カイドウがウィーネを娘にするのは間違っているだろうか?   作:リーグロード

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本編の話が中々思いつかなかったから急遽過去編として怪物祭の話を書きました。



過去編:怪物祭  前編

 ガネーシャファミリアが毎年取り仕切っているオラリオ最大級の祭りの1つである怪物祭(モンスターフィリア)は例年一定の盛り上がりを見せており、今年も例に漏れず誰も彼もがお祭り騒ぎである。

 

 そしてそれは、あのファミリアとて例外ではなく……。

 

「ズムズム♪ ズムズム♪ ズムズム♪ ズムズム♪」

 

 意気揚々とホームの訓練場で歌いながら踊る肉の塊が1つ。その周りでは肉風船の部下がその軽快な踊りに合わせて音楽を奏でる。

 それを目撃したキングが今も踊っているクイーンに大声で注意する。

 

「はぁ、クイーン! テメェのそのくだらねぇ趣味に団員達を使ってんじゃねぇ!」

 

「っち! うるせぇぞキング! こっちは怪物祭に向けての大事な練習中だ! なんせ、オラリオ中のカワイイ女達が俺様のポップで軽快な踊りを見に来るんだからな!!」

 

「アホが、女共が見に来るのはガネーシャファミリアの調教(テイム)だろうが、お門違いな期待はしてんじゃねぇよ」

 

「カッチーン! もう我慢出来ねぇ、表に……いいや、ダンジョンに出やがれキング! 今日という今日は立場の違いってのを教えてやる!!」

 

「立場の違いだと? 今更確認せずとも、俺が上でお前が下だマヌケめ……」

 

「「ああぁぁん!!?」」

 

 お互いの胸元を掴み上げ、ヤクザ顔負けの迫力でメンチを切りあう2人に部下である団員達は急いでジャックへと対応の連絡を回すのだった。

 その見事な対応の早さから普段からどれだけ2人のいざこざに巻き込まれているかが推し量れる。

 

 もはや導火線に火が付いた状態の2人は、ダンジョンへ行くよりも先に爆発寸前だったところに高らかな笑みが辺りに木霊した。

 

「ワァーハッハッハ! 俺が! ガネーシャっだぁ!!」

 

「「…………」」

 

 人間、自分よりもテンションが高い者を見ると急に自分もああなのかと冷静さを取り戻すことが時として起こりえるから、何が幸いするか分からないものである。

 そのままガネーシャは喧嘩をしていた2人の間に割って入ると「クイーンを借りるぞ!」と言い残して去っていった。

 

「…………相変わらず神のテンションは2ちゃんねらー共みたいにクソ高いな」

 

 クイーンを連れて去って行ったガネーシャの後ろ姿を見送りながら、あのテンションは肌に合わんとその場に残されたキングは嘆息を吐いて立ち去っていった。

 

 その数分後、慌てて駆け付けたジャックの目の前には誰もいなくなった綺麗な訓練場を目にし、呼びに来た部下に本当にキングとクイーンの兄御達はここで喧嘩してたのかと尋ねていたとか。

 

 

「いやはや、祭りの打ち合わせを行おうとクイーンの元へ向かったら喧嘩しているからガネーシャ、ビックリ!!」

 

「いや、マジすまんません。だから、そのテンションもうちょっと落としてくんない? 周りの視線がちっとばかし痛てぇ……」

 

 いつもテンションの高いクイーンも流石に神ガネーシャの異常過ぎるハイテンションについて行けず、周りからのいつもとは違うジロジロとした視線に居心地が悪そうだった。

 

「ヌゥ!? それは失敬、だが残念だがこれがいつものガネーシャだぁ!!」

 

「あっ、そうっすか……」

 

 これは酔ったカイドウさん並みに手が付けられねぇと判断したクイーンは、せめて隣ではなく後ろに歩こうとその巨体でそそくさと後ろに並んで歩く。

 

「ん? どうしたクイーンよ? なにを後ろに立って歩いている! 我らは共に祭りを盛り上げる同志だぁ!! 仲良く歩こうではないか!!」

 

「はぁ……」

 

 本当は肩を組みたいのだろうが、体格差のせいで腰に腕を手を巻きつける。

 そのせいで余計に目立ってしまい、さしものクイーンもガネーシャの陽気過ぎるキャラクター性に力無く返事を返すこととなった。

 

