「もし私が明日いなくなったらどうする?明日までに考えて私に教えて?」
その言葉を土曜日に彼女は言った。

次の月曜日、彼女はいなかった。

※私が小説家になろうに掲載させていただいている短編に少し手を加えたものとなっています。

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『もし私が明日いなくなったらどうする?明日までに考えて私に教えて?』

あの日は……そう、多分涼しい日だった。

 

 鳥が鳴いてたかもしれないし、隣の席の子が笑ってたかもしれない。……えっ?記憶が曖昧すぎるって?だって人間の記憶なんて実際そんなものでしょ?興味がないことは例え数分、数秒前のことだって忘れちゃう。その日は僕にとっては興味がないものの内の一つだったんだ。

 

 まぁ、けど覚えてることが三つあるんだ。

 

 一つ目はその日が土曜日で授業があったこと、

 二つ目は── に『もし私が明日いなくなったらどうする?明日までに考えて私に教えて?』なんてとち狂ったことを言われたこと、

 

 そして三つ目は── が月曜日にはいなかったことだ。

 

 

 

 

 

 チャイムの音が響く。

 

「「「「ありがとうございました」」」」

 

 そんな定型文を口にするクラスメイト達、ある人は真剣に、ある人は寝起きなのか怠そうに。

 

「まったくなんで声を合わせる必要があるんだろう? 個人の感謝の気持ちが伝わればそれでいいじゃないか」

 

 それは僕にとっては何気ない独り言、ささやかな社会への反抗であり、特に意味の無い戯れ言のはずだった。

 

「何を言ってるの? こうして全員で声を揃えてお礼を言った方が先生が楽だからでしょ?」

 

 だからこそ、── がその一方的に僕が世界へ垂れ流した言葉に反応したことに本気で驚いた。

 

「えっ?大丈夫?どうしてそんな驚いてるの?」

「……。」

「あっ?さてはドキッとした感じでしょ?やだー」

「………。」

「ちょっと無言やめてよ、私が痛い子みたいになっちゃってるから!」

 

 今思えば互いに最初の印象は良くなかったと思うよ。

 

 ただ席が隣同士だった、それだけだった、それなのに話せてしまうなんて中学生って単純だったんだなって思う。僕は当時、低身長の中肉中背のコミュ障、帰宅部、自分で言うのもなんだが根暗なヤツだった。"今も"って言うのはやめてくれよ。

 

逆に── は女子にしては身長高め、部活を頑張っていて、コミュ力抜群の所謂陽キャってやつだった。

 

 ── とはよく取り留めのない話をしたものだ。

 

 例えば最近やってるソシャゲの話とかTwitterやYouTubeで流行ってる動画のこととか、あとはニュースで見た世界の出来事の話とかね。

 

 けど、それ以上は無かった。家にも屋上にも呼ばれることもなかったし、LINEの交換もしてなかった

 

 本当にただ時間があったら話すだけの関係。けど、その時間が僕には心地よかった。

 

 それが崩れたのがあの日あの時だった。七月の三十度を超える気温が毎日続く中、それなのに珍しく涼しかったあの日。

 その日の帰りの会が終わって別れの定型文を言って掃除をしていた時。

 

「もし私が明日いなくなったらどうする?明日までに考えて私に教えて?」

 

 いきなり── にそんなことを言われたんだ。

 

 最初は何言ってんだこいつ? って気持ちだったんだ。

 

 ただ、── がいつもと違う感じはしたよ。

 

 ── の顔はどこか元気がない感じで今にも倒れてしまいそうだった。

 

 その後、僕が「── と連絡をとる手段がないから明日答えを言うのは無理かな?」って言おうとした時には既に── はその場にいなかった、その日は部活にも行かなかったんだってね。

 

 そして次の日、たしか僕は朝8時に起きてニチアサを見て学校の宿題を終わらせてからのんびりしていたんだ。

 

 その日のことはうろ覚えだけど、その日のニチアサの内容については完璧に覚えているよ、興味のあった事だからね。

 

 ただ、少しだけ── の言ったことについて考えてはいたと思う。まぁ、その質問の意図についてはわざわざ── の所まで行って聞こうとは思わなかったけど。

 

 そして、月曜日。

 

 朝、学校に到着してまず最初に思ったのが、── がいないってことだった。

 僕はいつも少し遅れて学校に行っていたし、── はいつも一番早く学校に着くくらいの勢いで学校に通学していた。

 朝のチャイムがなった時本当にびっくりしたよ、それまで無遅刻無欠席だった── が隣の席にいないんだ。

 その時頭によぎったのはあの言葉だったよ。まさか本当にいなくなるなんて、って呟いたっけか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと、いくらなんでもちょっと盛りすぎだって!何この悲しいお話っぽいの!」

 

「いや、あんなこと言われた後に学校に来てなかったらそういうのを疑うでしょ。それに、あんなことを言った── が、君が悪いんだよ!あんな勘違いさせるような事を言ってから休むとかさぁ……」

 

「仕方ないじゃん風邪をひいてたんだし」

 

「そのひき方がアホなんだよ、なんだよ、部活帰りに疲れて窓開けたまま腹出して寝てたら風邪ひいたって! 」

 

「暑かったから開けてたからそのままにしちゃってたの!夜から急に冷え込んで来ちゃってて……」

 

「第一、なんであんな意味のわからない質問をあの日にしたのさ!あれのせいでかなり混乱したんだよ!あれの真意はなんだったの?」

 

「それはもちろん……、言わなくてもわかるでしょ? バーカ」

 


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