カイドウがウィーネを娘にするのは間違っているだろうか?   作:リーグロード

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亀更新ですまぬ!


衝撃的報告

「はぁ……はぁ……はぁ……お前らもっと速く走れ!!」

 

「む、無茶言うなディックス! これ以上速く走れねえよ!」

 

 突如としてアジトに雪崩れこんできたケルヌンノスファミリアの強襲に、商品である筈の捕らえた異端児を全て捨てて全力の逃走をしているイケロスファミリア。

 

 後ろを振り向く余裕すらなく、ただ一刻も早くこの場から逃げ出さんと駆ける。

 その後ろに追ってくる者が1人としていなかろうと逃走以外の選択肢はない。

 何故なら、闇派閥と結託している現状であのケルヌンノスファミリアとの会敵はすなわち死を意味するのだから。

 

「くそぉ! なんでキングの奴がクノッソスに来やがるんだ!?」

 

 いきなり壁を破壊して現れたキングに愚痴を零しつつ、ディックスは地上を目指す。それは共に逃走する仲間の声の代弁でもあった。

 

 やがて地下から地上に出る出口に辿り着いたディックス達は所有する鍵を使用し、オラリオに帰還すると──

 

「あぁん? なんだよこれは……?」

 

「どうした? ディッ……クス……」

 

「噓!? 何よこれ!!」

 

 目の前に広がる景色にディックス達は困惑の声を漏らす。

 

 そんなディックス達にひっそりと近づいてくる存在が1人。

 

「待っていたぞ、ディックス」

 

「……誰だテメェ?」

 

 ディックス達を待ち伏せしていたのか、この秘密の通路の出入口付近で張り込んでいたであろう目元までフードを深く被った男が声を掛けてきた。

 

「って、そんな怪しいナリをしてんだ。聞くまでもねぇか……」

 

「話が早くて助かる。実は貴様に大切な話があって待っていた。

 あの御方からの言伝だ。耳をかせ──……」

 

 他の者に聞こえぬようにディックスに何やら耳打ちすると、次の瞬間、ディックスは目を見張る。

 

「──っ!? なるほどな……。このオラリオの現状はそういう……」

 

 男からの伝言を聞いたディックスは驚愕の表情を浮かべた後、すぐさま目の前の現状に納得する。

 

「道案内をしよう。俺の後についてこい……」

 

「へっ、いいぜ! さっさと俺達をあの御方とやらに会わせてもらおうじゃねぇか!」

 

 ニヤリと悪い笑みを浮かべたディックスはクノッソスを背にしてフード男の後をついていく。

 

 

 ♦

 

 

「…………っ、ここは?」

 

 目を覚ましたグロスの視界には真っ白な知らない天井が見えた。

 気を失う前までの記憶はある。あれからどうなったのか確認すべく起き上がろうとすると、それを察したように天幕の入り口からリドが姿を現した。

 

「おっ、本当に目を覚ましたじゃねぇか!」

 

「……リドカ。アレカラ一体ドウナッタ?」

 

「ああ、結論を言うとな、俺達は負けた」

 

「…………ソウカ、ダトシタラコノ待遇ハナンダ?」

 

 リドの口から敗北したという事実を告げられ、数秒ほど押し黙った末その言葉に納得した。

 だがそうなると理解できないことがある。今のこの現状だ。

 周りを見渡せば清潔さのあるテントの中のようで、自身の体を確かめてみれば傷痕1つとして無かった。

 恐らくは治療されたのだろうが、手足の拘束もなく見張りの者も存在しない。

 てっきり、奴らは自分達異端児を奴隷として捕えに来たのだと思っていたぶん、余計にこの待遇の良さに疑問を抱いてしまう。

 

「ん~あ~、なんつ~かよ、全部オレっち達の勘違いみたいだったんだわ。あの戦闘の原因は……」

 

「ハ?」

 

「つまりだな。同胞を攫ってたのは別の奴らで、あの人間達はオレっち達を仲間にする為に探してたらしいんだ」

 

「ソンナ話が信ジラレルカ!?」

 

 あの一方的とも呼べる戦いが勘違いの結果などと信じられる訳がなかった。

 ましてや、あの連中の目的が自分達を仲間にする為だなんて到底信用出来る筈もない。

 

 グロスは声を荒げてリドの言葉を否定する。それに対してリドも困ったような表情を浮かべて「だよなぁ……」と口にした。

 

