カイドウがウィーネを娘にするのは間違っているだろうか?   作:リーグロード

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亀更新ながらによく頑張ってる方だと思わない?
もうちょっと文章能力を上げた方がランキング上位になるのか、投降頻度を上げた方が上位になるのか?

あと、毎度Rhdsgさんの感想にエネルギーを貰ってますぜ!ありがとうッス♪


ウォーロンが手加減状態で無双www

 ウィーネの行方不明という衝撃的報告を受け、急いでホームへと帰還するカイドウら一行を待ち受けていたのは土下座の状態でカイドウの帰還を待っていたウォーロンの姿であった。

 

「お嬢を守れず申し訳ない、カイドウさん」

 

「……立てウォーロン。此処じゃなんだ、場所を移すぞ」

 

 流石に今回のウィーネの行方不明という失態はあるものの、いつまでも幹部が他の団員の見ている前で情け無い姿を晒し続けるのは体裁が悪い。

 故に、ひとまず幹部のみが出入りを許される2Fの特別室へと場所を移す。

 

「それで、俺らがたった1日ホームを空けている間に何があった?」

 

「…………」

 

 本来ならば怒りに顔を歪めていてもおかしくない筈のカイドウが比較的冷静に事態の経緯を訊ねてくることに恐怖を覚えるが、口を閉ざし続けるのは不敬であるとオラリオに起きた出来事を説明する。

 

 

 

 あれはカイドウ達がダンジョンに遠征に出て半日が過ぎた頃だった。

 ウォーロンは故郷への支援の為に物資をまとめて送り届ける準備をしていた。

 

 ここで本来ならば厄介事を避けるためにウィーネはホームで留守番させるのが一番安全なのだが、父親であるカイドウと離れ離れになり、まだ精神的に子供であるウィーネにとって自身の好奇心を満たすような未知が沢山あるオラリオの街に興味を持つのは必然の事だった。

 故郷支援のために外出するウォーロンに駄々を捏ねて連れてけと騒ぎ立て、一応飛び六胞最強であるウォーロンの傍にいるならある意味ホームよりも安全では? との部下の言葉もあってウィーネの外出を認めて連れ出したのだが、そこで事件が起きた。

 

「キャアアア!!!」

 

 突如として市民の悲鳴が街中に響き渡り、警戒すると同時に黒い竜巻がオラリオの街に入ってきた。

 

 ゴオオオオオォォォオオオオッッッッ!!!! 

 

 それは1つだけでなく、複数の黒い竜巻が周囲に被害を出しながら一直線に()()()()()()()()迫ってきた。

 

「なんだあれは?」

 

 自然災害……の類ではない。ダンジョンでよく見る光景の1つ。人類への敵意がその黒い竜巻にはあった。

 ならばモンスターの攻撃か? しかし、あんな攻撃をしてくるモンスターに覚えは無かった。

 

「っち! お前らはお嬢を守れ! 俺があの黒い竜巻を始末する!」

 

 ウォーロンはすぐさま他の団員に指示を出し、最優先でウィーネの保護を命じる。

 このタイミングでの襲来、恐らく敵の目的はウィーネである可能性が高い。

 

 あれが人為的なものかどうかは分からないが、今はカイドウさんに任せられたウィーネを守らんと黒い竜巻を排除しようと武器を抜く。

 

「鬱陶しいんだよ!!」

 

 ウォーロン本来のダンジョン用の武装ではなく万が一の為の予備での武装と義手ではあったが、2本の双剣による斬撃が一瞬の間に黒い竜巻というヴェールを剝ぎ取り、中に潜んでいたモンスターの正体を白日の元へと晒す。

 

「やはりモンスターか。だがなんだこのモンスターは? 見たことがねぇな……」

 

「グオオオオォォォ……!!!」

 

「だが所詮はモンスター、倒せば灰となって終わるだけだ!」

 

 その言葉通り現れた黒いモンスターは一切の抵抗を許す間もなくウォーロンの双剣による連撃を浴びせられて灰と化した。

 

 しかし、現れた黒い竜巻はこれ1つだけではない。

 ウォーロンが1つを倒している間に、2つ3つと次々にここに集まってくる。

 

