トガヒミコが××を好きになるまでの物語   作:白虎しゃも

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コラボ回ですやったー!!
ちなみにコラボするのは左上の作者リンクから飛んでいただくと出てくる『マザコンなトガちゃん』という作品です(澄んだ瞳)


混線『マザコンじゃないヒミコちゃん』

「嗚呼、『可能性』の塊たちじゃないか。体育祭でも『可能性』を思う存分発現せしめたようで何よりだ」

「うわ出た」

 

 学校からの帰り道、いつものように近道の公園を横切っていたらブランコに腰掛ける女性に声をかけられました。復籍のときの特別講義をしたエイブル先生です。咄嗟に溢れた言葉を隠すように口を手で抑えていると、あーちゃんが答えます。

 

「エイ先生じゃん、こんなとこで何してるのー?」

「おやおや、板鰓亜綱に属する軟骨魚類みたいな呼び方ではないか。まぁどのような呼び方でも構わないとも。しかし我はもう先生ではないよ」

「ついに塾講師はクビになりましたか?」

「うん」

 

 冗談半分で投げかけた問いに、エイブル先生……エイブルさんはコクリと頷きました。

 

「――素直!」

「じゃあエイ姉ちゃんだ」

 

 困惑している私とは対象的に、あーちゃんはケロッとしています。相手の事情をあんまり考えていないのでしょう。

 

「エイ姉ちゃん、お仕事なくて暇だから公園で時間つぶしてたの?」

「あーちゃん、オブラートに包みましょう」

「いやいや、降って湧いた自由な時間を『可能性』の観察という有意義な時間へと変換していたのだよ。まったく未就学児は最高だな!」

 

 私は鞄から携帯を取り出しました。

 

「さて最寄りの交番かヒーロー事務所はっと……」

「待ちたまえ、観察しているだけで何もしていないとも、YES『可能性』NOタッチだとも」

 

 ……嘘は言っていないようですが、そんなことを真剣な面持ちで言われましても。携帯を鞄にしまうと、エイブルさんは大きく肩を竦めました。

 

「はぁ、しかし勤労意欲が全く以て湧いてこないなー。大変だー、このままでは諸々を持て余した我は碌でもないことをしでかしてしまうなー」

「急に小芝居が始まりましたが」

「面白そうだから見てく?」

「嗚呼! なんと我の目の前には『可能性』溢れる英雄候補生がいるではないか! 君達の『可能性』を目に焼き付ければ我も職業案内所へ向かう意欲も湧いてこよう! さぁ! さぁさぁ!」

 

 ずずい、と寄ってくるので、ずささ、と離れました。あーちゃんはほけっと笑っています。ダメですよ、不審者に会ったら大きな声出して逃げないと。私はふぅ、と溜め息を吐きました。

 

「『さぁさぁ!』と言われましても。ザ・公共の場所である公園で“個性”は使っちゃ駄目でしょう」

「ここに取り出したるは我のヒーロー免許」

「その辺のヒーロー事務所に再就職してくださいよ!」

「やれやれ、現代はヒーロー飽和社会なんでね。そんなホイホイ働き口なんてないのだよ。それにヒーロー事務所って個人経営なところ多いだろう? 福利厚生とか無いところ多いし……我は手堅く安定派なんだ」

「じゃあ『可能性』も追いかけるのやめたほうがいいんじゃない?」

「それはそれ、これはこれ、だとも!」

 

 いい笑顔ですねぇ……逃げていいかなぁ……?

 

「ほらほら、導入の長い講義は嫌われるものだ。早速実践へと移ろうじゃないか」

「塾講師をクビになったエイ姉ちゃんが言うと重みがあるね」

「あーちゃん、しーっ!」

 

 そう、無職になっちゃったエイブルさんを無碍にするのも、という想いがトガの足を止めています。いやなんか普通に元気そうだし帰っていい気もしていますが。モタモタしていたら当然のようにエイブルさんが教鞭をこちらに向けて。

 

「あっ」

 

 と、間抜けな声を漏らしました。

 