 だが実際に今の話は事実であり、今の自分たちは彼らの仲間として傘下に下ったと話すとグロスは怒りと不信感、そしてほんの少しの困惑を見せて押し黙ってしまう。

 

「「…………」」

 

 気まずい沈黙した空気が流れたこの空間をどうしたものかとリドが話題を振ろうとしたその時だった。

 

「ムハハハ! なんだこの雰囲気は? 葬式会場かここは!?」

 

 喧しい笑い声をあげながらクイーンが現れた。

 

「キサマ!」

 

「おっと、やめとけよ。お前と俺様との力の差はとうに理解してるだろ?」

 

「グッ──」

 

 いきなりのクイーンの登場に睨み付けるグロスだが、クイーンからの静止の声に動けず前のめりの態勢で警戒するだけにとどまった。

 そんなグロスの前に遠慮なくクイーンが腰を下ろして座り込む。

 

「さて、そこにいるリドから話は聞いたな? 今日からお前らは俺達の傘下に入る訳だが、当然お前のようにウチに不信感を抱いている奴らや地上進出に不安を覚えている奴らもいる」

 

「ダッタラドウスル? マタ力尽クカ?」

 

「お、おい、グロス!」

 

 喧嘩を売るようなグロスの発言にリドは酷く慌てる。

 だが、そんな心配は無用とばかりクイーンはニヤリと口元を歪める。

 

「虚勢を張ってんじゃねぇよ。体がびくびくと震えてるぜ」

 

「ッ!?」

 

 無意識にグロスは圧倒的な格上であるクイーンの存在に怯えていた。

 だがそれも無理からぬこと、たった一撃で沈められた事実がモンスターとしての本能的な恐怖を呼び起こしているのだろう。

 

 そんな自分の情けない姿を見られたことに歯嚙みする。

 

「ムハハハ! まあ、安心しろよ。別にとって食う訳じゃねえさ、地上に行く行かないはお前らの好きにすれば良い。だが、ウチのファミリアの傘下に入ったからには仕事はしてもらうぜ」

 

「仕事ダト?」

 

「おう、お前らが住んでいたあの場所に俺達は第2のリヴィラの街を建設する! だからお前らには、その為の工事作業に取り組んでもらうぜ!」

 

「「……な……っ……!?」」

 

 街を作るというスケールのデカ過ぎる話に驚きの声を上げるリドとグロス。

 確かにあの場所は自分達が住処にできる程に広く大きい。それに加えて自分達が住んでいたこともあって他の場所よりも快適さはある。

 

「街ってあれだよな? あの18階層にある人間達が暮らしてるあの……」

 

「おうよ! まあ、この案を出したのは俺様じゃなくカイドウさんなんだけどな」

 

「へぇ、あの人がねぇ……全然想像つかねえな?」

 

 あの時現れたアステリオスよりもデカイ体の人間がそんな知恵を出せるとは信じられず頭を捻る。

 

「まあ、確かにあの人は大抵力尽くで物事を解決してくが、それをする前にちゃんと考えてたりするんだぜ」

 

「信じらんねえけど、やっぱし、ファミリアの団長ってそういうもんなんだな?」

 

「待テリド!? オ前ソノカイドウトヤラニ会ッタノカ?」

 

「え? そうだけど。って、そうか。お前気絶してたから見てねぇんだったな」

 

 いつの間にかリドがそのカイドウとやらに会っていたことにツッコミをいれるグロスにリドは軽く返す。

 

「そうか、そうだったな。なら俺様が会わせてやろうか? ま、ケルヌンノスファミリアの傘下に入るんだ、今後は嫌でも目にする機会はあるがな」

 

 そう言って出て行くクイーンの後を追うか迷うグロスの背を叩いてリドが立ち上がらせる。

 そうしてリドとグロスが天幕から出ると、そこには驚くべき光景が広がっていた。

 

 陥没する床と壁。傷だらけになった同胞に人間達。そして、その中心に立つのは山ほどにデカイ体をした大男だった。

 

「コレハ一体?」

 

「ああ、まあ驚くのも無理ねえはな……」

 

 隣にいるリドは驚いた様子はなく、ポリポリと頬をかいて「ははは……」と乾いた笑いをこぼす。

 本当にこの現状は一体どういうことなのかと問い詰めたかったが、それよりも先にこちらに気が付いた大男がこっちに向かってやって来た。

 