「お前ら、1撃を狙うな! 削るように攻めていけ! そんで何よりも、お嬢に一切近寄らせるな!」

 

「「「おおう!!!」」」

 

 だが、ここにいるのは都市最強のケルヌンノスファミリアの団員達。幾日も人外クラスの化け物である団長を始めとする大看板や飛び六胞にしごきを受けて強さに磨きをかける猛者たちだ。

 たかだか竜巻の1つや2つが攻めてこようが、即座に連携を組んで敵の排除を行う。

 

「グオオオオォォォ……!!!」

 

「よし、黒い竜巻が剝がれたぞ! トドメはウォーロンさんに任せて守りの陣形に入れ!!」

 

 勿論のことながら、背中に守るべきウィーネが控えている為、積極的に倒しにいかず自分達を盾のようにしながら黒い竜巻を相手取っている。

 そして、黒い竜巻が剝がれて本体が剝き出しになったところを速攻でウォーロンがトドメを刺していく。

 

「────っ!?」

 

「これで10体目か、何体いやがるんだコイツラは!?」

 

 狩り慣れてきたのか、ついには断末魔をあげる暇さえ与えることなく瞬時に灰へ変えていく。

 しかし、まだまだ現れる黒い竜巻に愚痴を零す。

 

 とはいえ、何体いようがそのことごとくがウォーロンと団員達の手によって倒されていく。

 このままいけば相手が全滅するまでウィーネを守り切ることは出来るだろう。

 

 そう、このまま何事もなければ……。

 

「あれがケルヌンノスファミリアか……。なるほど、飛び六胞もそうだが、一般団員の力も中々に侮れないな」

 

 その周辺で唯一無事な建物の屋上から男は眼前に広がる光景を前に、ケルヌンノスファミリアの戦力を測る。

 

「どうなさいますか?」

 

「今回のようなチャンスは多分もう2度と来ないだろうし、俺がウォーロンの相手をするから、お前らはあの竜女を攫ってこい」

 

「「「「はっ!」」」」

 

 白く濁った様な色のローブを纏った集団は男の命令に返事を返して即座に行動に移す。

 

「さて、偽物の悪党共の狼狽える顔を見れないのは残念だが、俺も悪党らしく卑劣に最低にいくとしようか……」

 

 トンと建物から飛び降りると、戦場の中心に降り立つ。

 

「っ!?」

 

「ハロー♪ 早速で悪いが君には俺の相手をしてもらうぜ、ウォーロン君」

 

 突然目の前に現れた飄々とした態度の白髪のヒューマンはバスターソード片手にニヤリと笑って立ち塞がる。

 

「テメェか? このクソみてぇな騒動を起こしたのは?」

 

「俺っていうか、神様が命じたって感じだけどね。ともかく、俺の相手をしてくれよ!」

 

 バスターソードを軽々と振り回しながらウォーロンに斬りかかってきた。

 そのスピードからしてLV5の中堅クラスかそこいら、パワーも恐れるほどではない。

 

「ウォーロン様!?」

 

「俺のことは気にするな! お前らはとにかくお嬢を守ることだけを最優先に行動しろ!」

 

 敵の襲撃に狼狽えることなく、目の前に突如躍り出たコイツをお嬢から遠ざけんと斬り合いながら場所をほどほどの距離まで引き剝がす。

 

 そして、斬り合うこと数合で相手の実力は把握できた。厄介なスキルや魔法でもあれば別だが、完全に実力は自分の方が上だろう。

 このままいけば1分と経たずに決着はつく。

 

「って考えてんじゃねぇか?」

 

「っ!? ちっ!」

 

 カチッ! と音が聞こえたと思えば白髪の男の服の内側から無数の棘が散弾のように飛び出してきた。

 それを舌打ちを鳴らしながら後ろに飛びながら全弾回避する。

 

「流石だな! 今のは大抵の奴らなら喰らうか避けられてもかすり傷程度は負うタイミングだったんだがな!」

 

 酷く愉快そうに笑いながら白髪の男はバスターソードを鞘に収める。

 この状況なら諦めたかと思うが、相手の目は余裕綽々といったもので、懐から短杖を取り出して装備を付け替える。

 

【遥か古代に存在せし原初の水から生まれ落ちた邪悪な大蛇】

 