「待ってください、何です今の『あっ』は!?」

「ハッハッハ、どうやら混線してしまったようだ!」

「混線って?」

「嗚呼、何、危険性のある『可能性』は除いてある。ちょっと前提条件が別の世界線になる(・・・・・・・・・・・・・)だけで、前のときと変わらんよ」

 

 前と同じように周囲がピカッと光ると、二人の人影が現れます。一人は鏡で見る自分の顔より少し幼い同じ顔で、もう一人は自分の顔とよく似ている大人の女性でした。あっちの私はキョロキョロとあたりを見回して、ニコニコ笑う(・・・・・・)と楽しそうな声を上げています。私は吃驚して固まっていました。

 

「わっ、人がたくさん! すごーい!」

「被身子、はしゃぐと危ないですよ」

「これが都会なんですね! わぁー! こわいねぇ……おうちかえりたいなぁ……」

「おっとテンション急降下」

 

 すんっとあっちの私の笑みが消えてホッとします。それにしても、あっちの私がぎゅーっと抱きついている相手の女性は……。

 

「誰です?」

「ボクっぽくないけど、ボクの『可能性』とか?」

「いや、今回は渡我くんのみを対象にしたんだ。だから渡我くんの『可能性』とそれに引っ張られて近しい人の『可能性』が具現化したのだろう。友人、恋人……今回の場合は家族かね」

「家族! ヒミちゃんのお姉ちゃんがいた『可能性』とか?」

「あーなるほど」

 

 お姉ちゃんかぁ、お姉ちゃんといえば冬美ちゃんが思い浮かびます。優しくて可愛くて好きです。あんなお姉ちゃんがいたら……劣等感拗らせて大変なことになっていたでしょう。一人っ子バンザイ。

 

「あのぉ、そっちの子はともかく、そっちの私は何を言ってるんです? ママはママですよ?」

「ママ……?」

「どうも、母です」

「はは……?」

 

 あっちの二人の言葉に宇宙を背負っていると、女性がしおしおと崩れ落ちました。

 

「ふふ、世界線が異なるとはいえ被身子に『誰?』ってされると堪えますね……」

「ママー!?」

 

 ママ……あっ、お母さん!? え、お母さんってあんな顔をしてましたっけ!? 親の顔を思い出そうとしますが、どうやっても朧げなものしかイメージできません。うん、どうやら私は親の顔を覚えていないようです。

 

「もー! 何をやってるんですかそっちの私! ママに謝ってください!」

「ご、ごめんなさい?」

 

 なんだかテンションの乱高下が激しいなぁ、あっちの私。ちょっと年下みたいですし、だからでしょうか? いやでも私は結構昔からローテンションだった気がします。自分より慌てている人を見てると落ち着く理論で、感情の振れ幅の大きいあーちゃんを見てると冷静になれることが多くて。

 

「あぁいえ、気にしないでください。なんとなく、あなたの境遇には察しがつきますから」

「きょーぐう?」

「少なくとも私は私じゃないのでしょう」

「ママがママじゃない」

 

 コテンと、あっちの私が首を傾げます。

 

「そうなんですか?」

「まぁ、あなたが笑顔で母親と一緒に居られる時点でそうでしょうね」

「ふぅん……」

 

 む、少し棘のある言い方でしたでしょうか。いけませんね、相手が自分とはいえ、いや自分だからこそ、気をつけないと。まだ私は自分のことが少し好きで割とキライですから。

 

「だいじょうぶ?」

 

 そんな私を純粋に、心配そうに覗き込むあっちの私に、心の中で苦笑します。

 

「大丈夫です。私はちゃんと、幸せですよ」

「そっか、なら、いいのです」

 

 あっちの私が笑いました。私も、少しだけ、微笑みました。

 ……ところで、あーちゃんはどこに行ったのです? 辺りを見回すと秋田犬と戯れているあーちゃんがいました。

 

「ヒミちゃん! すっごいよこのワンコ! ボクより賢いかもしれない!!」

「大抵のワンちゃんはあーちゃんより賢いですよ」

「そっかー!!」

 

 カァイイなぁ、あーちゃんカァイイです。なでなでしましょう。

 

「家族か。嗚呼、我もたまには実家へ帰ることにするとしようかな」

「あなたはまずハロワへ行ってください」

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