 そうして大衆から奇異の目で見られ続けて疲れ果てたクイーンだったが──―

 

「おーい! シャクティじゃねぇか。お前もウチのファミリアに来いよ! 幹部の席は今は無いが、俺様がお前のためにいずれ用意してやるぜ~!」

 

 ガネーシャファミリア団長のシャクティを一目見た瞬間に元気を取り戻し、ガネーシャを置き去りにして口説き文句を垂れる。

 

「またその話か……、前に一度その勧誘は蹴った筈だ! 私はガネーシャファミリアの団長なのだぞ!」

 

「そう冷たい事言うなよシャクティ~、お前みたいなイイ女は俺様に相応しいからな。意地でも手に入れてやるぜ」

 

 怪物祭を行う会場に先にいたシャクティを見つけると、共に来たガネーシャを放り捨てて口説きにかかった。

 当然、前々からウンザリするほど口説かれ続けてきたシャクティはいつも通り冷淡にその口説き文句を切って捨てたが、それでもクイーンは諦めようとはしなかった。

 

 はぁ~、っとため息が零れるがそれよりも祭り開催が迫る今はそんなことを気にしてはいられない。

 

「いいか、確かにお前はガネーシャがどうしてもと言い張って呼んだ特別ゲストではあるが、主催は我々ガネーシャファミリアだ。いいからそこら辺で大人しくしていろ」

 

「ガーン! っでもそんなの関係ねぇ!! 俺様は俺様のしたいようにやるのがモットー♪ それはシャクティでも譲れぬポリシー♪ ドゥユーアンダスタン?」

 

「何故にちょっとラップ風なのだ?」

 

 そうして茶番を終わらせ、各々が祭りに必要な準備に取り掛かる。

 ガネーシャファミリアはテイム用のモンスターをダンジョンから搬入し、クイーンは自身の部下を総動員して舞台の飾り付けからダンスに必要な衣装に機材の搬送に動く。

 

「ムハハハ! お前らしっかり働けよ。もし祭りまでに間に合わなけりゃどうなるか? 分かってるよな……?」

 

「「「「ウッス!!」」」」

 

 レベル8からの脅しに必死こいて動き回る部下たちを眺めながら優雅にワインを嗜むクイーンを横目にシャクティが睨みつける。

 

「貴様は働かんのか? 上に立つ立場の人間が率先して動くことで周囲に示しがつくというものだろうが」

 

「ん? ムハハハ!! 生憎とウチじゃ周囲への示しは行動じゃなく力で示せがモットーなんでな。こうして俺様が楽をするのも力を持つ者の特権なのさ!」

 

「団長、あまりケルヌンノスファミリアの人間に関わるのは……」

 

「っち、まあいい。くれぐれも我々の祭りの邪魔だけはしてくれるなよ」

 

「え~、シャクティってば冷たいな~。お前も団長なんだから部下に指示だけ出して俺様の横でくつろいでりゃいいのによ~」

 

「生憎と、私のとこのファミリアは力ではなく行動で示しを見せる所なのでな。それじゃあ失礼する」

 

「ちぇ〜、つまんねぇな〜」

 

 去ってゆくシャクティを面白くなさそうに見送るクイーンをはらはらした気持ちで見ていたケルヌンノスファミリアの団員達は八つ当たりを受けまいと作業に勤しみ、僅か1日でライブの準備を終わらせたのだった。

 

 

 

 そして怪物祭当時の日、ガネーシャファミリアとケルヌンノスファミリアの合同で行われるとの告知がオラリオ中に広がり、大丈夫か? という不安もありつつも期待もあり集客の方は問題は無かった。

 

「ムハハハ! 随分と盛況じゃねぇか、客席の方もどこも満員だな。流石は俺様! 俺の歌と踊りで客を盛り上げるぞお前ら!!」

 

「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」」

 

 祭り開催前のクイーンの鼓舞にケルヌンノスファミリアの団員は拳を天に突き出して声を挙げる。

 

「ケルヌンノスファミリアに負けるな! 我らこそがこの祭りの主役だということを知らしめろ!!」

 

「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」」

 

 それに負けないようシャクティの鼓舞にガネーシャファミリアも同じく声を挙げる。

 

「ムハハハ! 盛り上がってきたじゃねぇか。さて、俺様はライブの時間まで裏で喉を潤す為にお汁粉を飲んでくるから、出番が来たら呼びに来いよ」

 

