しい過去の出来事とかは連載が続けばそのうち書くと思います。

とりあえず、主人公のベル君はしばらく空気です。

次回の過去編はどれがいい?

  • リヴィラの街
  • ソーマファミリア
  • ヘファイストス&ゴブニュ
  • 飛び六胞の誰か?
  • 港町メレン
  • テルスキュラ
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