サ○リオコラボ今日までらしいので書きました。
私はホッと息をつくと、メッセージアプリを起動して、グループ『轟家ステルス部隊』(あーちゃん命名)をタップしました。
トガ『雄英合格でした』
焦凍『おめでとう』
アイ『おめでとー!』
トガ『やっっっっっと、勉強から解放されます』
トガ『教科書とノート燃やしてもいいですか?』
燈矢『いいわけあるか』
燈矢『おまえの頭なら普段から真面目に授業受けてりゃそんなに苦労しなかっただろ』
燈矢『シュコウはどうした、まだ届いてないのか?』
アイ『届いてた!』
アイ『校長先生の話が長くて寝ちゃって』
アイ『もう一回再生しようとしたんだけど』
アイ『何もしてないのに壊れた!』
トガ『今からあーちゃんの家行くので、それ以上触らないでください』
スマホをカバンにしまって、Aラインがカァイくて買ってもらったダッフルコートを着込みます。それでも冬の寒さを感じながら、あーちゃんの家へ向かいました。
「おじゃまします」
「いらっしゃい!」
挨拶もそこそこにあーちゃんの部屋へ上がらせてもらいます。学習机の上に置かれた丸い投影機器を手に取りました。
「どんなことしたの?」
「引っ繰り返してからもう一度引っ繰り返した!」
「何もしてないから動かないパターンかぁ」
横についているボタンをポチッと押して机の上に置くと、校長先生が話し始めます。実技は問題ないですし、勉強も、カウンセリングの先生の影響なのか、何となく勉強の仕方が分かると入試科目はしっかり勉強していたので大丈夫でしょう。模試も良かったですし、入試科目以外は成績ボロボロでしたが。
アイ『合格だったー!』
焦凍『おめでとう』
燈矢『よし、おまえら合格祝いにいいもんやる』
アイ『わーい』
トガ『ろくでもなさそうです』
燈矢『おいこらトガ』
燈矢『なんの変哲もない動物園のチケットだよ』
アイ『動物園?』
燈矢『摩訶動物公園つって、珍しい動物がいるって評判のところだ』
焦凍『コアラがいる』
トガ『へー、で? 何を企んでます?』
燈矢『クソ親父と一緒に行ってほしい』
トガ『ヤです』
アイ『お父さん?』
トガ『私たちお父さんに直接会ったことないですからね? そういうのは冬美ちゃんに頼んだらどうです?』
燈矢『教育実習で忙しいってさ』
トガ『お母さんは?』
燈矢『動物苦手なんだよ』
トガ『焦凍くん』
焦凍『絶対やだ』
トガ『ですよねぇ』
アイ『燈矢兄ちゃんが一緒に行ったらいいんじゃない? 近くのテーマパークのイベントに出るんでしょ?』
燈矢『シュコウ』
燈矢『おまえどこで』
燈矢『いい、少し黙れ』
スマホから目を離してあーちゃんの方を見ます。
「イベント?」
「うん、えっと……これ!」
あーちゃんがみせたスマホの画面には可愛らしいキャラクターがたくさん描かれていて、その中に『ヒーローとみんなのトークショー! 特別ゲスト:トーヤ』の文字がありました。摩訶動物公園からモノレールで一本のところにあるテーマパークでやっているイベントのようです。
トガ『え? もしかしてそのイベントにお父さんも来るんですか?』
燈矢『ないと思いたいが、クソ親父がイベント当日の休暇をとったことと摩訶行きのチケットを手配したことはサイドキックの人から聞いた』
トガ(大爆笑する犬のスタンプ)