「詠唱か!?」

 

【地の底より唸りを上げる怪物の脈動よ、一の魂。十の兵器。百の獣。千の兵隊。万の雄叫び。弱者の()を喰らいて腹を満たせ】

 

「させっかよ!」

 

 膨れ上がる魔力を前にウォーロンが詠唱を阻止せんと駆けるが、その前に3つの黒い竜巻がその行く手を阻む。

 

「「「グオオオオォォォ……!!!」」」

 

「このぉ……っ! 邪魔だぁぁぁ!!!」

 

 1振りで竜巻を削り取り、2振りで3匹まとめて横一閃に斬り飛ばす。

 その間僅か5秒足らず。

 

 しかし、その5秒は敵に距離を稼がせるのに充分な時間だった。

 

「奴は!? ……ちっ、やっぱり並行詠唱が出来るか!」

 

 邪魔なモンスターを倒した先には白髪の男はおらず、詠唱を続けながらそのずっと向こうまで逃げていた。

 

【強者の悪意(混沌)善意(太陽)を飲み込み、世界の秩序を(あざけ)り笑いて噛み砕く。有象無象の人間共に破滅の闇をもって喰らい殺せ】

 

 詠唱が完了し、短杖の先端に埋まった宝石が光輝いて後は発動を待つだけの状態となった。

 

「くたばれ!」

 

【アポピス】

 

 一陣の魔法陣が出現し、そこから魔力で出来た漆黒の鱗を纏った巨大な大蛇が現れた。

 

 アポピスとはエジプト神話に登場する怪物の1体であり、太陽神ラーにより太陽の地位を追いやられた、秩序が生まれる前に誕生した存在。

 故に、混沌を象徴し秩序を破壊する悪の化身として神話に描かれている。

 

 魔法で生み出された偽物とはいえ、エジプト神話にて太陽神ラーの最大の敵とされていた化け物。

 その鱗はそんじょそこらの冒険者の武器では傷1つ付かないどころか、逆に破損してしまうほどの硬度を持ちながら、大蛇の動きを一切阻害することはなかった。

 

 そして、その外見は心の弱い者が見れば発狂を起こしかねない邪悪さを持っており、巨大、硬い、怖いの3Kを持ち合わせていた。

 

 そんな大蛇が地面を抉りながらも、そのスピードは巨大ながらも術者よりも俊敏で機動性も高く、周囲の建物を破壊しながら縦横無尽にクネクネと蛇行しながら襲い掛かる。

 

「ったく、面倒くせぇ真似しやがって!」

 

 そして、ウォーロンは逃げる動作を一切見せず、双剣を構えて大蛇を迎え撃とうする。

 当然だろう、今ここで離れたらコイツは次にどうするか? 決まっている。ここから少し離れた場所にいる部下たちを殺してお嬢を連れ去るつもりだろう。

 

 部下たちも決して弱くは無いが、黒い竜巻に加えて推定レベル5のコイツや他にもいるかもしれない敵がいるかもしれないこの状況下で離れることは出来ない。

 だからこそ、この大蛇はここで始末してあの白髪の男も殺す。

 

「──」

 

 大蛇が暴れる音がデカすぎてウォーロンが何か口にしたようだが、その轟音にかき消されて口が動いたくらいしか分からなかった。

 

「ジュラララララッッッッ!!!!」

 

 地面を大きく抉りながら、術者とウォーロンの間にいた黒い竜巻も一緒に丸吞みにして大蛇はウォーロンを呑み込んだ。

 

「──ッ!」

 

 一瞬だけウォーロンが大蛇の口を双剣でこじ開けたが、すぐに力負けしたのか、そのまま大蛇の胃の中へと消えていくのが見えた。

 

「くっくっく、俺のアポピスに恐れず立ち向かったか。だが、仮にもエジプト神話最大の化け物を模した魔法だ。たかがレベル1つ違いの冒険者じゃソイツは止められなかったようだな?」

 

 大蛇が破壊し倒壊した建物の影響で大量の砂煙が発生して少し先の景色も見えない状態だ。

 とはいえ、ウォーロンがアポピスに飲み込まれたのは確実に見えた。

 

