カイドウがウィーネを娘にするのは間違っているだろうか? 作:リーグロード
今日の夕方に荒唐無稽な噂話が出回りギルドはその事実確認に奔放していた。
「ちょっと、誰かケルヌンノスファミリアに事実確認お願い!!」
「無理無理! あそこに乗り込むなんて自殺行為だよぉ!」
「てか、ケルヌンノスファミリアが連れ込んだモンスターが喋ったとかいう情報もあるんだけど!?」
もはやギルドでは嵐が通ったかのような大騒ぎになっていた。
冒険者に民衆、誰も彼もがこの噂の真相を確かめる為にあちこちを奔走し、やがてギルドに問い合わせが殺到する。
ダンジョンのモンスターが野放しに地上を闊歩する。その事実を受け入れられぬ者は大勢いる。
だけど相手は都市最強派閥のケルヌンノスファミリアだ。直接聞きに行ける者などこの都市で数えるほどもいない。
だからこそ、ファミリアを管理するギルドに殺到した。
とはいえ、ギルドもそんな噂を知る由もなく、分からないことを理解する為に職員たちはあっちへこっちへと資料を引っ張り出し、外へ出て調査に乗り出したりと忙しなかった。
それはハーフエルフのエイナ・チュールも同様だった。
「ん? あれは……」
通常業務を後回しにして噂の事実確認に翻弄されていると、ギルドの奥からギルド長のロイマンがやってきて現場にいる職員に指示を出している。
それを受けて皆が更に忙しなく動き回り、今では歩いている者は1人もおらず全員が走り回っている状況だ。
そんな中、班長がロイマンの元へと駆け寄り、なにやら大声で話し合いを──いや、口論を始めていた。
「ですがギルド長! このままでは民衆がいつ不満を爆発させるか分かりません。やはりケルヌンノスファミリアに事実の発表とモンスターの処遇を言い渡さねば「それがいかんと言っているだろうが!!」
班長の言い分を遮り、顔を茹でダコのように真っ赤にしてエルフらしからぬ大声で否定する。
「ふぅ~、いいかレーメルよ。法とはなにか分かるか?」
「法ですか……。それは、人の秩序を守るものだと考えてます」
いきなりの質問に疑問はあるが、レーメルはハッキリと己の中にある法の意味を答える。
「そうだな。しかしな、世の中には秩序ではどうすることもできない存在がいる。それがケルヌンノスファミリアだ」
「…………っ」
その真剣な表情にさっきまであれほど強く嚙みついていたレーメルもたじろぎ聞き入ってしまう。
「そもそも、秩序というのは群衆の意思だ。平和を望みそれを叶える為に数の力でもって小数の無秩序を粛正する。それを分かりやすくしたものが法なのだ。だが、かつての暗黒期に栄えた闇派閥のように秩序を崩壊させる存在はいる。そして、そんな存在に対して法はあまりにも無力だ……」
先程まで慌ただしくギルド内を走り回っていた他の職員達も足を止めて大人しくロイマンの話にこっそりと耳を傾ける。
多くのギルド職員が彼に対して反感や苦手意識を持っているにも関わらずだ。そこは1世紀以上ギルドに勤めているだけのカリスマがあるということなのだろう。
「我々ギルドは中立性をもって各ファミリアの意思を纏めるだけの存在で、ロキファミリアやフレイヤファミリアのような大手の力あるファミリアが味方になってくれねば何も出来ん弱者だ……」
口を嚙みしめ、手から血が滲み出してくるのではないかと思うほどに力強く弱者の憤りを握りしめていた。
「いいか! 自然界において圧倒的捕食者に対面した場合、我々弱者が生き残る方法はいくつかあるが、今の我々が出来ることは1つだ。……相手に興味を持たれぬこと」
それは極めて正しい正論であった。そして、酷く残酷な真実でもあった。
「よいかレーメルよ、これだけはよ~く覚えておけ! 今ケルヌンノスファミリアがこのオラリオの支配に乗り出さないのは、奴らの興味がダンジョンにあるからだ。もし怒りでも敵意でも、それこそ今回の件の追求で邪魔だと思われてこちらに興味でも持たれてみよ。その瞬間、このギルドは一瞬のウチに暴力によって崩壊する。それが理解出来ぬお前ではあるまい」