燈矢『おいこらトガァ!』
思わず声を出して笑いました。いやしかし、燈矢くんの味方になってあげたいと思う事柄だったので、引き続きスマホの画面をタップします。
トガ『それならいい考えがありますよ』
燈矢『どうせろくでもねェ考えだろ』
トガ(ナイフを持っている犬のスタンプ)
トガ『私たちもテーマパークに行って、お父さんにさりげなく接触するのです。イベントに行かせないよう、例えばサインをお願いしたりしてですね』
燈矢『クソ親父はそういうの全部無視するぞ』
トガ『万策尽きました!』
燈矢『はえーよ』
アイ『燈矢兄ちゃんならサインも握手もしてくれるのにねー』
ね、と部屋に飾られている燈矢くんのサインを指さします。他にも見回せば『トーヤ』グッズが飾られていたり置かれていたりと……まぁ、別にいいと思いますけど。
トガ『燈矢くんはファンサ惜しまないですよね。テレビとかだと一人称も僕ですし、腹筋に悪いです』
燈矢『どういう意味だ?』
燈矢『仕事だろ、ヒーローの』
燈矢『クソ親父は強さだけがヒーローに必要なものだと思っているが、俺は違う』
燈矢『なんつーか』
燈矢『こんな“個性”の俺がオールマイトを超える、強くて人気のヒーローになったら』
燈矢『最初から凄い“個性”持ってるヒーローよりも説得力あるだろ』
燈矢『おまえの夢も叶う、って言葉も』
燈矢『まァ、今の俺はオールマイトの足元にも及んでないけどな』
アイ(拍手している猫のスタンプ)
トガ(感動している犬のスタンプ)
焦凍(可愛いペンギンのスタンプ)
燈矢『なんか言えよ』
アイ『勉強になった!』
焦凍『燈矢兄照れてる、耳まで赤い』
トガ『焦凍くん写真送ってください』
燈矢『トガァ!!』
いやはや、ヒーローになって、もしくは雄英三年間で燈矢くんも随分と変わったものです。昔はドブ川よりも濁っていた目が最近は入浴剤を入れすぎた湯船くらいになった気がします。少し間をおいて、再度メッセージがきました。
燈矢『おまえらも考えておけよ雄英合格者』
アイ『なにを?』
燈矢『どんなヒーローになりたいか、胸張って言えるやつな』
アイ『燈矢兄ちゃんみたいなヒーロー!』
燈矢『はいはい、もっと具体的に練っとけ』
アイ『燈矢兄ちゃんという具体があるのに!?』
あーちゃんが頭を抱えているのを横目に、少しだけ頭を捻ります。でも、すぐにやめました。
トガ『考えておきます。で、お父さんのことはどうするんです?』
燈矢『トガと焦凍がクソ親父の前でデートしたらそっちについていくんじゃねェかなァ』
トガ『どうしてそう、ろくでもないことばっかり思いつくのです?』
燈矢『親の教育だな』
トガ『私たちの間でそれは禁止カードですよ?』
焦凍『行くなら動物園がいい』
焦凍『コアラ見たい』
アイ『ボクが代わりに見とくよ!』
焦凍『わかった』
トガ『そこの二人で会話されると頭が混乱しますねぇ』
アイ『つまりボクが動物園に行って』
焦凍『ヒミ姉が俺とデートする』
パッと顔をあげます。間の抜けた声が口から漏れました。
「……はい?」
「お土産なにがいい?」
タスマニアデビルのヌイグルミとかカックイイよね! あーちゃんはキラキラとした目をしながらそう言いました。
燈矢(大爆笑している犬のスタンプ)
うっわ、腹立つ!