「ウォロロロォォ! 目が覚めたようだな。テメェがグロスって奴か……?」

 

「…………ッ!! ア……アア……!」

 

 目の前に立たれてよく分かる生物的強さの格差に声が震えてしまう。

 こうして返事を返すことができたことに自分でも驚くが、ここで震えていては駄目だと自分を鼓舞して気丈に振る舞う。

 

「ソレデ、オレニ何カ用ガアッテノ対面カ?」

 

「ああそうだ。クイーンやジャックからお前が恐らく地上へ行かない反対派の異端児達のリーダーになるだろうと聞かされてな。そこで俺が直々に仕事を依頼しようと思ったまでのことだ」

 

「アンタガ直々ニ仕事ヲオレニ……?」

 

 正直言って信じられなかった。そんな雑事と呼べるような事をこの目の前の男がわざわざ自分からするだなんて。

 そんなもの、そこいらにいる人間にでも任せればいいものをという思いが頭の中で渦巻く。

 

「この一件はダンジョン攻略において重要なものだ。すなわち、俺の野望の成就を早めることに繋がる。なら、俺が直接依頼するのがいいだろう」

 

「野望……ダト……?」

 

「ああそうだ! 俺は最強に焦がれ憧れる。この世界の住民共が俺を最強と認めるには2つの決定的な条件がある!!」

 

 1つは3大クエスト最後のモンスターである黒龍の討伐。

 それはかつてのゼウスとヘラのファミリアでも成し得なかった偉業の1つ。

 

 もう1つはダンジョン最下層の完全攻略。

 古代から続く人類とモンスターとの争いの歴史に終止符を打つにはこの2つの条件をクリアしなければならない。

 

 その2つをクリアした時、世界はそれを成し遂げた英雄こそを真の最強だと認める。

 

「だからこそ、俺が今回テメェらに任せる仕事の重要性は高え。分かるよな? これを成し遂げた時、お前らの評価は更に上がる」

 

「ウム……」

 

 考えれば考えるほどに双方にメリットしかないように思える。人間側はダンジョン攻略に必要な休憩地点が手に入り、異端児側は今後の保護価値が上がる。

 ここで意地の為に拒否してもデメリットしかないだろうとグロスは考える。

 

「それでどうする? この仕事を受けるのか受けないのか?」

 

 まだ自身に人間を信じる気持ちはない。

 だが、目の前の男が種族がどうだとかそんな小さな問題を気にしていないことだけはよく分かった。

 ならば、答えは決まってる。

 

「了承シタ。ソノ仕事ヲ受ケルトシヨウ!」

 

「ウォロロロォォ! そう言うと思ってたぜ! よ~し、お前ら起きろ! 今日はめでたい日だ宴を開くぞ!!」

 

「「「「……お、おお!!」」」」

 

 カイドウの宴宣言に先程まで倒れていた奴らがゾンビみたくノロノロと立ち上がり宴会の準備に走る。

 そこに人間も異端児も関係なく、ただ自分達に与えられた役割をこなす姿があった。

 

「何故ダ? 何故アイツラハオレ達異端児ヲ忌避シナイノダ?」

 

「そうだよな……。オレっちも最初はそう思って聞いてみたんだよ。そしたらなんて言ったと思う? お前らよりもウチの団長や大看板の方が恐ろしいから気にならねぇってさ」

 

「ナンダソレハ……?」

 

 リドの言葉には疑問しか浮かばなかったが、少し考えてあの男とクイーンとかいう奴の強さを考えれば確かに自分達よりも化け物で恐ろしいなという考えに至る。

 

「まあ、ここの連中は色々おかしな奴らだけどさ、オレっち達の敵じゃねえってことだ」

 

「フッ……マア、今ノ所ハソウダナ……」

 

「お~い、2人共! そんな所で油売ってる暇あるなら手伝って~!」

 

「おう! 分かった分かった」

 

「…………仕方ナシ」

 

 いつまでもここでボーっとしているのも忍びないので、リドとグロスも宴会の準備の手伝いに協力する。

 

 人もモンスターも互いに酒と肉を手に持って、中央のキャンプファイヤーを囲んで飲めや歌えのどんちゃん騒ぎに興じる。

 誰も彼もが笑っている。例外として人間に不信感を抱く異端児が隅で酒を飲んではいるが、リドや他の陽キャな異端児達が絡みに行っているおかげで気まずい雰囲気にはなってはいない。