 アポピスの恐ろしさは術者である本人が1番良く知っている。その巨体から繰り出される突進攻撃はミノタウロスはおろか深層に生息するブラックライノスすら容易く轢き殺すことが出来る。

 更にその牙はアダマンタイトすら貫通し、胃の中の胃酸は第一級冒険者ですら溶かしかねない強力な酸で出来ている。

 

「さて、厄介者の始末も済んだし、残りの仕事もちゃっちゃと済ますとするか」

 

 生死確認もまだ済んでいないが、アポピスに吞み込まれたのだ。既に装備1つ残らず胃酸で溶けてしまっているだろう。

 

 そんな楽観的な考えが次の瞬間の生死を分けた。

 

 ブワッ! 

 

「──なっ!?」

 

「死ね」

 

 砂煙を切り裂いて現れたウォーロンが白髪の男の胸に剣を突き刺す。

 その位置は心臓の真上だった。そのまま奥まで突き刺すことが出来たらウォーロンの勝ちが確定しただろうが、ボロボロに消耗した剣の方が先に限界を迎え砕け散った。

 

「ちっ!」

 

「クッソがぁ!!」

 

 心臓に届く寸前で剣が砕け散ったことにより、辛うじて一命を取り留めた白髪の男は持っていた短杖で振り払う。

 その胸には未だ剣の刃先が突き刺さった状態のままで、ドクドクと赤い血が流れ続けている。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

 クソったれめぇ!? 一体何がどうなった? 俺は確かにウォーロンがアポピスに吞み込まれたのを確認した。

 あそこから生還する可能性は──!? 

 

 時間が経ち砂煙が風に流されて見えた先には、尻尾が無くなって無残に内部を切り刻まれたアポピスの亡き骸が横たわっていた。

 

「中々に斬りごたえのあるデカブツだったぜ! 俺も魔法を使用してなけりゃ脱出することは無理だったろうな」

 

 あの時、吞み込まれる寸前に口にしていたのは魔法!? それも短文詠唱による何か? 

 逃げずに呑まれたのは俺を殺す為の最短距離を走る為か!? 

 

「イカレてやがる!!」

 

「当たり前だ。俺達ケルヌンノスファミリアの飛び六胞がイカレてねぇ訳ないだろうが!」

 

 狂ったような微笑みを浮かべながら、残ったもう1振りの剣を天に掲げる。

 

【断罪せよ、我が罪は剣に宿りて敵を穿つ】

 

 ウォーロンの短文詠唱による魔法。それはアイズと同じ付加魔法(エンチャント)

 その効果は呪詛による斬撃の強化と敵の弱体化。

 

 自身の背負いし罪の重さに比例して呪詛はより強力になっていき、今のウォーロンの背負いし()ならばアダマンタイトすら切り裂くことも可能とする。

 

「ざけるな! カスがぁぁぁ!!!」

 

 牽制変わりに持っていた短杖を投げ捨てて、鞘からバスターソードを抜き放つ。

 

 がしかし、

 

「ぬるい」

 

 短杖ごとバスターソードを切り裂き、そのまま白髪の男に斜めに袈裟切りをいれた。

 

「がはぁ!」

 

 大きく体を斬られた白髪の男は口から血を吐いて後ろに倒れる。

 

 それと同時にウォーロンの剣も限界を迎え、先の1振りと同じように刀身に罅が入り粉々に砕け散った。

 

「やはり予備の武装ではこれが限界か……」

 

 ここに至るまでに十を超える黒い竜巻のモンスターを斬り殺しながら、アポピスの胃酸の中を走り抜けながら切り裂いていったのだ。

 これで武器を消耗させるなと言う方が無茶だろう。

 

「ぐ、獣化どころか……魔剣も魔眼も使わずにこの実力差とは、本当に恐れ入ったよ……」

 

 傷を負った体に鞭を打ってよろよろと立ち上がる。

 もはや決着は着いた状態だというのに、白髪の男からは悲壮感だとか敗北感といったものは一切感じさせず、不敵な笑みを浮かべたままだった。

 

「ほぉ、まだ立てるのか? なら好都合だ。そのままキングにでも渡して知ってる情報を全て吐いてもらうとしようか」

 

「いいや……俺はまだ負けてねぇよ。だってまだ生きてんだからな!」

 

「なにを──!?」

 

 ドゴォォン!! 