というわけで、他に代案もなかったため焦凍くんとテーマパークへ行くこととなりました。デートではないです。お友だちとのお出かけです。
「焦凍くんって、意外と遊び人だったんですね」
「遊び人?」
「色んな人とデートするような人、ってことです」
「冬姉くらいだ、俺がデートしたことあるの」
「……デートの定義を聞いてもいいです?」
「男女が二人で出かけることだろ。あ、母さんともある」
「ど天然焦凍くん!」
待ち合わせ場所で早速そんな応酬をしながら、テーマパークの方へ歩きます。チケットは燈矢くんが用意してくれていたようで、まっすぐ入場口に向かいました。
「ヒミ姉もアイ兄とデートしないのか?」
「焦凍くんの言うデートならたくさんしてますよ。ここしばらくは図書館デートですけど」
自習スペースを占領して朝から晩までお勉強していました。二度としたくないです。実技対策は、あーちゃんの血液ストックがあったので、そこそこ身体を動かしたくらいですね。
入場口のゲートをくぐって、カァイイものがたっくさんな空間に足を踏み入れます。
「さて、と。燈矢くんのイベントまで時間ありますし、どうします?」
「まずはカチューシャを買うといいって、公式サイトに書いてある」
「いいですね。つけましょう!」
入口近くのショップで私は黄色い犬耳カチューシャを、焦凍くんは赤いリボンのついた白い猫耳カチューシャを購入しました。
「ヒミ姉、もうすぐグリーティングがあるらしい」
「好きなキャラでもいるんです?」
「挨拶は大事だ、行こう」
「わぁ、焦凍くんの天然がアクセル全開すぎて面白いねェ」
そして、白い……犬? 兎? な着ぐるみと触れ合ったり。
「いろんなショーもやってますね」
「歌舞伎が気になる」
「では、そうしましょーか」
「うん、ヒミ姉の洒落も面白いと思う」
「へ? ……いやいや、違いますよ!?」
精神的なダメージを受けつつ、着ぐるみたちの歌舞伎を観たり。
「なぜだか黒頭巾の兎に運命的な何かを感じます」
「その兎のアトラクションあるらしいぞ、乗るか?」
「はい!」
どこからか謎の電波を受信して、アトラクションに乗ったりして。
「少し休憩しましょうか」
「そうだな」
私たちはカフェに腰を落ち着けました。挨拶をした白い兎犬のドリンクを一口飲みつつ、ゼリーとヨーグルトの混ざった飲み物? を前にどうやって飲むのか戸惑っている焦凍くんの顔を見ます。
「焦凍くんも、来年は雄英受けるんですよね」
「あぁ」
「どうしてヒーローを目指しているのですか?」
焦凍くんはコップを机の上に戻して答えました。
「アイ兄と同じだ」
「あーちゃんと?」
「俺の場合はオールマイトだけどな。小さい頃からオールマイトが好きで、オールマイトみたいになりたい。だからヒーローを目指してる」
「なりたいヒーロー、ですか」
「ヒミ姉は好きなヒーローいないのか?」
「そもそも、ヒーローに興味があまり……」
高校はあーちゃんと同じ学校がいい、それだけで選んだのです。でも、燈矢くんの言葉が少しだけ胸に引っ掛かっていて、だから少しだけ、いつもより深く記憶を探ります。ヒーロー、ヒーロー?
『わたし、ヒミちゃんのことすっごく好き!』
遠い昔の記憶が、頭の中でラムネみたいに弾けました。
「ヒーローなのか、よくわからないけど」
あのとき、私が何を思ったのかはわからないままでいるけれど。
「君もここにいていいんだよ。君の居場所はちゃんとあるんだよって、心から伝えられるような……」
もしかしたら、私は、救われたのかもしれない。
「そんな風になりたい、かな」
思わず笑みを浮かべてしまったから、顔を伏せて、手を口元に当てて隠した。
「俺は、ヒーローだと思う。きっとヒミ姉がそう伝えることで救われる人がいるから」
「……ありがとう、焦凍くん」
焦凍くんはコップを手に取り、ストローをくわえて、なんとか飲めているようだ。表情を戻して、私もドリンクを一服する。
「嬉しいことを言ってくれた焦凍くんにアドバイスです、デートは恋人同士でするものだから今日のこれは友人同士の遊びです。そうやってあんまり女の子を勘違いさせちゃダメですよ?」
「なるほど、俺のことは遊びだったんだな」
「焦凍くーん?」
「? こういうふうに言うんじゃないのか?」
「違いますねぇ」
「違うのか……」
本気でしょんぼりしている焦凍くんに呆れつつ、顔を寄せてコソコソと内緒話。
「ところで、お父さんがずーっと見てきていますけど、どうします?」
「燈矢兄のイベントが始まるときに警備員を呼ぼう」
「手段選ばないなぁこの兄弟」