 

「ウォロロロォォ! お前ら、酒は持ったか? 今日は俺達ケルヌンノスファミリアと異端児達との祝うべき運命の日だ!」

 

「「「「うおおぉぉぉ!!!!」」」」

 

 一体いつまで騒いだのだろうか? ダンジョン内でこれだけ騒げばモンスターの大群が襲ってきても可笑しくはないのだが、やってくるモンスターのことごとくがケルヌンノスファミリアの団員達の手によって魔石へと変えられていく。

 

 そんな光景を見せられて異端児達も驚きの声を上げるが、気の毒そうな顔でいずれお前らも強制的に似たようなことが出来るようにさせられると言われてしまう。

 本当に一体何なんだこのファミリアは? と戦々恐々とするが、今はそれよりも酒だと注がれて潰れるまで飲まされる。

 

 そして一昼夜が明け、宴に参加した者の大半が酔いつぶれて死に体ではいるが、団長であるカイドウの鬼の一喝でゾンビの如く立ち上がりノロノロと片付けに入る。

 

「よし、残りの後片付けは現場班に任せて俺らは地上に戻るぞ!」

 

 こうして、第2のリヴィラの街の建設の為の現場班と地上から物資を運ぶ運搬班に分かれて異端児達を連れてケルヌンノスファミリアはダンジョンを出る。

 

 現場班はリーダーにケルヌンノスファミリアからはジャックが、異端児からはグロスが選ばれ、物資が運ばれるまでの間、地形を地図に書き写し街の設計図を作成することとなった。

 

 運搬班はリーダーにはクイーンとリドが選ばれ、地上に戻り次第、木材に鉄を主として食料や建設機材を調達し搬入する流れとなっていたのだが──

 

「おい、俺は夢でも見てんのか?」

 

「いや、これは確かに現実だぜ、カイドウさん」

 

「ムハハハ! こりゃ、8年前を思い出す光景だな」

 

 ダンジョンから出るとオラリオの街が見るも無残な瓦礫の山と化していた。

 右を見ても左を見ても倒壊した建物で埋め尽くされ、辛うじて無事な場所もチラホラとあるようだが、今はホームへ帰ることが優先だろう。

 

 倒壊した建物を踏みつけながら一直線にホームである鬼ヶ島を目指して歩く。

 すると、視界の奥からこっちに向かって誰かが駆けつけてきた。

 

「だ、団長! 大変です!!」

 

 どうやら、俺達の帰還を知ったホームで待機中の団員の1人が走ってこのオラリオの現状を知らせに来たようだった。

 

「そんなもん。この惨状を見りゃ分かる」

 

「ち、違うんです! お嬢が……()()()()()()()()()()()()()!!」

 

 

「「「な、なんだってぇ──ー!!?」」」

 

 この日がオラリオを震撼させる大事件の幕開けとなることを世界は知ることとなる。

 




とあるショートストーリー

クイーン「さて、お前らには第2のリヴィラの街を建設する前にやらねばならぬことがある!」

リド「やらねばならぬこと……?」

クイーン「リヴィラの街の名前の由来はその創設者である女冒険者からとってある。だから、俺らが作る街は今のところ第2のリヴィラの街と仮称をつけちゃいるが、もっといい名前があんじゃねぇかってことよ!」

グロス「ナルホド、ツマリオレ達ニ名前ヲ考エロト言ウンダンナ?」

リド「っつてもな~、オレっち達にそんなの考えるのが得意な奴はいねぇし、もっとこう第三者の目線を持ってる奴の意見が聞きたいな(チラッ)」

クイーン「なるほど、俺様のエレガントな活躍を見てファンになった奴の意見とか採用するのは面白いな(チラッ)」

グロス「例エバ、ヨク分カランガ原作トヤラヲ知ッテル者ノ意見ハ参考ニナルナ(チラッ)」

クリグ「「「誰かそういうネーミングセンスのある奴はいねぇかな~?(チラッ)」」」

次回の過去編はどれがいい?

  • リヴィラの街
  • ソーマファミリア
  • ヘファイストス&ゴブニュ
  • 飛び六胞の誰か?
  • 港町メレン
  • テルスキュラ
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