 

 白髪の男を確保しようと動き出したその直後、ウィーネ達がいる場所の方角から爆発音が鳴り響いた。

 

「アッヒャッヒャ! ほ~ら、早く行かねえと大事なお姫様が丸焦げになっちゃうぜ?」

 

「テメェ! やっぱり他にも仲間がいやがったか!?」

 

「仲間ぁ? 違うな、あれはただの駒さ。俺が死ねと命じれば素直に死んでくれる都合のいい駒。チェスで言うところのポーンでしかない!」

 

「くだらねぇ、ならテメェを人質にでもしてそいつらを大人しくさせればいいだけの話だ!」

 

「それは無理だね」

 

 ボン! と懐から手のひらサイズの玉を取り出し、地面に叩きつけると一瞬で白い煙が辺りを包み込む。

 

「野郎! ──うっ!?」

 

 しかも、その煙から凄まじい悪臭が広がる。ただでさえ鼻のいい獣人にとってそれは最悪の攻撃であった。

 思わず煙から距離を取って離れると、その煙の中からあの白髪の男が飛び出し、翼のような魔道具を使用して逃走していった。

 

「あ~ばよ! 次は確実に殺せる時に会いに行くぜ!!」

 

「クソがぁ! どうする追うか? いや、お嬢の保護が最優先だ!」

 

 敵にまんまと逃げられるという失態に怒りに震えるが、感情に吞まれることなく自身にとっての最優先事項を守らんとウィーネがいた場所に向かい走る。

 

 そこにはボロボロになった部下が倒れ伏していた。

 幸いなことに酷い火傷を負ってはいたが、全員死んではいないようで何とか生きている状態だった。

 

「おい! まだ意識のある奴、返事をしろ!!」

 

「……は、はい!」

 

 倒れた部下の中でも一番耐久力があった男が立ち上がって返事を返す。

 

「お嬢はどうした? 何故どこにも姿が見えねぇ!?」

 

「お嬢は先の爆発に巻き込まれる前に俺が遠くへ投げ飛ばして爆発から遠ざけましたが、そこから先は……」

 

「いや、上出来だ。それで、お嬢をどっちに飛ばした?」

 

「む、向こうの方へ……。お嬢にはホームへ先に逃げるように言いましたが、逃げ切れたかどうかは?」

 

「了解した。後は任せろ!」

 

 部下たちをそのままにウォーロンはウィーネを投げ飛ばしたという方向へ向かって走り出す。

 本当に最悪なことに、先程の悪臭付きの煙幕のせいで鼻が機能しづらくなっており、ウィーネの匂いを追うことが出来ないでいた。

 

 そして、半日ほどオラリオの街を探索し続けた結果、その成果は何もなく、一縷の望みを掛けてホームに戻ったがそこにウィーネの姿は無かった。

 

 これがカイドウ達が遠征に出て行ったまでの1日で起きた出来事だった。

 

 

「…………」

 

「許して欲しいとは言わねえ! 全てはお嬢を守れなかった俺の責任だ! 罰はいくらでも受ける覚悟はしている」

 

 今の報告を聞いたところウォーロンには否はなく、むしろよくやった方だと言えるだろうが、当の本人がそれを認めてはいなかった。

 

「……俺はもはや地上で俺達ファミリアに逆らう奴はいねぇと思っていた」

 

 ウォーロンからの報告を聞いている間ずっと口を閉ざしていたカイドウの口から出た言葉は嘲りの声でも非難の声でもなく、ただ静かな怒りの声だった。

 

「ここ数年で俺を筆頭にキング、クイーン、ジャックに加え、飛び六胞の力はオラリオの歴史においても名を残すに値する絶大な力を手に入れた。今のオラリオで名実ともに実力№1は間違いなく俺達ケルヌンノスファミリアだ。例え闇派閥でも手出しすることはねぇと……地上には敵はいねぇのだと慢心していた」

 

 その言葉の節々に込められた怒りの声に覇気が宿り、部屋全体がメキメキと悲鳴を上げて叫んでいる。

 もしここに幹部以下の一般団員がいようものなら、この空間の圧に耐えかねて泡を吹いて倒れていただろう。

 

「「「「「…………」」」」」

 