「はい!」

 

 そうして部下に指示を出した後は、裏で用意されているお汁粉を飲みにクイーンは会場の奥へと消えていった。

 

 それから残されたクイーンの部下達はガネーシャファミリアの手伝いをしながらテイム用のモンスターを逃がさないように見張りについていた。

 

「ふわぁ~、いくらクイーン様の命令とはいえ、折角の祭りの日だってのにほぼ毎日見飽きたモンスターをただこうしてボーっと監視するなんざ面倒だよな?」

 

「おいこらバカ!? そんなこともしクイーン様の耳に入ったらどうする!」

 

「別に平気だって。クイーン様も今は吞気に裏でお汁粉を飲んでいるだろうし、態々こんなモンスターしかいねぇ場所に来たりしねぇって」

 

 あくびをしながら適当な態度で壁にもたれかかる同僚の言葉に周りの者たちも「まあ、そうか」と納得の表情を見せる。

 実際に、この場にいる全員がクイーンからの命令とはいえ折角の祭りの日をモンスターの監視という役割につかされて内心では辟易していた。

 

「あら、なら見るなら私なんかいかがかしら?」

 

 暇をしていたその時、美しい女性の声が聞こえてきた。普通ならば何故こんなところに女性がと疑問に思う筈だが、その時既に全員がその声に魅了されて美しいとしか考えることが出来ないでいた。

 

「とりあえず、私がここに来たことは内緒にしてくれるかしら?」

 

「「「「「はい……」」」」」

 

 蠱惑的に唇を指でなぞりおねだりするその美女の願いにため息混じりの返事で返す。

 この場にいる全員が美女のたった一言で骨の髄まで魅了されてしまったのだ。そしてそれは人だけでなく、知性を持たないモンスターであっても例外ではなかった。

 

「さあてあなたたち、この私が欲しかったら奪いに来なさい。この女神をね……」

 

 やがてその場から消えた女神を自らの手で捕まえる。その一心のみでモンスターは自身らを捕えていた檻を破壊し、一心不乱に女神の気配を追って街へと飛び出していった。

 

 

 ♦

 

 

「ングング……っぷは~!! やっぱりお汁粉は俺様の酸素だぜ。これがなきゃ生きていけねぇな!!」

 

 既に空となったお汁粉が入っていた大鍋4つが床に転がっており、クイーンの口元はお汁粉で真っ黒に汚れていた。

 そんな吞気にお汁粉を食べていたクイーンの元に大慌ての様子で駆けつける部下がやって来た。

 

「た、大変ですクイーン様!!」

 

「なんだ騒々しい!! まさかもうライブが始まったなんて言うんじゃねぇだろうな!?」

 

「ち、違います!!」

 

 自身の慌てた様子に出番を伝えるのを忘れていたとクイーンに誤解され、空になった大鍋を顔のすぐ横に凄まじいスピードで投げつけられる。

 そのことに恐怖を感じるが、今はそれどころの騒ぎではない。下手をすれば今以上にキレて何をやらかすかは知らないが、それでもここで伝えておかなければ後にどんな酷い目が自分に降り注ぐか分かったものではない。

 故に、男は意を決して今起きていることを口にする。

 

「祭りの為に捕まえていたモンスターが逃げました。更には監視を任せていた部下たちが魅了された状態で発見! このままでは祭りもといライブの開催は中止になるやもしれません!!」

 

「えええぇぇ~~~~?!」

 

 あまりの衝撃内容に目玉と舌がありえないくらい飛び出るが、カイドウがなにかやらかした際に稀に見る現象なので男はあまり驚かない。

 それよりも、今はクイーンからの指示を仰いでもらい事の鎮圧に向かわねばなるまい。

 

「っち、ああそういえばこんなイベントもあったっけか……。よし! モンスターの鎮圧には俺様が出向く!! お前はまだ使えそうな部下共を集めて被害の拡大を防げ!!」

 

「はっ、了解しました!」

 

「いいか! このライブの成功にゃ俺様の今後のリア充生活が懸っている。なんとしてもライブを開催させるんだ!!」

 

 今回のライブで活躍し、美女からの告白で今後の人生にバラを咲かせるという野望を秘めていたクイーンは、必死の形相で部下に指示を出した後に急いでモンスターが暴れているであろう街中へ急行する。