「「「「「「…………」」」」」」
誰も彼もが口を閉ざしロイマンの言葉に心の中で同意する。
それ程にケルヌンノスファミリアの強大さを知っているからだ。
「ん? なにをボケッと突っ立っている! 早く仕事に戻らんかぁ!!」
「「「「「「はっ、はい!!」」」」」」
ようやく周りの職員達が立ち止まっていることに気が付いたロイマンが怒鳴り声を上げ、それを受けて職員達も慌てて駆け出す。
ふん、と鼻息を鳴らしていつもの嫌な上司に戻る。
「とにかく、ケルヌンノスファミリアへの直接干渉は基本的に我々ではなく神に任せる。分かったなレーメル」
「……はい」
なんの力も持たない己の無力さに項垂れながら返事を返す。
それが悔しくて情けなくて、それでも大人として感情を押し殺して業務へと戻る。
ロイマンの言ったことは決して噓でも妄言でもない。それが一番正しくて大人な選択だというのに、心が認めたくないと納得していなかった。
「あの、大丈夫ですか班長?」
「ああ……みっともない姿を見せたな。悪い、もう大丈夫だ」
後輩にも心配を掛けるようじゃ駄目だ。パン! と自分の頬を叩いて気持ちを切り替える。
少なくとも今の自分に出来ることを頑張ろう。それぐらいしか今はやれることなんてないのだから。
♦
ギルドの地下にある主神ウラノスの祈祷室。そこに現在いるのは主神であるウラノスとその私兵であるフェルズのみであった。
「やれやれ、まったく困った事になった。まさか、異端児の存在がこうもあっさりと世に明かされるとは、ケルヌンノスファミリアには困ったものだ。それで、その問題となった異端児の様子はどうだフェルズよ?」
「ふむ、流石は都市最強の
「つまり、何も分からないということか?」
「…………詳しいことはな。ただ、私が見た数秒の光景と、街に出回る噂を総合して考えたところ、
ウラノスの答えにムッときたのか、少し言い訳っぽく返事を返し、己の目と耳で得た情報を頭の中で整理し自身の考えを述べた。
あの時使い魔を通して見た光景は噓ではない。そう思えるほどにあの異端児は
「そうか……ふむ、非常に悪いと思うがフェルズよ。ケルヌンノスファミリアの調査あるいは監視を頼めるだろうか?」
「はぁ~、監視して数十秒で見つかったマヌケに再び監視を依頼するとはな」
「まあそう言うな。私の知っている者の中でお前以上に監視に向いている能力の持ち主はおらん。あ~、ヘルメスのところの
「ぬかせ、確かにあの者は噓偽りなく天才と称される部類の人間だ。だが、あの
フェルズがウラノスからの挑発を受けて過大評価だと言い返す。
だが、その言葉の節々には
とはいえ、あの
そうなると、あまり件の異端児を監視する機会は無いかもしれん。ならば、やはり今回は監視ではなく調査を主に行動した方がいいだろう。
しかし、あのケルヌンノスファミリアに潜入するとなるとリバース・ヴェールや黒霧、それに幻想花は必須である。
が、それでも心細く感じてしまうのは相手がこの都市最強派閥のケルヌンノスファミリアだからか。気を引き締めてかからねばならぬ、なにせあそこには自身をはるかに超えるレベル9を筆頭に化け物ぞろいだからな。
新たなマジックアイテムの開発も視野に入れなければならぬかもしれん。
「それでは神ウラノスよ。私は探り程度にケルヌンノスファミリアに侵入を試みるが、あまり期待するなよ」
「ああ、調査結果に期待はするが、それ以上にお前が無事に帰って来てくれるのを願う」
「ふっ、安心しろ。冒険者は冒険者しないだったか? まだ私も人類と異端児の共存の景色を見ていないからな。必ず帰ってくる」
次回のフェルズの苦難に乞うご期待!
次回の過去編はどれがいい?
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