 そんな空気の中、ここに揃った幹部達は一切の動揺もなく平然と正座の姿勢でカイドウの言葉を拝聴していた。

 

「今回の失態は俺の慢心と油断が原因だった。むしろ、ウォーロンはよくやってくれたもんだ。もし今回の遠征にお前を連れ出していたら更に最悪の事態になりかねていただろう……」

 

「……っ! 待ってくれ、カイドウさん! それでも俺は──!」

 

「ああ、分かってる。許せねえんだろ。信頼して託されたものを裏切っちまった自分自身が……。俺にもその気持ちは痛い程分かる。だから、ケジメは必要だろうな!」

 

 カイドウは己の相棒とも呼べる八斎戒を手に取り立ち上がる。

 それを見てカイドウの正面で土下座していたウォーロンも立ち上がり、その後ろに座っていた他の者達も立ち上がって横へずれる。

 

「1発だ! この1発でケジメをつけることとする。手加減は一切しねぇ! 生きてウィーネを見つけ出し、汚点を自分の手で拭い去れ!!」

 

「はっ!」

 

 両手を後ろに組んで、真っ正面から防御一切無しでカイドウの全力の一撃を受け止めんと覚悟を決める。

 

ッッ雷鳴八卦!

 

「ッッッッガハ──ッ!!?」

 

 充分な溜めを込めた深層の階層主すら葬り去るレベルの一撃にウォーロンは一切の抵抗を許されることなく、そのまま壁や地形をも突き破る勢いで水平線の果てまで吹っ飛ばされた。

 

 外へと吹き飛ばされた先を見れば、厄災でも通り過ぎたのかと見まごうほどの破壊の跡が出来上がっていた。

 元々黒い竜巻騒ぎで瓦礫の山が出来上がっていたから被害はそこまで大きくは無いが、ウォーロンが吹き飛んでぶつかったことによって倒壊した建物が6軒を超えていた。

 

 普通の人間ならば即死したであろう一撃ではあったが、この場にいる誰もがウォーロンの生存を疑ってはおらず、キングがすぐさま団員を呼びつけてウォーロンの回収と手当てを命じた。

 

「これでウォーロンへのケジメはしっかりとつけた。異論のある奴は……いねぇようだな」

 

 誰もが今の一撃で文句をつけよう筈もなく、黙って座り込み続けている。

 

「ふぅ~、ウィーネの捜索は当てのある奴を1人知っている。そいつに話を聞きに行く。今は黒い竜巻とウォーロンが敵対したっていう白髪の男の方だ!!」

 

「カイドウさん。少しいいか? 恐らく今回オラリオを襲ったっていう黒い竜巻を纏ったモンスターに心当たりがある。それは多分、ベヒーモス・オルタナティブだろう」

 

「……ベヒーモスか」

 

 キングの口から語られたベヒーモスという名前にカイドウは深く考えるようにその名前を反芻する。

 それはかつての記憶、自身が敗北した苦くとも大切な者との戦いを思い出させた。

 

「……最強を名乗った癖にこの体たらく、あいつらに顔向けできもしねぇな」

 

 歯を強く嚙みしめ、八斎戒を自身の頭に思いっきり叩きつける。

 

 ガキーン! と金属同士がぶつかる甲高い音が部屋中に鳴り響く。

 そして、カイドウの額が割れて真っ赤な血がタラリと口元まで垂れ流れてきた。

 

「不甲斐ねぇな。こんな情けねぇ姿はこれっきりだ!」

 

 吹っ切れたように口元にまで垂れた血を舐め上げ、この場にいる全員に指示を出す。

 

「いいかお前ら、この血は未来に流す敵の血だ!! もはやネズミ共に容赦はいらねぇ、傘下のファミリア全てに連絡を入れろ! これより、闇派閥に対して()()()()()()()を発令させる!!」

 

 




ついにバスターコールを発動させっちまった。
次回からベル君を登場させっけど、モブにならぬか心配でござる。

もっと文才が欲しいでそうろう。

次回の過去編はどれがいい?

  • リヴィラの街
  • ソーマファミリア
  • ヘファイストス&ゴブニュ
  • 飛び六胞の誰か?
  • 港町メレン
  • テルスキュラ
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