 その動きは肥満体な体に似つかわしくない程に俊敏で、部屋を飛び出して僅か1分足らずで外へと脱出したモンスターの群れを発見し、全体を把握できる建物の上に着地する。

 

「ひいふうみい……、何体かは別の場所に分かれたか。まあ、シルバーバックなら主人公君の為に譲るつもりだったし、ここにいないなら無理に追う必要はねぇな」

 

 あらかじめ見世物用に護送したモンスターの種類と数を確認し頭に入れておいたクイーンは、見下ろした先にいるモンスターたちの数が足りない事に気が付き状況をある程度把握する。

 

「すぅ~、止まれクソモンスター共!!!」

 

「「「「「っっっ!!!?」」」」」

 

 頭上から響き渡る大声に街中を彷徨っていたモンスターたちは頭上を見上げて立ち止まる。

 そこに立っていたのはモンスター達にとっては死の化身とも呼ぶべき存在だった。

 

「よ~し、いい子だお前ら! いいか、今すぐ元いた檻の中に戻りやがれ。もしこの命令を拒絶したら……」

 

 精々がレベル1~2程度の強さしか持たないモンスター達にとってはレベル8のクイーンは雲の上の化け物だ。発せられるその声を聞くだけで初心者冒険者がミノタウロスの咆哮(ハウル)を直に受けたように怯えて動けずにいた。

 

 だが、モンスター達は既に女神から魅了を掛けられており、本能的恐怖と魅了に板挟みにあったモンスター達はどうすることもできず狼狽えている。

 

「なんだ~? 俺様の命令が聞けねぇのか?」

 

「──―っグガァ!!」

 

 この場にいるモンスター達の中で一番強いモンスターが板挟みの末にクイーンに向けて威嚇の声を上げる。

 

 その瞬間、この場にいるモンスター達の命運が決まった。

 

「そうかそうか。俺様に威嚇とは随分と舐めた態度を取ってくれるじゃねか……。まあ、もう面倒だしとりあえず死んどけや

 

 頭を搔きながら心底面倒そうに見下してモンスターを一瞥する。

 それだけでモンスター達は心臓もとい魔石を握りしめられたかのような感覚に陥る。

 

 それと同時にクイーンは建物から飛び降りると、次の瞬間には文字通りモンスター達の急所である魔石を抜き取ってゆく。

 

「ギュガッ!?」

 

「グモッ!?」

 

「ゴガッ!?」

 

一切の抵抗すら許さない圧倒的な蹂躙にモンスターは悲鳴を上げることしか出来ずにいる。

 

「スゲェ……」

 

「あれがケルヌンノスファミリア最高幹部のクイーンか……」

 

「モンスターどもが全部灰になりやがった!!」

 

「強いぞ!流石は冒険者様だ!!」

 

 次々と灰となって死んでいくモンスター達を見て物陰で怯えていた民衆は歓声を上げて表に出てくる。

 

「ムハハハ! 相変わらずモンスターは魔石を抜き取れば灰になるんだから後始末が楽で助かるぜ」

 

 その手に握られた多数の魔石を転がしながら笑うクイーンは、バリバリと口に魔石を放り込んで食い散らかす。

 

 現在のクイーンの内臓は改造に改造を重ねた結果、魔石循環内蔵器官と名付けられた物へと変貌していた。

 それは非常に強力な力を持っており、魔剣並みの万能さと殲滅能力を秘めた破壊力を保有する。

 ただし、使用するには魔石を食してエネルギーを蓄えねばならないために、あまり多用し過ぎれば魔石の消費量がエゲツないことになる。

 

「さて、大半は消えていなくなったな。これじゃテイムによる見世物は出来ねぇか……。まあ仕方ねぇよな……」

 

 地面に散らばった灰となったモンスターの死体を踏み潰しながら残りの逃げたモンスターの後を追いかける。

 

 




クイーンを魔改造した結果、なんか怪人っぽくなったけど原作でも化け物みたいな存在だったし別にいいよね♪

それと、少々話が長くなりそうなので前編と後編に分けました。
後編の方は今週中に投稿……すると思います!!

次回の過去編はどれがいい?

  • リヴィラの街
  • ソーマファミリア
  • ヘファイストス&ゴブニュ
  • 飛び六胞の誰か?
  • 港町メレン
  • テルスキュラ
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